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ツバサのハイパー・パワーアップトラップ~永遠の空白に失われた愛を取り戻せ!!~

【    年 永久の空白(エターナル・ブランク)


 オイラは完全に何もない、真っ白い空間にいた。こいつが、ツバサってやつが作り出したトラップなんか?


 そう問いかけても、誰も答えるやつはいねえ。オイラにここで何をどうしろって言うんだ。


 とりあえず、出口か?この空間から、元の『ツバサとハルナ姫の宮殿』に戻れりゃあ、トラップを突破したことになりそうだ。


 しかし……。


 何もない、前も後ろも上も下もわからねえ!そもそもオイラはどこに立ってるんだ?


 何故落っこちねえんだ?そもそも、オイラが下だと思ってるのは、本当に下なのか?


 そんな風に考えていたら、突然 オイラの脳に直接『言葉』が浮かんだ。


――――システムメッセージ――――.

【警告】

ブランクに『何か』が存在しています。


――――システムメッセージ――――.

【警告】

システムは直ちに、異物を排除してください。


 その瞬間、何かがオイラを襲ってきた。見えないし、聞こえないが何かが確かにいる。


 その何かがオイラの腕をかすった!!


「腕が、無くなった!?なんてぇ、技だ。こりゃまずいぞ」


 オイラの腕があった部分は、まるで最初からそうだったみたいに、何も無くなってる。


 出血がないのはありがたいが、あれが頭にぶつかったらと思うと、恐ろしい。


 オイラは腕があった場所を見ながら、ため息を吐いた。


「さて、どうしたもんかね、と」


 何もない空間で、いつどこから来るか分からない攻撃にさらされている。絶体絶命だねえ。


 だから、オイラは考える。


 ふむ、さっき『何か』に触れたオイラの腕は消えたが、『何か』に触れてない他の部分は消えてない。


 ってことは、この空間には『何か』があるところとねえところがあるんだな。それがわかれば!

 

 オイラは何本か毛を抜いて、息を吹きかけた。


【身外身】

 分身の術。体毛を少し引き抜いて噛み砕き、仙気と共に吹きつける事で無数の分身に変える。


 オイラの分身が周囲に散らばっていく、何体かは体ごと消え去ったが無事なやつもいる。


「なるほど、あの辺は『何か』がねえらしいな」


 これである程度の安全は確保できそうだが、いつまでもここにいるわけにはいかねえ。


 何せオイラの毛は有限だからな。無くなる前にこれからどうするか、決めねえと。


 で、そのためには、何をすりゃ『トラップを突破』したことになるかを突き止める必要がある。


 このトラップは『突破したらオイラがパワーアップする』ことを目的に作られた。必ず答えがあるはずだ。


 で、その答えはツバサって嬢ちゃんが、オイラが出れないように頭を捻ったもんのはず。


 『作成者の意図』が含まれてるってわけだな。


 そう考えたとき、しなきゃいけないことの可能性は二つ。


 『何か』が全くない場所に行くか、もしくは『何か』しかない場所にいくことだろうな。


 最初に『何か』が襲ってきた以上、あれがここのポイントなのは間違いない。


 で、まあどっちが答えかって考えたら、行きにくい方だよな。やっぱり。


 『何か』が全くない場所なら危険を避けてればたどり着けるだろうが、『何か』しかない場所となると、危険に飛び込まねえといけねえ。


 だから恐らく、『何か』しかない場所に答えがあるんだろうが……。


 だとすると、『何か』の場所がわかるだけじゃダメだな。こいつらを『破壊する』かせめて今の場所から『動かす』方法が必要だ。


 そのためには……!!


 まずオイラは龍宮の柱・如意棒そのものだ。だから、体を無限に小さくできる。


 『何か』の間にピコメートルだの1フェムトメートルの隙間があれば、抜けられる。


 これだけでも、途中の道筋はほぼ問題なく突破できるだろう。


 だが問題は、行き先である『何か』しかない場所だ。


 そこは1ゼプトメートルの隙間もないくらい、『何か』が敷き詰められているはずだ。


 突破を防ぐのが目的だからな。オイラならそうする。


 そこに入るには、やっぱ『何か』を動かせねえと……。


 なるほど。つまりそれ自体が最初の試練なんだな。


 あの『何か』とりあえず『空白』と呼ぶか。あの空白をどうにかできるようになることで、まず一段階『パワーアップ』しろってことだ。


 それができて初めて、本当にパワーアップするための試練がある場所に行くことができる。


 制御不能なものがあるところに飛ばされたんだから、制御することでパワーアップしろってことなんだろう。


 で、やっぱり問題はどうやって使役や吸収をするかだ。触るとこっちが消えちまうんじゃ、どうしようもねえ。


 多分、ここでも重要なのは愛とかいうやつだな。オイラ達が取経の旅で学んだやつだ。


 そう考えながら、オイラは座り込み座禅を組んだ。


 分身で位置を把握して、できるだけ『空白』がない場所に行きつつ、精神集中によって空白の意思を読み取る。


 愛せと言うならあるはずだ。やつらにも意思が!


