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ツバサがちょっと、イケメン過ぎるんだけど

1月12日、信孝転生は二周年を迎えました!

これからも、どうにか更新していくので、応援してください!!


【神界 ハルナ王国 王都フォレスタ 王宮 謁見の間】


「それじゃあ、さっそく『恋愛シミュレーションすごろく』を起動するのや。ちょっとびっくりするやろうけど、基本的には安全なのやよ」


 ハルナ姫がそう言うと、すごろくの『ボード』が白い光を放った!!すると、みるみる私たちの身体が小さくなって、『ボード』に吸い込まれたの!


「うええええ!?何これええええ!!」


 気が付くと、私たち四人は足元に『ふりだし』と書かれたマスに立っていた。つまり、私たち自身がすごろくの『コマ』になるってこと!?


「ここは、文字通り『ふりだし』なのや。ただし、このすごろくに『あがり』はないのやね」


「あがりがないの?」


 他の人を愛した恋人を愛する

 他のカップルの男性を愛する

 他のカップルの女性を愛する


「この3つを四人全員が達成せん限り、永久的にすごろくを回り続けることになるのやね」


「聞いてないよ!?」


 慌てて抗議する私に対して、横からツバサが落ち着いた声で言った。


「そりゃあ、言わなかったからね」


 ツバサは、相変わらず悪気が無さそうな笑顔を浮かべている。


 ツバサはキリっと引き締まった顔で、可愛いというよりはカッコいい。ハルナ姫はどこまでも可愛いから、対照的って言えるかもね


 それはいいとして、全員が三つの条件を達成するまで出られないんだったら、モタモタしてられないわ。


 さっそく始めないと!


「もう!だったら、早く始めましょうよ。どっちにしろ、たくさんデートをこなすしかないんでしょ?」


 急かす私に対して、ハルナ姫はすごく楽しそうに『ふふふ』と笑った後、少し深刻な顔をして言った。


「随分はりきってるのやね。けど、ホントに覚悟はええの?このすごろくをやったら、絶対 彼氏さんとの関係に『何らかの変化』起こるのやよ?怖くねえのや?」


「「何らかの変化」」


 私とコメットくんの声が揃った。そりゃあ、そうだ。恋人が他の人とデートを重ねたら、関係に変化が起きない方がおかしいわよね。


 何があっても、コメットくんを好きな気持ちは変わらないけど……。それでも、さすがに怖いのは怖いもん。


 隣にいるコメットくんの顔を見上げると、やっぱり不安そうな顔をしてる。


 っていうか


「そういう確認は入る前にしてよ!!」


 もちろん、ちゃんと説明はしてくれたし、入る前に覚悟も決めたけど、入ってから念押しするのは、ズルいと思う。出られなくなるのも言わなかったし。


「ねえ、愛美。どう思う?僕達は、お互いが他の人とデートをしたら、何か変わるかな?好きな気持ちは変わらないとして、どう関係が変わるのかな」


 コメットくんがそう呟いた。どう変わるかなんて、はっきりとはわからないわよね。


 でも、ここまでの会話で私の中に、確信ができた。それを言葉にしてみる。


「どんなことになったとしても、きっと今より良くなるよ!だって、二人の愛し合う気持ちは絶対に変わらない!!それに加えて」


 私はコメットくんの方に向き直り、彼の瞳を見つめて、想いを乗せた言葉で言った。


「この二人は悪い人じゃないよ!!ちょっと悪戯好きだけど、すごく皆のことを考えてるもん!!」


 そうよ。さっきから何だかんだで、私たちのことを気遣ってくれるし、そもそも神界を救うために、ためらいなくすごろくに入ってきたんだもの。


 それに、ハルナ姫もツバサも本当にユニークだ。私は、二人と話すのが楽しくなってきた。もっと話すとどんなことになるのか、今もワクワクしてる。


 二人と、もっともっと仲良くなりたいわ!


「だから、きっと二人と仲良くなって、私たちの愛も不滅なら、四人とも今よりずっと幸せになるよ!!」


 私はハルナ姫とツバサの方に向き直って「ねっ!そうだよね?」と笑顔で問いかけた。


 ハルナ姫は「本当に面白い子なのやね」と言ってニヤニヤしている。


 ツバサは私に微笑み返して「そうだね、皆で幸せになろう」と言ってくれた。


 そんな私たちの姿を見て、コメットくんの瞳に決意の光が宿った!!


