通じ合った愛!~ついに魔神になった~
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【魔界 魔帝国 デスデーモン 首都 ツネザリア ランクマッチ・スタジアム】
「さすがは、ルシアさん。ものすごい愛のパワーだ。俺もまけてはいられない!!」
そういうと、コメットくんの周囲にルシアと同じくらいの黒い靄が立ち上った!!
そして、コメットくんの姿がさらに異形なものに変化していく。どうしよう!どうしたらいいの!!
私は必死に、コメットくんのことを考えた。愛が届けば、この変貌を少しは止められるかも知れない!!
でも、私の愛はあまり効果が無かったみたいで、それから数分もしないうちにコメットくんの変化は完成した。
見た目はドーム状の半球体ね。表面を黒い鱗がびっしりと覆ってるわ。
そして、そこから無数の砲台が生えてる。それが今のコメットくんの姿よ。
前にも『愛の機関銃』って技を使ってたし、弾丸系の上位種に進化したってことなのかしら。
「なるほど。さすがに私が見込んだだけはあるわ。とんでもないパワーよ。けど、じゃあこれはどうかしら?」
ルシアの靄が大きく膨れ上がったわ!!それにしても、ルシアだって黒い靄の力で戦ってるはずよね。
コメットくんは靄の力を使ったせいでこんな姿になったのに、どうしてルシアは綺麗なままで靄の力を使えるのかしら。
その方法がわかれば、コメットくんを元に戻せるかも知れない!!
そんな風に考えていたら、ルシアが何かの技を使った。
『暗黒奇跡・死霊の大祭』
ルシアがそう唱えると、ルシアの回りを覆っていた黒い靄が無数の人間の形になり始めた。
子供くらいの大きさの靄人間が、全部で数千体ほどよ。
私は恐ろしくなって、声を上げた。
「わ、わ、わ……何あれ!?」
私はすがるような目で、砲台魔物になったコメットくんを見上げた。何も反応はない。怖いけど、今はコメットくんには頼れない。
無数の靄人間が、コメットくんに向かって、ものすごい速度で飛び始めた。私の目ではほとんど見えないくらい早い。
『愛の無限連装砲』
砲台魔物となったコメットくんがそう呟いた。すると、体に生えた無数の砲台から、黒い靄でできた『みさいる』が撃ちだされた!その数は数千から数万ほどだわ。
しかも、靄人間を正確に狙って飛んで行ってるみたい。靄人間が避けても、当たるまで追いかけていくのね。誘導弾ってやつかしら。
ミサイルとぶつかった靄人間は、大爆発した!私は、コメットくんの陰に隠れて、頭を抱えて縮こまっていた。
でも、そっか。 私に攻撃しないってことは、コメットくんはちゃんと敵と味方の区別がついてるんだ。
つまり、自我がまだ残ってるってことよね。だったら、きっかけさえあれば何とか元に戻せるはずよ。
私が分析している間にも、コメットくんとルシアの戦いは続いてた。
無数に襲い掛かってくる靄人間を、コメットくんは必死に迎撃してる。でも、数が多すぎて、何体かがミサイルをすり抜けてコメットくんの砲台に引っ付いた!
ドガアアアアァァァァン!!!
砲台にくっついた靄人間が自爆し、コメットくんの砲台が一気に何十個か壊されちゃった!!
まずいよ!これまでだってギリギリで迎撃してたのに砲台の数が減ったら、もっとやられちゃう!!
そう私が思った瞬間には、もう無数の靄人間がコメットくんにとりついて自爆した。もっとたくさんの砲台が削られた!
どうしよう、このままじゃ私もコメットくんもやられちゃう!
けど、私が何かする前にコメットくんの身体から、さっきよりたくさんの砲台が生え始めた。
そこから、よりたくさんのミサイルが出て、靄人間を撃ち落とす!!いいわ!段々押し始めたみたい!!
靄人間がどんどん撃ち落とされていく。このままいけばルシア自身に攻撃が届くかも!と思っていたんだけど、突然コメットくんの身体に変化が訪れた。
コメットくんの身体が溶け始めちゃった!!
