表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邪神の牲  作者: あすか
11/93

第10.5話

主人公と別れた後の母親視点です。

「ねぇママ。あのおにーちゃん、大丈夫かなぁ?」


 帰宅途中、リリちゃんが心配そうに尋ねる。


 正直、あの子が本当に無事に逃げおおせることは難しいと思う。

 道沿いに進めば、見晴らしがいいから、すぐに見つかる。


 だから、あの子が逃げるには山に入るしかない。

 でも、あたしが準備できたのは最低限の食料と着替えだけ。

 そんな装備で山に入るなんて自殺行為もいいところ。

 たとえあの子が忌み子だとしても……捕まるのは時間の問題だと思う。


 仮に逃げおおせたとしても、あんな子供が一人でどうやって生活していけばいいのか。

 仕事もない、お金もない、住む家もない。

 さらに忌み子だとバレないようにしなくてはならない。


 そんな生活――あたしだって生きていける自身がない。

 それでも……それでも逃げおおせてくれたらと思う。


「ええ。きっと大丈夫よ」


 だから、あたしはリリちゃんを不安がらせないように精一杯の笑顔で答える。

 それは、あたしの願望でもあり、それをリライラも望んでいるだろうから。


「そっかぁ。良かったね」


 リリちゃんもあたしの言葉に安心したように笑顔になる。


 今リリちゃんが笑顔なのも……全部リライラのお陰。


 あの時のリライラは、あの子をあのクズ男から守りながら……それでもリリちゃんを助けてくれたのだと。

 それがどれだけ大変だったことか……今ならよく分かる。


 あたしには最後まであの子を助けることは出来なかったけど……それでも、リライラ……あたしは少しでもアンタに恩返しができたかね?


 そうであってくれたら嬉しいんだけれど。

 そう願い、わたしはリリちゃんと仲良く手をつないで帰宅した。


 だから……あの子と別れ、もう大丈夫だと安心したあたしは、最後まで見られていたことに気づかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