ツバサたちを愛すために ラブ・キング・キャッスルへ!!
【 2050年 信孝22歳 藤田浩正 32歳 正利20歳 賤ケ岳・次元 】
「ここで悟空を殺せば、あらゆる世界に平和が訪れる!!世界のため、ラプラス様のため、悟空を、そして『混入物』松平信孝を討つ!!」
コンタミってのは実験のときに空気中とかから入ってくる、必要な菌以外の雑菌のことだったか。
ラプラスにしてみれば、『俺』は全次元にとっても、TTRAWにとっても、本来存在するはずのない異物ってことだな。
「俺は、感情のない世界が平和だとは思えない。そして、お前たちを洗脳したラプラスを許すわけにはいかない」
「俺たちは、必ず!お前たちを救うんだ!!」
俺がそう言った瞬間、皇・大和の胸の辺りが強く光った!
そして、皇・大和の足元に、本体の半分ほどの背丈の皇・大和が数千体あらわれた。
なんだ?あれは?コピーか分身か?
俺が困惑してその『コピー』たちを見つめていると、ツバサが『ふふっ』と笑って、楽しそうに説明をし始めた。
「これはね、四人の『能力』を合わせた、新必殺技だよ」
「義弘の能力『死霊捨て肝』は、自分と同じ能力を持つ、一撃食らうと消えてしまう『死霊』を四体出して、相手を攻撃する能力なんだ」
「その『死霊』を僕の『遺伝子改造』で改造して、『一度に出せる数を数千体』に、そして能力そのものも『本体の数倍』、そして一撃で消えないように『耐久力も本体並み』にしたんだ」
攻撃力が本体の数倍、探求力も本体並みって、それはもう分身というより、本体を越えたメイン戦力じゃないか。
しかもそれが数千体だ。本体だけでも大変なのに、これはキツイぞ。
「もちろん、それだけじゃ今の君たちをどうにかできるはずもない。けどね、信秀と証如の力も合わせれば、そうじゃなくなる」
「そう、信秀が研究の末に編み出した特殊音波『二進化音波』は、振動が伝わったもの全てを0と1に変えてしまうんだ!」
「その『二進化音波』を、証如が予知して生み出した武器『二進サウンド砲』で賤ケ岳・次元全体に響かせるのさ」
音波の振動が伝わったものを0と1に変える……?それも賤ケ岳・次元全体に響く音波だって!?
まずい、悟空も相手を0と1に変える技を持っているが、自分が0と1にされたら耐えられないだろう。
もちろん俺やインは0と1にされれば死ぬ。
どうしたものかと考えていたら、分身ロボたちの前に『砲台』が現れた。あれが『二進サウンド砲』か!まずい、まだどうやってしのぐか考えてないぞ!
そう思った瞬間に、『二進サウンド砲』の音声が、賤ケ岳・次元全体に響き渡った。
『向こうが合体なら、こっちも合体だよ!!いくよ、悟空!!』
『けけっ!そいつが来ると思ってたぜ!いつでも来い!』
悟空がそう言うと、インは悟空の背中に負ぶさった!!
それと同時に、悟空の頭の輪がそれまで以上に白く輝き始めた!!
あれは、インの力を輪が吸収することで、愛のエネルギーを高めているのか!!
『よし!これだけ愛のパワーがあれば、バグパワーを全開にしても、耐えられるぜ!!』
そうか!インの力を借りることで、悟空自身も制御しきれない『-バグ』のパワーを、限界を超えて引き出すつもりなんだな!!
悟空とインのやり取りの間にも、賤ケ岳・次元のすべてが0と1に変換されていく。
『二進化音波』が俺たちの目の前まで迫ったとき、ついに悟空が動いた。
『これが-バグの力だーっ!!』
悟空の周囲のあらゆるものが0と1へ変換され、そのまま消えた!
