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悟空と乙姫~二人の愛がTTRAWを救う~

【 2050年 信孝22歳 藤田浩正 32歳 正利20歳  悟空・精神世界 極滅山 】


 超魔神マリアスが消滅すると、天がまぶしく光った!


 そして、空中から囚われていた乙姫が、ふわりふわりと降りてきた。


 そして、悟空の手を取り ものすごい勢いでまくしたてた。


「強さは龍の誉れです!!そして、あなたのように強い人は、龍神族でも、いいえ!このTTRAWのどこにも存在するはずがありません!どうか、私をあなたのお嫁さんにしてください!」


 そう言われて、流石の悟空も呆気にとられて固まった。


 しかし、すぐに気を落ち着けてツッコミを入れた。


『いや待て、話が飛びすぎてんだろ。強いやつに惚れるってえ心理はわかるが、なんで急に結婚なんてことになるんだ?』


 悟空の言葉に対し、乙姫は間髪入れずに返した!!


「それはもちろん!貴方こそ、わたくしが幼き頃より憧れ続けた『救世の龍神騎士』様そのそものだからです!」


『救世の龍神騎士?』


「はい。『極災』が訪れる時、『救世の龍神騎士』があらわれる。そのとき『龍神の巫女』は救世の龍神騎士と夫婦(めおと)になり、力を合わせて世界を救うべし」


「龍神の巫女に代々語り継がれる、言い伝えです」


「この話を最初に聞いた時から、わたくしはいつかわたくしの前に現れるという、救世の龍神騎士様のことを、ずーっと想像し続けてきたのです!」


「そして……そして!何者をも寄せ付けぬあなたの強さは、私が想像してた、救世の龍神騎士様そのものなのです!!」


 乙姫は、熱い視線で悟空を見つめ、うっとりした顔で言った。


「だから……、どうかわたくしと結婚してくださいませ」


 そうして、情熱的にプロポーズした乙姫に対して、悟空は冷静に答えた。


『話は分かった。だが、ダメだ。今のオイラは、姫さんを尊敬してはいるが、愛してるとはいえねえ』


『そんな気持ちで、あんたのプロポーズを受けて上手くいくはずもねえからな』


 乙姫は強いショックを受けてうなだれた。だが、すぐに強い決意を秘めた瞳で立ち上がった!


「でしたら!わたくしが、貴方に強さを見せ!貴方を惚れさせることができれば、結婚していただけるでしょうか?」


 悟空はまた驚いて、言葉に詰まる。いちいち乙姫の言うことが想定外らしい。そう考えるとって、乙姫ってある意味とんでもないな。


『……そうだな。あんたが、本当に俺が惚れるくらい強くなれるっていうなら、否はねえ。そんなことになったら、こっちからお願いしたいぐれえだ』


「ふふふ、言質はとりましたよ。見ていてください。必ず、あなたの隣に並ぶに相応しい女性になってみせますから」


 そうか。乙姫は悟空に恋していたのか。


 ここに来るまでの話だと、悟空の『乙姫を護りたい』という気持ちしかわからなかったけど、乙姫も悟空を愛していたのか。


 しかし、そうか。俺たちの時間の悟空は、乙姫を守ろうとしていたんだよな。


 ということは、ここから悟空の方が乙姫に惚れる何かがあるのか?



◇◇◇◇◇◇◇◇


 そう思っていると、また場面が変わった。


【 2050年 信孝22歳 藤田浩正 32歳 正利20歳  悟空・精神世界 縺ゅ>縺 】


 周りの異様な状況を見て、俺の隣にいる『俺たちの時間』の方の悟空が呟いた。


『ついに、この日が来たか。ラプラス以外では、オイラと乙姫の人生で一番ヤバかったイベントだな』


 俺たちの回りには、0と1の羅列が無数に連なっている。


 『風景』らしきものがまるでなく、目に映る範囲すべてに0と1しか見えていない。この現象は何だ?


