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創造神と、その先

【恋愛シミュレーションすごろく 修羅場マス】


 しばらくして、私の身体から黄金の輝きが治まった。見た目には変化がないみたいに見えるけど、私の中では随分変化が起きていた。


 まず、体を宇宙規模まで押し広げられそうな感覚がある。私自身が宇宙になろうと思えばなれる感じだ。


 創造神が宇宙自身っていうのは、こういうことなのね。


 とはいえ、人間サイズのままでいることも可能みたい。しばらくは、コメットくんとダンジョン探索なんかをするためにも、宇宙らしいサイズになるのは後回しの方が良いかも知れない。


 おっと!それより!


 私は創造神になったけど、皆はまだ『嫉妬の沼』に沈みそうだ!早く何とかしないと!


「皆!私は創造神になったよ!!皆も頑張って!私の考えたコツは、大好きな人同士が仲良くしている姿が『尊い』と思うことだよ!!」


 私がそう叫んだことで、まずハルナ姫が反応した。私のヒントに何か思うところがあったのかな?


「よし!もうちょっとだよ!!これで皆が創造神になれれば、終焉神を倒して神界が救えるんだ!!」


 私がそう叫んだ瞬間、背筋に冷たいものが走った。一体、何が起こったのかしら?


 創造神は宇宙規模なのよね。今の私が恐れるものなんて、そうたくさんはないはずよ。


 でも、恐ろしくて体が震えてる。今の私では、敵わない何かが近づいてくる!!


 『それ』は突然、私の前に現れた。そして、ニヤニヤした不気味な笑顔でこう言った。


「終焉神なら、俺が食ったぞ」


 その言葉の意味が理解できずに、私は硬直した。


 私の目の前に現れたのは、言葉を喋る猿だ。


 けど、絶対にそれだけじゃない。この猿からは、あの『神代遺跡』の工房で感じた『未知のエネルギー』を感じる。


 それも爆撃王や神愛王とは比べ物にならない。宇宙何個分なんて数えるのが馬鹿馬鹿しいくらい強大なパワーだ。


「さ……猿……猿の……まさか、あそこで作られていた超生物って……!!」


「超生物?ああ、そういやそんな風に呼ばれてたこともあったな。オイラは悟空!猿の『孫悟空』だ。ここに強者がいるのを嗅ぎつけてきたんだ」


 本当に、あの研究室で作らていた超生物なの?だって確か、悟空はお釈迦様によって封印されたって……。


 どうやって神界に戻って来たの?


「あ、あなた封印されたんじゃ……」


「ん?嬢ちゃん、オイラについて詳しいねえ。まあ、封印はされたけどな、釈迦は俺に更生の旅に出させた。天竺でお経をとってくる旅だな。あれは楽しかったねえ」


 状況がよくわからない。お釈迦様は悟空を更生させようとして、天竺からお経をとってこさせた???


「取経の旅のあと、俺は悟りを開き『闘戦勝仏』となった。けど、天界の生活は退屈過ぎるんだ。三蔵の旦那も八戒も悟浄も仕事に追われて遊んでくれねえしよ」


 何の話をしているのかわからない。この猿が仏さまになった?それで天界……お浄土での生活がつまんなくて逃げてきたってこと?


「え、ええと、じゃああなたは、天界の生活が退屈で神界に逃げてきたってこと?」


「ああ、いやそうじゃねえ。退屈だったから天界で暴れてやったのさ。今度はオイラも仏になってたからな、釈迦のヤツもぶちのめしてやったぜ。二度と転生できないように念入りに『愛の核のかけら』を消滅させてやった」


 お釈迦様を消滅させた!?話が壮大過ぎてついていけない。こいつは一体、何なの!?


「じゃ、じゃあどうしてここに来たの?」


「言っただろ。強者のにおいを感じたって」


 強者の臭い?そうか!私が創造神になったから、それを嗅ぎつけてきたってことね!!で、でもそんなの可能なのかしら?


「じゃあ、あなたは私が創造神になったのを感じ取って、戦うためにここに来たのね?」


「創造神……?なんだそりゃ。そんなもんに興味はねえ。創造神って要するに『宇宙そのもの』だろう。そんなのは釈迦より数段弱えじゃねえか」


 私が目的じゃないってこと?でも、ここには他に強者なんていないと思うけどなあ。


「ん……?そうか。なるほどな。じゃあ、やっぱり俺の目標はあんただぜ。だが……もう一段階パワーアップしてくれねえと、話になんねえ」


 シュバッ!!


