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深層心理の迷宮と『三つの鍵』


(ラブ)界 宇宙ダンジョン 最下層 第五十階層 深層心理の迷宮】


 俺たちは愛美の『ワープ』を使って、深層心理の迷宮にたどり着いた。この迷宮を突破した先にコメットの『意識』があるらしい。


 俺たち共通の仇敵である悟空を倒すためには、コメットと対話し、コメットだけが持つ強力なパワーを借りて、悟空のいる『時の孤島』にたどり着かないといけない。


「それで、この深層心理の迷宮はどんなとこなんだ?『迷宮の謎』とか言ってたけど」


「ええ、『迷宮の謎』よ。それについては今から説明するわね。全員が情報を共有してないと、突破できないもの」


 愛美はそう言うと、指を三本立てて俺の目の前に突き出した。


「この深層心理の迷宮には三本の『心の鍵』がある。『愛美の鍵』『ツバサの鍵』『ハルナの鍵』ね。この『三つの鍵』が揃えば、迷宮の奥にあるコメットくんの『心の扉』を開くことができるわ」


 心の扉を開く『鍵』か。まあ恋人を殺されて心を閉じちゃってるやつの『深層心理』だからな。心を開くために鍵が必要でもおかしくない。


 愛美が生きてるところを見せるだけじゃ復活しないんだもんな。


「それで、その三つの鍵とやらはどうやったら手に入る?そもそも何で愛美とツバサだけだと手に入らなかったんだ?」


「うーん、いい質問ね。それじゃあ今わかってることを説明するわ」


【心の鍵】


 迷宮には『愛美の部屋』『ツバサの部屋』『ハルナの部屋』がある。

 各部屋にいるボスモンスターを倒せば『鍵』が手に入るらしい。

 部屋の名前になっている人物は部屋に入れない。


 これらの情報は部屋に入ったときに、コメットの声でアナウンスされる。


 部屋に出てくるボスモンスターは強く、ニ人では倒せない。


「『ハルナの部屋』のボスモンスターは二人がかりでも倒せなかったよ。もちろん他の部屋は一人で挑むんだから、もっと無理だった」


 うーん、二人の話だとボスモンスターは相当強そうだ。だが、だとするとおかしいところがあるな。


「倒せなかったなら、どうして生きて部屋を出られたんだ?」


 普通モンスターとの戦いなんて命がけに決まってる。だが、二人が生きてるってことは、殺されずに逃げることができたってことだ。


「鍵のモンスターは、向こうからは攻撃をしてこないの。それに一時間ほど何もしないでいると、強制的に部屋の外に出されるのよ」


「なるほど」


 こっちを攻撃してこないってのは、すごい違和感があるな。もしかして、倒す以外に突破する条件があるんじゃないのか?


 そう考えると、部屋の名前になってるやつが入れないってのも気になるな。本人が入ると、簡単に条件が満たされてしまう……とかあるんじゃないか?


「そうか、だとすれば戦うのは間違いっぽいな。それこそ、なんというかコメットの心を開くようなことをしなくちゃいけないんじゃないか?」


「心を開くようなこと?」


 まあ具体的にはよくわからないけどな。でも、ヒントはある。部屋に恋人たちの名前がついてることと、その本人が入れないことだ。


1.心を開くようなことをすればいい

2.部屋には恋人の名前がついている。

3.本人が入ると簡単に条件が満たされる?


 つまり、本人なら知ってるが他人が簡単に知ることができないような情報がキーになっているんじゃないか?だとすると、思い出……それも他人が知りえない『特別な思い出』がキーかも知れない?


 俺は自分の考えを元に、作戦を考える。そして皆に向かって話した。


「んー……。上手くいくかは微妙だが、一応おおまかに作戦を考えたぞ」


 そう言った俺の言葉に、まだ作戦を説明しない内から正利が乗って来た。


「おお!さすがでございます!!何事も試してみなければ始まりませぬからな。幸い敵は攻撃してこないといいますし、何でもやってみましょう」


 正利の言葉に、茂や愛美たちも同調する。皆も、とりあえず何も考えずに戦うよりは、俺の作戦を試してみようという雰囲気だ。


で、俺の作戦とは


1.ハルナ姫の部屋は大変そうなので、まず愛美の部屋かツバサの部屋から攻略する

2.部屋に入る前に可能な限り、コメットとの思い出を聞いておく

3.部屋に入ったら鍵のモンスターに対して、攻撃せずひたすら思い出を語る


 ハルナ姫の部屋については、本人がいないから後回しだな。


 とはいえ一応、愛美は『嫉妬神』と戦ったときに、ハルナ姫とコメットのデートを見ている。


 というか俺たちも愛美の記憶を通して見てるんだ。ハルナ姫とコメットの接触は、あの時だけのはずだから、本人無しで思い出を探ることはできると思う。けどまあ、まずは分かりやすいところから行った方がいいだろう。


