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悟空を愛するしかない!~さて、どうやって?~

【???年 ツバサとハルナ姫の宮殿】


[信孝視点]


 まずい!スライムトラップが体を覆う!


 他人の精神に干渉できなくなるって、どこまでだ?単にテレパシーやサイコダイブができなくなるだけか?


 それとも、話すことも見ることもできなくなるんだろうか。そうなったらお終いだ。


 パーフェクト・ハーモニーパワーはパーフェクト・ハーモニーパワーでしか返せない。だったら、俺が精神干渉を封じられた時点で悟空やツバサは殺されるしか無くなってしまう。


 だがスライムは俺の体のほとんどを覆ってしまった。


 口を塞がれれば喋れない。目を塞がれれば見えなくなる!俺は宇宙で活動できるように作られてるから呼吸はしなくても大丈夫だけど……。


 最後に、せめて一言!ツバサさえ覚醒すればこの状況を乗り切れるんだ。何かアドバイスをしなけりゃいけない!


「ツ、ツバサ!!悟空は……悪いやつじゃない!!そうだ、俺と心を通わせれば恋に落ちるやつだ!」


「ハルナ姫とのことも、何か……り、理由が……」


 スライムが完全に俺を覆い、俺は周りが見えず聞こえない状態になった。こちらからも言葉を発することができない。


 しかし、妙だな。クイーンは俺が呼吸できなくても死なないことを知らなかったのか?


 第一、今俺は完全に無防備なはずだ。


 何故殺さないんだ?


 パーフェクト・ハーモニーパワーはパーフェクト・ハーモニーパワーでしか返せない。クイーンが俺を殺せないってことはないだろう。


 じゃあ、何故生かしておくんだ?


 それにもう一つ、疑惑がある。


 さっき、俺はスライムに飲まれる瞬間、死の危険を感じた。そのおかげで脳の高度計算機能が発動したんだ。


 俺はあの瞬間、走馬灯を見る代わりに周囲の状況をコマ送りのようなスピードで見ることができた。


 そして俺は見た!!ツバサがクイーンの攻撃を跳ね返している所を!!


 パーフェクト・ハーモニーパワーはパーフェクト・ハーモニーパワーでしか返せないはずなのに、アガペーに目覚めてないツバサがどうして攻撃を跳ね返せたんだ?


 ツバサには俺のまだ知らない、いやツバサ自身も気づいてない何かがある!


 何か……何かが……ツバサを守ってる?みたいな。


 それがあれば、まだ逆転の余地があるかも知れない。


 それにしても、今回も俺はツバサに全てを任せるしかないのか。不甲斐ないことだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【???年 ツバサとハルナ姫の宮殿】


[ツバサ視点]


 ついに信孝が完全に『スライムトラップ』に覆われてしまった。これじゃあ、意思疎通もできない。


 こうなったら、僕がアガペーに目覚めてパーフェクト・ハーモニーパワーを発動させるしかないんだろうけど、悟空を愛するなんてできない!!


「なんて力なのですか。貴方はアガペーにすら目覚めていないのに、わたくしの攻撃を防ぐなんて!!」


 何だかクイーンがびっくりしてるみたいだ。というか、確かにおかしい。どうしてさっきから僕はクイーンの攻撃を跳ね返せてるんだ?


 アガペーに目覚めている信孝でも、『封印』の術をどうにもできなかったのに……。


 そう思っていると、突然悟空が叫んだ。


「おおっ!そうか!!あんたは未来から来たツバサだな。ならば、俺とハルナの行動は無駄じゃなかったってわけだ!!」


「君とハルナの行動?どういうこと?」


 僕は自然に悟空にそう訊ねていた。言ってから、これは悟空がハルナを犯して殺したことの言い訳をさせる言葉だと気づく。


 例えどんな理由があったとしても、許すつもりなんてないのに。そんな話を聞いて、僕はどうしようと言うんだろう。


「ああ、そうか。今のあんたになら伝えてもいいだろう。実は『プログラマー』達が所属する会社の……」


「させるかぁっ!!」


 クイーンの『競い合うアルティメット・トラップ』から僕の足元に、『地獄穴』が生まれる。これに落ちると、信孝が修行した『焦熱地獄』まで落とされるらしい。


 でも、僕の中で何かが光って『地獄穴』が消滅した!!


 何だ、これは?今までどんなピンチだってこんな現象は起きなかった。一体、僕の体に何が起こってるの?


