神代遺跡と巨大ロボット
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【恋愛シミュレーションすごろく デートマス5 アンデット・タウン】
ツバサは戻っちゃったけど、私はまだアンデッド・タウンにいるわ。
なるほど、次にデートに呼び出されるか、自分でサイコロを振るまでは前のマスにいることになるのね。
つまり、ツバサは私が呼び出す前にいた、海底神殿に戻ったのかしら。
そう考えていると、どこからか例の『謎の声』が聞こえた。
『プレイヤー・ツバサがデートマス”一日中学生”に止まりました』
『デート相手を選択します……決定しました!』
『プレイヤー・ツバサとプレイヤー・コメットを、”恋ヶ峰中学校”に転移させます』
中学校……?って何だろう。少なくとも、私がいた時代の日本には無かった言葉ね。
どんなデートスポットかはわからないけど、ツバサとコメットくんはこれで二回目のデートのはずだわ。
私とツバサの考察が正しいなら、ここで二人は恋人同士になっちゃう!!
二人のことを考えてしばらくモヤモヤしていると、再び『謎の声』が聞こえた。
『プレイヤー・ツバサとプレイヤー・コメットが恋人同士になりました』
ええ!?こんなに早く!?
待って、待って!二人の間にいったい何があったの!?
私の頭に色々な想像がかけめぐる。キスは前のデートでもうしてるはずだ。そこから『中学校』とやらのデートで何があったの!?
「考えれば、考えるほど不安になってきたよ」
私の中でどんどん不安が膨れ上がって来た。
今では、怒りよりも不安の方がはるかに大きい。コメットくんやツバサが手の届かないところにいってしまいそうに感じて、怖い。
私がグルグルめぐる思考で動けなくなっていると、さらに『謎の声』の続きが聞こえた。
『プレイヤー・ツバサは全員と恋人同士になりましたので、『修羅場』マスへ移動します』
その言葉に気を取られ、私は一時的に悩むのを止めることができた。
修羅場マス?って何だろう?
うーん、聞きなれない言葉だけど、何となく想像はつくわね。
つまり、参加者全員が愛し合った状態で、改めて皆が会うマスってことでしょ?
このゲームの課題は『恋人が他の人も好き』『自分が他の人も好き』という問題を受け入れることだもん。
だから、今はマスが分かれてて直接話し合うことがないけど、最後には決着をつけるマスがちゃんとあるってことなのね。
現状でもツバサとコメットくんが恋人同士になったと聞いただけで、怒りとそれを上回る不安でどうにかなりそうなのに……。
この先、コメットくんがハルナ姫とも恋人同士になってしまったら……私はどうなってしまうのかしら。自分でも想像がつかないわ。
私の頭にルシア戦で変貌したコメットくんの姿が浮かんだ。もし私があんな状態になったら、皆は助けてくれるかなあ?
『プレイヤー・ハルナがデートマス”神代遺跡”に止まりました』
私がまた悩み始めたところで、新たな『謎の声』が聞こえた。
どうやら、ツバサのターンが終わって、今度はハルナ姫がサイコロを振ったみたいね。デート相手は私かしら?コメットくんかしら?
『デート相手を選択します……決定しました!』
『プレイヤー・ハルナとプレイヤー・愛美を、”神代遺跡”に転移させます』
その言葉と共に、私の身体はハルナ姫の元にワープした。
【恋愛シミュレーションすごろく デートマス9 神代遺跡】
ワープした私の目の前に現れたのは……!!
見たこともない巨大な都市だ!
道は黒い何かでしっかりと舗装されている。周囲には五重塔の数倍はありそうな石の建物が、いくつもそびえたってるわ!!
また、建物の近くには黒く覆われた車輪のついた、乗り物のようなものが置かれていた。
でも、これだけ大きな都市なのに、人の気配は全くしない、一体ここは何なのかしら?
私がそう考えていると、突然 何者かが私を抱えて走り出した!
「え?何?」
慌てて犯人の顔を見た。その姿は何とも形容しがたかった、見た目は人に近いけど、体は金属だ。関節は歯車を組み合わせたような形状になってる。
機械人間?いや機械人形かしら?
見ただけでは全く正体が掴めなかった。
「ちょっと!放してよ!!」
私は必死に抵抗した!!もがいて機械人形の手から逃れようとしたけど、機械人形の力は強くて全く体が抜けない!
