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邪神の牲  作者: あすか
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第19話 不死の能力の調査結果

 この研究所に来て僕は何度も殺された。


「まずは定番の切り刻みからだよね」


 指から始まり、手、足、腕、太ももと四肢を順番に切断。

 それだけでは飽き足らず、性器まで切断された後で、最後に首を切断され殺される。


「五感を失いながらってのも、定番だよね」


 ナイフで目をくり抜かれ、鼓膜を破られ、舌を抜かれ、鼻を落とされた後で、死なないように最低限の治療をして放置される。

 そして、何もわからずに恐怖で発狂寸前にまで追いやられた後で殺される。


「削られるのって、ただ切られるよりも痛いでしょ」


 おろし金のようなもので、肉と骨を削られながら殺される。

 肉以上に骨が削られる方が何倍も痛いことを初めて知った。


「溶かされながら死ぬのってさ、どんな気持ちかな?」


 酸の風呂に入れられ……そのまま全身を溶かされながら殺された。


「人の脳ってさ、どの程度までなら弄れるのかな?」


 脳に変な針をぶっ刺され、気がつくと死んでいた。


 他にも釜ゆでや丸焼き、ありとあらゆる拷問による死を経験した。


 ――君の知らない痛みを伴った死に方を経験しても、その余裕がいつまで続くかな


 所長の言っていたとおり、未知の痛みは僕の心を簡単にへし折った。


「お願いです。もうやめてください、拷問以外なら何でもしますから」


 痛いのが嫌だから、泣きながら床に這いつくばって懇願する。


「はははっじゃあ靴でも舐めてもらおうかな」


 それくらいで拷問がなくなるなら安いものだ。

 僕は所長の靴を舐める。


「ぎやあああああ!!」


 舌が焼けるように熱い!?


「ああ、そういえば靴の表面に毒を塗ってたんだっけ」


 コイツ……平気な顔をして……・


 一歩間違えれば、自分だって危ないだろうに。

 でも、所長は平気でこれくらいのことはやる。


 全ては研究のため。

 一番効果的な結果を得るためには手段を選ばない。


 どうせ今回も毒を飲まされると覚悟した場合と、何も知らずに毒を飲んだ場合の反応の違いを知るためとか、そんな理由だろう。


 僕を色々な手段で殺すのも、別に所長が拷問好きなだからじゃない。

 捕虜から情報を得るために、どの拷問が良いか確かめるため。

 やりすぎて捕虜を死なせてしまう可能性を減らすため。


 死んでもやり直しが効く僕が拷問を受けて、死ぬまでの時間や反応から、どれが一番効果的か確かめているんだ。


 死ぬことよりも痛みを優先するこの実験が僕は何よりも嫌だった。



 ****


 当然ながら拷問死以外にも、並行して不死の秘密を探るための研究も行っている。


 こちらも死ぬことには変わりないのだが……拷問のように痛みを強調する殺し方ではないから、まだマシだった。

 まぁ、切り刻まれたり解剖して内蔵を取られたりするんだが、それでも内臓を取る前に死なれちゃ困るので、痛みでショック死しないように、麻酔で痛みを感じないようにされている。


 ただ、脳と心臓だけは、麻酔があろうとも、取り出した時点で即死。

 そして死んだ瞬間から再生を始めるので、完全に取り出すのは難しいらしい。


 僕はたとえ肉体を切り刻まれようが、中身を抜き取られようが、五体満足、完全に死ぬ前の……健康状態まで再生する。

 血液だけはもとに戻ることを知っていたが……部位欠損まで全て元通りになるとは。

 僕は死んで意識がない状態中に再生しているので、どのような再生方法かは分からないが、所長曰く気持ち悪いとのことらしい。


 また、僕が再生するのは、残っている肉体の部位が多い所から再生するらしい。

 なので、仮に首を切られたら、体から頭が生えてくる。

 その際、首から上はそのまま残るらしい。


 生き返った際に、自分の生首を見せられた時は……今の自分の顔ってこうなんだと。

 よく考えたら、鏡なんてなかったし、水を飲むときか、檻の中で水たまりに映った時くらいしか見る機会がなかった。

 自分の首って感じではなかったので、複雑な気分になった。


 ともあれ、死んだ際に本体から切り離された部位はそのまま残る。

 その部位を調べたところ……肉も、内臓も全て、なんの変哲もないただの部位だということが判明した。


 僕の血や肉を食べたら、不死の能力を得ることが出来ないかと魔物に食べさせたが、当然ながらその魔物が不死になることはなかった。

 そして、僕が生きている状態でなら……と、一角猪(ホーンドボア)のトラウマが呼び起こされる実験もさせられたが、そちらも無駄だった。

 ちなみに僕が危惧していた、食べられたら腹の中で生き死にを繰り返すかもとの疑問は、肉体が多い部分から再生するので、仮に心臓が食べられても問題ない。

 まぁ丸呑みされた場合だけは困るが……流石に丸呑みできそうな巨大な魔物を所長が用意できるとは思えないし、そもそも僕を失うような真似はしないだろう。

 そして……ここから逃げることも出来ない。


 当然のことだが、この研究所には所長以外にもたくさんの人間が存在する。

 数十人の研究員に、百人以上の兵士。

 それだけじゃなく、魔道具で常に居場所を感知され、脱走できないようにされている。


 もちろん、僕のためだけにこんな頑丈の警備がされているわけではない。

 この研究所には忌み子を始め、多種族……魔族やエルフ、ドワーフなどの亜人、子供から大人、男女問わず実験体として捕まっていた。

 ただ、それぞれが別の部屋に閉じ込められているので、実験体同士で交流があるわけではない。

 実験室の移動中に目撃する程度でしかない。

 ただ、見る限り全員が死んだような……絶望の表情を浮かべているので、過酷な実験を強いられているに違いない。

 まぁ流石に僕のように不死ではないので、僕よりも辛い目にあっている人はいないと思う。


 とにかく、この研究所の警備は厳重。

 僕一人では脱獄は不可能で……他の実験体との交流も不可能。

 逃げ出すきっかけすらなく、僕は毎日殺される日々。


 そして……いつしか僕は大人になっていた。

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