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友情が咲かせた大花火

【  2005年 蜂須賀正利14歳 織田信秀14歳  エリア2 任侠街 豚崙山】


「で、ですが、どうやって私達の手で『特殊友情共鳴』を再現するのですか?」


 さきほどの記憶では、三人のやったことと言えば手を繋いだことくらいです。それまでに紡いでいた絆が条件なのかも知れませんが……。


 しかし、ただ絆だけが条件ならば、今の私と信秀殿でもアリ達に負けるとは思えません。


 何か特別な条件があるはずです。


「ん~。それなんだが、一旦、退いた方がいいかも知れねえな」


「退くのですか?しかし、信秀殿も言ったように、このままで逃げても半刻ほどすればエリアごと吸い込まれてしまいますよ」


「確かにそうだな、だが『特殊友情共鳴』の条件を探るには、どうしてもアリの協力が必要だろう。叉焼王には聞けねえし、鳳華の嬢ちゃんはきちんと説明できねえだろ。だったらどうしても、一度『屍亭(かばねてい)』に戻る必要がある」


 確かにそうか、と思った瞬間、急に鳳華さんが憤慨し始めました。


『アタシには説明できねえって、どういう意味ですか!!あの緑色のやつでしょ?あんなの簡単じゃねえですか!!』


「おお、ではやり方がわかるのですか?」


 期待した眼差しで鳳華さんを見つめる私に対して、信秀殿はあまり期待してないようです。こと情報においては、かなり鳳華さんに振り回されましたから、仕方ないと言えば仕方ないのですが。


『あれは、何ていうか手を握ったら、何かパーっと心が開かれて、頭がアリと叉焼王のことで一杯になるんですよ。そしたら、心から優しい気持ちがどんどん溢れてきて、周りに輪が出てくるんです』


「ほら、やっぱり聞いてもわかんねえだろ」


 確かに、手を握ると発動するのはわかりますが、それによって『心が開かれる』『相手のことで一杯になる』と言うのがよくわかりません。


 それはまだしも、それら一連の流れとあの緑色に輝く『友情の輪』が出てくることの関連性が、まるで分りませんからね。


「確かに、少なくとも再現できるほど明確な情報ではないですね。アリさんにも聞いてみるしかありませんか」


 そう思っていると、叉焼王のお椀が一段と強い光を放ちました。


 我々は『友情の握力』の力で、何とか姿勢を保ちましたが、任侠街の建物が根こそぎこちらに引っ張られてきました。


『ああっ!街がぁっ!!あいつ、なんてことするんです!!』


 これはまずいですね。街を破壊しては、もしお椀を破壊出来て、叉焼王を正気に戻せたとしても、鳳華さん達に受け入れてもらえなくなるかも知れません。


 そう思っていると……。


『アリ!?』


 突然、鳳華さんが叫びました、見ると確かに見覚えのある『黒服』の女性が、お椀の力でこちらに飛ばされてきています。


 まずいですね、ここでアリに何かあれば、力の秘密が分からなくなります。


 何よりアリは任侠街の顔役ですし、物資調達役でもあります。建物は建てなおしようもありますが、そもそもアリがいなくては、住人が生きていけません。


 そう思っていると、鳳華さんがアリさんに向かって手を(龍の姿だから前足でしょうか)を伸ばしました。


 そして二人が手を繋いだ時……!!


 パアアッ!!