「くっ!本当に何だっていうのですか!!」


「悟空!!話して!僕のこの不思議な力、君とハルナのことに関係あるんでしょ!!」


 悟空の言葉、『悪いやつじゃない』と言った信孝の言葉、クイーンの焦り様。どれから考えても、そうとしか考えられない。


 そして、何より。


 ハルナは強い。僕より強い。悟空なんかにムザムザ犯されない。当時ですら、彼女の発明品なら逃げるくらいはできたはず。


 僕は怒りに燃えるあまり、そこに気づいていなかった。


 もちろん『合意の上』だなんて考えたくも無かったしね。


 でも、何か秘密があるなら教えて欲しい。だって、ハルナの気持ちが知りたいもの。


 それが僕の望むもので無くたって、聞きたいものは聞きたい。


「よし、わかった。話そう、オイラがハルナ姫を犯して殺すしかなかった訳を!そして『何故、ハルナ姫がそれを望んだのか』も!!」


【ハルナ姫との出会い】


 あの日、ハルナ姫は突然 俺の前に現れた。


「あんたが悟空なのやね。実はなんとしても、あんたに協力してもらわなきゃならんのや」


「協力?オイラに何をしろって言うんだ?」


「ツバサを守るのや!そのためには、あんたにハルナを犯して殺してもらわんといかんのや」


 俺は最初の内は、その変な女の言葉にまったく興味が無く、ほとんど耳も貸さなかった。


 しかし、少しずつ話を聞いていく内にハルナ姫がツバサを思う気持ちの、重さ・深さ・尊さ、そして強さをヒタヒタと感じる度に、オイラはハルナ姫の話と、ハルナ姫自身にも惹かれていった!


 そして、その時のハルナ姫の話が……。


【ハルナ姫が悟空に会いに来た理由】


 ハルナ姫は、『恋愛シミュレーションすごろく』で愛美と行った『研究所』のことが気になり、ずっと調べていた。


 そうするうちに『研究所』が太上老君の作ったものであること、TTRAWの技術が使われていることに行きあたった。


 だからハルナ姫は、TTRAWのエネルギーを感知する機械を開発し、太上老君の動きを探ろうとした。


 しかし、その機械に探知されたのは太上老君だけではなく、ラプラスそして彼らを雇う『なよ竹カンパニー』の社長『輝夜』の存在も知ることになった。


 ハルナ姫は輝夜の動向を探るため、超小型カメラ・集音マイク付きのナノ・ドローンを開発した。


 彼らの話を聞く限り、ツバサを始めとする『五人の求婚者の生まれ変わり』と『神合癒着(しんごうゆちゃく)』をすれば、輝夜は『極神霊(きょくしんれい)』と呼ばれる究極の存在になれる……らしい。


 ツバサが狙われていることを知ったハルナ姫は、何とか対策を練ろうとした。


 調べていく内に、ハルナ姫は自分自身からもTTRAWのエネルギーが発せられていることと、『なよ竹』の人間以外にTTRAWエネルギーを発している誰かがいることに気づいた。


 それが悟空だった。


 盗撮と盗聴を続けるうち、神合癒着にはその『依り代』となるアイテム、かつて『輝夜』が求婚者に要求した『難題』が必要だと言うことがわかった。


 そもそも『輝夜』は極神霊になるために難題を探していたのだが、全次元のどこにもないことが明らかになったため、難題が存在する世界TTRAWをプログラムしたのだという。


 ほとんどの『難題』の場所は不明だったが、『龍の頸の玉』を産み出すには、龍宮の柱を龍神門に差し込めばいいということがわかった。


 そして、折れた『龍宮の柱』が悟空であること、破壊された『龍神門』がハルナ姫であることを突き止めた。


 龍宮の柱を龍神門に差し込めば、龍の頸の玉が産まれる。そして、突き刺すという言葉の意味がセックスであることも、盗撮・盗聴と全次元中に放ったナノ・ドローンの情報により明らかになった。


 『龍の頸の玉』は悟空とハルナ姫の受精卵に、ハルナ姫の魂を宿すことで誕生する……!!


