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1話:転生と死亡フラグ

 俺の名前は高木茂、絶賛ニート15年目のナイスガイだ。親からお小遣いをせびって、エロゲーにいそしむ毎日だが特に不自由はない。まあ、さすがにそろそろ「親が死んだらどうしよう」ってのは思うがな。


 そんなある日のことだ。起きたら周りの雰囲気が寝る前と明らかに違っていた。

何せ馬に乗ってどっかに向かっている。俺は乗馬の経験なんかないはずなんだが…。どういう夢だよ。


「信考様、今日は正念場でございますな」

(あ?なんだこそおっさん、俺に話しかけてんのか?俺は信考なんて名前じゃないんだが…。それに正念場って?)

「信長様が亡くなられ、あの猿めが仇を討ってしまいましたからな。ここは何としても信考様が父上の跡を継がれ、猿ごときに大きな顔をさせないようにしなければ」


(あ?信長?それに猿だと?何言ってんだこのおっさん。戦国時代にでも来たつもりか)

そういえば、おっさんの来てる服は鎧甲冑だ。戦国時代のコスプレにしても凝り過ぎだろ…


「えーと、おっさんはなんで、武将コスしてんですか?これから即売会とかに行くの?」

「そくばい…かい?何のことでございましょう?それにおっさんとは何ですか。ワシはこれでも筆頭家老ですぞ!」


筆頭家老?信長とか猿とか言ってたし織田家の筆頭家老って柴田勝家か?確かにそれっぽいヒゲだけど…。


「なるほど、武将コスじゃなくて勝家コスなんですね」

「ふざけている場合ではないですぞ。猿が開いた今回の会議で信長のお世継ぎ、織田家の領土配分が決まるのでございます」

「信忠様もお亡くなりになられた以上、なんとしても信考様に織田家の当主になっていただかないと」


やべー、このおっさんガチだよ。しかしよく見ると俺の周りにも鉄砲や槍を持った男たちが何人か俺を護るようについてきている。

なんだマジか。ネットで戦国武将に転生・憑依とか読んだことあるが、まさか俺の身にも起こったのか?

でもなんだよ信考って!?織田信考か?ってことはもしかして、このままだとあと何年かで秀吉に殺されるじゃんか!

「そろそろ清州城につきますな」


やべー、織田信行とかなら逃げりゃあ助かっただろうが、この場合、政治系だからな。そもそも前世でwikipediaで調べたとき「信考・信雄は清須会議に参加させてもらえなかった」って書いてあったんだよな。


じゃあ助かりようがねえじゃんか!うーん、秀吉に目をつけられてるのが問題なんだから、いっそ何とかして降伏してみるか?信雄は三方が原で秀吉と講和したあと何だかんだで生き残ってるからな。要するに秀吉が天下とるのを邪魔しなきゃいいんじゃね?


