第28.5話
今回は所長視点となります
「あちゃ~。それは駄目だよ27番ちゃん」
現在、モニター越しの27番が、不死君に召喚魔法の説明をしている。
「その召喚魔法はね、君の母親が最後まで話さなかった大事な秘密だったんだよ」
そんな大事な秘密を簡単に話しちゃって……。
当然だけど、二人はこちらが盗聴しているなんて知らない。
いや、二人とも盗聴されている可能性は考えて、小声で話しているけれど。
でも、こちらの盗聴能力を甘く見てもらっては困る。
こちらで準備した盗聴の魔道具は、あの部屋のどんな小さな声も傍受することができる。
「本当に不死君に教えたかったんだったら、念話を使うべきだったね」
君の母親が君にしたように……ね。
まぁ魔石を持たない不死君と念話ができるかは不明だけれど。
もしかして、すでに試して失敗だったから、会話にしたのかな?
「まぁ27番ちゃんの方は仕方ないかな」
27番はこの研究所生まれ。
母親に守られ続けただけの世間知らずだからね。
母親が死んでひとりぼっちだったところに、ようやく頼れる不死君と出会えたんだから、不死君の力になりたいと思う気持ちはわかるよ。
「迂闊なのは不死君の方だね」
いくら力が欲しくても、もう少し周囲に注意しなくちゃね。
まぁ本人は注意深いつもりみたいだけれど。
部屋には盗聴器がないかちゃんと調査していたし、27番に話を聞くタイミングも図っていた。
自分の部屋の監視カメラの位置も把握していたようだ。
でもね……そこで安心するのが迂闊なんだよ。
何故、監視されているのに、死角ができると思っているのか。
見つかりやすい監視カメラや盗聴器を囮にして、本命は別にあるって可能性を考えなくちゃ。
あっ、でも契約魔法を使えるようになっても、すぐに試さないのは評価できるかな。
うんうん。慎重に行動できるのは良いことだよ。
「結局、全部バレているんだけど」
もう少し慎重に事を運ぶべきだったね。
「それにしても……そりゃ8番が口を閉ざすのも当然だ」
8番がこの研究所に入れられた経緯を考えれば、召喚魔法だけは隠したかった理由はわかる。
「あの頃も今も……人族は何も変わってないからねぇ」
当時の王から代替わりしたとはいえ、今の王も先代と変わらず愚王。
8番の優しさを踏みにじり、裏切ったあの頃と何一つ変わらない。
たった1万の命で神を召喚できると知れば、間違いなく召喚するだろう。
他種族を滅ぼすために。
人族が世界の支配者となるために。
そのためには、犯罪者や自国民など……どんな犠牲を払うだろう。
「できれば知りたくなかったよ」
せめてここにいるのが私だけだったら、私が報告しなければ隠し通せるのに。
しかし、残念ながらここには私以外にもいる。
私が報告しなくても、愚王の耳に入るのは時間の問題だろう。
「はぁ。本当に難儀なことだよ」
正直、私にとっては自国民が犠牲になろうと、人族が支配者になろうとどうでもいいこと。
勝手にしてくれと思う。
ただ、それに巻き込まないでほしい。
私はただ……研究さえ続けられれればそれでいいんだから。
「でも、無理だろうなぁ」
もし神が召喚されたら、この研究所は廃止されるだろう。
だって人族以外が滅びるのだから。
ここのように特別な力を研究しているここは邪魔でしかない。
特別な力は王家だけが持てばいいんだから。
「この楽しかった生活も終わりなのかぁ」
あ~あ。今すぐ何処かの種族が攻めてきて、王家を滅ぼさないかな?
そうすれば報告する必要がなくなるのに。
あっ、不死君を解放すれば、王家を滅ぼしてくれないかな?
いやぁこの研究所すら脱出できないんだから、契約魔法を覚えても、それは無理だよね。
でも……そっか。不死君か。
……少し足掻いてみようかな。