ど、どうしよう!?一体どうしてこんなことに!?
体が溶け始めると同時に、砲台からもミサイルが出なくなった。それでも、コメットくんの身体はどんどん溶けちゃう。
コメットくんの身体が半分くらい液体化したところで、ルシアは靄人間をけしかけるのを止めた。
そして、液状化したコメットくんを見て、ため息をついた。
「ふう、思ったよりあっけなかったわね。これが、コントロールする術も知らず力を求め続けたもののなれはてか」
ルシアは、呆れたような声でそう言った。そして、『そんなことより』と言って、コメットくんの身体に近づいてきた。
「さっそく『かけら』を『黒の核に捧げなくては』
「ちょっと待ちなさいよ!!」
私はたまらず飛び出した!!このままじゃ取り返しのつかないことになる。コメットくんが死んじゃう!!
このスタジアムでは止めは刺せない。けど、今の状態のまま戦闘が終わっちゃったら、きっと部屋に戻るまでに死んじゃうわ!
どうにか元に戻す方法を聞かないと!!
「『黒の核』って何よ!!一体、コメットくんに何をしたの!?」
「私は何もしてないわよ。その子が自分で崩壊しただけ。『黒の核』と一体化し過ぎるリスクも教えてあげたのに」
ルシアの話によると
【この世のあらゆる物質は『愛の核』が細胞分裂してできたものである。そのため、あらゆる物質には、今も『愛の核のかけら』が宿っている。】
「愛の核、そしてその『かけら』も純粋な愛よ。でも、強力な憎悪に常にさらされ続けると、変化を起こす」
ルシアは、『ほら』と言って溶けたコメットくんの一部分を指さした。そこには、小さい珠のようなものが、黒い光を放っていた。
「そうして『黒く染まった』愛の核のかけらを『黒きかけら』と呼んでいるの」
ルシアは、不気味な微笑みを浮かべたまま、話を続けた。声が上ずっているみたい。話すのが楽しくてしょうがないみたいだ。
「『黒きかけら』同士は融合することではるかにパワーを増すわ。そして、融合を繰り返し、『愛の核』の一割ほどの大きさに至った巨大な『黒きかけら』を私たちは『黒の核』と呼んでいる」
ルシアは恍惚の表情を浮かべながら、両手を大きく広げ、空を仰いだ!
「私たちは『黒の核』を信仰し、すべての愛の核のかけらを、黒の核に融合させる教団『純悪の愛』よ!」
何もかもわかんない。愛の核のかけらを、黒く染めて『黒きかけら』にする?『黒きかけら』を『黒の核』に融合させる?
言葉にしてみてもやっぱりわけがわかんない。
ただ、コメットくんがとてもよくないことをされたのはわかった。
私は、ルシアの言った情報をどうにか頭の中で消化しようとした。何とかコメットくんを救う方法を考えた!
そして、さんざん考えた結果、違和感に気づいた。
なんでコメットくんが先……?
私の方が弱いんだから、罠にはめるなら私の方がいいはずよね。けど、コメットくんを『黒く染めた』一体、何故?
私に何か特別な力があるのかしら。でも、一体どんな力があるっていうの?
そのとき、私の頭の中に、前にコメットくんに聞いた言葉が浮かんだ。
『すべてのダンジョンを活性化させ、ダンジョンが持つすべての力を引き出す『ダンジョンの申し子』。それがダンジョン・プリンセスさ!』
「ダンジョン・プリンセス……?」
私がふと発した言葉に、ルシアがビクンと怯えたのを感じた。やっぱり!!
ダンジョン・プリンセスには『黒きかけら』をどうにかする力があるんだ!!
そもそも変だったのよ。私とコメットくんの『愛の核のかけら』は双子星だっていうじゃない。
コメットくんが憎悪に汚染されてるのに、私がどうもなっていないなんて、何かあるに決まってるわよね。
私だって嫉妬したり、ルシアを恨んだりしてたのに、怪物になったりしなかった。
つまりダンジョン・プリンセスには憎悪を浄化する力があるってことね!!
でも、だったらどうすれば、その力でコメットくんを元に戻せるのかしら?
