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超パワーアップの方法!~自分と戦い愛する~

【    年 永久の空白(エターナル・ブランク) 真空白域(まっしろゾーン)


「孫悟空よ、貴方に協力を要請します」


 そらは恋愛傾向『マニア』になった。これは『輝夜』以外を愛さない代わりに、輝夜に愛を注ぐほどパワーアップする恋愛傾向らしい。


 そのせいで、オイラと恋愛する余地は無くなった。


 守護者・そらと恋愛し、『The・END』に行くことが、ツバサの『ハイパー・パワーアップ・トラップ』のゴールだと思っているオイラは、トラップを突破できなくなったかもと、諦めかけていたんだが……。


 そこで、そらが『協力』を要請して来た。


「協力ってのは、どういうことだ?オイラに輝夜を探せってのか?」


「ええ、できればお願いしたいのです。私はどうしても輝夜に会いたい」


 と、言われてもツバサの命を狙ってるやつだからな。


 一応、ハルナ姫の『TTRAWエネルギー探知機』でTTRAWエネルギーを持ってるやつを探すことはできる。この機械のおかげでハルナ姫は輝夜のことを知ったんだしな。


 しかし、ハルナ姫がツバサを護るために、命がけで『龍の頸の玉』を作るしかなかったことを考えりゃ、とてもじゃないがオイラが戦ってどうにかなりそうには思えない。


 実力もなしに話し合いにいっても、ツバサは『神合癒着』されてオイラは殺されるだけだろう。


 輝夜がそらを『犠牲にしない』ために戦ってるんだとしたら、話し合いが通じるとは思えない。


「オイラの実力じゃ、輝夜に会ったとしても連れてくるのは不可能だ。やつはあんたを守るために命をかけてるみたいだしな」


「ええ、ですから、貴方にはこの『空白ロード』の先『The・END』に行ってもらいます。この先には全次元の心理、輝夜の力に匹敵し得る秘密があるのです」


 『The・END』に全次元の秘密?しかし、TTRAWエネルギーは全次元全体の数倍ほどもあるんだぞ。


 今更、全次元の神秘なんてわかっても、輝夜に敵うとは思えないんだが……。


「『The・END』には、たどり着いた者の力を『∞無量大数乗』にする、『終わりと始まりの泉』があるのです。その泉の力を借りることができれば、貴方は超パワーアップできるでしょう」


 すでにオイラの実力は全次元に匹敵するほどになっている。そのオイラの実力が、さらに何乗にもなるんだとすれば、確かにTTRAW全体すら超えるエネルギーを身に着けられるかも知れない。


 その『終わりと始まりの泉』ってのが、ツバサがこのトラップに仕掛けたオイラの超パワーアップなのか。


 だが、だとしても問題がある。


 まず、そらは輝夜に会いたいっていうんだから、輝夜を殺してはいけねえわけだ。殺さず捕獲するのは殺すより難しいだろう。


 そして、そらは輝夜をここに連れてきて、どうするつもりなのかも気になる。


 少なくとも輝夜が極神霊にならなきゃ、そらが『犠牲になる』って言うなら、今はまだここで二人一緒に暮らすってわけにもいかねえだろう。


 輝夜が納得しないはずだ。


「オイラが強くなれるってのはわかったが、あんたの目的は何なんだ?ただ会いたいだけで輝夜を連れてきても、また『難題』を探しにいっちまうだろ?あんたの命がかかってるなら特にだ」


「いいえ、私が求めているのは、あなた達が『サイコダイブ』とか『精神同調』と呼んでいるものです。それができれば、輝夜の全てを知ることができる」


 なるほど、輝夜を連れてきて精神同調することで、やつのこれまでを全て知る。加えて、遠隔でその後のことがわかるような仕組みを作るってことか。


 確かにそれなら、一回 会うだけで済むし、何より『求婚者』の生まれ変わりに危険が及ばない。危険なのはオイラだけで済む。


「それができれば、輝夜が私の元を去ってから何をしていたか、私といるとき何を考えていたか、そしてこれから何をしていくのかも分かります」


 恋愛傾向『マニア』の目的が完全に果たされるってわけだな。でも、だとするとそらはめちゃくちゃにパワーアップすることになりそうだな。


 『マニア』は恋愛相手の知識を得るほどパワーアップする。それが一挙手一投足の全てを知ることになれば、『アガペー』が全次元を愛したとき以上のエネルギーになるかも知れない。


