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家族の絆を深める~皆の秘密がカオスです~

【  635年 桜井かんな8歳 島津義弘8歳 アトラクション・『ファミリー』 エリア2 唐 シルクロード】


「それじゃあ、次はお母さんの『秘密』でしょうか?」


 そう言ってお母さんの顔を見ると、顔が赤くなり汗か激しく流れていました。周囲の熱が原因ではないようです。


 そんなに照れるようなのでしょうか?


 お母さんは私達の顔を見渡すと、『はあ』とため息をついて、話し始めました。


「そうね。わかったわ。この状況を乗り切るには仕方ないもの」


 お父さんの秘密は中々ヘビーでしたが、お母さんの秘密は一体どんなものなのでしょう。


【お母さんの秘密】


 お母さんには、幼馴染の女の子がいた。

 異常に気が合って、どこに行くにもいつも一緒だった。


 思春期になり、恋愛を意識することになったとき、お互いの想いが同性に向けるべきものではないことに気づいた。


 恋愛感情を自覚してからは二人の関係はさらに盛り上がり、恋人同士になってからは様々な場所にデートに行き、バレンタインやクリスマスなど季節のイベントを楽しんだ。


 高校一年になったとき、その女の子が海外に転校することが決まった。


 二人は何とかして一緒にいる方法を模索し、駆け落ちと称して新幹線で遠くの街に逃げた。


 しかし高校生二人が、自分達だけで生活していけるものではなく、警察に保護されて家に戻された。


【お母さんの秘密 終わり】


 お母さんの秘密は、同性と駆け落ちしようとして失敗したお話でした。


「確かに同性愛は珍しいことかも知れませんし、駆け落ちしようとして保護されたのは恥ずかしいことでしょうけど、家族に秘密にするほどのことでもないんじゃありませんか?」


「それがさあ、この話には続きがあってね」


「お父さんとの結婚式のとき、彼女が会場に来ていたの。それで聞いてみたら、なんと彼女はお父さんの妹だっていうじゃない!」


「えっ……」


 話を聞いたお父さんが固まってしまいました。自分の妹が自分の奥さんの元恋人だったらそりゃあびっくりすると思いますが……。


 固まったお父さんを見て、お母さんは『こうなると思ったから、二人で黙ってたんだけど』と言いました。


「もちろん今は純粋な親友で、恋愛感情なんてないわ。私はお父さん一筋だもの」


 それはもちろんそうなのでしょうけど、この秘密告白は家族の秘密を受け入れることが課題です。


 つまりお父さんがこの事実をどう受け止めるか、が私達が『アトラクション・ファミリー』を突破できるかどうかの大きなポイントということになるのです。


 そう考えながら、お父さんの方を見ると、ようやく意識を取り戻したようで軽く咳ばらいをしました。


「あ、ああ。なるほど。そうか。確かに晴美とお母さんは仲がいいけど、そうか昔から、ね。そうか」


 お父さんは目をキョロキョロさせ、気が気でない様子です。


「い、いや。そうだな。うん。何も別に悪いことじゃない。仲が良いことは素晴らしいことだからね。それに今は僕に愛が向けられているんだ」


「そうだ。誰だって、人生では色々なことを乗り越えてきている。お母さんもそうだったということだ。そして今、僕はお母さんを愛し、お母さんは僕を愛している。それが全てだ!」


 お父さんは何かを確信したような顔で叫びました。どうやら、お母さんの秘密を受け入れることができたようです。


 後は私と義弘が受け入れられればいいんですよね。


「私は素晴らしいお話だと思います。かつて離れ離れになった恋人同士が再会して今も親友でいるなんて、とっても素敵じゃないですか!」


 もちろん身内ということを考えると、少しモヤモヤしますけど、受け入れられないほどではありません。


 そして義弘もニヤニヤしつつ、私達の意見に同調しました。


「我は恋愛など興味はないが、母上の体験が素晴らしいことはわかる。誰が誰に恋をしようと自由だ。今、父上母上、そして叔母上も幸せならば、文句があるはずもなかろう」


 義弘の言葉と共に、二本目の柱が急速に火勢を失い、やはりみるみるうちに消えてしまいました。


 良い調子ですね!このままいけば、残り二本も簡単に消せそうです。


「ここからが問題だな」


 義弘がそう呟きました。ここから、と言うのは私と義弘の秘密は、簡単には受け入れがたいという意味だと思います。


 逆に言えば、私と義弘の間ではすでに秘密を共有しているのですから、お父さんとお母さんが理解してくれればいいだけなのですが、『転生』となると難しいかも知れません。


 でも、お父さんとお母さんならきっと私達のことを理解してくれると思います。とにかく私達にできることはベストを尽くすことしかありません。


 私は義弘の方を見つめ、話すように促しました。


「いいだろう。では我の秘密を説明する。大部分は姉上にはもう話しているが、話の肝となる部分は姉上にすら話しておらぬ」


 肝となる部分を私に話していない……!?