わからない。でも、何でもいいからやってみるしかないよね!!
愛があれば!!心が通じ合えば、きっと何かが起こるわ!!
私は溶けかかっているコメットくんに抱き着いた。
すると、ほとんど無意識に、私は自分の望みを口にしていた。
「私はコメットくんを、助けたい」
『政略結婚』じゃない。愛し合う夫婦は助け合うものだもん。助けられるだけじゃなくて、私もコメットくんを助けなきゃいけない!
今はもちろん、この先も助け合いたい。
だから!!
「教えて欲しいの。コメットくんが、『黒い靄』の力に頼ってまで、私を助けようとしてくれた理由を!コメットくんの私への想いを!!」
「お願い……!!」
私が、そう祈ると溶けたコメットくんから『意思』が伝わってきた。これもダンジョン・プリンセスの力なのかな?
それとも、私とコメットくんの『かけら』が双子星だからなのかも知れない。
私は集中してコメットくんの『意思』を受け取った。コメットくんから伝わってきたのはこんな言葉だった。
『僕の両親はダンジョンだった』
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『ダンジョン族』
山よりもはるかに巨大な肉体を持つ種族で、体内にダンジョンがある。
生き物なので動き回るため、冒険者たちにとっては攻略の難しいスーパー・レアダンジョンだ。
ダンジョン族は小人化の魔法を身に着け、相手の体内ダンジョンをクリアすることがプロポーズの条件になっている。
コメットの両親も互いのダンジョンを攻略し、結婚した。
コメットは、小さいときから両親のダンジョンを探検し、成長するに連れて、どんどんダンジョンへの憧れを強めていった。
そんな、ある日――――
村に『純悪の愛』がやってきた。ダンジョン族の持つ『愛の核のかけら』はダンジョンコアと呼ばれ、すさまじいパワーを持っている……。
やつらは、それを『黒きかけら』にして、黒の核のパワーを強大化させた。
両親と村の皆は殺されたが、コメットは生き残った。体が小さかったから、どうにか隠れてやり過ごした。
それから、コメットは親の仇をとろうなどとは考えず、ダンジョンを攻略する旅に出た。それがコメットの望みであり、両親の遺言でもあった。
コメットは、それから数年にわたって宇宙中のダンジョンを攻略した。
そして、地球に来て、愛美と出会った……!!
愛美との出会いは、何もかもが新鮮だった。これまで宇宙を渡ってきた経験があっても、なお新鮮だった。
空から降ってきた不審な男に、ほとんど警戒もせず近寄ってきたこと
コメットの境遇を根掘り葉掘り聞いて、この星の常識ではあり得ないことも信じてしまったこと
そして何より、ダンジョン・プリンセスだったこと
どれも、これまでコメットが訪れた、どんな場所でも経験したことが無かった!
そして、あの時、愛美と付き合うことになった!誰かと付き合うことも、もちろん初めての経験だった。
こんな人間は他にいない。かけがえがない。コメットの想いも、どんどん募っていたのだ。
かつて、コメットは『力』がないばっかりに家族を失った。でも、色んなダンジョンをめぐってきた今なら愛する人を守る『力』がある。
コメットは、そう思っていた。最初のEランクマッチでボロ負けするまでは……。
鍛えた力がまるでおよばなかったため、コメットは焦った!
そんなときに、ルシアに声をかけられたのだった。
ルシアが両親の仇の仲間だと気づいてたけれど、どうしても力が必要だった。今度こそ家族を守るために。
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そうか、そうだったのね。それは、つまり!
コメットくん。私を家族のように、というかもう夫婦だと思ってたってことでいいよね!?
家族として、ダンジョン・プリンセスとして、こんなに愛してくれている。
でも、多分 今限界を超えるにはもう一つ必要なの!!
だから、最初に付き合いだしたときと同じ質問をさせてね。
『私自身』の魅力はないの?
他の誰でもない。私じゃなきゃいけない。私だけの魅力は!?