『『バグ』がTTRAWに溢れてきたのさ。本来は『バグ次元』で処理されるはずの『バグ』がな』


「バグ?バグって何だ?」


 プログラムで言うところのバグは、製作者の意図しない不具合、動作のことなんだろうが、TTRAWは現実世界だ。


 現実世界の『意図しない不具合』って何だよ?


『『バグ』ってのは『不具合』。つまり本来このTTRAWに起こりえないような現象を起こす『何か』だ。こいつは、TTRAWそのものを軽く消滅させるようなものがほとんどだ』


「あり得ない『何か』?そんなのがあるのか。それがTTRAW中に溢れた結果、こんなことに?」


 相変わらず、俺たちの周囲には『0と1の羅列』が無数に連なっている。


「それで、お前はどうやってこんな状態を……」


 そう言いかけたところで、遠くから悟空の声が聞こえた。俺たちと一緒いる悟空じゃなく、『この時間の』悟空の方だ。


『ここまで来たら方法は一つしかねえ。『バグ』をオイラが取り込み、『肉体改造』でオイラの細胞に変換する。それができりゃあ、世界は救われオイラもパワーアップするだろう』


 バグを取り込む!?そんなことして大丈夫なのか?いや、こいつから見て未来の悟空が今隣にいるんだから、結果的には大丈夫だったんだろうが、ものすごい賭けだ。


 そうして『この時間の』悟空は、『バグ』を取り込み始めた。最初は、0と1がみるみる悟空の一部となっていったが、途中から様子が変わって来た。


 悟空の体が連鎖的に崩壊し始めた!あれは……『バグ』ってのに飲み込まれてるのか?というか、あのままじゃ死ぬんじゃ?どうやって切り抜けたんだ?


 悟空はバグを取り込むのを止めたようだが、バグは悟空の本体、如意棒の部分にまで侵食してきた。


 そして、悟空がそれこそ耳に入るくらい小さくなったところで……。


「祓え!超技 龍神拳!!」


 突然、女性の声が聞こえたと思ったら、悟空を覆っていた0と1の羅列が吹き飛んだ!


「なんとか。間に合いましたわね」


 乙姫!?何だ?今の力は!?どうやって『バグ』を吹き飛ばした!?