 義弘の秘密と言えば転生者で、前世の記憶があること、『アトラクション・ファミリー』に挑戦していて、それが突破できなければ全次元が滅んでしまうことだと思います。


 本当に、この話が要点を欠いたものだとしたら、一体義弘は何を隠していると言うのでしょう?


「まずは姉上にすでに話したことの方だ。我は島津義弘として生まれ、育ち九州で戦い続けた。そして家康の時代になり、老いぼれて死ぬと、桜井義弘に生まれ変わっていたということだ」


 話を聞いて、さすがのお父さんとお母さんも困惑しているようです。人が『転生』すること、そして義弘が戦国武将の生まれ変わりということも、簡単に受け入れられる情報ではないでしょう。


「そうか!そりゃあすごい!!まさか、うちの子が転生者なんて!」


「しかも有名な戦国武将なんてすごいわ!!ただものじゃないと思ってたけど、やっぱりすごい子だったのね!」


 思いの外、簡単に受け入れられてしまいました。それだけ、お父さんとお母さんの愛が強いということでしょうか?


 思えば私も、理解するのには苦労しましたが、だからと言って義弘との関係がおかしくなったりはしませんでしたね。


 元々、絆が出来上がっている家族なら、心配ないということなのでしょう。


「ああ、父上と母上なら『転生』は受け入れるだろうと思っていた。だが、本当の秘密はここからだ」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「魂を創られた……?」


「ああ、我が島津義弘になるより、はるか前のことだ」


【義弘の秘密】


 6600万前、輝夜によって『火鼠の皮衣』の力で地球に残ったハレーの破片から、ハレーの魂をコピーした『クローン・ソウル』が作られた。


 輝夜は、10,000体のクローン・ソウルから『夢世界のコアになる超高エネルギー体』を作り出すと言っていたが、義弘には意味がわからなかった。


 義弘も超高エネルギー体の材料にされそうになったが、何者かの手によって『仏の御石の鉢』の力で強制転生させられ、気が付けば島津義弘として産まれていた。


【義弘の秘密 終わり】


「我は恐らく、この全次元を揺るがす大きな流れの一部なのだ。恐らく『超高エネルギー体』とやらは全次元を上回る力、それを知る我がなんとかせねば、全次元は滅びかねぬ」


 どうやら義弘は私が考えているより大きな使命を背負っていたようです。私もこれまで義弘の『突破』に協力してきましたが、全次元を守る使命を負っていたとは驚きです。


 兄の生まれ変わりを救うこと、そして超高エネルギー体が作られるのを防ぐこと、このどちらも達成しなければ全次元は滅んでしまうということなのですね。


「全次元の運命を背負ってるなんて、カッコいいじゃない!それに、何の生まれ変わりだって、義弘が私達の子供であることに変わりはないわ!!」


 お母さんはあくまで義弘を義弘として、ちゃんと愛しているのですね。そして運命を背負っているなら、共に背負おうという気持ちも、私と同じみたいです。


「母上の愛には脱帽する。その愛があったからこそ、我は前世の記憶がありながら歪むこともなく育ってきたのだ。ありがとう、心から感謝する」


 義弘は私ですら見たことがない様な、素敵な笑顔でお母さんに感謝の言葉を伝えました。義弘もお母さんが大好きなんですね。


「僕も義弘の戦いに力を貸すよ。全次元の運命も大事だけど、僕は家族として義弘を助け守りたいんだ。頼りないかも知れないが、僕にも手伝わせて欲しい」


「おお、父上よ。貴方は恐怖を知りながら、いつも我のために頑張ってくれる。その志には感服する。こちらこそお願いする。どうか共に戦ってくれ」


 義弘はお父さんの性格、能力を弱いものと思いながらも、自分の事を思い恐れを乗り越えて協力してくれるお父さんを信頼しているようです。


 お父さんお母さん共に、義弘の秘密を受け入れ、その運命に共に立ち向かう覚悟を決めました。


「私は、義弘が背負う運命がどんなものであろうと、これまでと同じく一緒に戦います!だって、私の弟なんですから、守らなくちゃいけませんもの!」


「応!姉上は赤子の頃から今まで力を貸してくれた。これからも力を貸してくれ。姉上の力は我にとっても、恐らくは全次元にとっても特別だ」


 私が特別?どういうことでしょう。義弘にとって特別というのは分かりますが、全次元にとって私の力が特別……?