 龍の頸の玉は、大伴御行大納言おおとものみゆきだいなごんの生まれ変わりであるツバサを絶対防御する。


 ツバサ自身が望まない限り、玉を輝夜に差し出すことはないし、輝夜の超絶パワーからも守ってくれる。


 パーフェクト・ハーモニーパワーもTTRAWエネルギーもツバサを殺すことはできないのだ。


【ハルナ姫が悟空に会いに来た理由 終わり】


「そうして、ハルナ姫はあんたを守るために、犯され魂を玉に宿すことを選んだわけだ」


 僕は非常に重要な情報を一気に聞かされて戸惑っていた。というか、あまりにも荒唐無稽過ぎないか?


 ホントに信じていいんだろうか……。


 でも、その瞬間 僕の中で何かの鼓動を感じた。ハルナが……僕の中にあるという『龍の頸の玉』が訴えかけているのかな?


 でも、だとしたらはっきりさせておかないといけないことがある。僕が悟空を愛さなきゃいけないなら、特にだ!!


「でも、今の話『僕を守る』っていうのは、ハルナの目的だよね?君は、どうしてハルナに協力したの?」


 もし、それがただ欲望を満たしたかっただけっていうんなら、悟空を愛するわけにはいかない。


 でも信孝はこいつが悪いやつじゃないって言ってた。そして僕も、信孝と愛し合える人に、本当に悪いやつがいるとも思えない。


 だから、こいつがハルナに協力した目的、それ次第では少しだけ心を開けると思うんだ。


「そいつは、これがオイラの心を動かしたからだ!!」


 そう言って悟空は、パソコンくらいの大きさの機械を出してきた。これは、ハルナの発明品かな?


「こいつが注魂機だ。龍の頸の玉を作るには、ハルナ姫の魂を入れなくちゃいけねえ。あいつは最初から、これを作って持ってきていたんだ」


 つまり、ハルナは僕を守るアイテムを作るため、自分の命を犠牲にする覚悟を最初からした上で、悟空に会いに行ったってこと?


「こいつを見たとき、オイラは自分の心で何かが変わったことを感じた。それまでは、自分が強くなることだけを考えていたが……」


「他人の思いを汲み、その人の思いを叶えることに興味を持ち始めた……!!」


 そうか、悟空は太上老君に『強くなることだけ考える』プログラムを入れられていたんだっけ。


 でも、他人のために命をかけるハルナを見て、そのプログラムに『異常』が起こった。


 つまり、『恋愛傾向』が変わった……!!


 自分を強くしてくれる人だけ愛する恋愛傾向に、相手の覚悟を理解し、助けたい思いが加わって!


 自分が強くなり、その力で覚悟を持った人を助け、共にその覚悟を実現することを目指すことで、どんどん好きになっていく。


 そういう新しい恋愛傾向が悟空の中に生まれたんだ!


 そんな、昔の少年漫画の主人公みたいな恋愛傾向、名前をつけるなら、そう『勇者』!!


 うん、悪くないよ。悪くないけど、その話だけで僕が恋に落ちるかって言ったら、ちょっと微妙だ。


 悟空が悪いやつじゃなさそうなのはわかったけど……。


 今の話じゃ、『ハルナが僕を守ってくれて嬉しい』の方が気持ちの比重が高いもんね。


「だったら!!」


 きっかけ!そうだ、きっかけだ。悟空は『アガペー』に目覚めたとき、藤田にプロポーズを促されてそれに答えた。


 だったら僕は……。


「悟空!!僕が生き残るためには、君を愛し『アガペー』に目覚めないといけない!!だから……」


「僕をときめかせる告白をして!!それが、ハルナの想いを叶えることにもなるんだ!!」


 僕の言葉に、悟空は驚愕する。


「お、お前は何を言ってるんだ!!第一、俺は別にあんたのことを好きじゃないんだぞ!」


「う、そうだよね。いきなりいっぱい言っちゃってゴメン。でも、必要なことなんだ。じゃないと、あ、そうだ!乙姫がラプラスに殺されちゃうんだ!!」


 悟空は龍宮の乙姫を助けるために戦っている。それは、過去でも同じはずだ。


 僕の言葉を聞いた悟空に衝撃が走る。


 顔を歪め、困惑し頭を抱えてうめき始めた。


「お……と……ひ……め……!!そうか!!オイラは、あのラプラスって

のに記憶を消されていたんだな!!」


「おい!アンタ!!アンタも引けねえ理由があるんだろ。だったらオイラとあんたが愛し合えば、乙姫が救われるってんなら、やるしかねえ!考えろ!!愛し合う方法を!!オイラも考えるから!!」


 悟空がすごい剣幕で訴えかけてくる。そりゃあ僕だって何とかしなきゃとは思うけど、どうすれば……。


 そう考えていると、僕の中にある『何か』が輝き始めた。そして、ハルナの遺体のお腹の辺りも光る!