 いや、そもそもどこでどうして悟空の危機を聞きつけてきたんだ?状況が読めないぞ。


 そう考えていると、俺たちの回りからすっかり0と1が無くなった。悟空も『肉体創造』を使って、いつもの猿の姿に戻っている。


『ひ、姫さん!!あんた、どうしてここに。い、いやどうやってバグを浄化したんだ?』


「龍の巫女にだけ伝わる秘術ですの。貴方に助けられた あの日からずっと修行していたのですが、どうにか間に合いましたわ」


 乙姫は涼しい顔で言った。あの日から何日経っているのかはわらかないが、秘術を身に着けるなんて、並大抵のことではなかったはずだ。


 乙姫は、両手を大きく左右に広げると、全身から愛のエネルギーを溢れさせ、自らの周囲を覆った。


 そして自信にあふれた瞳で悟空を見つめて言った。


「見てください!わたくしは、貴方を守るほどの『強さ』を手に入れましたわ。これで、結婚していただけるのでしょう?」


 悟空は乙姫を覆うエネルギーを見て、その強さと優しさに感動したようだ。


『ああ!もちろんだ!!姫さんは結果を出した。それを裏切ったら、この、孫悟空の名折れだぜ』


『それに、俺だって強いやつが大好きだ。俺が嫁にしたいほどの『強さ』をもつのは、TTRAWで姫さんだけだ!』


「ならば、何も問題はありませんわね。結婚いたしましょう!!」


『ああ、結婚しよう。二人で、愛と強さを育んで行こうぜ』


 二人はしばらく見つめ合っていたが、周囲から迫ってくる0と1の羅列に気づいた。


『さて、だったら平和な結婚生活のためにも、TTRAW全体に広がっちまった『バグ』を何とかしなきゃならねえな』


 乙姫の『龍神拳』で浄化されたのは、二人の回りだけだ。TTRAWのほとんどはまだ0と1に覆われている。


「ええ、もちろんですわ。恐らく、龍宮城の地下にバグの本体『バグ生成ウイルス』がいます。それを倒せば、この騒動もお終いでしょう」


『そいつは、俺も感じていた。この事件には、とんでもないボスがいるってのをな。だが、俺の『肉体創造』や姫さんの『龍神拳』じゃ、広い範囲は浄化できないぞ。ボスのところまでいけねえし、そもそもボスを倒せねえ』


 確かにさっきの様子からすると、悟空は浄化しようとしても飲まれるみたいだし、乙姫が浄化できるのは、せいぜい数メートル四方くらいのようだ。


 TTRAW全体をバグで覆うようなボスと戦って勝てるとは思えない。


 だが、ここで勝てなきゃ今の悟空はないんだよな。ってことは、何か奥の手でもあるのだろうか?


「ですから、龍の舞をTTRAWに捧げるのです」


『龍の舞って、あの龍神の巫女だけに伝わるってえ秘術か?』


 どうやら乙姫の切り札は、その『龍の舞』らしいな。ということは、この後 乙姫が『バグ』のボスを倒したんだろうか?


「ええ、そうです。龍の舞は龍神の巫女と、救世の龍神騎士が二人で手を取り踊りあうもの。そして祝詞として、婚姻のプロポーズを捧げるのです」


『そうか。なるほどな。いいぜ今の気持ちなら、オイラの熱い想いを姫さんにぶつけることができる!』


 悟空はすっかり乙姫に心を奪われているようだ。


 最初に、柱として処分されそうだったところを救われたこと、今『龍神拳』で救われたこと、そして何より乙姫が短期間にものすごい『強さ』を手に入れたことが、悟空の心を燃え上がらせた!


 今すぐにでも、プロポーズができるほど乙姫を熱い視線で見つめている。


「そうですね。みっちり、お互い感動する言葉を用意して、相手とTTRAWに捧げましょう!」


「二人の愛の心が高まるほど、龍の舞のエネルギーも高まるのです!わたくし達の愛を、バグウイルスに見せつけようじゃありませんか!」


 ハイテンションの乙姫に釣られて、悟空のテンションもどんどん上がっていった。


 それからしばらく乙姫と悟空は、龍の舞の準備と練習を続けた。


 そして、数時間後……


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「それでは、ただいまよりTTRAWに捧げる『龍の舞』を行います。実行者は龍神の巫女『乙姫』と、救世の龍神騎士『孫悟空』」


 乙姫がそう言うと、悟空と乙姫は自分の回りに『愛』でできたエネルギーを纏った。


『よし、準備はいいぜ。姫さんからやってくれ!』


 悟空の言葉に応じ、乙姫は悟空に接近し『お姫様抱っこ』で抱え上げた!


 そして、上空高く放り投げた!!


 そして、天空高く上がった悟空は、乙姫に向かって愛のエネルギーを放出し、叫んだ!


『姫さんの愛に、俺は答える!!』


 エネルギーは乙姫に吸着し、乙姫は悟空のエネルギーを吸収することで悟空を引き寄せた。


 引き寄せられてきた悟空を、乙姫が空中でキャッチし、地上に着陸した。


『よし!交代だ、今度はオイラの番だな!』


 そう言って、悟空は乙姫の腕から抜け出し、乙姫を『お姫様抱っこ』した。


 そして、乙姫がしたのと同じように、空中高く放り投げた!!


 乙姫は『愛のエネルギー』を悟空に向かって飛ばす!