「ふむ、面白いわね!私やツバサでは全く思いつかなかったアプローチだわ!やってみる価値はあると思う」


 愛美は嬉しそうにそう話した。そう何事もやってみなくちゃ始まらない。殴り掛かるより平和的だしね。


 そうして俺たちは、コメットとの思い出を全員で共有しながら、最初の部屋『ツバサの部屋』へと向かった。


(ラブ)界 宇宙ダンジョン 最下層 第五十階層 深層心理の迷宮 ツバサの部屋】


 俺たちは『ツバサの部屋』にたどり着いた。この部屋にはツバサが入れないので、俺・愛美・正利・茂・ナタリアの五人で部屋に入った。


 部屋は何もないだだっ広い部屋で、奥に一体のモンスターが鎮座している。


 そのモンスターは、背中に天使の羽根が生えている。だが肉体は虎に近いな。巨大な爪と牙が見える。体毛が真っ黒だからヒョウの方が近いかも知れない。


 もしかしたら、ツバサがモデルになっているのかも知れないが、似ても似つかないな。


 さて、俺たちはともかく作戦通り、あのモンスターに向かってコメットとツバサの思い出をひらすら語ることにした。


 ポイントはやはり、『恋愛シミュレーションすごろく』でのデートだ。


 『海底神殿』と『恋ヶ窪中学』で起こったこと中心に話していこう。


 二人の一番の思い出は、やはり付き合うことになった瞬間だ。つまり恋ヶ窪中学の文化祭で、展示が上手くいった後の教室だな。


 俺はツバサから聞いた情報と、俺自身が愛美の記憶を通して見た情報を統合して、状況を再現した。


【コメットとツバサの思い出】


 文化祭が終わった後の教室に、コメットとツバサはいた。


 『魔法ダンジョン』の大成功で、ツバサのテンションは上がり切っていた。涙を流して喜び、コメットに抱き着いて喜びを共有しようとしていた。


「やったよ!企画は大成功だ。これほどお客さんが来るものなんだね」


 ツバサは、自分がコメットに恋したせいで、恥ずかしすぎてコメットに近づけず、『出し物』が頓挫しかけたことを思い出していた。

 そして、勇気を出したこと、いいアイディアを思いついたことで、乗り越えることができたことを誇らしく思っていた。


 そのときツバサは幸福感に打ち震えていた!


 一方無邪気に笑うツバサを見て、コメットもツバサとの旅を思い返していた。


 海底神殿では空中機動や銃撃が使えない中、ツバサのアイディアで水中機動や魚雷で戦えるようになった。


 そして、二人の併せ技『魚雷・ウイング』を生み出し、ポセイドンを叩きのめした。


 あのときの勇猛果敢な姿、奇抜なアイディア、そして大切な人を守り抜くためにどんな努力も惜しまない信念!!


 思い出せば思い出すほど、強くツバサの魅力に惹かれていることに気づく。


 そして極めつけは恋ヶ窪中学に来てからのツバサの態度だ!


 それまでは、好意を抱いていると言っても、カッコいいヒーローという印象だった。それが、あからさまに意識した態度を取られたことで、男女の恋愛関係を意識せざるを得なくなったのだ。


 ひたすら避けまくるツバサに対して、コメットも声をかけ辛かった。


 けど、ある日 ツバサは鬼気迫る表情で、コメットに訴えかけた!


 『諦めることは仲間が死ぬこと』ツバサは、退くわけにいかなかったのだ。


 自分だったら、こんな状況で一歩を踏み出せただろうか。そう考えると、ツバサがより魅力的に見えてきたのだった。


 そして、『コメットを高速化させる』ツバサのアイディアで、『魔法ダンジョン』は成功した!溢れるほどのお客が入った。


 コメットもまた、ツバサの能力や態度 信念に恋をしたのだった!!


 そこまで考えてコメットは自分の想いが、とてつもなく高まっていることに気づいた!


 そして、想いを伝えたいという衝動に駆られた。ツバサはカッコよすぎて、可愛すぎる。そう考えるほど、好きな気持ちが爆発して、その想いが言葉を生み出した!!


