魔牛皇帝の身長が高すぎる(西遊記の時点で)
「さて皆さんお待ちかね!!本日も囚人同士の決戦が始まります!」
7・3分けで眼鏡で小柄なおっさんの鬼がマイクに向かってまくしたてている
「今回戦うのはなんと生者!!太上老君様の紹介で地獄で研修をしている
織田安信です!!」
そういや、俺坊さんになったときに安信って名前になったんだったな。
すっかり忘れてたが。
「対するは地上にて暴虐の限りをつくし、孫悟空一行の手で地獄に
落とされた、牛魔王改め魔牛皇帝だ!!」
俺の前に魔牛皇帝が現れる。ちなみに今俺達がいる空間は地獄ではなく、
壊れてもいいように作られた決闘用の異次元だ。地球と同じぐらいの大きさがあるらしい。
魔牛皇帝は……正直言ってでかすぎて足の指しか見えん。
「魔牛皇帝は牛魔王時代も身長3,300mと富士山並みの身長でしたが
積尸気に目覚めたことで、身長8850mとエベレスト並みの身長になりました!!」
でか過ぎて、何がなんだかわからんな。そういえば上位種族は自分の恐れるもの、破壊力があると思うものに変化するって話だったが…、あいつはでかいものこそ強いと思ってるからこうなったんだろうか。
「対して安信は、たった今過去の憎しみから妖気に目覚めたばかり!!
二人の実力差は歴然です!!」
確かに実況のおっさんの言う通りだな……。思ってる以上に、ヤバい勝負をやらされてるのかも知れん。
………でも悟空が暴れると日本ごと吹っ飛ばすとか言ってたよなあ
この戦国時代に、そこまで親しい人がいるわけじゃないけど(お寺の人たちは、川オロチにやられたし)だからと言って、日本ごと見捨てるわけにもいかないよな。
俺は力を手に入れた。もうしずくのときとは違う。見捨てるのはダメだ。
俺は魔牛皇帝に勝って、悟空を倒せる力を手に入れる!!
「貴様が太上老君のお気に入りという安信か」
魔牛皇帝がこの異次元全体を震わせる重低音で話しかけてくる
話してるだけで威圧感で気絶しそうだ。
「俺が安信だ……」
ダメだ。相手のでかさ恐ろしさにビビって、まともに返答できなかった
落ち着け!これからこいつを倒さなきゃいけないんだ。
「なお、この決戦に勝った方は、”怨嗟の盃”に相手の血を
注ぎ、飲むことができます!!」
獄卒の話によると、怨嗟の盃に血を注いで飲むと、血の持ち主の
憎しみの記憶をコピーできるそうだ。すでに積尸気に目覚めてる魔牛皇帝
の憎しみをコピーできれば、俺も積尸気に目覚められるということらしい。
また憎しみが強ければ強いほど積尸気はさらにパワーアップするそうで、
魔牛皇帝も俺の血を飲むのが目的のようだ。
「なお負けた方は、437年の労役に就いてもらいます」
「ちょっと待て!!それは聞いてないぞ!!」
「おやどうやら通達漏れがあったようですが、その異次元に入った以上、
決着がつくまで逃げる方法はありませんよ」
437年後って……
今は1583年だから、437年後は俺がいた時代の2021年じゃねえか!
なんだ?分かっててやってんのか?
まあどちらにせよ、ここで悟空が日本を滅ぼしたら未来もクソもないからな。
元の時代に戻れるなんて考えない方がいいだろう。
「ちなみに実況は、鬼のパンツはいいパンツでおなじみの
私、坂口がお送りします」
「それでは準備はよろしいですか?決戦始め!!」
実況の坂口の合図により決戦が始まった。
しかし、俺もパワーアップしたとはいえ、こんなでかいやつとどう戦えばいいんだ?
急所となりそうな、目とかこめかみとかみぞおちとか股間とかは
鬼化した俺が全力でジャンプしても、どう考えてもとどかない高さにある。
俺が攻撃できそうなのは足の先だけだ。
「貴様、俺をパワーだけの男だと、思っているのだろう」
いやでかすぎて戦闘スタイルとか考える余裕も……!?
がはっ!?
いきなり後ろから衝撃を受けた!?殴られたのか蹴られたのか、
俺はものすごい勢いで、前に吹っ飛んでいく。
よく見れば、前にいたはずの魔牛皇帝が俺の後ろに回っている
あの一瞬で!?あの巨体で!?
ま、まずい…常時鬼化してるにも関わらず、一撃のダメージが大きすぎる
どうする?不可視の攻撃を連発されたりしたら、とてもじゃないが勝ち目がないぞ。
妖気に目覚めたことで、常時鬼化に加え水爆龍化というのができるようになってるはずだ。
「見たか!これが俺の新しい武器、スピードだ!!パワーだけでは敗れたから
スピードを鍛えて鍛えて鍛えまくったのだ!」
なるほど、つまりパワーとスピードが強いものが何より強いと考えた結果、異次元のパワーとスピードを持つ上位種族になったってことか。
それより、このままじゃあと数発喰らったら死ぬ!考察してる場合じゃないぞ。
水爆龍…水爆龍ってどうやったらなれるんだ?
―――システムメッセージ―――
スキル:水爆龍かを使う条件は
「妖気に目覚めたときと同等の憎しみをありありと感じること」です
なんだ?システムメッセージって、邪気や妖気に目覚めたとき以外も出てくるのか?
―――システムメッセージ―――
妖気に目覚めたことで、「簡易Q&A」が解放されました
まあいいか。便利なものなら、あるに越したことはないよな
しかし「妖気に目覚めたときと同等の憎しみをありありと感じること」か
今でも恨んではいるが、ありありとってのが難しそうだな
―――システムメッセージ―――
記憶がフラッシュバックする、きっかけが必要です。
恨んでいる現場を象徴し、触れただけで怒り蘇るようなものはありませんか?
きっかけか…そうだな…
あ!そうかボタンだ!たかしがボタンを押したせいで、しずくは死んだ。
だからボタンやスイッチみたいなものに触れれば……!!
―――システムメッセージ―――
では、憎しみの場面を強くイメージしてください。
手の中にキーアイテムが現れます
イメージか。よし!
むむむ……たかし…やめろ…!ヤクザ…許さねえ……
俺…俺はどうしても何も……
ピカーーーーーーーッ!!!
俺の手のひらが光ったと思ったら、手の中にボタンが現れた!
よし!こいつを押せばいいんだな!
俺は手の中に現れたボタンを押した。
ぐぐあああああああ!!しずく…しずくうう!!!
たかし!やめろバカ!!ヤクザ!!てめぇ!金のためならなんでもするのか!!
なんでなんで俺はこんなに無力なんだ…。
―――システムメッセージ―――
スキル:水爆龍化を使用しました。