 そうして、オイラは空白の意思に同調しようとした。


 その時!!


――――システムメッセージ――――.

【警告】

――――システムメッセージ――――.

【警告】

――――システムメッセージ――――.

【警告】

――――システムメッセージ――――.

【警告】

――――システムメッセージ――――.

【警告】

――――システムメッセージ――――.

【警告】

――――システムメッセージ――――.

【警告】


「な、何だ!?脳に処理しきれない膨大な情報がなだれ込んできた!!」


 処理しきれない!!接続を切る!!


 オイラは頭に激痛を受けて、空白との同調を止めた。何だったんだ今のは?


 あの膨大な情報が空白の意思なのか?


 だが今の情報は……。


【空白から得られた情報】


 世界は次元による階層構造でできている。数字の大きい次元が上の方にあり、数字の小さい次元が下の方にある。


 最上位は∞次元、最下位は-∞次元。滅びた次元を‐∞次元が吸収し、∞次元から新たな次元が生まれてくる。


 しかし、∞次元や-∞次元もいつかは消滅する。そのとき、消滅した次元の魂は-∞次元よりさらに下の階層にある『The・END』へと移動する。


 『The・END』で浄化された-∞次元の魂は、∞より上位の『The・START』へ移動し、新たな∞次元として蘇る。


 -∞次元が年を取ると、内部に『空白(ブランク)』が生まれる。


 『空白』は段々と大きくなり、いずれは-∞次元の全体が空白となる。そうして、魂だけになったとき、『空白ロード』ができ、-∞次元の魂は『空白ロード』を通って、『The・END』に送られる。


 魂の抜けた-∞次元は『永遠の空白』となって、世界に取り残される。世界に『永遠の空白』が増える度に、世界は狭まっていきいつかは世界そのものも消滅する。


【空白から得られた情報 終わり】


 なるほど、興味深い話だが大半はどうでもいい。世界の終わりまで生きてるかどうかもわからねえしな。俺にとって重要なのは今だ!


 とはいえ、空白についていくつか情報が得られたのはでかい。空白が‐∞次元を食い散らかすことと、永遠の空白は元々-∞次元だったってところだな。


 後は空白ロードか。-∞次元の魂が『The・END』とやらに送られた後、空白ロードは残るのか?ってことだな。


 いや、そうか『出題者の意図』このトラップの目的は俺に『The・END』や『The・START』の存在をオイラに知らせることだ。


 ってことは、そこに行けと言ってるはず。


 つまり、まずは何とか『空白』と意思疎通をして使役する。


 その上で、この永遠の空白のどこかにある、『空白ロード』を見つけて『The・END』に行く。それができれば『The・END』で空白以上のとんでもない力が見つかるってことなんだろう。


 それがこのトラップのゴール、オイラの『超パワーアップ』ってわけだ。


 では、もう一度今の精神同調をやって、『空白』の意思を理解しよう。『空白』を愛し、その意思を完全に理解するんだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【空白の意思】


1.失われた魂を取り戻したい。

2.次元そのものから失われた『愛』という感情を取り戻したい。

3.次元の崩壊を止めたい。


 なるほどな。『永遠の空白』は魂が『The・END』に行ってしまったため、魂がない。あらゆる命を作り出せない状態にあるわけだ。それをなんとかしたい。


 そして『愛』を取り戻したいか。こいつがオイラがまずやるべきことなんだろうな。


 じゃあ、やるべきことは思ったより単純だ。


 俺の中にある『愛』を『空白』に見せる。それによって、空白が愛を取り戻せば、俺たちの心は完全に通じ合う。


 そうすれば、空白ロードに案内してもらうだけじゃなく、空白を使役して戦うこともできるだろう。吸収だってできるかも知れねえ。


 で、どうやって愛を取り戻させるかだが……。


 こいつはオイラの恋愛感情をぶちこむしかないだろう。つまり精神同調によって、オイラの中にある乙姫との思い出、そのとき感じたオイラの感情を空白に見せる!