 二人の間に、あの緑色の輪が現れて、周囲からお椀の力を吹き飛ばしました。


「おおっ!!それが『特殊友情共鳴』ですか!」


「けど、過去のやつと比べると、全然弱いな。やはり叉焼王が抜けてるせいか」


 任侠街の建物は、一部が壊れただけですみましたが、街の周囲に生えている変な植物達は、根こそぎお椀に吸い込まれていきます。


 二人だけの『特殊友情共鳴』では、お椀の力を無効化し切れないのですね。


「叉焼王に代わって、私達が二人の親友になるしかないでしょう。そうすれば、エリアを抜け、私と信秀殿だけになった後も、強力な力を使えるはずです!」


「それしかねえだろうな。アリ、今使った力、どうすれば他の奴と一緒に仕えるかわかるか?」


 そう聞かれて、アリは少し考えた。彼女にとっては普段から普通に使っている力だから、原理がはっきりしないのかも知れません。


 そして、頭をかきながら言いました。


「あー、ほとんど俺の予想ってか、カンみたいなもんになるが、いいのか?」


 それに対して信秀殿は、笑顔で答えました。


「ああ、もちろんだ。今んとこ、あんたしかヒントがねえからな」


 アリは鳳華さんの方を見て、『まあ、こいつじゃしょうがねえか』と言いました。


『アリ、ちょっと言い方が酷いですよ!?』


 アリはくすっと笑って『まあいいじゃねえか』と言いました。鳳華さんとの掛け合いが楽しくて仕方ないみたいですね。


「あの力の秘密だが、基本的には仲の良いやつらが手を握れば発動するんだろう。だが、それならそこら中であの力を使える奴が出てくるはずだ。なんで、俺達だけに使えるのか?が問題だよな」


 アリの言う通り、ただ仲が良いだけで使えるなら、誰でも『特殊友情共鳴』を使えることになります。アリ達にしか使えないからには、特殊な条件があるはずですね。


「で、その条件なんだが……。他の奴らには無くて、俺達だけにあるものが一つある」


「それは、何百年経っても忘れねえほどの、強烈な思い出を共有していることだ!!」


 そう言われて私は疑問を抱きました。すごく仲が良くて、時間を共有しているなら、忘れがたい思い出ができることもあるのではないでしょうか。


「この特殊な思い出を経験したやつには、手のひらにあるツボ『友紋』が開き、腕に『友紋章』が浮かび上がる。それが『特殊友情共鳴』を使える印だな」


 なるほど。同じ『強烈な思い出』を共有する者達であっても、『友紋章』がない人は『特殊友情共鳴』を使えないわけですね。


 けれど、この任侠街に来て初対面の鳳華さんやアリと、今ここでそこまで強烈な思いで作りができるでしょうか?


