表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/202

たかしがヤバい、俺達もヤバい

たかしが拘束された頃、俺としずくはまだ学校で聞き込みをしていた。


だが、生徒の中にも行方不明者がいるという話が出てきた時点でこの件に関する調査を切り上げることにし、一旦教室に集まることにした。


俺としずくの間ではそう決めたのだが、どうしてもたかしと連絡が取れなかった。送ったメッセージは一応既読になっているんだが返事がないし、しばらく待っても教室に来るでもない。


不審に思って電話をかけてみたが出なかったので、廃屋に直接行ってみようかと話していると、やっとたかしから連絡が来た。


「暴力団に捕まった」


たかしは今の状況を端的に伝えてきた。奴はたまに笑えない冗談を言うタイプではあったが、今回はそういう雰囲気でもなさそうだ。


俺としずくは目を見合わせた。


「暴力団に捕まった?お前は廃屋の近くで聞き込みをしてたはずだろ?

それがどうして暴力団に捕まるんだ?」


当然の疑問である。廃屋と暴力団という二つの情報が、まるで繋がらない。


「廃屋の近くに暴力団があってさ、ヤクザの人に廃屋のことを聞いちゃったんだよ」


それにしたって、ヤクザの方からしたら無視するなり答えてくれるなりすればいいだけのはずだ。


「それがさ、今もヤクザの人に見はられてるから、詳しくは言えないんだけどね」

「なんか、ヤバい取引をあそこでやってんだって」


詳しくなくても、その情報だけで十分だった。まずい俺たちは思ったよりヤバい案件に

首を突っ込んだみたいだ。


行方不明者も暴力団に消されてたのか?だとしたら、たかしもヤバいが俺達もヤバい。


「しかし、暴力団に見張られてるのにどうやって電話してきてるんだ?」


「それが、そのヤクザの人たちがね。君たち二人を呼んできて欲しいっていうんだ。

取引の情報を口止めしたいからってさ」


冗談じゃない。口止めどころか永遠に口を封じられそうなあ話じゃないか。

しかし、このままだとたかしがまず殺されるな…。

今から警察に連絡すれば俺たちは助かるかも知れないが、たかしは間に合わないだろう。


警察に連絡すれば、俺たちは何もせず安全を確保するように言われるだろう。

それがベストだとは思うが、たかしのピンチに何もしないというのはキツイな。


俺が悩んでいると、しずくがスマホに話しかけた。


「たかし!今いるのは、あの廃屋ですね!?」


「あ、うん。拘束されてるし、逃げられないよう見張られてるけど、場所は

あの廃屋で間違いないよ」


どうせ監禁するなら、俺達にわからないところでした方がいいんじゃないか…と

思うが、今回は助かった。場所がわかるなら、まだ可能性はあるかも知れない。


「茂!今すぐ廃屋に向かいましょう!たかしを助けないと!」


「いやいや待て待て、俺たちが行ってどうなるってんだ。

無駄に殺されに行くよりは、警察に連絡した方が助かる可能性が高いだろ」


「それはそうですけど…。いてもたってもいられないじゃないですか!!」


それは俺もそうだ。しかし俺の命もそうだが、しずくの命を危険にさらすわけにいかない。


「そうだな…そうだが、危ないことはダメだ。

たかしだけじゃなく俺達まで殺されるかも知れないだろ?」


「でも…だって、それじゃ私たちは助かっても、たかしが…」


そこまで話して、ちょっと疑問が生まれた

取引を知られてまずいなら、何故たかしをすぐ殺さないんだ?


それに、何故俺達も取引のことを知ってると思った?

そもそも、どういう流れでたかしから俺たちのことを聞き出したんだ?


電話口のたかしの声には余裕が感じられた。もし、拷問を受けて喋らされたんだったら

もっと切迫した感じの喋り方になるんじゃないか?


とはいえ、たかしが暴力団に協力してるなんてことは、あり得ない。

正義感云々以前にメリットがなさすぎる。


やつらは、裏取引とかで金は持ってるかも知れないが、普通の高校生が暴力団と渡り合って、騙されずに正当な報酬を得られるわけがない。


そんなことは、たかしならわかるはずだ。


「ちょっとよろしいかな?」

電話口に知らないおっさんの声が出てきた


「こちらは、たかし君を預からせてもらっている者ですが」


電話先の男は穏やかな口調でそう言った。

声だけ聴けば優しそうなおっさんというイメージで暴力団と話しているとは

思えない。


「たかし君から君たちのことはよく聞いています。

君たちの住所も家族構成も、人相もね」


一瞬でも、優しそうなどと考えた自分を呪ってやりたい。

やつは俺達ばかりでなく、家族もいつでも殺せると脅迫してきやがった。


「我々は君たちとお話合いがしたいだけなんですよ。

これだけ警察の目が厳しい時代に、無駄なお仕事を増やしたくないものでね」


無駄な仕事…?遺体の処理ってことか?確かに警察に見つからずに処分するのは

大変だろうが…


「話し合いたって、何を話し合うんだ?だって、俺達が喋らないって言ったところで

信用なんてしないだろ?」


「まあその辺りも含めてですね。こちらも秘密を漏らしたどうか、

探るのに、ずっと人をあて続けるわけにいきませんから」


尾行するにしろ、あらかじめ盗聴器・カメラを設置するにしろ確認する人間が

必要になる。

いつまでかかるかわからない以上、確かにずっと見張るわけにもいかないだろうな


しかし、だったらやはり俺達を殺してしまうのが一番、後腐れがない方法だよな。

もちろん、警察に嗅ぎつけられたら殺人と違法取引の両方で捕まることになるんだから、リスクが高いのは間違いないだろうけど


「話し合いに行ったとして、その場で殺されない保証はあるのかよ?」


「先ほども申し上げたように、無駄なお仕事は増やしたくないのですよ。

それにただでさえ”処理”は面倒なのに、あなた方は学生ですから調整が必要な相手が警察だけではなくなってしまうのです」


思った以上に、俺達を殺すのは面倒らしい。大人と比べてもみ消すのに手間がかかるようだ。


「はぁ、仕方ありませんね。素直に来ていただければ無駄な労力をかけずに済んだのですが」


ヤクザがそう言うと同時に教室に屈強な男たちが踏み込んできた


「いやいやちょっと待て!ヤクザが教室に殴り込みなんて、先生たちは何をやってたんだよ!?」


「私たちが扱ってるのは大変人気の商品でしてね。そちらの教員にもお客様がいらっしゃるのですよ」


教員に違法取引の協力者が!?しまった。さっきの聞き込みで生徒にも行方不明者がいると聞いたばかりじゃないか!教師か保護者が協力しないとそんなことは不可能だ。


しかし…だとすると行方不明ってのは取引がばれそうになって始末したわけじゃなく、

誘拐自体が目的みたいだぞ。しかも帰ってきた人がいないってんなら、人身売買か…殺して臓器売買?だとするとこのまま捕まるとまずい!!


ヤクザたちに組み伏せられた俺たちは薬のようなものをかがされ、俺の意識は遠のいていった…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