 そらと敵対しない限りは問題ないけど、こいつは輝夜の仲間だからな。


 ツバサの安全を完璧に確保しようと思ったら、オイラがそれ以上の強さになる必要があるけど……。


 でも、そうか。今の輝夜はせいぜいTTRAWの数倍の実力のはず。オイラが∞無量大数乗の強さになれば、それを上回る。


 『マニア』を極めたそらが、輝夜より数段強くなったとしても、まだオイラが何とかできる範囲のはずだ。何せ『∞無量大数乗』ってくれえだからな。


「よし、わかった。あんたの要請を受けよう。オイラはあんたの情報を元にパワーアップし、輝夜を連れてくる。その後、輝夜をどうするかはあんたに任せる」


 ただしツバサを攻撃してくるようなら阻止する。できれば、他の『求婚者』も守りにいけたらいいけどな。


「ええ。それで結構です。では『空白ロード』を開きますよ」


 そらがそう言うと、周囲の『空白』がそらの手の中に集まっていく。


 そして真空白域全体の空白が、そらの手の中に集まると空間に穴が開いた。


「空白を一点に集中して、空間と為す。これが『空白ロード』です」


「この穴が、『The・END』に繋がってるんだな」


 これまでいた『永遠の空白』が明るかったのに比べて、穴の中の世界は真っ暗だ。全ての次元の終焉の地というだけあって、不気味な雰囲気だな。


「ええ、エネルギーを探知していけば『終わりと始まりの泉』の場所はわかるでしょう。暗黒の『The・END』の中で生の気を放っている場所を探してください」


 生の気か。『光』になった空白達に感じた、あの柔らかいエネルギーだな。何となく探ることはできそうだ。


「わかった。色々ありがとうな。必ず、輝夜は連れてきてやるぜ」


「ええ、お願いします。それから……気をつけてください。『The・END』に何があるのか、私も完全には把握していませんから」


 心配そうに見つめるそらに対して、『ああ、気をつける』と言って頷き、オイラは穴の中へと入っていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【     年 『The・END』 暗黒物質(ダークマター)ゾーン】


 穴の中に入ると、そこは完全に光のない、真っ暗な空間だった。真っ白ゾーンの次は真っ黒ゾーンってことか?


 いや、感じるぞ。永遠の空白に『空白』がいたように、ここでも目には見えないが何かがいる。


 だが、『何なのか』までは分からないな。言うなら、光は+エネルギー、空白は無、ここのやつらは-エネルギーっぽいものを感じる。


 そうだ。『生の気』を探せって言われてたな。つまり、-エネルギーで覆われたこの空間のどこかに+のエネルギーがあるんだ。


 生の気……生の気……こっちか。


 オイラはわずかに感じる生の気を求めて、手探りで歩いて行った。


 そしてしばらくいくと、巨大な泉があった!この泉は目に見えるぞ!!


 真っ黒い空間の中に、泉の水だけが光り輝いている。泉の中央では、その輝く水が勢いよく湧き出しているのが見える。


 ここが『終わりと始まりの泉』か。ここでどうすればいいんだ?泉に潜ればいいのか?


『まさか、この『The・END』に生者がやってくるとはねぇ』


 そう言って、泉の中から光り輝く少女が現れた。


「何だ?あんたは?もしかして、この泉の主なのか?」


「わっちゅはねぇ。生と死を司る『終わりと始まりの泉』の主、アエン・トビエンだよ」


 やはり泉の主なのか。じゃあ、こいつに聞けばオイラが超パワーアップする方法がわかりそうだな。


 超パワーアップできれば、元の世界に戻り、クイーンとやらを倒してツバサを救うこともできるだろう。


 そして、当面の安全が確保できたら輝夜探しだ。


「あんたが泉の主なら教えてくれ。どうすれば『∞無量大数乗』の強さになれるんだ?」


「そっちゅねえ。この泉に顔を写せばいいよ」


 顔を写す?それだけでいいのか?


 いや、そんなの簡単すぎる。顔を写して、その後があるはずだ。


「顔を写すとどうなるんだ?」


「人間の魂はねえ、『光』と『ダークマター』でできてんの。この泉に顔を写すと、あんたの体から『ダークマター』が抜けて形をとるのねぇ」


 体からダークマターが抜けて、形をとる?


 つまり、そのダークマターの化身を倒せば、パワーアップできるってことか?


「そのダークマターと、残った光のあんたが『愛し合えれば』光とダークマター、両方がパワーアップして、相乗効果で『∞無量大数乗』の強さになれるねぇ」


 光のオイラと闇のオイラが愛し合うことで相乗効果を起こす……!!