『オイラの『侵食バグ』は、俺が認識したものすべてを『バグ』に変える。そして、オイラの肉体に取り込むことができるんだ!!』
『お前たちの音はもちろん、この賤ケ岳・次元のすべてをオイラの一部にしてしまえば、お前たちに勝ち目なんてないぞ!!』
恐らくこの能力は、本来なら本当に全次元やTTRAWを飲み込むほどの力があるのだろう。それをインの『愛のエネルギー』を借りることで制御し、『賤ケ岳・次元』のみに範囲を絞っているんだ。
そして、音だけでなく『二進サウンド砲』を操作している『死霊』たちまで、消滅していく。
「そんなことができるなんて、すごいね。でも、僕たちの力を見くびっちゃダメだよ」
ツバサの言葉に従って、『死霊』たちが増えるスピードが速まる。それに合わせて、悟空も消滅させるスピードを速める。
結果、死霊は増えたり減ったりで拮抗し始めた。このままじゃ決着が着きそうもない。
どっちかが決定的な、パワーアップをしないと……ってところだな。そして、インと悟空が戦っているんだから、俺がやるしかない。
いや、俺たちだな。俺と正利と藤田で、拮抗した戦局を変えるんだ!!
俺がそう思ったとき、虚空にあの『ドア』が開いた。そして、そこから何か光るものが『皇・大和』に向かって落とされた。
なんだ?今のは?まさか、ラプラスがツバサ達を勝たせるために、何かしたのか?
その『何か』が皇・大和に吸い込まれていくと、急に皇・大和が黒く輝きだした!!
それと同時に、悟空と戦っていた死霊たちが皇・大和に戻っていく。
死霊たちを戻した?何が起こっているんだ?まさか、諦めたってわけでもないだろう。一体、どんな攻撃をしようって言うんだ?
そして、黒い光が一気に強くなり、皇・大和が爆発した!!
周りのものが、悟空がやったのと同じように、0と1に置き換えられた瞬間に消えていく。あの一瞬で技を真似たのか?
俺の考えを否定するように、悟空が呟いた。
『これは、『次元・フォーマット』だな。賤ケ岳・次元のあらゆるものを、0と1に変えた上で、それらのデータを全て消去するんだ』
『爆音に『二進化音波』を乗せて、爆風がデータを消すんだね。音は、悟空が吸収できるけど、爆風の方はどうしようもないよ!』
そう言っている間にも周囲のものが、0と1になっては消えていく。
俺が!俺が何とかしなくては!!悟空を愛する?インを愛する?それはもうできているはずだ。それ以上……ツバサたちを愛する?
ツバサや、信秀 証如はまだ人となりが分かるから愛せなくもないかも知れないが、問題は義弘だ。こいつについて、俺は何も知らない。
どうすればいい。俺はこれまでどうやって、敵を愛してきた?
正利、藤田、悟空……。
「そうか!!サイコダイブだ!!やつらの精神に入り込めれば、愛し合うことができるぞ!!」
『あ、そっか!それだよ!!今の私と悟空なら、パパを『ツバサ』達の精神に送り込むことができるよ!!』
『なるほど、信孝を『0と1』にして、やつらの脳に潜り込ませるわけか!そうすれば脳の電気信号に紛れて、やつらと過去を知りあえるはずだ!』
そう言われて驚く、俺を0と1に変える?そんなことして死なないのか?
そもそもデータになれば、脳に入り込めるものなのか?爆風が超光速で飛んできてる最中なのに、間に合うのか?
「お、俺を0と1にして大丈夫なのか?それに、どうやってやつらの脳内に入り込む?」
『データには質量がねえからな。超光速で飛ばすことも可能さ。それにあんたは元々、世界樹と記憶チップのデータで作られたアンドロイドなんだろ?』
『記憶と思考をチップに頼っているパパなら、一度0と1になったとしても、データを組み上げることで、リスクなく元の姿に戻ることができるよ!!』
なら、どうにか大丈夫か?いや、何とかする、何とかしよう!!
人を愛するのは、得意だからな!!