私は憎悪を膨らませ、それをエネルギーに変えた!!これは魔界で手に入れた魔神の技能だ!
それでも全く抜け出せない!この機械人形は魔神以上の力なのね。だったらこいつに『終焉神』を倒してもらえばいいんじゃ……。
「愛美ちゃんを離すのや!!」
ハルナ姫のその言葉とともに、エネルギー弾が飛んできて機械人形に命中した!!
機械人形の頭が吹き飛んで、私は地面に投げ出された!
「おおっと!危ない!!」
私は地面に落ちる前にハルナ姫に回収されたみたい。え、でもどうやって?投げ出された時点で地面との距離はほぼなかったよね?
「ハ、ハルナ姫?」
私は改めてハルナ姫の方を見た。ハルナ姫は見たこともない『二輪の乗り物』に乗っている。動物にひかせたり自分でこいだりしていない。
どうやって動いているの?
「どうやら、間に合ったみたいなのやね。あいつに攫われてたら、何されたかわからんのや」
「ハ、ハルナ姫、その乗り物は一体何?それに、その筒みたいなのは?」
ハルナ姫は肩に筒のようなものを抱えているわ。多分、これからさっきのエネルギー弾が出たんだと思うけど、これまた仕組みが全然わからない。
「乗ってるのは『バイク』なのや。筒は『バズーカ』なのやね」
名前を聞いても、全然わからない。けど、そっか。つまり魔力みたいなもので動いてるってことね。それならまだわからないこともないわ。
「こいつらみんな、この『神代遺跡』で見つけた神具なのやね。どうやら魔力やなくて、神様だけが持つエネルギー『神力』で動いてるみたいなのや!!」
「神力?」
魔力なら聞いたことあるけど、神力というのは聞いたことがない。
でも、神様版の魔力と考えれば、なんとなく想像はつくわね。
「そうなのや。王家に伝わる神話に出てくる謎のエネルギーなのやね。その証拠に、このバイクもう30㎞ほど走ってるのに、全然エネルギーの残量が減らんのや」
30㎞って言うと、確か10里くらいよね。え、ハルナ姫がサイコロを振ってから1分も経ってないよ?その間に10里も移動したの?
バ、バイクってすごい!!
「で、でもハルナ姫はお姫様なのに、どうしてここの道具に詳しいの?」
私の認識ではお姫様はお城の中にこもって、外交関係のときだけ出てくる感じよね。いいところのお嬢様で、恋愛研究なんてやってる人は私しかいないと思う。
「ハルナはな。あらゆる魔術具を作り、操れる『メカニック・マスター』の称号を持っているのや。魔術具はもちろん神具でも、ハルナに任せれば一発なのや」
それはすごい!!だったら、ここにある道具は何でも使えるのね。
「まあ、さすがに『神具』を『作る』のは無理やけど、使うだけならお茶の子さいさいなのや」
ハルナ姫は、そこで一度言葉を止めて、目線を遠くに移した。ハルナ姫が見つめる方向には金色に輝く、三角の巨大な建物がある。
「そんなハルナが、この遺跡の中で一番気になった建物があの『ピラミッド』や」
そう言って、ハルナ姫はピラミッドの方を指さし『あれを見るのや』と言った。
「ピラミッドの回りを薄い膜が覆ってるやろ?あれは『バリア』の神具で三重に守られているのや」
つまり、あの膜がある限りピラミッドには近づけないってことね。
でも確かに怪しい建物だけど、気になるからってどうしても入らないといけないってこともないと思うんだけど。
「それに、さっき愛美ちゃんを攫おうとした『ロボット』もあそこから出てきたっぽいのや」
「あの機械人形……じゃなくて、『ロボット』っていうのね。それが、ピラミッドから出てきたの?じゃあ、あの中にはたくさんロボットがいるってこと?」
そんな危ないところには、なおさら近づきたくないなあ。
「恐らくそうや。ロボットもそうやけど、あの中には色んな神具を作り出す工房がある可能性が高いのや」
神具を作り出す工場!!つまり、これまで見たような便利なものや危険な武器をあそこで作ってるってこと?