そんなことを考えながら、俺とおっさん(勝家)は清州城に到着した。



~清州城内~

「なんじゃと!この猿めが!」

おっさんのけたたましい叫び声が場内に響き渡る

「何だも何もにゃあですよ。信考様・信雄様を会議にさせてまうと、必ずお二人で跡目を争われます。」

「それじゃあ、下手したら織田家同士で分かれて争うことになります」

「ここはご嫡孫の三法師さまを跡継ぎにして、織田家をまとめんと」

「何を言うか!三法師様はまだ5歳じゃろう!5歳に天下が務まるか!」

「まあ、この件はもう丹羽長秀様も了承済みですて」

「なんだとっ!貴様、裏でこそこそと根回ししおって…」


やはり話が悪い方向に向かっていく。やっぱり俺はこの会議に参加できないらしい。

「じゃあ、すまんですけど信考様は向こうの別室で待っててちょーです」

だが、ここで秀吉に逆らってもあとで殺される可能性が高まるだけだろうな。腹の探り合いなんて、社会不適合者の俺には無理だし会議のあとで誠意を見せるのが精いっぱいだ。


「では勝家殿、行きましょー」

「ふ、ふむ…」


こうして勝家と秀吉は清州城・当主の間に向かっていった。


待たされている間、俺は考えた。どうすれば殺されずに済むか…。


1.秀吉をなんとかして殺す

2.秀吉に命乞いして、なんとか反意がないと認めてもらう

3.他の大名家に亡命する

4.南蛮人に外国に連れて行ってもらう


3はダメだな。どうせ秀吉が天下をとるんだからあとでもっと立場が悪くなる。そもそも信用してくれる大名家なんてないだろう。

4も厳しいぞ。数年で南蛮人と仲良くなるなんて無理があるからな。それでも火薬のたくさんあるとこで内政チートできたら…という妄想はしてしまうんだが。


1に関してはすでにある程度でかい勢力である秀吉を倒すのは厳しいよな。そうそう確か信考(俺)はこの清須会議で美濃一国だけを与えられるんだが…。賤ヶ岳の戦いまでにろくに国内をまとめ切れずに賤ヶ岳の前哨戦として信雄の命令(実質秀吉の命令)で自害させられるんだったか…。


やべー、俺余命あと半年~1年ぐらいってことか!?しかも会議に参加できないから、美濃もらうのは既定路線だし…。うーむ、やっぱりごねて会議に参加させてもらうべきだったか?しかし秀吉に逆らうのはよくないし…。


うん、やっぱり誠心誠意、秀吉に土下座して助けてもらうのがいいな。しかし俺ってこれでもちょっとした権力者なんだよなあ。信長の息子だし、跡継ぎ候補だったわけだし。このまま謝っても多分、警戒されるよな。

だから降伏条件として


1.お市と秀吉を結婚させる

2.岐阜城は秀吉にあげる

3.出家して二度と表舞台に出ない


あたりが必要かなあ。でもお市と秀吉の結婚って俺がどうにかできるのか?多分、歴史上の「勝家とお市の結婚」ってのは信考が強く推したから実現したはずだ。俺がなんもしなければ秀吉と結婚してた可能性もあるだろう。あいつ、ねねさんっていう超良妻賢母がついてる癖に、超女好きだからな。種無し疑惑あるくせに。


そんなことを思ってたら、声をかけられた。


「信考ではありませんか。ここで何をしているのです」


ん?なんか超絶美人な女の人が話しかけてきたぞ。結構年はいってそうだけど、それを感じさせない魅力がある。美魔女ってやつかな。


「え、えーとなんか、織田家の跡継ぎを三法師一本に絞るとかで、俺と信雄は参加させてもらえなかったんですよ」

「なんですって?あの猿の差し金ですね。まったくあのような下賤のものがどうして…」

んー…。もしかしてこの超絶美人がお市か?濃姫ってセンもあるかも知れんが…

「信忠が無くなってしまった以上、兄上の跡を継ぐのはお前しかおりません。どうして素直に追い出されているのですか!」


あー、兄上っていったな。やっぱお市なのか。っていうか思ったより家のこと考えてるんだな。


「えー、でも結構怖いですよ。あの猿。下手したら切腹とかさせられちゃうかも知れないですし」

「切腹が怖くて武将が務まりますか!」

「い、いやだってやっぱ死ぬのは怖いじゃないですか」


うーん、まずいぞ。秀吉との結婚を切り出すどころじゃなさそうだ。


それから、小一時間お市に心構えについての説教を受けた。思ってたより苛烈な人だな…。確かに勝家と馬が合うかも知れない。元旦那の浅井長政がどんな人だったは知らないけど…尻に敷かれてたんだろうか。