「うん、そうか!今よりずっと幸せになるか。そうだよね。やってみる価値は大いにありそうだ。それに、僕も二人に興味が湧いてきた」


 コメットくんが、ハルナ姫とツバサの方を向いて微笑んだ。


「それじゃあ、よろしく!ハルナ!ツバサ!絶対に四人で仲良くなって、すごろくをクリアしよう!」


 コメットくんの熱い言葉に少し二人は照れたみたいだ。


 ハルナ姫は顔を赤くしながら、『ええなあ』と言ってにやけている。


 ツバサはいつも通りニコニコしてるけど、少し汗が出ているのと背中の翼がプルプルしてる。


 そこでハルナ姫が、変な雰囲気を振り払うために、『ゴホン!』と咳ばらいをした。


「ま、まあ。どうやら今度こそ、覚悟は決まったみたいなのやね。そしたら最初のサイコロは誰がふるのや?」


 ハルナ姫がそういうと、皆が静まり返った。最初に挑戦するのは怖いし緊張するよね。


 その静寂を破るように、ツバサが口を開いたわ。


「誰もいかないなら、僕がいかせてもらうよ」


 こういうところなんだろうな。ツバサは皆の危険を最初に被る決断をした。中々できることじゃないよね。


 これじゃあモテて当たり前かな。


 そう思っていると、ツバサの目の前に両手で抱えるほどの大きさのサイコロが落ちてきた。


 これを投げるのね。


 ツバサはサイコロを拾い上げて、抱えた。


「それじゃあ行くよ!それっ!」


 サイコロはゴロゴロと転がって行き、マスの『端』にぶつかってとまった。


 出たのは『3』の目だ。ツバサの身体が彼女の意思とは別に、何かに動かされて進んでいった。


『プレイヤー・ツバサがデートマス”舞踏会”に止まりました』


『デート相手を選択します……決定しました!』


『プレイヤーツバサとプレイヤー愛美を、舞踏会に転移させます』


 謎の音声がそう言うと、突然目の前の景色が変わった!


 そして、目の前に現れたのは……!!


「またお城!?」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【恋愛シミュレーションすごろく デートマス3 舞踏会】


 私たちがワープしたのは、お城の広間だ。そこでは、男女の貴族たちが手を取り合って何か踊りを踊っていた。


 私は、訳が分からなくなって、困惑した!ここでデートをするの?とても男女の逢引きの場には見えないんだけど。


 そんな私を見て、ツバサが優しく声をかけてきた。


「これは舞踏会だね~」


「舞踏会!?って何?」


 少なくとも、日本に住んでいたときには聞き覚えのない言葉だった。神界特有の何かなのかな?


「王侯貴族が、お城に集まって『貴族のダンス』を踊るんだよ。男女がペアになって、決められたステップを踏むんだ」


「へ、へぇ~」


 言われてみれば、確かに踊っている人たちは、皆 男女一対になってるみたい


 神界には、こんな催しがあるのね。貴族が集まって親交を深めるわけだから、日本で言ったら連歌の会みたいなものかしら。


「そして、ここに来たからには僕たちも踊らなきゃダメだよね」


「え!?何故!?っていうか、私 神界の踊りなんて知らないよ?」


 さっきから見た感じでは、彼らの踊りはかなり複雑みたいだもん。とてもじゃないけど、見ただじゃ真似なんてできないよ。


「大丈夫みたいだよ。僕も貴族のダンスなんて知らないけど『恋愛シミュレーションすごろく』のサポートで、自動で踊れるみたい」


 ツバサは、そう言ってなんだかそれっぽい手足の運びをして見せた。


 私も少し意識すると、それっぽい動きができた。これがすごろくの『サポート』なのね。


 そう思ってると、突然 私の体が光った!

 

 何事!?と思う間も無く、気づいたら 私の服がドレスに変わっていた!!


「おお~!可愛いじゃない」


 そう言ってるツバサの服も、いつの間にかカッコいい服装に変わっている。


「えへへ。ありがとう。ツバサこそ、すごくカッコいいね」


 ツバサの恰好は『タキシード』という服らしい。


 ツバサは私と自分の服を見比べて『なるほど』と言った。


「つまり、僕が『男性役』で愛美が『女性役』なんだね。じゃあ、僕が愛美をリードしなきゃいけないんだ」


 そういうと、ツバサは気取った足取りで私の方に近づいてきた。


「リードって?」


「僕が、二人でちゃんと踊れるように、愛美を助けてあげないとってことだよ」


 そういうと、ツバサは私の前に跪き、手を差し出した。


「お姫様、どうか僕と踊ってください」


「どわっ!?」


 私はツバサの行動に驚いて、変な声をあげてしまった。


 それにしてもカッコいい!それまでニコニコしていた顔をキリっと引き締めて私のことを見つめてくる。


 それを見ているだけで、なんだかドキドキしてきた。


 そして、私は思わずツバサの手を取り、彼女の言葉に答えた。


「は、はい!一緒に踊りましょう!」


 それから、私たちはダンスを踊った!曲調も足取りも、まるで知らないものだったけど、体が自然に動いた。


 それに、すごろくのサポートかも知れないけど、私が上手く動けるように、ツバサが補助してくれた!!


 私たちは、踊り続けた。踊れば踊るほど二人の息があってきた。まるで、ずぅっと前からコンビを組んでたみたい!!


 ツバサと一体化してる気分だ!すごく楽しい!!


