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邪神の牲  作者: あすか
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第24話 たった一つの希望

 あれから僕の生活に、殺されることと女性との行為が加わった。


 最初にやった魔族の女の子だけじゃない。

 人族の――忌み子の女性や、エルフ族、ドワーフ族など他種族の女性ともだ。


「27番と毎日やるのは、27番の負担になるからね。彼女との子作りが最優先だけど。他の子とも試させてもらうよ。……えっ? 君の負担? やだなぁ。いろんな女の子とやれるんだから、君が負担に思うわけ無いじゃん」


 などと、ほざきやがった。

 確かに普通の男ならハーレムだと思うだろうが……僕は本気で嫌なんだって!!

 たまたま彼女だけは自分と同じだと思ったからうまく出来ただけ。

 他の人ともやるとは考えもしなかった。


 でも、当然僕の意見なんて聞き入れてもらえず。


「……なら、せめて相手の同意は絶対に聞いてくれ」


 実験だからとか、命令だからとか、強制的に嫌がっている人を無理やり……は出来ない。

 それだと完全に父たちと一緒になってしまいそうだ。

 まぁ魔族の女の子のように、実験から逃げるため……で、かつ人族の忌み子の僕が相手でも構わないってのが、許容できる最低ラインだ。


「じゃあ君が本当に出来ないと思った人とはしなくていいよ。でも、だからと言って、全員駄目は困るけど」


 結局、それを妥協点として、多数の女性と行為に及んだ。

 基本的に魔族の女の子のように、僕相手でも問題ないと言ってくれる人の方が多数だった。

 まぁそれ程までに実験の苦しみから逃げ出したいと思っていたのだろう。


 ただ中には僕を許容しない人もいた。


「何でこの私が人族の男なんかと……」


 こんなところに捕まっていても、やはり人族を下等な種族と思っている人はいるみたいだ。

 そういう女性とは絶対にしない。

 そんなに嫌がられながら犯すのは父たちみたいな男だから。


「ねぇ。このまま一緒に逃げない?」


 中にはそう言ってくる女性もいた。

 正直、逃げたい気持ちはあるが、逃げたところで捕まるのがオチ。

 そして捕まった先には、リリちゃん母娘のような未来が……。

 所長は父とは違うとは思っているが、逃げ出すとなれば容赦しないと思う。

 彼女のためにも……僕自身がそんな未来を見たくないためにも、そういう話は全て無視した。


 そう言った女性に関しても二回目以降はお断りしていた。


 というか、僕を許容する人達と、人族を卑下したり、逃げ出そうとする人達とでは、明確な違いがあった。


 隠れ住んでいた場所を人族に襲われ、逃げるために、仲間から生贄として置いていかれた少女。

 お金のために売られた少女。

 僕を許容している人達は、人種や能力、年令問わず、同種族から裏切られたことがあった。


 逆に僕を許容しない人は、戦いで負けて捕虜になったなど、同種族から裏切られていない人達だった。


 従って、必然的に僕は裏切られた……つまり、僕と似たような経験をした女性たちと肌を重ねていくことになった。



 ****


「えと……母が付けてくれた名前はあるんですが……」


 僕の初めての相手、魔族の女の子が言いよどむ。

 彼女とは一番多く会っているから、必然的に一番仲良くなっていた。

 そこで、いつまでも番号で呼ぶのもあれだしと思い聞いてみたのだが……。


「ごめんなさい。私は27番のままでいいですから」


 どうやら彼女は名前を言いたくなさそうだ。

 でも、別に僕は彼女に怒ったりはしない。

 何故なら僕にも彼女の気持ちがよく分かる。

 だって、僕も彼女に自分の名前を言いたくないからだ。


 当然だが、僕にも番号じゃなくてちゃんとした名前がある。

 前世の……日本で使っていた名前は……もう忘れた。

 あんな両親が名付けた名前なんてどうでもいいからだ。


 僕にとって大切なのは、今世の母が名付けてくれた名前。

 僕と母しか知らない……母が死んだ今、誰も呼んでくれない名前だ。

 その大切な名前を……僕と母との思い出に踏み込まれる気がして、知られたくなかった。


 きっと彼女もそうなのだろう。


「じゃあ僕が代わりに名前を考えても良い?」

「えっ?」


 だから代わりに彼女に新しい名前を付けることにした。

 せっかく仲良くなったのに……二人っきりでいるときくらいは、番号で呼びたくない。


「そうだな……ニナってどうかな?」


 27番だからニナ。

 ちょっと安直すぎるか?


「はっはい。ニナ……ニナでいいです」


 彼女が嬉しそうに微笑む。

 ……気に入ってくれたので何よりだ。


「じゃあ僕のことはイサムって呼んでよ」


 136番だからイサム。

 こっちも安直だけど……まぁここだけでしか使わないから格好つけてもね。


「ん……分かったイサム」


 ニナは少し恥ずかしそうに僕の名前を呼ぶ。

 うん。やっぱり番号より名前のほうが全然マシだ。


「じゃあ今日も頼むよ、ニナ先生」


「もう! イサムったら……」


 先生と呼ばれたニナは僕をバシバシと叩く。

 ……かわいいな。


 でも、別にからかっているわけじゃない。

 僕は体を重ねている間、ニナに……そして、他の女性たちに彼女たちの知識を教わっていた。

 彼女たち種族の秘密。

 そして、人族が魔法を使えない理由。

 人族が……僕が魔法を使うにはどうすればいいか。


 彼女たちとの会話が……彼女たちの知識が、僕がこの地獄から抜け出すためのたった一つの希望だった。

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