そう考えていたら、コメットくんが口を開いた。テレパシー的なものじゃなく、コメットくん自身の声だ。
砲台魔物になっても、口はあったのね。
「き、君は……愛美は……」
やはり、口があるにしてもすごくしゃべりにくいみたい。それとも、意識がはっきりしないから、言葉を上手く文章にできないのかな。
それでも、コメットくんは必死に私の魅力を言葉にしてくれようとしてる。
「そ、そうだ……。て……天真爛漫」
コメットくんは、私が聞いたことのない四字熟語を言った。どういう意味だっけ?
「嬉しいときには喜び、悲しいときに泣き、イライラしたら怒り、楽しければ笑う」
コメットくんの声がはっきりしてきた。私に向けて、訴えかけるように話しかけてくる。
「そんな風に、感情を一切隠さず、言葉と態度に現す!その純粋さに、僕は惹かれた!」
だんだん気恥ずかしくなってきたわ。思った以上に、コメットくんは私を見てくれていたみたい。
「そして、この魔界で本当に辛くなったときは、心の底から僕を頼ってくれていた。」
そうだ。確かに、私はこんな姿になってもコメットくんに助けを求めていた。それを嬉しく思ってくれてたんだ。
もう!ルシアさえいなかったら、完璧にラブラブじゃないの!!本当に何してくれるのよ!
「そ、そして何より!!今、今 君は『僕を助けたい』と言った!!」
そこで、私はハッとした。私は、これまでコメットくんに頼ってばかりだったけど、この戦いで初めて、『私がコメットくんを救いたい』と思ったの。
夫婦は助け合うものだもんね!!
「僕がこれほど君を守りたいと思っている中で、君も僕を助けたいと言った!!こんな人には会ったことが無い!!」
そして、コメットくんはそれまで以上にはっきりとした、力強い声で言った!!
「だから、君じゃなきゃ!愛美じゃないとダメだ!!愛美しかあり得ない!!」
コメットくんがそういうと、彼の身体が金色に光り始めた。
そして私の脳内に聞いたことのない声が流れた。
――――システムメッセージ――――
個体:『コメット』が魔神に進化しました。
個体:『橘愛美』が魔神に進化しました。
え、ええっ!どういうこと!?私とコメットくんが魔神に?っていうか、今の声は何?
私がそう思っていると、突然 半球型のコメットくんに亀裂が入って、真っ二つに割れた!!
ええ!?これ大丈夫!?か、体が割れちゃったら、普通 死んじゃうんじゃないかな。
そう思っていると、割れたドームの中から人間のコメットくんが出てきた。
私は思わず抱き着いた!!
「コメットくん!良かった!!無事だった!良かった!!」
私は泣きながら、コメットくんの胸に顔をこすりつけた。間違いなく、人間のコメットくんの感触だ!本当に元に戻れたんだ!やった!!
「あ、ああ。そうだね。そうだ!!ありがとう!愛美のお陰で戻って来れたんだ!」
コメットくんが、私を抱きしめ返す。ああ、よかった。もう一度、コメットくんと仲良くできる日が来てよかった。
「愛美が愛を諦めず、僕の愛を呼び覚ましてくれたおかげだ。それによって、僕は自分の憎悪をコントロールし、エネルギーとして使えるようになった」
「憎悪を使う?」
それってつまり、ルシアがやっていたみたいに、黒い靄を自我を保ったまま操れるってこと!?
それも魔神になったから、もっと桁違いのパワーで……って、あ!!
「そう言えば、私とコメットくんが魔神になったって!!今のコメットくんにも聞こえたの!?」
「あ、ああ。聞こえたよ。それに体にパワーが溢れてる。黒の核から流れ込んでくる憎悪が、すべて愛に変換されてるんだ。この力があればどんなダンジョンだってクリアできそうだよ!」
言ってることが、いつものコメットくんらしくて、安心した。そうだ。これがダンジョン大好き・コメットくんだ!