神具の工場があると聞いて、私は少し恐怖を覚えた。
ハルナ姫の乗っているバイク、魔神さえも上回る力を見せたロボット、そのロボットを軽く破壊したバズーカ
あんなのが量産されて、よそへ持ち出されたら、きっとたくさんの人が亡くなることになるわよね。
「それだけやないのや。ピラミッドからは魔力でも神力でもない、未知のエネルギーを感じるのや。これはもしかしたら歴史を変える大発見かもしれないのや」
ハルナ姫がひどく興奮した様子でまくしたてた。『未知のエネルギー』が見つかるのは、よっぽどすごいことらしい。
「神力をはるかに超えるエネルギーがあるとしたら、『終焉神』が倒せるだけやないのや。
移動や輸送、もしかしたら栽培そのものも……それより医療や、どれだけ寿命が延びるか!!」
独り言を言い始めたハルナ姫に対して、私は話を本筋に戻した。
「終焉神が倒せるの!?それができるなら、私たちは神様にならなくてもいいんだね?」
「その通りなのや。もちろん、恐らく制御するのも大変なのや。もしかしたら工房に入った途端、神界ごと吹っ飛ぶ可能性もあるのやね」
神界がふっとぶ!?それじゃあ、私もハルナ姫もコメットくんもツバサも……神界に住んでるすべての人達が死んじゃうじゃない!!
あまりのことに、私は怯えながら質問した。
「そんなに危険なものに近づいて大丈夫なの!?」
「何も知らんとほっとく方が危険なのや。恐らく中に制御してる人間はおらんのや。ということは機械が壊れたりしたら、神界がふっとぶ可能性があるのやね」
ほっといても神界がふっとんじゃうかも知れないなんて!でも、そうか。中に人がいないんじゃ、謎のエネルギーについて調べられるのは、ハルナ姫だけなのね。
「だから、『メカニック・マスター』のハルナ姫が、中の機械を調べて、勝手に爆発したりしないようにするってことなのね」
「そうなのや。なんとかできるハルナが見つけてしまったのやから、なんとかせんといかんのやね。」
ハルナ姫には、神界の人達を守りたいという強い意志があるみたいね。
ここまでに拾ってきた神具を、弄りながら、『これならいけるのや』と呟いている。
「でもあの膜が邪魔してるんでしょ?中に入れるの?」
「あれくらいなら、神術コードをハッキングしたら余裕なのや。ハルナの敵ではないのやね」
神術コード?って何だろう。いや、わかんないけど、つまりハルナ姫にはあの膜を消す作戦があるってことなのね。
「バリアはどうにでもなるけど、問題は中に何があるのかなのや。魔術具でも神具でもない『何か』があったら、ハルナでも手におえんかもしれんのやね」
ハルナ姫は、ピラミッドから未知のエネルギーを感じると言っていた。つまり、魔術具や神具みたいに、『未知のエネルギー』で作られたアイテムがある可能性もあるのね。
「そんなのがあるの?」
「あるかも知れんのや。未知のエネルギーを感じるからな」
結局は、『よくわからない』ってことね。何せ『未知の』エネルギーだもん。
「もし他の誰かが不用意に『何か』に触れたら、恐らく神界は滅ぶのや。やから、ともかくハルナが調べてみるしかないのやね」
そういうと、ハルナ姫はバイクで、ピラミッドを覆う膜に突撃した!
ドガアアアアアアン!!
ものすごい音がしたけど、膜もバイクも、もちろんハルナ姫も全然平気みたい。
「ハルナ姫、大丈夫!?」
「もちろんや!それより、今ので神術コードが解析できたのや!!」
そういうと、ハルナ姫は優しく膜に触れた。するとピラミッドを覆っていた膜が、突然 すぅっと消えてしまった!
「これで入れるはずなのや、ほら一緒に行くのや」
ハルナ姫が手招きするので、私も後ろについて、ピラミッドの中に入った。
そしてそのままハルナ姫についていく。どうも、ハルナ姫はどこに行けば重要な施設があるのか、わかってるみたいね。
そして一つの部屋の前に立って、いつになく真剣な表情で、『ここなのやね』と言った。
「やっぱりそうや。ここが一番未知のエネルギーが強いのや。ここに『何か』があるのやね」
そう言うと、ハルナ姫は私の方に向き直って『ここからは危険なのや』と言った。
「愛美ちゃん、恐らくこの中にはさっきのロボが、最低でも十体はおるやろう」
さっきのが十体!?私、ちっとも敵わなかったのに!あんなのが十体もいたら殺されちゃうよ!!