 そのとき、私は何が起きたのかわからなかった。でも、私の身体は立っているはずなのに、視界が上を向いて……。


「死ぬなよな。嬢ちゃん」


 首を切り落とされたと気づいてすぐに、もう私の意識は無くなっていた。


◇◇◇◇◇◇◇


 ………………何も見えない。何も聞こえない。


 あれ……私、死んだんじゃ?どうして思考ができてるの?


 しかも、何だか温かいエネルギーに包まれている感じがする。


 何も見えない聞こえない。考えることはできているけど、コメットくん達の愛も感じない。でも死んではいない?


 そう考えていると、さっきから感じている温かいエネルギーがさらに強大になってきた。


 これは……そう、このパワーは『愛の核』だ!!


 この世に生まれ落ちたすべての生き物……ううん、無生物だって愛の核でできている。そして死んだら愛の核に戻るんだって、確かルシアが言ってたわ。


 じゃあ、今の私は体を失って『愛の核のかけら』だけの状態なのね。それも、もう愛の核と一体化することで、私の意識は失われてしまう。


 愛の核の温かさは、怖いという感情さえ打ち消してしまう。そして、私は愛の核の中に取り込まれていった。


 これが愛の核のエネルギー?とてつもない、全ての宇宙の始まりのパワー……。これがあったら悟空なんかに負けなかったのにな。


 そのとき、私の意識が急激に引き戻された!!


 何!?一体何が……!!


 そう考えていると、目の前がパアッと明るくなった。そして、私の目の前には悟空がいた。


◇◇◇◇◇◇◇


 元の『修羅場マス』に戻って来たの?じゃあ、私は死ななかったってこと?でもどうして?私、悟空に首を落とされたんじゃ……?


「忘れてたみたいなのやね。言うたやろ、死んでも一回は持つのや!!」


 そういえば、例の神代遺跡でもしものときのために、ハルナ姫が『一回死んでも大丈夫』なネックレスをかけてくれてたんだっけ。


 すっかり忘れてたよ。


「それより、愛美ちゃん。今の自分の姿を見てみるのや」


 そう言われて私は、自分の姿を見た。


 私の姿は……巨大な虹色のハートだ!!そして、全身から虹色の光を放っている!何これ!?


「そいつは、『愛の核』と一体化した『究極体』だぜ。普通は愛の核と一体化すれば、そのまま消滅するが、嬢ちゃんは一回死んで戻って来たから愛の核の力を丸ごと使えるようになったんだ」


「死んで……生き返ったから!?そうか、これが究極の力『愛の核』の力……」


 私がそう言うと、悟空はニヤリと笑った


「これで戦い甲斐があるってもんだぜ」


「あなたと戦う?待って、私には戦う理由がないわ」


 さっき殺されたのは確かだけど、もう悟空に匹敵する力を手に入れたんだもん。わざわざ死ぬか生きるかの戦いをする必要が無いわ。


 終焉神がいなくなったなら、他の宇宙に逃げたいくらいよ。


「そうはいかねえぜ。この場から離れたいなら、オイラを倒すしかねえんだ。あのダンジョン野郎を元に戻すにはここを離れなきゃいけねえだろ?」


「ダンジョン野郎?」


 言われて周囲を見渡すと、そういえばハルナ姫とツバサの姿はあるのに、コメットくんがいない。


 私が混乱していると、横からハルナ姫が説明してくれた。ハルナ姫もツバサももう『嫉妬の沼』から抜け出したようで、創造神になってるみたいだ。


「コメットは、愛美ちゃんが殺されたとき、憎悪に耐え切れず終焉神になってしまったのや」


「でも、すべてを破壊し尽くすわけじゃなく、何故か創造神のように宇宙を創ってしまった」


「「『宇宙ダンジョン』を」」


 二人の言葉を、私はすぐには理解できなかった。コメットくんが宇宙ダンジョンを作った?それも、私が殺された憎悪に耐え切れず???


 でも、そうか。さっき私も『宇宙になれそう』って感じたもんね。コメットくんが宇宙になったっておかしくはないんだ。


 問題は、終焉神になったはずなのに宇宙を作ってることだけど……。ダンジョン好きが高じたのかしら。あるいは、普通とは違う『特別な』宇宙なのかもね。


 そんな風に考えてると、悟空が怒って怒鳴り始めた。


「おうおう!!話し込んでんじゃねえよ!ともかく、今すぐ戦うんだ!こっちから行かせてもらうぜ!覚えたてのこの技でな!!」


 覚えたての技?私が疑問に思っていると、悟空は自分の髪の毛を数本ちぎって、手のひらに乗せ、息を吹きかけて飛ばした!


