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上流階級のエンターテイメントが最高にクソすぎる

「俺がこの手でしずくを殺すことさ」

たかしの口から、絶望的な言葉が発せられた


「はぁ!?何を言ってるんだ、お前は!正気か!?」


いや正気ではないんだろうが、いくらなんでも異常だ。


「そこからは私が話しましょう」


藤田というヤクザがゆっくりと話し始める

文句をつけたかったが、やっぱり威圧感がすごくて怖い。


「実は今回の取引の話を聞きつけた、お偉方が莫大な見返りと引き換えに

ある注文をしてきたのです」


「注文だと?臓器のか?」


「いえいえ、そちらの注文は別の方です。実は今回、臓器を確保する

そのシーンを是非見たいとおっしゃる方がいらっしゃいましてね」


「は?臓器を確保するシーンだと?」


「ええ、臓器提供者に幼馴染がいて、その幼馴染に移植の必要な妹がいる…

ということをお話したところ」


「もちろん解体自体はプロがやりますが…。最初の命を奪うところを幼馴染の

たかしさんにやって欲しいと」


つまり解体の前に、たかしが妹のための臓器欲しさにしずくを殺すところを

………見たい…?


見たい…?なんで誰がなんのために、そんなことするんだ?


「お偉方というのは、この世の娯楽をすべて楽しみ尽くしているような方々ですからね」


「満足できる娯楽を探して、行きついたところが…人殺しの見物…

それも親しい人間による殺害を、側で見ることというわけです」


何て奴らだ。しかも藤田の口ぶりからすると、そのお偉方ってのは、

これまでにも殺しの見物をしたことがあるみたいだ。


「この部屋にはいくつかカメラが仕掛けてありましてね。別室のモニターで

ご覧いただいているのです」


準備は万端ってことか…しかし


「殺すのをたかしに任せたりしたら、臓器が傷ついたりして

使い物にならなくなるんじゃないのか?」


やつらにとって臓器は大事な商品だ。解体はプロがやるにしても

“死”という商品加工作業の最初の一歩を素人に任せるのはリスクが大きすぎる気がする。


「その点は問題ありません。すでにしずくさんに、脳死状態に導く薬を点滴する準備

はできていますからね。後はたかしさんがボタンを押すだけで薬液が脳に至ります」


「もちろん、心停止まで待ってしまうと、商品としての価値が落ちてしまいますから、

誰もが死と認めるところまで、たかしさんにお任せすることはできませんがね。」


「聞いたかい?茂!俺がボタン一つ押すだけで麗美が助かるんだ!」


「待て待て待て!!今の話で何故そうなる!」


結局、今の話で分かったのはしずくを殺す準備ができてることと、殺すシーンをお偉方だかに見せる準備ができてることだけだ。


「大丈夫さ。実は麗美ももう裏の手術室に連れてきててね。今は薬で眠ってるけど

移植がすめば、きっと元気になるはずだよ」


麗美ちゃんが手術室に!?まずい、やっぱりこいつらは

しずくだけじゃなく、麗美ちゃんも殺して臓器を奪うつもりだ。


そもそも人間の心臓の大きさは握りこぶしぐらいだと聞いたことがある。

高校生の心臓を小学生に移植するのは無理だ!大きすぎて肋骨に入らないはずだ!

移植できたとしてもポンプ力が強すぎれば、末端の血管がズタズタになるだろう


「考えてもみろ!高校生の心臓が小学生の体に入ると思うか?移植は最初から不可能なんだ。なのに麗美ちゃんを呼んだってことは、やっぱり麗美ちゃんの臓器も奪うつもりなんだ!」


「このままだと、しずくも麗美ちゃんも殺されるぞ!い、いやもう用なしだとすれば、お前だって…」


藤田が元々俺やしずくや麗美ちゃんをおびき出すために、たかしを引き入れたんだとすれば、本来もう用なしのはずだ。


お偉いさんへの余興という思わぬ仕事ができたから生かされてるものの、いつ殺されてもおかしくないんじゃないか?


そもそも、そのお偉いさんが望んでるのは悲劇的結末のはずだ。だったらしずくを犠牲にしたのに結局麗美ちゃんも死に、たかし自身もその報いで死ぬってのが一番喜ばれるだろう。


「少々、うるさいですね。余興になるかと思い、自由にさせていましたが…」



「仕方ありません。ショーの主役はたかし君ですからね。これ以上、脇役が目立って、興が覚めてしまっては大変です」


部屋にいたヤクザ達が、再び俺に猿轡をかませてきた。しかし目かくしはされてない。

たかしがボタンを押すところを俺に見せるのもショーの一部ってことか


「それでは、たかしさん。今度こそボタンを押してください」


「で、でもさ、本当にしずくの心臓を麗美に移植できるの?

茂も言ったけど大きい心臓を小さな体に移植するなんて可能なのかな?」


俺の言った、あまりにも当たり前の事実に、たかしも少しは動揺しているらしい。


「大丈夫ですよ。申し上げたでしょう。我が社の医療スタッフは世界有数の闇医者だと

少々の困難など、恐れるに足りません」


「そ、そうか。そうだよね!」


「今こそ、貴方の手で運命のボタンを押し、貴方の手で麗美さんの未来を勝ち取るのです」


「ああ、わかったよ!ごめんね…しずく…でも、あいつは…麗美は幸せにならないといけないんだ。これまで病気のせいで苦労した分も…ね」


麗美ちゃんに幸せになって欲しいのは俺も同じだが、そのためにしずくを殺して良いわけがねえだろう


俺が拘束されながらも必死にたかしを止めようともがく中、非常にもたかしがボタンを押した……


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