『じゃあ』『いくよ!!』
二人の言葉と共に、俺の体が0と1に変換されていく。だが、俺の意識ははっきりしているな。
二人が言った通り、大丈夫らしい。
なら、俺はともかく四人を愛するだけだ。どんな状況が待っていようと、四人を愛してやるぜ!!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【 2050年 信孝22歳 藤田浩正 32歳 正利20歳 宇宙意識 】
――――システムメッセージ――――
【ここはあらゆる人間の意識を繋ぐ、精神世界『宇宙意識』。アンドロイドだろうと魔獣だろうと、すべての意識はここに繋がっている】
【そして、信孝と四人の意識の同調により……宇宙意識に愛を育むための空間『恋愛シミュレーション空間』が生成された!!】
【 2005年 松平信孝 14歳 ツバサ・プレリア 14歳 織田信秀 14歳 本願寺証如 14歳 島津義弘 14歳 ラブ・キング・キャッスル】
気がつけば、俺は大きなお城の広間にいた。ここは何だ!?俺は確か、ツバサたちの意識に入り込んだはずだ。
見れば、広間の奥には玉座があって、煌びやかな衣装をまとった『王様』が座っている。
『恋愛を求めし者たちよ!よくぞ、このラブ・キング・キャッスルを訪れた!』
『君たちには、このキャッスルで『ラブ・アトラクション』を楽しんでもらう。そして、それにより恋愛関係となったものは、『|恋帝の間《ラブ・エンペラーズ・ルーム』に招待しよう』
『一方、三つアトラクションに挑戦しても、恋人同士になれなかったものは『ラブ・ヘル』に行ってもらう!ヘルでどんな目に合うかは、秘密じゃ!』
周囲を見れば、様々な男女が数千人ほども広間の中にいる。
一体、どこから連れてこられたんだ!?
いや、落ち着け。俺がツバサたちの脳にアクセスしようとしたことは間違いないんだ。だったら、ここは『記憶の世界』みたいに作られた精神世界のはず。
【『宇宙意識』に作られた『恋愛シミュレーション空間』】
システムメッセージは確かにそう言った。つまり、ここは『宇宙意識』つまり、あらゆる生物の意識の共有空間ってことか。
俺たちが今いるのは、その共有空間の中に『俺たちの意識の同調』で生まれた『恋愛シミュレーション空間』ってわけだ。
で、まあ『恋愛シミュレーション空間』だからな。
強く恋人を求めているけど得られない人たちの『意識』も、この空間に引き寄せられたんだろう。
「なるほど。『意識』の空間だから、私と藤田殿も自由に動けるということですね」
そう言われて横を見ると、正利と藤田の姿があった。
二人は現実空間では俺と肉体を共有していて、意識としてしか存在しないはずだ。
だが、『宇宙意識』の中では意識だけで活動ができるらしい。
「それにしても、さっきの『王』だかが言った言葉。『アトラクション』をクリアすれば、恋帝の間に招くだったか。恋帝の間に行ったらどうなるというんだ?」
藤田の言葉に、俺は少し考えて答えた。
「『システムメッセージ』はこの空間が、俺と『四神の焼き印』四人の意識が同調したために生まれたと言っていた。だから、恐らく四人と恋愛関係になるのが『クリア』だ」
「つまり、信孝様が『四人』と恋愛関係になり、『恋帝の間』に行くことができれば、現実空間に戻れるということですね」
正利の言葉に、俺たちは頷き合う。つまり、この数千人からツバサ達を見つけ出して、一緒に『アトラクション』とやらに入る。
そしてアトラクションの中で恋愛関係になることができれば、現実世界に戻り、『皇・大和』の自爆をなんとかできるってことだ。
そう思っていると、例の『王』が話を続けた。
「諸君らには、まず二人組になってもらう。そして、これと思ったアトラクションに入るがいい。後は説明した通り、恋人同士になれれば合格だ」
向こうが決めた二人組になって、恋人同士になれれば恋帝の間に……けど、それだと俺が四人同時に恋人同士になるのは無理ってことか?
いや、恋帝の間には新たなアトラクションがあって、別のカップルも作る仕組みになっているのかも知れない。
「では!諸君らの運命を決める、『二人組』の組み合わせを発表したいと思う!!」
王はそう言って、次々と組み合わせを発表していく……。そして
「『松平信孝』『ツバサ・プレリア』組!!
『蜂須賀正利』『織田信秀』組!!
『藤田浩正』『本願寺証如』組!!
『桜井かんな』『島津義弘』組!!」
『四神の焼き印』四人のうち、義弘以外は『俺の恋人』である正利達とカップルが組まれた。これは偶然じゃないはずだ。
もしかして正利や藤田は俺と体を共有しているから、この組み合わせで恋人同士になれれば、現実世界に帰る条件を満たせるってことか?
でも、じゃあ義弘と組んだ『桜井かんな』ってのは何者だ?偶然、俺たちの『恋愛シミュレーション空間』に引き寄せられた人物なのか?
それとも何か意味があるのか……。
「それでは!!決められたカップルで、ラブ・アトラクションに入りたまえ!!検討を祈る!!」
俺たちは、新たな愛の試練へと踏み出した。