 そんなことが、可能なのか?いや、それを言ったらそもそも、空白の存在自体や、空白を光に変えられることもおかしい。


 基本的にはなんでもアリだ。試してみるしか確かめる方法はねえってことだな。


「いいだろう。話はわかった。要するに、泉から出てくるもう一人のオイラを愛せばいいってわけだ」


「けどねぇ、その『もう一人』はあんたを攻撃してくるからねぇ、それをしのぎながら、愛さなきゃダメだよ」


 なるほどな。相手は『(ダークマター)』だけあって、こっちを攻撃してくるのか。それを愛する、いや愛し、愛されないといけないのか。


 攻撃してくるやつを愛し、愛される。難しいが不可能じゃなさそうだぜ。


「それとねぇ、精神同調は禁止だよ。ちゃんと拳と言葉で語りあって、愛し合わないとねぇ」


「何だと!?」


 そいつはまずい!!見た目や仕草で相手の思考を読まないといけないのか。


 というか、相手の過去が一切わからない状態で恋愛しないといけない。それが普通なのかも知れねえが。


 い、いや相手はオイラ自身なんだ。何を考え、何をしてきたかはわかるはずだ。最も『ダークマター』でできたオイラだから、経験に対する考え方が違うのかも知れねえけどな。


「いいさ、やってやろうじゃねえか!泉を覗き込めばいいのか?」


 オイラはそう言って、アエンの横から泉を覗き込んだ。


 その瞬間、それまで光り輝いていた泉の水がどす黒く濁り始めた。


 そして、それは渦を巻いて、地上数百メートルまで登っていき、そのまま落下して地面に叩きつけられた後、黒い水しぶきが集まって人の形になった!


 そこに現れたのは黒を基調として、袖やスカートに白いフリルのついたドレスを着た少女だった。


 金髪の髪が肩ぐらいまで伸び、顔は子供っぽいが胸がでかい。


 オイラは呆気にとられた。こいつが、オイラのダークマターから生まれた、闇のオイラなのか?


「お……女?オイラの分身なのに、女だと!?」


「あん?アタシが女で悪いかよ?あれだ、陰と陽ってやつだよ。光が男なら闇は女ってわけだ」


 そう言われると何となくわかる気がする。つまりオイラとは全てが正反対ってことか。


「性別についてはわかったが、そのフリフリした服は何なんだ?」


「アタシはアンタと一緒で、あらゆるもののDNAを改変し、形を変えられるんだ。せっかくどんな服でも作れるなら可愛い方がいいじゃねえか」


 なるほど、これも今言った『正反対』ってやつだな。オイラが強くカッコいいものに憧れるのと同じくらい、こいつは可愛いものに憧れるってことだ。


 性格はオイラっぽい部分もあるように見えるけどな。


「なるほど、オイラは服のことはわからねえけど、確かにすごく可愛いな」


「かっ……あんまりはっきり言うんじゃねえよ!恥ずかしいだろうが!!」


 せっかく褒めたのに怒られてしまったな。


 というか、こんなことをしてる場合じゃねえんだ。オイラはこいつと恋愛して、超パワーアップしないといけないんだった。


 で、精神同調を使っちゃあダメなんだよな。すると、とりあえずは会話か?


 何から話したもんだろうか。服が特徴的だから誉めてみたが、後は……。


 オイラは『闇』の顔と胸を交互に見た。


 特徴的なのはあの辺だけど、胸のことを言うと怒られそうだよな。


「あん?何をジロジロ見てんだよ!ってか、そうだ。アタシはアンタを倒さねえといけねえんだ!!」


 そう言えば『アエン』がそんなこと言ってたな。『闇』がオイラを倒せば、オイラに成り代われると。


 そんなことになったら、オイラはパワーアップどころか、意識が消えて無くなっちまうかも知れねえ。


 しかし、こいつと戦うのか?めちゃくちゃ気さくで人懐っこくいし、できれば戦いたくないタイプなんだが……。


 いや、こいつは攻撃してくるけど、オイラがやるべきことはこいつと恋することなんだよな。それなら、オイラがこいつに好感を持ってること自体は悪くねえぞ。


 後はこいつの攻撃を防ぎつつ、口説くことだ!!


 だが、オイラが言葉を発する前に、『闇』の方が動いた!


「なら、こいつで決着をつけてやるぜ!」


 『闇』はそう叫ぶと、空間から巨大な装置を取り出した!!


 巨大なドクロから、無数の骨や管が伸びている。ドクロの額部分には、よく見慣れたマークがある!!


 あれは……太極図か!?じゃあ、これは八卦炉!?


「アタシとアンタが、この世で一番苦手な装置さ、こいつでアンタを溶かして固めて、仙丹にするんだ。そいつを食えばアタシはアンタを吸収できる!」


 そう言うと、『闇』は装置を起動する。


 装置の太極図の部分に、巨大なエネルギーが蓄積されていく。


 八卦炉は中に材料を入れることで溶かす機械のはずだ。まさか、この八卦炉は中に入れずにオイラを溶かせるのか?


「ダークネス・『煉丹』・フレアーーー!!」


 『闇』がそう叫ぶと、超高熱の光線が八卦炉からオイラを目掛けて発射された!!


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