 私たちが踊り終えると、周囲から拍手が起こった!これも『すごろく』の演出なのかな?


 そしてたくさんいる貴族の中から王様の格好をした人が歩み出て言った。


「騎士ツバサよ!姫に対し、そなたの愛を示せ!」


「愛を?」


 ツバサが聞き返すと、王様は持っていた錫杖を私の方に向けて、ゆっくりと宣言した。


「姫と口づけを交わすのじゃ」


 え、ええー!?いきなり何!?この超展開!!


 ま、まだ最初のデートマスだよ!?最初からこのテンションだと、最後の方には一体どうなるの!?


 と、というか!ツバサはハルナ姫の恋人なんだから、私と口づけなんて……!


「いいよ、しようか?キス……」


「ふ、ふえええ!?」


 ツバサは私のアゴを掴んで、私の瞳を見つめてきた。


 ツバサの瞳に私が映ってる……!


 私の心臓はバクバクと早鐘のように、鳴っている!今にも爆発しそう!!


「それじゃあいくよ」


 私は頭が真っ白になって、何も考えられなくなった!


 そうしてる間にもツバサの顔が近づいてきた。ダメだよ!私はコメットくんが好きなの!初めてのキスはコメットくんと……。


 チュッ


 あれ?


 ツバサの唇が触れたのは、私の唇じゃなくて、手の甲だった。


「騎士は、お姫様の手に口づけして、敬愛の意思を示すんだよ。知らなかった?」


 ツバサがいつものように、ニコニコと笑顔を向けてきた。


 こ、これはもしかして


 ま、またからかわれたーーーー!!


 私がそう思った瞬間、目の前の景色が移り変わった!!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【恋愛シミュレーションすごろく ふりだし】


 えーと、ここは『ふりだし』ね。周囲にはまだサイコロを振っていない、コメットくんとハルナ姫がいる。


 ツバサは多分、あのまま三マス目に取り残されたのね。


「おっ、帰ってきたね。大丈夫だった?」


 そう聞かれて、私はさっきのドキドキを思い出した。


 そして、私の口から思わず、言葉が漏れた。


「あんまり大丈夫じゃない」


 マズい。というか、これがすごろくの力なのね。


 二人にとって、最高のシチュエーションのデートを演出する。


 それでドキドキが止まらなくなっていつの間にか……ってことなんだと思う。


 いや、でも まだだもん。好きになんてなってない。ちょっとからかわれてドキドキしただけだから……。


「何か、あったの?すごく顔が赤いけど」


 コメットくんは、心配して私の顔を覗き込んだ。


 私の頭に、さっきのキスが思い起こされた。


 あああああああ!!


「だ、大丈夫……まだ、何とか」


 ヘロヘロの私を見て、ハルナ姫は『ヤバあ』と言った。


「なるほどなのやね。たった一度でこうなるとは、すごろくおそるべしなのやよ」


「そうか。ツバサとデートをしてきたことで、『何らかの変化』があったんだね」


 そう言われて、コメットくんの方を見る。何かあったってもんじゃないよ。もう大変だったんだから!


 大体ツバサだって、ハルナ姫という彼女がいるのに、私を誘惑したりして……。、


 いや、でもツバサは、ちょっと私をからかっただけで、あれで通常運転なのかな。私だけドキドキしてるんだったら、馬鹿みたい。


 私はぐちゃぐちゃになった気持ちを抑えるため、コメットくんに抱き着いた。


「うー……。コメットくん、しばらくこうさせて」


「それはいいけど、ホントに何があったの?これから、俺もデートするんだけど不安になるなあ」


「とりあえず、しばらくそうするんなら、ハルナがサイコロ振るのや」


 そう言って、抱き合う私たちを他所に、ハルナ姫の前にサイコロが現れた。


「おっとっと、意外と重いのやね」


 ハルナ姫は力が弱いのか、サイコロを持ち上げきれず、落としてしまった。


 サイコロがコロコロ転がって、『六』の目を出して止まった。


「『六』か。普通のすごろくやったら嬉しいのやけどね」


 今度はハルナ姫の身体が自動で進んでいく。


 って、そうかハルナ姫とツバサは恋人同士だから、デート相手に選ばれないんだよね。


 つまり私かコメットくんがハルナ姫の相手としてワープさせられるはずなんだ。


「ね、ねえ!!コメットくん!これからハルナ姫がデートマスに止まったら、私かコメットくんが飛ばされると思うけど」


 私は、一旦コメットくんから離れ、彼の顔を両手で挟んで叫んだ!!


「私、コメットくんが二人のこと好きになっても、大丈夫だから!!」


 周囲の風景が変わり始めた。次も飛ばされるのは私みたい。


 私は、聞こえるかどうかわからないと思いながら、コメットくんに言葉を伝えた。


「だから……四人で愛し合って、きっと神界を救おうね!!」


 そこまで言ったところで、私の身体がどこかへワープした。


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