 上位恋愛傾向『ストルゲ』を発動させられる可能性があるからなのか、それとも私達家族にはそれさえ超えて、全次元を守ることができる可能性があるということでしょうか?


 『超高エネルギー体』というものが、上位恋愛傾向の力さえ超えるのだとすれば、それが必要なのかも知れませんが……。


 私がそう思うと、ついに三本目の火柱も勢いを失い、消滅してしまいました。


 残る火柱は一本、私の秘密を打ち明ける時ですね。


「私の秘密は義弘と同じく『転生』です。私は2008年に望月麗美として生まれました。その時の家族が、特に兄の望月たかしのことが大好きでした」


「前世の私は病弱で、兄はいつも看病をしてくれていました。その兄がある日、私が元気になれる方法を見つけたと言い出しました。移植手術ができる当てが見つかったと」


 あの日、私は手術の恐怖を感じましたが、兄がしきりに大丈夫だと言ってくれたので、安心していました。


 そして、自分が元気になって駆けまわる姿を夢見ていました。


「ですが、手術と言って連れていかれた後、私は2016年に生まれ変わっていました」


「そして、薬で眠らされていたはずなのに 暴力団の方達に『臓器を抜き取られて死んだ』という記憶が何故かあったのです」


 それは転生後の私にとって大きなトラウマになりました。不安になる度に泣きじゃくって、お母さんに随分 迷惑をかけた気がします。


 だからこそ、私を慰め支えてくれた家族に恩返しをしたいという気持ちが強いのです。


「そうか、それは辛かったね。いつも楽しそうに見えていたけど、もう少し気遣いが必要だったかも知れない。ごめんね。でも少なくとも今世では、僕たちが何があっても守るkら、安心するんだよ」


 お父さんは、優しく私の頭を撫でてくれました。この家族の中で生活して大分トラウマも薄れてきましたが、ときどき思い出すとても恐ろしくなります。


「よく頑張ったわね。辛いことを乗り越えた貴方には幸せになる権利があるわ。困ったときには私達を頼って、楽しいときは皆で一緒に楽しみましょうね」


 お母さんも私を励ましてくれます。私は本当にこの家に生まれて良かったと思います。前世も兄がいてくれて概ね幸せだったのですが、今の家族は桁違いに幸せですから。


「姉上よ。我は強い者を好む。姉上は辛い出来事を乗り越え、その度に強くなる力を持っておる。だから、我は姉上が大好きだ。もちろん力など無くとも家族の事は大好きだがな」


 義弘は、生まれた時から共に『突破』を目指して、努力して来た仲間であり私の一番の理解者です。


 私は自分が強いとは思えませんが、それでも共に生きてきた義弘が私を強いというのなら、そうなのかも知れません。


 それもきっと、家族皆が支えてくれているから、強くあれるんだと思いますけどね。


 皆が私の秘密を理解してくれました。これで最後の火柱も……。


 私がそう思った瞬間、残った一本の火柱は消えるどころか大きく燃え上がり、四本だったとき以上に私達の周囲を覆いました。


「え、ええっ!?なんで火柱の勢いが強くなるんですか!!私達、皆ちゃんと秘密を話して、家族の理解が得られたのに!」


『いや、あんたは全ての秘密を話したつもりなんやろうが、潜在意識の奥深くその中心に、あんた自身も気づいてない、本当に隠すべき秘密があるのや』


「ほ、本当に隠すべき秘密……」


 ハリーさんはそう言うのですが、私自身も知らない秘密なのだとすると、思いつきようがありません。一体どうしたら、その秘密を皆と共有できるのでしょう。


『その答えは恐らく地球のコアにあるぜ。すでに三つの火柱を消したあんた達なら、コア付近までは燃えずにいけるやろう。手を繋ぎ、家族の事を思いながら、残った一本の火柱に突っ込むんや』


 こうして私達は、私の潜在意識に眠る『秘密』を求めて、地球のコアに潜り始めました。


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