信孝の恋愛傾向を突き止めろ!!~二つの恋の違い~
【 1536年 信孝22歳 ツバサ 4048歳 神界 地球 北極 邪神の神殿】
信孝は覚悟を決め、それまでの正利との思い出の中を元にプロポーズの言葉を選び出した。
そしていよいよプロポーズする!
「正利 俺たちは戦いの中で絆を深めてきた
最初、お前と戦ったとき、俺は『命を救われたこと』でお前に惹かれた。
ガルーダとの戦いでは、お前に頭を撫でられて『癒され覚醒したこと』で、本気の恋に落ちた。
そして、ゼウスとの戦いでは、お互いの過去と抱えた思いをぶつけ合うことで、俺たちの心は一つになった!」
信孝は、まるでお芝居みたいな大げさな動作で、正利に訴えかける。
「だが、足りない!俺はさらに深くお前と繋がりたい!『血の一滴』、『汗の一雫』までも、お前のためになりたい!」
「俺は……遺伝子で!魂で!未来でも過去でも、正利のためになりたい!」
そこで僕は強烈な違和感を覚えた。あれ?こんな台詞だっけ?大体あってる気がするけど、何か……。
「だから!!」
「正利、結婚してくれ。俺と何もかも一つになろう」
ここは同じだ。ってことは、つまりさっきの台詞に問題があるんだ。えーと確かホントの台詞は……
『最初は俺は見た目、正利は強さに惹かれただけだった』
『ガルーダとの戦いでは、瀕死となりかばい合うことで絆を深めた』
『ゼウスとの戦いでは、お互いの過去と抱えた思いをぶつけ合うことで、俺たちの心は一つになった!』
『だが、足りない!俺はさらに深くお前と繋がりたい!『血の一滴』、『汗の一雫』までも一つになりたい!』
『俺は……遺伝子で!魂で!未来でも過去でも、正利と繋がりたい!』
だっけ?
全然違うじゃん!いや、大筋は近いけど肝心なとこが違う!!
多分、嘘の方のキーワードは『救われた』『癒された』『お前のためになりたい』
本当の方のキーワードは『強さに惹かれた』『かばい合った』『一つになりたい』『繋がりたい』
嘘の方だけ見ると、正利に『癒されて』それに対して『献身』で返そうとしているように見えるけど、本当の方を見ると『強さ』を基準に共に惹かれ合ってる気がする。
そして『献身』じゃなく、共に戦う。つまり『共闘』か。
お互い『強さ』に惹かれ合って、その強さを活かして『共闘』することが二人の恋愛スタイルってことね。
戦いでパワーアップするにしても、信孝が正利を頼るんじゃなくて、お互いの力を高め合うことで覚醒する。
「よし、メメ ミミ!わかったよ!!信孝の恋愛スタイル、そしてそこから導き出される『夢と生き様』は……」
「『強い人』を愛して、その人と『一緒に戦う』。そうして、どこまでも愛を深めていくことだ!!」
「お姉さんの解答は」
「『強い人』を愛し『共闘』で愛を深める」
「その答えは」
「「はずれ」」
「ええーーーっ!?」
ハズレ?ハズレってことは……。僕も信孝も目や耳が見えない状態で、『ラブ・キング・キャッスル』の入口に戻されるってこと?
「でも、この解答は」
「及第点」
「「次に進む資格はある」」
「えっ、ホント?」
でも、ハズレだけど次に進む資格があるって、どういうことなんだろう。
正利との恋だけだと『強さ』と『共闘』だけど、藤田との恋まで見れば、別の見方が出てくるってことかな?
「だから次」
「藤田との恋の」
「「嘘を見てもらう」」
「うん!なんだかんだで、信孝の恋を見るのも嘘を推理するのも楽しくなってきたからね!すぐ次に行こう!」
藤田との恋も、概要は聞いたことがある気がするけど、やっぱり実際に見るのとじゃ全然違うはずだもん。
もちろん、目と耳がかかってるから、今度こそ正解を出さなきゃってプレッシャーはあるけどね。
「楽しんでもらえて嬉しい」
「では出発」
「目 目 目」
「耳 耳 耳」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【 2006年 望月たかし 17歳 藤田浩正 32歳 愛知県 名古屋市 神政復古教・大教会の地下室 】
景色が変わって、今度はどこかの地下室に出た。正利のときと違って、藤田と信孝がどうやって仲良くなったのか、僕はほとんど知らない。
だから、ここがどこなのかもわかんないけど、見たところどこかの地下みたいだ。
通路の奥に続く道の前に、猫の着ぐるみを着た二人の少女が立っていて、信孝と藤田が通れないように通せんぼをしてる。
四人はいくつか言葉を交わしたあと、黒い着ぐるみの『クロム』という少女が『黒の業炎』と叫んで手から炎を出した。
信孝はそれを超スピードでかわしたけど、今度は白い着ぐるみの『シロム』という子が『永久凍土』と叫んで藤田の方に凍気の渦を飛ばした!!