「ツバサ!!」


「えっ!?は、はい」


 ツバサは突然大声で呼ばれたので、びっくりして変な声で返事をしてしまった。


 それを見たコメットは顔をほころばせた。


「君は素晴らしい。海底神殿で共に戦ったときの頑張り、僕にはとても思いつかないアイディア!とくに共にポセイドンとの戦ったときは、これまで探索して来たどんなダンジョンよりも、心が震えた!!」


 湧き上がってくる想いを、想いのままにひたすらツバサにぶつけた!!


「そしてそれより何より、この学園で見せた女性らしさだ!僕はそれに惹かれて、『出し物』のことに気が向いていなかったのに、君は土壇場で『守る』覚悟を見せた!!そして、僕を高速化させるアイディアだ」


 コメットはツバサの前に膝をつき、手を差し出した。


「僕は君の魅力に心を奪われた!!君を愛している。君と共に歩みたい。どんな困難に会おうとも愛と勇気とパワーで共に乗り越えたい!」


「君と!恋人同士になりたいんだ!!」


 そう言われて、ツバサは顔を赤くして固まった。驚きと興奮とときめきがグチャグチャになって、普段すましているツバサでも、さすがに動けなくなった!


「ど、どうだ?」


 コメットの心臓はドキドキして張り裂けそうだった。学園に来てすぐのツバサみたいに、今すぐ逃げ出したい気持ちが強くなる。


 だが、そんなわけにもいかない。ここで返事を聞かずに逃げたら、絶対に後悔することになる。


 コメットの覚悟のこもった表情を見て、ツバサも心を決めて、返事をし始めた。


「ああ、『共に歩む』か。素晴らしい言葉だね。僕はこれまで大切な人を守ることだけ考えて必死に戦ってきた。けど、そうか大切な人とは守りあうこともできるんだ……!!」


 これまでツバサは大切な人を護ることだけ考えてきた。だが、コメットと共に協力してポセイドンや『魔法ダンジョン』作りを乗り越える中で、共に守りあい、助け合うことを知った!


 コメットのお陰で、ツバサの信念は一段階進化したのだ!!


 そして、だからこそ、これからもコメットと共に助け合っていきたいと思った!


「わかったよ。コメット。君の告白を受けよう!僕と君は恋人同士だ!!」


 そう言われたコメットは嬉しさのあまり、その場に突っ伏してしまった。


「う、うああ……良かった。僕の想いがツバサに届いた!!」


 コメットは天を仰ぐ、瞳から涙がチョロチョロと流れてくる。涙でツバサの顔が見えなくなり、手で涙をぬぐった。


「ああ!君の想いは届いた!!そして、僕の想いも君に届いたんだ!!」


 そして二人は見つめ合った。二回目の『デート』を乗り越えるにはキスが必要なことを二人とも知っていた。


「じゃ、じゃあ行くよ!二人の想いは通じたんだから!!」


 ツバサがそう言うと、背中の羽根が黄金色に光った!!


 それに呼応するように、コメットの身体が光った!!これは……?


「「これが、僕達のニュー・ツープラトン!!」


 二人から出る黄金の輝きが二人の身体を引きつけた!!


 ツバサがコメットの顔を見つめる。二人の顔がどんどん近づいて……。


「僕達は!」


「愛し合っている!!」


 二人の唇が重なった!!


【コメットとツバサの思い出 終わり】


 俺は、鍵モンスターに対して思い出を語り切った!!


 すると鍵モンスターが、コメットたちと同じように、黄金色に輝き始めた!


『二人の思い出の中で、二人にとって最も『重要な点』を述べよ』


 ……何だ?学校のテストみたいな問題が来たぞ?


 つまりこの思い出の中で、二人にとって一番重要なこと、シーンか台詞かわからないが、二人が重要視してるところを言えば良いんだな。


「二人にとって最も重要なこと?っていうか、だったら一度外に出てツバサに聞けばいいんじゃない?」


 愛美がそう言うと、即座に鍵モンスターが答えた。


『『最終問題』まで来た後は、外に出ることができません』


 その言葉に、ナタリアが激しく狼狽して叫んだ!


「じゃ、じゃあ、ここで答えないと、拙者たちは一生この部屋の中でござるか!?そんなの、最初に言って欲しいでござる!」


 だがその直後、茂が不敵な笑みで笑い始めた。


「くっくっく、お前たち気づかなかったのか?あのキスの意味を。そしてあれをツープラトンと呼んだ理由を!!」


 そう言った、茂自身の身体も、ほのかに黄金色の輝きを放っていた……!!


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