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邪神の牲  作者: あすか
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第27話 契約魔法

 ニナが教えてくれる契約魔法には対価が必要……と。

 しかもその対価は自分自身。


「その対価ってのを詳しく教えてくれないか?」


 血や肉、生命力ではピンとこない。


 ニナの説明によると、血の場合は、体内にある血液を全部や半分、1/5など指定する。

 肉の場合は右腕や右足、小指などから、爪や耳、目など肉体のあらゆる部位が対価となる。

 また、内臓も対価として選ぶことができるらしい。


 そして生命力は寿命。

 年単位の寿命が対価になるらしい。

 他にも感覚……視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五感に加え痛覚や平衡感覚などあらゆる感覚を対価にできる。

 また、運などの不確定要素も対価にできるとのこと。


 う~ん。

 あくまでも、一般論だけど、マジでヤバい。

 手足とか内蔵とか対価にするバカはまずいない。


 この中でまだマシなのは……血液くらいか?

 血液なら、食事などで戻すのも簡単そう。


 感覚は……視覚や聴覚などは困るが、味覚や触覚ならまだ大丈夫か?

 あっ、痛覚がなくなるんだったら、それはありがたいかも。


 寿命はどうだ?

 残り寿命とか分からないので、生半可には対価にしたくないけど……でも、逆に今すぐどうこうなるものでもないなら、一番対価にはしやすそうだ。

 ただ、僕は一番対価に死ちゃ駄目だけど。


 僕の場合、どんな状態でも死ねば五体満足、健康体で生き返る。

 そう考えると、手足だろうが、内臓だろうが、感覚だろうが何を対価にしても元通りになるはずだ。

 でも、寿命の場合は減ったところで、五体満足なのと健康体なのは変わらない。

 つまり元に戻らない可能性が高いんだ。

 特に僕の場合、寿命が尽きたら死ぬってわけではない。

 罪を償いきれなきゃ老人姿でも生き続けることになる。

 もし、寿命が若さも減るってことなら……50年寿命を対価にしたら一気に老人になるかもしれない。

 でも、老人のまま死ぬことはなくずっと生き続ける……そんなのはゴメンだ。


 と、ここまで考えたは良いものの……寿命以外は本当に復活するよな?

 じゃないと、内臓なんかを対価にしたら、生き返ったところで、すぐに死ぬ。

 それだけじゃなく、永遠にそれをループすることに……それだけは絶対に勘弁したい。


 でも、対価を求めているのは、不死の呪いを与えた天使よりも上の存在。

 そう考えると、不死の呪いに打ち勝つ可能性もある。

 そねなら、命を対価にすれば、呪いもなくな……


「イサム?」


 ニナが不安そうに僕を呼ぶ。

 どうやら考え込んでいたようだ。


「ああ、いや何でもない。仮に生き返ったとして、取られた対価が復活するか気になっただけだ」


 別に隠すことではないので僕は正直に答えた。


「えっ? えと、対価にした部分を再生させた話もあるそうなので、おそらく大丈夫かと」


 あっ、なんだ。前例はあるのか。

 ニナの話によると、再生能力を持った魔族が対価として腕を差し出したが、ちゃんと再生できたらしい。


 腕の存在を対価ってことより、その腕を対価にってことだから、再生できる下地があれば問題ないと。

 まぁ人族に再生できる下地なんかないだろうが。


 でも……実際に確かめるときは、万が一に備えて指の爪とか、再生するか判別できて、無くなっても困らないものにしよう。


「その対価ってのは、自分で選ぶことができるのか?」


 一応大丈夫そうな話ではあるが、一応確認しないと。

 この中からランダムで選ばれるってのなら、ヤバすぎる。


「契約魔法の使い方としては、この対価の代わりにこの魔法を使わせてくれと、魔法を使う度に対価を選択するので、自分で選択することになります。ですが、魔法の大きさによっては、対価と釣り合わず不発になることもあると」


「たとえば、小指の爪1枚で、この研究所を吹き飛ばす魔法を……とか言ったら?」


 流石に小指の爪1枚だとケチすぎたか、ニナが若干呆れたように答える。


「……当然不発になると思いますよ。多分、小指の爪1枚だと、マッチの火程度の威力しかないかと」


 いや、確かに小指の爪1枚はケチ臭かったかもしれないが、それでマッチの火は向こうもケチじゃね?