「これは、そうか!未来と過去の『龍の頸の玉』が共鳴してるんだ!」


 悟空がそう叫ぶと同時に、僕の中の『龍の頸の玉』から、懐かしい声が発せられた!


『一々、まどろっこしいのや!!ハルナが早く復活するためにも、とっととくっ付いてもらうのや!!』


「は、ハルナ!?僕の中からハルナの声がする!!一体どうして!!」


 ハルナ恋しさに気が変になったわけじゃないみたいだ。確かに、僕の中にある『龍の頸の玉』からハルナの声がしてる。


『いいか!ツバサに悟空!!よく聞くのや。こうして喋れるのは少しだけやから、一回しか言わんのや!』


「う、うん!」


「わかった!話してくれ」


「二人が今すぐくっつく方法は……ツバサが『ハイパー・パワーアップトラップ』を作ることなのや!!」


「「ハイパー・パワーアップトラップ??」」


 聞きなれない言葉に、僕と悟空は聞いたままの言葉をオウム返しにした。


『そうなのや。悟空の恋愛傾向は『自分を強くする』人と『愛する人のために命をかけれる』人を好きになるということなのや』


『やからツバサが命がけで『突破すれば超パワーアップするトラップ』を作り、それを悟空が突破するのや!』


『そうすれば、ツバサの『命がけで作ったトラップを突破した人に惚れる』という恋愛傾向も満たせるのや』


 私はハルナの言葉に集中する。僕が悟空をパワーアップさせるトラップを作る……。そうすればお互いの恋愛傾向を満たせる……!


「で、でも命がけなんて気持ちの上ではできても、本当に命をかけることなんて……」


 きっと、ハルナがやったみたいに、現実に命をかける何かがないと悟空は僕がトラップ作りに『命をかけた』とは感じないだろう。


『そこで、ハルナが作った『注魂機』を使うのや。ツバサが作ったダンジョンに、ツバサの魂を込めることでダンジョンをランクアップさせるのや』


『そうすれば、ダンジョンそのものも難しくなり、それによってクリアしたときのパワーアップも大きくなるのや』


 そう言われて、僕は注魂機を見つめる。この機械で、ハルナの発明品で、僕の魂をトラップに込める。


 そしてそれを悟空に突破してもらう!それなら確かに!!


「あ、でも魂を注入したダンジョンを突破されたりしたら、死ぬんじゃないの?」


『普通は死ぬのや。けど、その瞬間にアガペーに目覚め、パーフェクト・ハーモニーパワーを手に入れたら別なのや。その時は信孝の封印も解けるのや』


 つまり、悟空がトラップを突破できなかったり、突破したけどパワーアップが不十分だったりしたら僕は死ぬ。


 でも、信孝を守るため、そして僕のために死んだハルナをどうにかして生き返らせるためにも、ここで引くわけにいかない。


 恐らく注魂機で、龍の頸の玉からハルナの魂を抜き出して、肉体に戻せば生き返らせることはできるんだ。


 でも、ハルナはそれを望まない。


 だって、結局その『輝夜』ってのを何とかしないと、僕が殺されちゃうんだもんね。


 だから、悟空を愛しアガペーに目覚めて、パーフェクト・ハーモニーパワーを手に入れるしかない。


 そうすれば太上老君からの洗脳も解けて、TTRAWに向かう力が手に入るはず。


 つまり直接、輝夜を見つけて倒す力が手に入るんだ。


 そうして僕の安全が確保できれば、ハルナは喜んで肉体に戻るよね。


「よし、わかった!やろう悟空!!二人でハルナの想いを叶えるんだ!そう、僕を守り、生かすんだ!!」


「ああ、いいぜ。あんたが信孝とやらとハルナのために、命をかけようとしてること、確かに認めた。ときめくぜ、後はトラップとやらを突破して強くなるだけだ」


 じゃあ、作ろうとするトラップをイメージしながら、注魂機のスイッチを押せばいいんだ。それで、後は全て悟空に任せる。


 ハルナのため、信孝のため、そして僕自身のためにも!


 悟空を愛す!!そのために、僕はトラップを……!!


「トラップを作るぞおおおお!!!」


 僕は注魂機のボタンを押した!!僕の意識が遠のき、トラップが形成されていく……。


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