『宇宙創造』


 悟空がそういうと、髪の毛が黒い空間を生み出し、どんどん広がり始めた。


 感覚でわかるわ。この髪の毛は『宇宙になる』。今とめないと、神界ごとこの宇宙に飲み込まれちゃう!!


 私は精神を集中させた。大丈夫。今の私なら『愛の核』の力を使えるはずだ。


 さっき、死んだときと同じように、すべての感覚を無にして……!!


 私の身体が、さらに強く虹色に輝いた!!その光は周囲全体を覆っていく……!!


『ラブ・オール・レインボー』


 そう唱えると、私の身体が一段と強く輝いて、悟空の作った『宇宙』は消滅した!


「けっ!中々やるじゃねえか!こうじゃねえといけねえ!」


 私が目を瞑ると、『深淵』が見えた。そうか、全ての物は愛の核から生まれ、愛の核に還る。不変なものは何もない。


 私も……悟空も!!


諸行無常(しょぎょうむじょう)


 私が技名を言うと、私の身体をピンクのハートが覆って、それに悟空が引き寄せられ始めた。


「な、なにぃ!?」


「すべての生き物は、愛の核から生まれて愛の核へ還るのよ!悟空!あなたも愛の核に戻りなさい!!」


 悟空は、ピンクのハートに取り込まれていく、悟空の『愛の核のかけら』が『愛の核』と一体化するのがわかる……!!


「やった!悟空を倒したよ!!」


 でも、何か違和感があった。そう、あの悟空も髪の毛で作られた偽物だったのかも。だとすれば、本当の悟空がどこかにいる?


 でも、そんなこと今の私たちには関係ないわ!だって、終焉神は悟空が食べたって言うし、もう神界に危険はないんだもの!!


◇◇◇◇◇◇◇


【恋愛シミュレーションすごろく あがりマス】


 『愛する人が別の人も好きでも、それごと愛す』ことに成功した私たちは、ついに『あがりマス』にたどり着いた。


 でも、ここにはコメットくんがいない。コメットくんは『宇宙ダンジョン』になってしまった。


 何とかコメットくんを元の人間に戻さないといけない。ううん、宇宙のままでも体が小さくできればいいんだ。


 ともかく、コメットくんと会って話さないと!!


 幸い創造神となった私たちは他の宇宙に自由に移動できる。それに、『宇宙ダンジョン』がどこにあるのかも、なんとなくわかる。


「私、コメットくんを助けに行くよ!愛の核の力が使えれば、どうにかなりそうだもん!」


「そうなのやね。けど、ハルナたちには無理そうなのや」


「そうだね。僕たちにはもっと修行が必要みたいだ」


 二人は愛の核と一体化してないから、確かに私より弱いかも知れない。でも、二人とお別れするのはやだなあ。


「でも、できれば二人にも着いて来てほしいんだけど」


「そやね。けど、私たちは、あの『謎のエネルギー』について研究するつもりなのや。それは、悟空の言ってた『天界』にいけば、きっとわかる」


「悟空は愛の核と一体化しなくても、今の僕達を凌駕するパワーを持っていた。恐らく天界で修業すれば、僕たちも愛美に負けない力が手に入るはずなんだ」


 天界で修業?そんなことができるの?いや、そっか天界も『別の宇宙』に違いないのよね。


 創造神になった私たちは『天界』という名前だけで、天界がどこにあるのかわかるわ。そして、同じ名前の宇宙は存在しないはずだもん。


 つまり、私は『宇宙ダンジョン』に行ってコメットくんを人間サイズに戻す。


 ツバサとハルナ姫は『天界』に行って、私と同じくらい強くなれるように修行する。


「そんで、私たちが天界で愛美ちゃんくらい強くなれたら」


「また一緒に旅をしよう。王様から文句が出るかも知れないけど、僕達はまだまだ旅がしたいからね!」


 二人と同じで、私も二人と、ううん、コメットくんと四人で旅がしたと思ってる。


 だから、一刻も早くコメットくんを取り戻して……。


「うん!また一緒に旅をしよう!約束だよ!!」


「もちろんなのや!」


「ああ、もちろんだ!」


 二人にそう言った私は、『ワープ』の術を使い、コメットくんが創造した『宇宙ダンジョン』へ向かった。


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