そうこうしてる内に会議が終わったみたいだ。当主の間の方が慌ただしくなり織田家の武将たちが部屋から出てくる。

とりあえず秀吉をみつけて土下座しないと…。


俺は廊下で秀吉を見つけ、声をかけた

「ひ、秀吉どにょっ!!」

秀吉はもちろん、周囲にいた武将たちが一斉に振り返る。

「お、おは…お話しがありましゅっ!!」

俺は緊張しすぎて完全にカミカミだった。女子なら可愛いがおっさんがやる分には不気味である。



「おや?信考様じゃにゃーですか。そうそう会議は終わりゃーしたよ」

「やはり信長様の跡継ぎは嫡孫の三法師様で決まりですにゃ。あと信考様には

三法師様の後見として岐阜城に入っていただくことになりゃーした。」

「そ、そうか。い、いや待てしかし」

「これは家臣総意の決定事項でゃーすから、従ってもらわんと困りゃーすで」

「あ、ああ。それはもちろんわかっているが…」

ま、まずい。このまま岐阜城に行ってしまうと、数か月後に俺は死ぬ!ならば!

ここだ!ここで決めるんだ!


その場に座り込み、額を床に押し付ける。本当なら焼き土下座で誠意を示したいところだが、医療の進んでないこの時代に顔が焼けただれてしまうと、破傷風とかで死んでしまう恐れもあるからな。


「ちょ、信考様!何をしとりゃーすか!!」

「俺にはお前に対する敵意は一切ないんだ!!どうか命だけは助けてくれ!!」

「な…!!」

「そ、それでも信長様の息子ですか!敵に命乞いなど…!!」

脇から勝家が叫んでくる。


「助けろもなんもワシは信考様を殺す気にゃーてありませんで?」

「ほ、ほんとか!?」

い、いやまてこの猿顔に騙されてはダメだ。大体、前世の俺の顔よりは大分マシじゃないか。それにこいつはリア充だ。騙されてはダメだ。


「だ、だがこのまま行けば俺は半年後にお前に岐阜城を責められて自害することになる。勝家戦の前哨戦としてお前に降伏し、自害させられてしまうんだ!」


「そにゃーこと、するはずにゃあでしょう!」


口ではこう言っているが秀吉の表情が一気に警戒感を増している。自分のやろうとしてたことを看破されたせいか?


~秀吉サイド~

信考様は突然、何を言い出したんだ?

確かにワシは、まず勝家殿にやった長浜・信考様の美濃・滝川殿の伊勢あたりを攻めて畿内近郊を安定させてから、北陸に攻め入ろうと思っとったぎゃ…。


そいでも信考様は利用価値があるがね。簡単に殺しゃーしたら意味がにゃあて。降伏させて信雄様と見張りあってもらうつもりだったんだぎゃ。


しかしここまで警戒されたら、ちょっとまずいなも。何かの拍子に暴走さりゃーしたら、勝家殿を攻めるどころじゃにゃぁて。


とりあえず、信考様は必要以上にワシを恐れとるなも。「何でも言うことを聞くと言わーすなら、受け入れがたい条件を提示してそこから寄せて行くのがええて。


~信考サイド~

秀吉が考え込んでいる…。俺の処分に迷っているのか?やばいなやっぱり警戒させ過ぎたか。うーん、ここはもう一発インパクトのある土下座をやってみるか?どげ○ん途中まで読んでたからバリエーションなら…。


「ほいだら、信考様。美濃・岐阜城を手放した上で剃髪して、ワシの選んだ寺に入ってちょう。もちろん監視は付けさせてもりゃーますて」

「おおっ!!出家すれば殺されずに済むのか!!だったらさっそく出家するぞ!」

「ちょ、ちょう待ってちょお。ホントにいいんですきゃ!?大名の身分を投げ捨てることになりゃーすよ!?」

「いやいや、死ぬよりマシだ。まあ監視が付くとエロいことするときに困るかもしれんがそれはいい」

「…………ま、まあわかりゃーした。ほんだら、数日後に使者が行きゃーすて、準備しとってくだしゃあ」


こうして俺は、坊主になることが決定した。


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― 新着の感想 ―
[一言] 浅
[良い点] 織田信孝って興味深い人物ですが、壮絶な最後でした。織田家でありながら神戸四百八十人衆を率いたんだから、転生小説なら面白いですね。
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