幼馴染の遊びに付き合ってたら、ヤバいことに足を突っ込んだらしい
俺の恨みの大元…始まり…
俺の脳裏にあの日の風景が鮮明に浮かんできた。
死ぬ前の走馬灯なのか、何としても妖気を身につけるべく脳や体が動いてくれているのか?
あの日の…俺とたかしとしずくの悪夢がよみがえってくる
あの日、たかしと俺はいつものように学食で昼飯を食いながら駄弁っていた。
「これはこれは黙っていられないですよっ!」
そのとき、しずくがすごい勢いで走り寄ってきてそう叫んだ。
これもまあいつものことだ。
しずくは新聞部で、いつも何か真新しい情報を追っていた。
ただ情報は足で稼ぐというのが彼女の信条で、つまり幼馴染の俺とたかしは
彼女の足として、いつも聞き込みを手伝わされていた。
もちろん嫌だったわけではなく、昔からのじゃれ合い、バカ騒ぎの一部として楽しんでいた。
今回の事件も、いつものように3人で持ち寄った情報をしずくが面白おかしく脚色して、
話題性だけはある適当なゴシップ記事に仕上がるはずだった。
「私たちの通学路の途中に古びた廃屋があるでしょう?」
なんでもしずくの話によると夕方あの辺りを通りかかった人が何人か行方不明になってるらしい。
「つまりですよ。きっとあの廃屋には逢魔が時だけに開く異界の門があると思うんです!」
しずくもそんな素っ頓狂な話を本気で信じてるわけじゃないんだろうが、ゴシップ記事のネタとしては悪くないように思えた。
あとは噂の出どころを突き止めて、それっぽく肉付けしていくことだな。
あと、記事にしても持ち主や近所の人に迷惑が掛からないかを調べる必要があるだろう。
「ということらしいんです!ですから茂とたかしも調査に手を貸してくれませんか?」
しずくがものすごい剣幕でまくしたてた。これもいつものことだ。
俺達に断る理由はなかった。
彼女の掴んでくる情報はいつも面白いので、俺とたかしも心待ちにしていた。
そこで俺たちはとりあえず3手に分かれて聞き込みを行うことにした。
通学路の廃屋だから、聞き込みをするとしたら生徒や教師、そして廃屋の近所に住んでる人たちが対象になるだろう。
元々話好きで誰とでも打ち解けられるしずくには難易度の高そうな先生方からの聞き込みを担当してもらう。
たかしは人懐っこく振舞ってはいるが、人と話すのは苦手で俺達以外には心を開かない。
よって普段から慣れてる人の多い、廃屋の近所の聞き込みを担当してもらった。
問題の俺は…、一応これでも人付き合いは苦手ではないつもりだ。
しかし時と場合によっては話題を切り出しにくかったりタイミングを見誤ったりということはある。
どちらかというと不器用なのだと思って欲しい。決してビビってるわけではないのだ。
というわけで俺はクラスメイトをはじめとする学生からの聞き込みを担当することになった。
いつも通りの日常だった。
この調査があんな事件に繋がるとは、この時点の俺たちは夢にも思わなかった。
問題が起きたのは調査を始めてから3日目だった
俺達も、こんなゴシップネタで3日も聞き込みを続けることになるとは思ってなかった。
しかし聞き込みを進めていくうちに、本当にあそこで行方不明になった人がいるらしいということが判明した。
そこで少し突っ込んで、行方不明者の家族や警察関係者に聞き込みをしていたのだ。
しかし聞けば聞くほど思っていた以上にヤバそうだという結論にいたった。
俺達だってバカじゃない。
行方不明者が異界の門に吸い込まれたと言われるよりは、誰かに誘拐されたと言われる方がよっぽど信憑性があることぐらいわかる。
行方不明者が、なんらかの事件に巻き込まれたんだとしたら
俺達が手をだして良い問題じゃない。危険すぎるだろう。
そんなわけで、危険を感じてそろそろ聞き込みをやめようかと思っていたとき、事件は起こった。
たかしは廃屋の近所で聞き込みをしていたのだが、声をかけた相手が暴力団員だった。
どうしてそうなったかといえば、事件後に警察が調べたことによると、なんとあの廃屋は暴力団の「秘密のビジネス」に使われていたらしいのだ。
どうも異界に連れ去られるという噂を流すことで、あの時間帯に廃屋に近づく人を無くし、その間に廃屋で「商品」を受け渡していたらしい。
いくらなんでも、粗すぎる作戦だ。違法なものを取り扱うならもうちょっと慎重にやるべきだろう。
俺たちは放課後から聞き込みを始めて、日が暮れ始めるまでやっていたから「秘密のビジネス」の時間に差し掛かってしまい、たかしが見張りの暴力団員に廃屋について聞きこみをしてしまうという事態になったということだ。
「秘密のビジネス」について」知られたと考えた暴力団員はたかしを拘束し、廃屋に閉じ込めた。