私が単純に喜んでいると、突然ルシアが叫んだ。
「黒の核と一体化していながら、すべての憎悪を愛に変換しているですって!?そ、そんなことが可能なのか。だったら何としても邪皇にお伝えしないと……!!」
それを聞いたコメットくんは、ルシアの方に向き直って睨みつけた。
「ルシアさん、僕は人がどんな宗教を信仰しようが自由だと思っている。また、君たちが誰かを酷い目に合わせるのも、勝手にすればいいと思うよ。止めたりしない」
コメットくんは、そこで一度言葉を止めた。そして低い声色を使って脅すような口調で言った。
「けど、貴方達は僕の家族を傷つけた。両親を殺し、今また愛美を危機に追い込んでいる。許すわけにはいかない。お仕置きを受けてもらうよ」
そう言って、コメットくんは右腕を天高く掲げた!
『暗黒奇跡:流星群』
コメットくんがそう叫ぶと、天から無数の『流れ星』がルシア目掛けて、落ちてきた!!
ヒューーーーン!!ドガッ!!ヒューーーーン!!ドガッ!!
ドガッ!!ドガッ!!ドガッ!!ドガッ!!ドガッ!!ドガッ!!
「こ、これはすばらしい。星を落とす魔法なんて見たことも聞いたこともない!!ああ、黒の核よ!邪皇マバタよ!!どうぞご覧ください、私たちの求めるものはここに……!!」
ゴガァァァーーーーーン
ルシアが何か言い終わる前に、それまでの数倍巨大な隕石がルシアの頭上に落ちて、ルシアを押しつぶしちゃった。
「ぐげっ!!」
「あーっと!!コメット選手の『星を落とす魔法』により、ルシア選手が気絶してしまったーー!!勝負あり!!『コメット・愛実コンビ』Aランクマッチ三連勝だーーーっ!!!」
やった!!ホント?だよね!!やった!!ルシアに勝った!!Aランクマッチ優勝だあああ!!
「やったね!コメットくん!!ルシアに勝ったよ!魔神と戦えるんだよ!!」
「ああ、すべて愛美のお陰だ。あのまま溶けて無くなってしまうかも知れなかったと思うと恐ろしいよ」
私たちが話していると、アナウンサーが言った。
「さて、それではAランクマッチを勝ち抜いたお二人には、魔神に挑戦してもらうことになります!!」
「ええっ!?今から戦うの?少し休ませてくれても……」
私がそう言うと、闘技場全体に、重く低い声が響き渡った。
「我と戦う必要はない。そなた達はすでに魔神に至っている」
この声は……?もしかして魔神なの!?
「我と戦うのは、魔神となるべき資格があるかどうか試すためだ。すでに魔神に至ったお主たちと戦う意味はない」
小さな声で『下手に戦って怪我したくないし』という言葉が聞こえた。
「お主たちは、これから神界に向かい真の神となるのであろう。ならば、早く魔界を去るが良い」
「「真の神!?」」
あまりにも興味を惹かれる言葉が出たので、私は思わず魔神に質問してしまった。
「真の神って何!?どうやったらなれるの!?なったら何ができるの!?」
あ、しまった。興奮し過ぎて魔神相手なのに、敬語で話すの忘れちゃった。
「魔神となり、さらに神となったものは、自ら新しい宇宙を創造する神、すなわち創造神となる」
「「宇宙を創れる!?」」
また、私とコメットくんの声が揃った。宇宙を創るなんて、途方もなさ過ぎてわかんない。そう思って、コメットくんの顔を見ると、ものすごく期待に溢れた顔をしていた。
「『新しい宇宙』が創れる!?それはつまり、僕の僕だけの新しい宇宙に、僕だけの新しいダンジョンを無数に……い、いや宇宙そのものをダンジョンにすることだって……!!」
コメットくんは、ダンジョンだらけの宇宙を創る妄想に浸っていた。
「よおし、そうか。そうだったのか」
コメットくんは、さらに妄想を膨らませているみたいだ。ガッツポーズで何度も『よし』と言っている。
「僕はこのために生まれてきたんだ。ダンジョンを極め、ダンジョンの宇宙を生み出すために生まれてきた!!」
遠い目をして空を見つめながら、コメットくんはそう言った。
そして私の手を握り、言った
「さあ!!ぐずぐずしてる暇はないよ!!次の目的地は神界だ!!」
――――システムメッセージ――――
個体:『コメット』『橘愛美』の帰還の意思を確認しました。
二人を真愛の塔に転移させます……。