 いや、まあやらなければこのエリア、いえこの勢いでは全次元が吸い込まれるのも時間の問題かも知れません。


 それを放っておけば結局私達も死んでしまうわけですからね。


 それに、私達は三人の友情を尊いものだと思っています。このまま叉焼王の暴走で壊してしまってはいけません。


「で、具体的にどうするかね?」


「それについて、考えはある。あるんだが……」


 そこでアリは口ごもってしまいました。


「さっきから言ってるように、俺は腹と頭が痛くて、クソ(ダル)いんだ。積極的に手伝えと言われても無理だぜ」


 アリは生理中の上に人間で言う『二日目』らしいので、痛みと怠さが頂点になっているようです。


 『裏ルート』も使えませんし、戦力として期待するのは難しいかも知れませんね。


「それで考えってのは?」


「ああ、超新星花火だ。そいつを俺達四人で作る。その体験を通して『強烈な思い出』を作るんだ」


「「超新星花火?」」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「つまり」


『アタシとアリが二人版の『特殊友情共鳴』で、緑色に輝く超エネルギー体を作り出す』


「そして、それを私と信秀殿が『超握力』によって、ナノサイズまで圧縮する」


「それで、圧縮されたエネルギーを一気に開放するってわけか」


 これだけ聞くと攻撃スキルの話をしているようですが、あくまでこの『超新星花火』は観賞用だそうです。


 解放されたエネルギーの放射される姿が、花火のようでに美しく、そして星の最後の輝き『超新星爆発』のようでもあるため、『超新星花火』と呼ばれているそうです。


「この技は、エネルギー体の政策組と、エネルギー圧縮組の息か完全に合わないと失敗する」


『変な爆発のさせ方すると、任侠街が無くなっちまうかも知れねえです。気をつけないと』


 恐ろしいことをさらっと言いますね。まあ、恐らく全次元の1/10くらいのエネルギーがある球ができそうですし、気を付けるに越したことはないのですけど。


「俺達が、エネルギー体を作ったら、その丁度3秒後に圧縮するんだ。いいな!!」


「「了解です!!」」


 私と信秀殿は勢いよく返事をしました。それと同時に、アリと鳳華殿が手を握り、『特殊友情共鳴』により二人の頭上に友情の輪が出てきます。


 そして、二人の間に緑色に輝く、巨大なエネルギーの球が現れました。これが『超エネルギー体』ですね」


 ぴったり……3秒……と思っていたのですが、二人がエネルギー体を作った2秒後に異変が起きました。


 エネルギー体が、ものすごい勢いで巨大化し始めたのです。


「ちょ、ちょっとお二人共!今から圧縮するんですから、これ以上は大きくしなくていいです!!」


『違いますよ!!アタシ達は最初作ったときしか、エネルギー入れてねえです!!』


 じゃ、じゃあなんで……いや、これは!!


 混乱してしまいましたが、今 私達の邪魔をするやつなんて一人しかいません。


「叉焼王のお椀からエネルギーが注がれてるぞ!?」


『あのお椀、エネルギーを吸い取るだけじゃなくて、入れることもできるんですか!?』


 まずいです。あのお椀は、全次元より少し弱いほどの力はあるでしょう。アリと鳳華の『特殊友情共鳴』が混ざれば、全次元を消滅させるエネルギーになってしまいます!!


 こうなったら、方法は一つです。


「私達が、何とかして握りつぶします!!信秀殿!!」


「ああ!!見せてやるぞ、俺達の友情を!!」


 私達が手を握ると、空中に巨大な手が現れ、緑色の球を押さえつけようとします。


 少し圧縮された気がしますが、とても消滅させるというわけにはいきません。100mの大きさが80mになった程度でしょうか。


 これほど、信秀殿と心を通わせても、まだ届かないのですか。このままやられてしまっては、信孝様にも申し訳が立ちません。


 そう思っていると……私の手を誰かの手が掴みました。


「いいじゃねえか。これでこそ『強烈な思い出』だ。こんなピンチを共有できたら、絶対忘れねえぜ」


 アリが私の手を握り、鳳華殿が信秀殿の手を握っています。


『そうですね。こんな面白い目に合うとは思いませんでした。アンタ等といるとホント楽しいですよ』


 二人の『友紋章』が緑色に輝きます。そして私の腕にも、それと同じものが浮かび上がってきました。


 鳳華殿が握っている、信秀殿の腕にも『友紋章』が浮かび上がります。


 これは、花火を作ろうとして失敗して、ピンチなってそれでも戦おうとする私達を見て、何とか助けたいと思って……それが二人にとって、いいえ、私達四人にとって強烈な思い出になったということですか!!


 でも、だったら!四人の力が一つになるなら、怖いものはありません!!


『特殊友情共鳴×4(クワドラプル)!!』


 私達がそう唱えると、エネルギー体はナノ単位の大きさにまで、圧縮されました。そして……。


『「「「たまやーーーーー!!」」」』


 上空に向かって撃ちあげられ、宇宙に美しい大輪の花を咲かせて消滅しました!!


『やっぱり、花火として作ったからには、華々しく散らせませんとね!!』


「思い付きだったんだが、よく息があったもんだ」


「任侠街の方々は『(イキ)』ですから、最後は花火にすると思ったんです」


「一瞬だが、鳳華が呟いたのが聞こえたんだ。『花火にしよう』ってな」


 漸く、信秀殿との友情を進化させ、このエリア2を突破する力を手に入れることができました。


 いいえ、そればかりか信秀殿に劣らぬほどの、大親友を新たに二人も得ることができました。


 ……いや!!そうでした、もう一人、親友にしなければならないやつが残っていましたね。


「皆さん!この力なら、必ずお椀を破壊できます!!このまま行きましょう!叉焼王を救うんです!」


「ああ、もちろんだ」


『あいつに、文句言ってやらなきゃいけませんからね!』


「行こう、正利 叉焼王を救い、このエリアを突破するんだ!」


 そう言い合って私達は、再び叉焼王の方へ向かって飛び始めました。


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