第12.5話
山小屋でのバッコス視点です。
「ワケアリ……か」
一角猪の肉に齧りつきながら俺はつぶやく。
そのワケアリの小僧は、俺の横で安心しきったように寝てやがる。
ワケアリの癖に、そんなに俺を信用していいのかと。
全く……こんなガキが本当に忌み子なのか?
二週間ほど前にバーバラの町で忌み子のガキが出たと噂が流れてきた。
そのガキはどんなことをしても死なない不死のガキだとかで、バーバラの町ではカネさえ払えば人殺しを楽しめると。
そんな胸糞悪い噂だった。
この小僧がその噂の忌み子なのかは分からない。
だが……この小僧の服には一角猪に刺されたであろう大穴が空いている。
おそらく、この小僧は一角猪に殺されて、生き返ったに違いない。
一角猪も死んでいるのは、忌み子を殺した呪いか……しかし、呪いだとすれば、バーバラの町で殺されたりしないだろう。
一角猪とは相打ちになったとかそんなところだろう。
にしても……忌み子だろうと、こんな小僧を殺して楽しむとか、バーバラの町はどうなってやがる?
おそらくバーバラの町の奴らは、今ごろ血眼になってこの小僧を探しているはずだ。
別にこの小僧を助ける義理はないが……。
胸糞悪いバーバラの奴らに渡すのは面白くないし……一角猪の素材分は助けてやるか。