藤田は普通のおじさんだ。凍気を防ぐ方法なんてないと思うけど、どうなるんだろう!
そう思っていると、信孝がさっきまでとは比べ物にならないスピードで、藤田に突進した。そして藤田を抱きかかえて凍気を回避した。
そうやって戦いが続いていくと、二人が虚空に向かって呼びかける。
「配信を見てるみんな……力を貸して……」
「皆がチャンネル登録すれば……、新たな力が芽生える……!」
その言葉と共に二人の着ぐるみが光り始める。チャンネル登録?何のことだろう。
ともかく二人が『100万人登録……ありがとう!』というのと同時に、二人から業火と凍気が出てきてまじりあった。
『『極氷炎地獄』』
二人からとんでもない熱と冷気が感じられる。あんなのくらったら、一兆度と絶対零度を1万回行き来するんじゃないかな?
いくら信孝でもこれはまずいんじゃ……?
僕がそう思った瞬間、メメとミミが声をかけてきた。
「じゃあ」
「ここで『嘘』が入るよ」
「「どんな嘘か見極めて」」
「う、うん。ここでか。うん!わかったよ。信孝と藤田の恋がどんなものか、必ず真実を突き止める!」
「目 目 目」
「耳 耳 耳」
次の瞬間!信孝が『あ、あああーーーっ!!』と叫ぶ!
そして、急に藤田をきつく抱きしめて、『お前の力が必要なんだ。頼まれてくれないか?』と言って、頭を撫でた。
当然、藤田はブチ切れる。
「こんなときに、何をやっているんだ!見ろ!!獄炎と凍気がそこまで迫っているんだぞ!!」
信孝は藤田の背中をポンポン叩き落ち着かせながら、話を続ける。
「だから!今、配信を見てるPCを全てハッキングして欲しいんだ!」
「そうか!その手があるか!!ふふ、さすがに頭の回るやつだ。だが、いいのか?作業が遅れれば、お互い命はないぞ」
「大丈夫だ。俺はお前を信じてる!不安があるのはわかるが大丈夫だ。ここに入るときもハッキング、頑張ってくれたじゃないか」
信孝は笑顔で、藤田の頭をワシャワシャと撫でる。
「やつらのスキルが解けたときだ。一瞬の隙も逃しちゃいけない。俺はこれから突っ込むぞ」
そう言って、信孝は少女たちの方に駆け出す!藤田は心配そうな顔をしながら、作業を続ける。
「よし!YourTube本社のデータをハッキングして、チャンネル登録を全て削除したぞ!!この方が早かったからな!!」
YourTube本社をハッキングしたの!?僕、藤田のすごさを甘く見てたかも知れない。
藤田の言葉に応じて、信孝が少女たちを取り押さえた。
二人は少女たちを拘束し、通路の奥に向かって行く……。
このシーンはここまでみたいだね。さて、ここから導き出される二人の『恋愛傾向』か。
信孝は頭を撫でたり、不安を宥めたり随分と藤田を甘やかしてたよね。藤田も自分がおじさんだから自重してたけど、まんざらでもなかったような……?
そしたら、信孝の恋愛傾向は『とことん甘やかす』……溺愛?藤田の方は『とことん甘える』……甘えんぼ……『依存』かなあ。
でも、変だ。正利のときと違い過ぎるよ。
だって、ミミとメメの話を聞く限り『答えは一つ』だ。信孝の恋愛傾向は『一つ』に定義できるもののはず。
相手によって変わっているのはおかしい。つまりミミとメメの『嘘』のせいで、ホントの恋愛傾向がごまかされてるんだ。
でもだったら何なのかって言われるとわからない。少なくとも『強さ』『共闘』『献身』ではないんだろうけどね。
僕が悩んでいると、ミミとメメが急かしてきた。
「迷っていてもわからない」
「だったら次のシーンに行く」
「あ、うん。そうだね。そうしよう。全部見てからじゃないと、判断材料が少なすぎるもの」
僕がそう言うと、ミミとメメは場面が場面を変えた。
「目 目 目」
「耳 耳 耳」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【 2006年 望月たかし 17歳 藤田浩正 32歳 ヨンリオショップ】
場面が変わると、そこはファンシーなぬいぐるみや小物などのグッズが置かれているお店だった。
これは確かヨンリオのキャラクターだよね。確か、今までは宗教団体の地下室で戦ってたと思うんだけど、どうしてこんなところに来たんだろう。
デートってことかな?