「私は貴方に永遠の愛を誓う!!」


 乙姫のエネルギーが悟空に吸着する。悟空がそれを吸収して、乙姫が引き寄せられた。


 そして、引き寄せられてきた乙姫を悟空が抱きしめる。


 すると、二人の回りに愛のエネルギーの渦が巻きあがった。


 渦は天高く昇っていく、それに引き上げられて悟空と乙姫の体も天高く昇っていった。


 二人の織り成すエネルギーが重なり合い、龍の形を為していく。


「さあ!今こそ二人の愛のエネルギーを一つに合わせ、TTRAWドラゴンを産み出すのです!!」


『おう!!』


 悟空と乙姫は空中で手のひらと手のひらを合わせた。乙姫の愛のエネルギーが悟空に流れ込む、悟空の愛のエネルギーが乙姫に流れ込む。


 それらは均等に混ざり合い、新たな第三の『愛のエネルギー』を生み出していく……。


「さあ!仕上げです!!プロポーズと誓いのキスで、愛の融合を完全なものにしましょう!!」


 渦巻く愛のエナジーで空中に体を浮かせたまま、二人が手を取り合った。


 そして悟空の口からプロポーズの言葉が発せられた。


『オイラは龍宮の柱として生まれ、折れてそのまま消えるはずだった。だが、あんたに救われた。そして、今回もバグに飲まれた俺を救ってくれた』


『あんたこそ、最強の女だ!英雄だ!俺と結婚して、さらに最強を極めよう!!俺も強くなる絶対に!共に強くなるんだ!!』


 悟空の愛のエネルギーが巨大に膨らんだ!!


 そして、それに応えるべく乙姫もプロポーズの言葉を返した!!


「私は龍神の娘として、龍の巫女として、その役割を果たすことだけを考えて、これまで生きてきました」


「けれど、私は貴方の無限の強さ、そして何よりその奥に隠れた優しさに惹かれたのです。ですから!貴方を生涯の伴侶とし貴方と共に最強を目指したいのです」


 乙姫がそう言うと、乙姫の愛のエネルギーも巨大に膨らんだ!!


「さあ、今こそ」

『そうだな。準備は整った』


 そう言うと、悟空は乙姫の顎を引き寄せて、自分の唇を重ねた。


 その瞬間、二人の愛のエネルギーが融合し、さらに巨大な渦を生んで……。


 それまで渦を巻いていたエネルギーが、二人を中心に収束し、巨大な爆発を起こした。


――――システムメッセージ――――

 『龍神騎士・孫悟空』が浄化するもの(デバッカー)になることが、TTRAWによって承認されました。


 『龍神の巫女・乙姫』が浄化するもの(デバッカー)になることが、TTRAWによって承認されました。


 そして、爆発が収まったとき、二人の姿が変わっていた。


 二人は、何かに突き動かされるように、高々と名乗りを上げた。


『TTRAWを照らす太陽!龍神子、孫悟空!』

「TTRAWを癒す月!龍神姫、乙姫!」


『「我ら!TTRAWドラゴン!!」』


 二人の恰好は、悟空は『太陽』の模様をあしらった袴、乙姫は『月』の模様をあしらった振袖だ。


 二人とも、頭にはドラゴンのような角が生え、背中には大きな翼がついている。


 よく見るとトカゲっぽい、太い尻尾も生えているようだ。


「これが、伝説のTTRAWドラゴンですわ!」


『よし!いけるぞこの力なら、間違いなくバグウイルスを浄化できる!!』


 そう言って、二人は手を繋ぎ、息を大きく吸い込んだ。


『いくぞ!乙姫!龍最強の必殺技といえば、これしかねえ!』


「わかりました。悟空!二人の力を合わせて!」


『ファイナル・デバッキング・ブレス』


 すると、それまで無秩序にならんでいた0と1が規則正しく並び直し、そしてTTRAWの一部として溶け込んだ。


 そして二人は『デバッグ、完了!!』と叫ぶと、元の姿に戻った。


 俺は余りにも想像を超ええた事態にしばらく呆気にとられていた。


 そして、俺が今のシーンの詳細を、『俺たちの時間』の悟空に質問する前に、目の前のシーンが結婚式場へと移った。

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