 そうすれば、空白はかつて-∞次元だったときに持っていた愛や憎悪を思い出すことができるはずだ。


 そう考え、オイラは再び座禅を始める。


 オイラの愛を!思い出し、伝える!!


 あの日の思い出を……!!


 龍宮の柱として生まれ、折れて処分されそうだったところを救われたこと……。


【命あるものを無暗に殺してはならぬ。柱には、余の家臣として仕えさせよ】


 乙姫の言葉とあのときの感情がオイラの中に蘇る。処分されそうだったところを助けてもらってどれだけ嬉しかったか。そして、どれだけ乙姫に憧れたのかを!


 そして、超魔神マリアスに乙姫が攫われ、救ったたときは……!!


【でしたら!わたくしが、貴方に強さを見せ!貴方を惚れさせることができれば、結婚していただけるでしょうか?】


 それまで俺は俺を救ってくれた姫さんを、助け護ることだけ考えていた。だが姫さんのこの言葉で、少しだけ印象が変わったんだ。俺が姫さんのために戦うだけでなく、姫さんが俺のために強くなる……そんな考え方もあるんだなと。最も、この時点ではそんなの無理だと思っていたけどな。


 だが、あの事件!TTRAWの全てが0と1に変換されちまったとき、俺の姫さんに対する感情がまるきり変わっちまった!


【龍の巫女にだけ伝わる秘術ですの。貴方に助けられた あの日からずっと修行していたのですが、どうにか間に合いましたわ】


 姫さんは『龍神拳』を身に着け、俺が0と1に飲まれそうだったところを救ってくれた。そして……。


【私は貴方の無限の強さ、そして何よりその奥に隠れた優しさに惹かれたのです。ですから!貴方を生涯の伴侶とし貴方と共に最強を目指したいのです】


 姫さんは、オイラの強さを認めオイラに匹敵する強さを手に入れた。そして、共に強くなろうと誓った!オイラたちの愛が通じ合ったんだ!!


 こうしてオイラ達は愛を極め、夫婦になった。それなのに……。


【乙姫ですか。さっきも言いましたが、彼女のデータは『龍神の巫女』から『村娘』に書き換えました。当然、生まれたときから村娘として育って記憶しか持っていません。貴方のことなど忘れてますよ】


 ラプラスによって乙姫は村娘に変えられ、オイラに関する記憶も失った。そしてオイラもラプラスの手で乙姫に関する記憶をさっきまで失っていた……。


 だが、オイラは記憶を取り戻したぞ!!恐らく、このトラップをクリアすればTTRAWに戻る力が得られるはずだ!!


「見たか!感じたか!!空白達!!!これがオイラの愛だぜ!!」


 空白達の中で何かが変わっていく気がする。こいつは……そうか!『恋愛傾向』ってやつだな。


 噂には聞いたことがある。人は恋愛傾向によって、出せるパワーの限界があり、戦闘スタイルも変わるという話だ。


 空白の意思にアクセスできたってことは、空白自身に意識があるはずなんだ。だが、『永遠の空白』そのものから愛が失われたせいで、恋愛感情が無くなった。


 つまり、空白の恋愛傾向は、それこそ『空白』になったのかも知れねえ。それが、俺の恋愛経験を仮想体験することで、『空白』では無くなったってわけだ。


 そう考えてると、周囲の透明だった『空白』達が少しずつ実体化してくる。そして、ホタルみたいに、淡く光ってオイラの回りを漂い始めた。


 これが、こいつらの本来の姿ってことか?


 オイラは、トラップを突破する方法を知るべく、『空白』たちに呼びかけた。


「空白……いや、空白だった皆!オイラはこの永遠の空白から通常世界に戻りてえ!皆でオイラを案内してくれねえか?」


 オイラがそういうと、空白だった『光』達が集合し一筋の道を作った。この先に何かがあるってことだな。


 オイラは光の道に従って進んで行く。そして、そして行き着いたところが……。


 なるほど、ここが『空白しかない部屋』か。だが、この部屋の『空白』達も俺の恋愛経験を受けて『光』に変わっている。


 周囲には、『空白』だった光が溢れている。だが、部屋の中央に巨大で濃密な『空白の塊』がある。


――――システムメッセージ――――.

【警告】

異物が『真空白域(まっしろゾーン)』に到達しました。排除のため、『守護者・そら』を起動します。


 オイラの頭の中に、そんな言葉が流れると、部屋の中央にあった『空白の塊』が人の形を取り始めた……!!


 どうやら、こいつがここのボスらしいな。


 オイラはそう考えて、戦闘準備を始めた!!


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