「やからな。愛美ちゃんも、このバズーカを持っておくのや。それから、このネックレスも下げとくのや」
そう言ってハルナ姫は、キラキラ光る首飾りをを渡してきた。
「外で拾ったのやけどな。これがあれば死ぬような目に遭っても、一回は持つはずなのや」
「死んでも一回は持つ!?すごいけど、そんな目にあいたくないよ!!」
いくら生き返れると言っても、死ぬこと前提で戦うのはヤダなあ。それに一回助かったとしても、敵が生きてたらもう一度殺されるだけかも知れないもん。
「もちろんハルナも、愛美ちゃんをそんな目に合わせるつもりはないのや。やから、これはあくまで保険なのやね」
そういうと、ハルナ姫はドアに手をかけた。開けないという選択肢はないのね。
死ぬかもと聞いて、私は恐怖を感じてるわ。でも、一応これでも修羅場はくぐってきてるんだ!きっと、ハルナ姫と一緒なら大丈夫よ!
そう、『アンデット・タウン』のときと同じだもん。『イベント』は二人が愛し合えば、乗り越えられるもののはずだわ。
そう思ったとき、ドアが光り輝いた。私とハルナ姫はロボットが出てくると思って警戒した。
すると……。
ズバアアアアアアアアアアン!!!
巨大な爆発が起こって、私とハルナ姫は吹っ飛ばされた!その瞬間、ハルナ姫が何かを投げた!すると私たちの回りを膜が覆って、爆風や地面への衝突のダメージを防いでくれた!!
「一体何が起こったの!?」
「あれを見るのや!!」
ハルナ姫が指さす先を見ると、さっきまであったピラミッドが粉々になっていた。そして、ピラミッドの数倍の大きさがある巨大なロボットがそこにいた。
「あ、あれは一体……?」
「ありゃ、神具の反応やないのやね。もちろん魔術具でもないのや。となると、あれはハルナの知らん未知のエネルギーで動いてる巨大ロボットというわけなのやね」
未知のエネルギーで動くロボット!!ハルナ姫の話では未知のエネルギーは、神界を滅ぼしてしまうほど巨大な力らしい。
「ど、どうするの?あれが暴れたら神界が無くなっちゃうんだよね?」
「そうなのやね……」
ハルナ姫は言葉に詰まった。さすがにこの状況でどうしたらいいかなんて、そう簡単には思いつかないわよね。
「方法はないこともないのや。未知のエネルギーには未知のエネルギーで当たるしかない。つまり、あの工房に入って使えそうなもんを持ちだしてくるしかないのや」
「で、でもピラミッドはあの巨大ロボが出てきたせいで、コナゴナになっちゃったよ?」
「そうなのやね。けど、方法はそれしかないのや。ピラミッドの残骸を漁って、どうにか壊れてないもんを見つけるしかないのやね」
あるかなあ、そんなの。でももし無かったら神界が滅んじゃうんだから、あると信じて調べてみるしかないんだよね。
「幸い人間サイズのロボットたちは、グチャグチャになっとるみたいなのや。工房に入るのを邪魔するやつはおらんのやね」
「で、でも巨大ロボの足下だよ!?踏みつぶされちゃうんじゃない?」
「一応、さっき投げた『ゴッド・ウォール』の神具で5分ほどは、バリアが続くはずなのや。その間にできるだけ漁るしかないのやね」
そういえば、さっき私たちの回りにできた膜は、未だに私たちを覆ってくれている。でも、これ5分しかもたないんだね。
それに、ハルナ姫の口ぶりからすると、もうバリアを張る装置は持ってないみたいね。
「ただバリアはあくまで神具ではったものや。巨大ロボの『未知のエネルギー』相手では通じんかも知れんのやね」
そこまで言ってから、ハルナ姫は『コホン』と咳ばらいをした。顔はいつになく悲痛な表情だ。可愛い顔が歪んでしまっている。
そして、『はぁ』とため息をついてから、言った。
「けど、このまま見てたら確実に神界ごと消し飛ぶのや。死ぬのが嫌なら、やれることをやるしかないのやね」
確かに放っておいたら、あの巨大ロボは神界を消滅させてしまう。今ここで何とかしないと、私たちも そしてツバサとコメットくんも死んじゃうわ。
何とかするしかない!!
