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邪神の牲  作者: あすか
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第41話 正しい契約魔法の使い方

 まずは、これ以上ギロチンで殺されないためにもギロチンを破壊して、動けるようにする。


 ――対価は血液1パーセント。壊れろ。


 僕がそう念じると、左右の柱がメキメキと音を立て前のめりに倒れていく。


「うわっ!?」

「な、なんだなんだ!?」


 突然のことに慌てて支えようとする二人の兵士。

 そっちに集中しているから、僕の首の固定がなくなっているのにも気づいていない。

 僕はうつ伏せ状態から仰向けになり、両腕を左右の兵士へと向ける。


 ――対価は味覚と痛覚。……二人の心臓を潰せ。


 僕が兵士に向けた手をギュッと握りしめる。


「あっ、おま……うっ」

「おい……ぐぐ……」


 僕に気づいた兵士だったが、胸を抑えて苦しみだす。


「おっと」


 兵士が支えていたギロチンに当たらないように、慌てて転がりながらその場を離れる。

 直後、物凄い音を立ててギロチンが地面へ。

 兵士たちは……魔法陣に吸い込まれるように消滅した。


 なるほど。確かに所長の言う通りしゅわ~って感じだな。

 と、感心している場合じゃない。

 僕は起き上がり、そのままグルリと周囲を見渡す。


 そこには何が起こったか理解できていないのか、ボーッとこちらを見ている兵士たち。ざっと見ても30人くらいいるようだ。

 それから同じくまだ理解していない国王と側近共。

 まだ誰も魔法陣の中には入っていないので、今殺しても数には入らない。

 所長のカウントでは後1人。僕のカウントは後4人。

 今呪文を唱えるのは失敗する可能性が高い。

 となると……


 ――対価は嗅覚。アイツ等を吹きとばせ。


 僕は国王の方に手を向けると、国王と側近共が衝撃を受けたように後方へ吹き飛んで壁にぶつかる。

 ……動く気配がない。

 まぁあれくらいで死ぬことはないだろうから、おそらく気を失っただけだろう。


「……えっ?」


 国王のすぐ横にいた兵士は驚きながら国王の方へ顔を向ける。

 きっと何が起きたか意味が解らないだろうな。

 突風を巻き起こったわけでも、何かがぶつかったわけでもない。

 勝手に国王達が吹っ飛んだだけに見えただろう。


「よい……しょっと」


 僕は立ち上がる。


「とっととと」


 思わず立ちくらみでふらつく。

 流石に3週間もずっと固定されっぱなしだったから、体が重いな。

 僕が立ち上がったことでようやく兵士たちが我に返ったようだ。


「あ、アイツを捕まえろおおおお」

「魔法、奴は何か魔法を使っているぞ!!」

「へ、陛下は無事か!?」


 直ぐ側にいた二人が国王の元へと近づき、残りが一斉に魔法陣に入ってくる。

 流石にこの人数を殺すのと僕の命を対価しなくちゃ駄目だろう。


 ――対価は血液2パーセント。国王たちを動けないように拘束。僕以外には外せないようにしろ。


 気を失っている国王たちに鎖が巻き付く。


 ――対価は左腕。僕以外の魔法陣の上にいる人間を、僕が許可するまで動けなくしろ。


 瞬間、こちらに向かってきていた兵士たちがピタッと止まる。


「なっ!? う……動かん」

「ま、魔法か!?」

「馬鹿な! 魔法は効かないはずだぞ」

「魔道具はどうなっているんだ!!」


 動けないことに動揺する兵士たち。

 へぇ。動けなくても喋れるのか。

 魔道具で魔法が無効化されないことに驚いているけど、効くわけがない。

 だって僕が使っているのは既存の魔法じゃないんだから。


 以前、所長に契約魔法が効かなかったのは、僕が既存の魔法に変換して放ったからだった。

 あのときの僕は、魔力の代わりに神の力を借りて魔法を発動すると考えていたから、既存の魔法に変換していたんだが、契約魔法の本質はそうではない。


『契約魔法の本質はね。神の力を借りることで、魔法みたいな力を発動させることだよ』


 馬車の中で所長がそう教えてくれた。

 つまり既存の魔法に変換させずにオリジナルの魔法を……いや、もう魔法ですらない。

 小難しいことを考えず、ただ結果だけ……『壊せ』とか『死ね』って頼むだけでいい。


『君が僕に向かって魔法を使った時に、ヘルフレイムじゃなくて、ただ一言死ねって言えば僕は死んでいたと思うよ』


 所長はそう言った。

 魔道具でヘルフレイムの炎は防げても、ヘルフレイム自体の発動は防げなかった。

 だから死ねって頼めば、それが発動するだけ。

 一応、狙いを定めるために手を向けたりするが、別に僕の手から何かが発せられるわけではない。

 魔道具よりも内側から……直接、対象に神の力が当たるだけ。


 それを知ってから、馬車の中でずっと所長と契約魔法を使う訓練をしていた。

 所長のお陰で、どの程度の対価でどれくらいの力が使えるか検証済み。

 この人数の兵士を殺すには対価に一回死なないと駄目だが、動きを止めるだけなら左腕だけで十分だ。


 さて、この広場に残っている兵士たちは魔法陣に入らずに国王に近づいた兵士だけ。


 ――対価は血液10パーセント。あの二人を殺せ。


 僕は左腕を……ああ。左腕は対価で無くなっていたな。

 右腕を動いていた兵士に向け、念じると兵士たちの頭が爆発する。


「ふぅ。これでこの広場で動けるのは僕だけ……と」


 さっきの二人は魔法陣の外で死んだから、残るカウントは変わらず最低でもあと1人。

 余裕を持つなら後4人ってとこか。


 これ以上、対価で何かを失えば、神の召喚に差し障る。

 一回死んで、体制を立て直したい。

 というか、僕が死ねばそれで終わりなわけか。


 今広場にいる連中は僕が許可しない限り動けないからいいとして、生き返るまでに増援が来たら厄介だ。

 後は増援が来ないようにしないと。


 ――対価は僕の命。僕が許可するまで、この広場に誰も入れないように結界を張れ。

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