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邪神の牲  作者: あすか
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第76話 最後の復讐⑥

「……はっ!?」


 僕の目の前で一人の男が目を覚ます。


「よぉ。目が覚めたか」


 僕はその男の腹に蹴りを入れる。


「がぶっ!? げ、げぼっ、なんっ!?」


 突然の痛みに男が体をくの字に曲げ悶絶する。


「流石に赤子じゃないから、この程度じゃ死なないか」


 そう言って今度は男の顔面に蹴りを入れる。


「あぎゃああああ!?」


 男が両手で顔面を押さえ痛みに声をあげ、足をじたばたと動かす。

 僕はその足に槍を突き刺す。


「がっあ、あぁ、ぁぁががぁぁ!!!」


 顔を押さえていた手が今度は足へ。


「ははっ忙しいなおい。よし、押さえやすいように手伝ってやろう」


 僕は槍を足から引っこ抜く。


「ぎやああああ!!!」


「ったく。槍を抜いたくらいで大げさな」


 僕はこんな悲鳴はあげなかったぞ。


「あああ……て、てめぇは!?」


 苦痛に顔を歪ませながら僕を見ると、その表情が苦痛から怒りへと変化する。

 どうやら僕が誰か分かったみたいだ。


「へぇ。10年経っても僕の顔を忘れてなかったのか」


 子どもの頃と随分変わっただろうから、てっきり気づかないと思ったけど。


「お久しぶりですね。父さん」


 父さん……か。ふふっ。

 そんな呼び方したことなかった癖にと自嘲する。


「忘れるわきゃねぇだろ……気持ちわりい忌み子のことをよ」


 そう言って父は僕を睨む。


「気持ちが悪い忌み子……ねぇ」


 この状況でそんな悪態が付けるんだからホント大したもんだよ。


「なぁアンタは自分がどうなったか覚えているか?」


 僕は怪我した足を踏みつける。


「がああ……やめ……やめろ!?」


 僕の足をどかそうと足を掴むが……その手には全く力が入っていない。


「あっくそ。アンタの血で靴が汚れちゃったじゃないか。責任とってくれよ」


 僕は汚れた方の靴を男の口に入れる。


「あがっ!?」


「ほら、早く舐めて拭き取ってくれよ」


 僕はグリグリと口の中に押し込む。


「あ~もう。今度は唾液でベトベトじゃないか」


 仕方がないから父の服で靴を拭う。

 父は靴が口から抜けたことで噎せて抵抗できないでいる。


「とりあえず……説明したいから黙ってくれるか?」


 僕はそう言って父の心臓に槍を突き刺した。



 ****


「……んん」


 父が目を覚ます。


「よお。目覚めの気分はどうだ?」


 話が進まないから今度は蹴らない。

 というか、蹴れない。

 今の父はさっきみたいに寝ているわけじゃなく、磔にされているから。


「てめぇ……くそっどうなってやがる!」


 父が必死に抜け出そうとするが、首以外動く気配がない。


「無駄だ。どうやってもそこからは抜け出せない」


「てめぇ……どういうつもりだ!!」


「どういうつもりって……聞こえていただろ? 復讐だよ」


 何を当たり前のことを。


「それより……アンタは自分の状況を把握しているのか?」


 僕はさっきと同じ質問をする。


「ついさっきアンタは僕に何をされた? そもそもアンタは最初に目が覚める前に何をしていた? 何をされていた?」


 僕がそう言うと、父は少し悩んで……何かに気づいたようにハッとする。


「俺は……奴らに裏切られて死んだはずじゃ……何で生きている!?」


 やっぱり父は殺されたのか。

 裏切られたってことは……いつも一緒にいた奴らのことかな。


「それはアンタが不死の忌み子だったから……だろ」


 もちろん父が不死の忌み子なわけはない。

 単純にベルのお願いを使って生き返らせただけだ。

 そして生き返らせた後で、教授と同じ不死になる魔法を使った。

 そのため、今の父は10日間限定の不死状態となっている。


「俺が……俺が不死の忌み子だと!? ふざけるな!!」


「ふざけるも何も実際に生き返ってるんだからそうなんだろ」


 当然、本当のことを正直に話すわけない。


「そんなはずがない!? 俺は人族だ!!」


「今まで死んだことがなかったからそう思っていただけだろ。僕だってアンタが殺さなかったら不死だなんて気づかれなかっただろうしな。アンタも子どもの頃に死んでいれば、僕と同じ目に遭ってたかもな」


 まぁ実際に子どもの頃に死んでいたら死んだままだったけど。

 というか、そうなれば僕もこんな目に遭ってなかったかもしれないが。


「そんな……俺が忌み子だっただと?」


 どうやら完全に信じたみたいだな。


「自分があれだけ気持ち悪いと言っていた不死の忌み子だったわけだ。こちらとしては、自分で復讐したいと思っていたから、ちょうどよかったけど」


 僕がそう言うと父の顔が青ざめる。

 これから僕が何をするつもりなのか想像ついたらしい。


「さて、アンタは自分が僕にしていたことを覚えているか?」


「まっ待て。なっ」


 待てと言われて待つわけがない。

 僕は槍を動けない父に向かって突き刺す。


「あぎゃあああああ!?」


「アンタはこうやって無抵抗な僕を何度も殺したよな。何度も何度も何度も……」


 僕は何度もと言う度に槍を父に刺していく。


「これから僕が殺された全ての方法を使ってアンタに復讐してやる」

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