「私も具体的にどの程度の対価でどの程度の魔法かは知りませんが、命を対価にしても、研究所はおろか、この部屋も吹き飛ぶかどうか……扉くらいは壊せると思いますが」


 マジか。

 命って安すぎない?


「ああ、でも扉なら腕の一本でも破壊できると思いますよ」


 腕一本を犠牲にして扉破壊とか、燃費が悪すぎる。


「ちなみに覚えた魔法はその後何回でも使えるの?」


「いえ、使える魔法は一つの供物に対して一回です」


 つまり使い切りと。


「それから、しっかりイメージしないと、予想外の対価を支払わなければならなくなります」


「どういうこと?」


「例えば指一本分の対価分の魔法を唱えたいとすると、どの指にするか、何本にするかしっかりとイメージしないと、両手両足の指全てが対価として支払われてしまいます」


 指を対価に……ってイメージなら全ての指を。

 人差し指をイメージすれば、両手両足の全ての人差し指を。

 足の人差し指をイメージすれば、両足の人差し指が。

 左の人差し指とイメージすれば、左手と左足の人差し指が。

 指一本を対価にとイメージすれば、どこかの指がランダムで一本。


 だから、左の足の人差し指と具体的に指定しないと駄目らしい。

 そして、発動する魔法は自分が最初にイメージした魔法。

 払った対価に見合わない可能性があるそうだ。


「……随分と面倒くさい神様だな」


 面倒というか詐欺というかガメついというか。

 挙げ足取りで融通が利かないところは、僕を陥れた天使そっくりだ。


 というか、そもそも神が対価に要求するのが血や肉て。

 邪法と呼ばれるわけだ。

 もう神じゃなくて悪魔だろこれ。


「それから、魔法が発動後はすぐに対価が支払われますので、何を対価にするかは十分考えてから使った方がいいです」


 しかもその場で支払とか、やっぱりガメついだけだろ。


「それで、その契約魔法の使い方は?」


 ただ、どれだけガメつこうとも、今の僕はこの契約魔法にすべてを賭けるしかない。


「まずは神と契約の儀式を結びます」


 最初に自分の血で契約の魔方陣を描く。

 そして魔方陣の中央に血を垂らしながら、力を貸してくれと願うのだそうだ。

 その時に、神の存在を信じていないと契約は成立しない。

 契約が成立したら、魔方陣が消えるのだそうだ。


「えっ? それだけ?」


 本当にアッサリしている。

 契約の儀式で実際に神が登場したりしないのか。


「ええ。後は魔法を使うときに、対価と効果をイメージすれば魔法が使えます」


 どうやら本当にこれだけらしい。


「契約期間はないので、一度契約してしまえば、死ぬまで自由に契約魔法を使い続けることができるはずです」


 死ぬまでそのままって言っても……


「それって、僕の場合、一度死んで生き返っても、契約は継続ってことでいいのか?」


 もし生き返る度に新規契約なら、面倒なことこの上ないんだが。


「それは……流石に実例がないので……」


 そりゃあそうだ。

 まぁこれは自分で実際に確かめてみれば良いことか。


 よし、契約魔法についてはある程度分かった。


 さすがに今ここで契約するわけにもいかないから、今は魔方陣の図面だけ教えてもらう。

 魔方陣さえ分かれば、戻って一人きりの状態でも契約できる。

 しかも契約後は魔方陣が消えるから、証拠もなくなる。


 ――ようやく僕は力を手に入れることはできそうだ。

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