藤田は『目つきの悪いペンギン』のぬいぐるみを手にして、信孝と何かを話している。
それを見ていると、突然店の外から少女の声がした。
『どうやら、中々上手くやっているようではないか!ならば、そなた達にこれをプレゼントしよう』
その言葉と同時に、信孝と藤田の前に巨大なUFOキャッチャーが現れた!!
そうか、そういえばパミスムや神術の気配を感じる。この『ヨンリオ・ショップ』は、あの少女が能力で作ったものなんだ。
そして、二人を仲良くさせるためにUFOキャッチャーを出した……。ん?なんでUFOキャッチャーなんだろう?
『そなた達 二人で上手く協力し、その『クロマル』をとるのじゃ!!その過程でお主たちの中で何かが変わるであろう!ぐふふ』
怪しい笑いと共に、少女の声は聞こえなくなった。
僕は信孝と藤田の会話に集中する。
二人の話によると、UFOキャッチャーにはさっきのペンギンの1/1スケールのぬいぐるみが入ってるみたい。
そして、そのペンギン・『クロマル』は、藤田の人生を変えた非常に大切な存在らしい。
つまり藤田が大好きなキャラクターのぬいぐるみをとってあげることで仲良しになれってことなのかな。
「じゃあ、俺が……」
そう言いかけた信孝を、藤田が遮った!
「私にやらせてくれ!!」
すごい剣幕の藤田に、信孝は驚いている。
藤田の話によると、ぬいぐるみの『クロマル』が藤田に取って欲しそうにしてるらしく、何としても自分の手でとりたいらしい。
それから藤田は二時間ほど挑戦したけど、全く上手くいかなかった。見てる信孝も疲れてきたみたいだけど、僕だって疲れてきた。
疲れてウトウトしてきたところで、メメとミミから声がかかった。
「お姉さん」
「起きて」
「ここで『嘘』が入るから」
「「どんな嘘か見極めて」」
「あ、あうん。ごめんね。ちょっとウトウトしてた。うん!嘘が入るんだね。頑張って見極めるよ!」
「目 目 目」
「耳 耳 耳」
信孝は藤田の肩に手を置き優しく言った。
「なあ、藤田。確かにお前がクロマルをとってあげたいという気持ちはわかる。けど、ここはお前ひとりでやるより、俺に代わってみてくれないか」
藤田は、悲しそうな顔で信孝を見つめ、力なく答えた。
「だ、だがあのクロマルの眼が私に訴えかけているんだ。何とかとって欲しいと」
信孝は藤田の背中に手をまわした、そして背中を撫でながら『大丈夫さ』と言った。
「確かに藤田にとって欲しがってるのはわかる。けど、今重要なのは一刻も早くあの子を藤田の元に来させることだ。それなら慣れてる俺がやった方がいいだろう」
藤田は、信孝の眼を見つめわずかに頷いた。どうやら、渋々了解したみたいだね。
「ならば、お前に任せよう。きっと取ってくれよ。頼むぞ」
信孝は一回で取ろうとするんじゃなく、何度もやって少しづつ ぬいぐるみを穴に寄せていく。これなら上手くいきそうだ……と思ったんだけど。
「バリア……か?何でこんなもんがあるんだ!!」
どうやら、ぬいぐるみを落とす穴にバリアが張られているらしく、どうやっても穴に落とせないみたいだ。
『ははは!!そこが最後の試練じゃ!!今こそ、二人の愛のパワーでバリアを破るのじゃ!!そして二人は……ひゃあーーっ!!』
テンションのおかしい少女の声に二人は、少しイライラしているようだ。
そして、信孝が呟いた。
「心配ないさ。要するに俺たちが愛し合えば、バリアを壊せるんだからな」
「だが、そんなことが可能か?私には妻もいるし、男と恋愛する趣味は……」
そう言った藤田に対し、信孝は指で藤田の唇を抑えて、黙らせた。
「俺は、きちんとクロマルをここまで導いただろ。だったら大丈夫さ、藤田が俺を信じてくれれば何とかしてみせる」
信孝の真剣な表情に、藤田は心を動かされたようで、少し俯いて言った。
「なら」
「もう一息、バリアを超える方法を考えてくれ。お前の言葉で、私の心を動かすんだ」
その言葉を聞いて、信孝は喜んだ。
「そうだな。それしかない。藤田が愛してくれるように、言葉を奏でよう」
そう言って信孝は言葉を選び始める。時に藤田を見つめ、時にクロマルのぬいぐるみを見つめる。
これまでの藤田との思い出、藤田が語った過去に思いを馳せているんだね。
そして、信孝は藤田の肩を抱き言葉を発した!
「藤田よ。ずっと俺について来てくれ。必ずお前を幸せにする。いつも穏やかで優しくいられるようにする。だから俺を選んでくれ!」