私が歯を食いしばり、何とか決意を固めていると、ハルナ姫が額を抑え『仕方ないのや』と言いながら、話しかけてきた。
「それで悪いのやけど」
「え?何?私にできることがあるかしら?」
「工房にあるモンは、ハルナが見んとわからんし危険なのやね」
「うん、それはさっきも聞いたよ」
「やからね、ハルナがピラミッドの残骸を漁っている間、巨大ロボの気を引いとく人が必要なのや」
「え」
私は思いっきり動揺した。さっき固めた決意が一気にゆらぐ。初めてまともに戦う相手が巨大ロボット?
それに私は魔神の力を、うまく扱えるとは言えないわ。何より大きなエネルギーを生かす『必殺技』がないもん!
「で、で、でも!私、まともに戦ったこともないんだよ!いきなりあんなの相手に囮になるなんて!」
ハルナ姫は、もう一度ためいきをついた。そして私の目を見つめた。目にはわずかに涙が浮かんでる。
「ごめんな。でも、これしか方法が思いつかんのや。絶対、絶対愛美ちゃんに死んでほしくないのや。でもツバサにもコメットにも死んでほしくない」
私たちはしばらく見つめ合った。その間も周囲で巨大ロボットが遺跡を破壊している音が聞こえる。ここが神界のどこにあるかわからないけど、ロボットが遺跡から出てしまったら、きっと神界は終わりだ。
「そうだね。私もハルナ姫やツバサに死んでほしくないよ。それにコメットくんが死ぬなんて、絶対耐えられない!」
私はハルナ姫の手を強く握った。私もハルナ姫も体が震えてる。怖いのは一緒だ。
私はハルナ姫の瞳を見つめた。今度こそ、私の覚悟は決まったわ!
「わかったよ。ハルナ姫 わがまま言ってごめんね!必ず持ちこたえて見せるから、何とかあれを倒す方法を見つけ出してね!!」
「ああ!絶対なのや!!あんなん、一撃で倒せる『何か』を必ず見つけてやるのや!!」
ハルナ姫がそう叫んだ瞬間、ピラミッドの残骸の中で、何かが金色に光った!!
【王家の血を引くものよ】
何これ!?脳の中に直接、声が入って来たよ!?
【ハルナ王国・百五十代国王ヒルデスト・ハルナキングダムの血を引く者『ハルナ・ハルナキングダム』よ】
【ハルナ王国・百四十八代カムミムスヒ・ハルナキングダムの血を引く『マナミ・タチバナ』よ】
【汝らに、千年前、『太上老君』が神界に残した伝説の仙具を授ける】
その声が聞こえると、工房の中から、『二つの腕輪』が飛び出してきた!
そして、私とハルナ姫の腕にはまった!腕輪は私たちの腕に合うサイズにたちまち縮んでいった!
な、なにこれ!?
「愛美ちゃんが、ハルナ王国の王族!?い、いや今はそれよりも」
「分かったのや!!『メカニック・マスター』の力で!!」
ハルナ姫は、そう言って手のひらを天にかざした!
「冴えわたれ!月光の力!!」
ハルナ姫が叫ぶと、腕輪から機械の部品が飛び出した!!
「真月合体!!」
ハルナ姫が叫ぶと、無数の部品が巨大ロボットの形に組みあがっていった。
「完成!!爆撃王 ムーン・エクスプロージョン!!!」
そこには、あの暴れてる巨大ロボットと同じくらいの大きさのロボットが立っていた。
私は巨大ロボット……『ムーン・エクスプロージョン』を見上げた。これにハルナ姫が乗っているのよね?
そう考えていると、ロボットの『スピーカー』からハルナ姫の声がした。
「さあ、愛美ちゃんも合体するのや」
「ど、どうすればいいの?」
「お、そうやったのやね『燃え上がれ!愛の力!!真愛合体!!』と叫ぶのや」
ハルナ姫が言ったのと、微妙に違う台詞みたいね。使う人次第で決め台詞があるってことかしら。
それとも、ロボットごとに決まってるの?
いやいや、そんなことはどうでもいいわ。早く暴れてる巨大ロボットを止めないと神界が滅びちゃうもの。
私は満を持して、『合体』の台詞を叫んだ!!
「燃え上がれ!愛の力!!」
私の腕輪からも、巨大ロボットの部品が飛び出してきた!
「真愛合体!!」
私の言葉に従って、部品たちが巨大ロボットの形に組みあがっていった。
「完成!!神愛王 サン・ラブリー!!!」
神界の存亡をかけた戦いが、今 始まろうとしていた。