多分これも異世界転生 ~無双して、TUEEして、ざまあして、ハーレムして、下剋上して、スローライフする~
俺の名前はイセカイール・テンセル。
異世界転生者だ。
もっともこの世界の人間からすれば
俺が暮らしていた世界こそが異世界なのだろうが。
まあそんな話はどうでも良い。
元の世界での俺はハッキリ言ってパッとしない人間だった。
だがそれは俺の能力が低いからではない。
周りの環境が悪かっただけだ。
俺は親から毎日、やれ勉強しろ、やれ働けと、
口うるさく言われ続けてきた。
こんな口うるさく言われれば誰だってやる気をなくすだろう。
俺が怠惰な生活を送らなければならなかったのは
誰がどう見ても親の所為で間違いない。
親ガチャに失敗した俺は引きこもりとなり
気付けば30代にもなっていた。
毎日の楽しみと言えば読書や食事ぐらいのもの。
もちろん部屋を出ることはないので
それら本や食事は親に用意させた。
親は自分の罪を自覚することなく
俺に説教してくることもあった。
だが俺もただ言われ続けるだけのガキじゃない。
きちんと親を殴りつけて調教している。
親ざまあwwww
だがそんな折、村をモンスターが襲った。
当然、俺は親に守られるべき存在だろう。
親は勝手に俺を生んだのだから
最後まで俺を守る義務があるはずだ。
だが親はなんと俺を置いて先に避難してしまった。
こんな無責任なことが考えられるだろうか。
結果的に俺は部屋から出ることもできず
モンスターに襲われて殺されてしまう。
――だがここから、俺の逆転劇が始まる。
死亡した俺は天使から異世界転生を勧められた。
なぜ俺を異世界転生するのか。理由はよく分からない。
まあうん・・・なんか言ってたけど覚えていない。
とにかく重要なことは
俺がその天使からチート能力を獲得したということだ。
この能力があれば俺は異世界で無双できる。
俺TUEEEEEができる。
ようやく俺の本当の人生が始まるのだ。
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ふと気付いた時、俺は見知らぬ街の中にいた。
天にそびえたつ細長い建物がたくさん並び、
通りには鉄のイノシシが走っている。
奇妙な場所だ。いかにも異世界っぽい。
とりあえず俺は街を散策することにした。
異世界に来たらまず冒険者ギルドを見つけて登録する。
それが定番のはずだ。
どうしてわざわざ危険なギルドに登録するのかは
よく分からないが、それが定番なのだから従うべきだろう。
その時、近くの路地から悲鳴が上がる。
「きゃあああああ!」
これは女性の声だ。
俺はすぐに悲鳴が聞こえた場所に向かった。
元の世界に居たころはゴリゴリの引きこもりだし
悲鳴なんか聞こえても絶対に助けに行かない。
だが異世界に転生したらどういうわけか
困っている人を見過ごせなくなるようだ。
「へっへっへ。ついに追い詰めたぜ」
「親分の誘いを断るとはふてえ女だ」
三人の男が一人の女を追い詰めている場面に出くわす。
ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる男たちに
追い詰められた女がきっと眉尻を上げた。
「く・・・なによ!貴方たちが何を言おうと
私の考えは変わらないわ!!」
強気にも声を上げる女に
三人の中心にいた小太り男がニヤつきながら言う。
「いい加減諦めな。子猫ちゃんよお。
お前はかならず俺の女になる。そう決まってるのよ」
「ふ、ふざけないで!私は絶対に貴方に屈したりしない」
「やれやれ。こいつは想像よりやんちゃな子猫ちゃんだ。
どうやら俺の実力を知らないようだな」
「どんなことされても、私の心だけは奪えないわ!」
「そう言っていられるのも今の内だ!くらええええ!」
小太りの男がギラリと瞳を輝かせて
懐から100万円(異世界の通貨)の束を取り出した。
「いくぞおおお!万札で頬を叩く」
「いやあああああああああああああああ!!!」
100万円の万札に頬を叩かれた女が力なく地面に倒れ込む。
100万円の力に屈した女を見下ろして小太りの男がクツクツと笑う。
「くっくっく。さあ俺の女になるんだな」
「く・・・いやよ。こんなことに負けない」
「強情な子猫ちゃんめ。だが俺の力がこの程度だとでも?」
「そ・・・そんな。これが限界じゃないの!?」
「ふははは!俺を舐めるなよ!!くらえええええ!」
懐からもう100万円を取り出して
計200万円の札束で女の頬を叩く。
「いやあああ!ま、負ける!このままじゃ負けちゃう!!!」
「ふははは!おらおら、これが俺の力だあああああ!」
自身の力を誇示しているその小太りの男を見やり
俺はつい思っていることを口にしてしまう。
「あの・・・それって全力じゃないですよね?」
「なんだとテメエえええええ!」
小太りの男が振り返る。
やれやれ、争いごとは嫌いなのだが
つい言ってしまった。俺の悪い癖だな。
「随分と煽ってくれるじゃねえか!!
テメエもやられてえのかコラアアア!」
「その程度で威張っているなんてダサいですよ」
またまた言ってしまった。
どうも俺は勘違いした人間を見ると
つい本当のことを言ってしまう質らしい。
小太りの男が顔を真っ赤にして叫ぶ。
「上等だ!!テメエにもこの札束を喰らわせてやるぜええ!」
小太りの男の200万円が俺の頬を叩く。
だが俺はぴくりとも動じなかった。
「な・・・ば、馬鹿な!」
「あ、兄貴の攻撃が・・・」
小太りの男の子分が驚愕している。
俺にとっては至って普通のことなので
何をそんなに驚くことがあるのかと
逆に不思議になってしまうぐらいだ。
小太りの男がわなわなと震えている。
俺はやれやれと嘆息して――
チート能力『成金』を発動した。
眩い光とともに俺の手に1000万の札束が具現化される。
俺は即座にその札束で小太りの男の頬を叩いた。
「ぐわあああああ!!大金持ちぃいいいいい!!」
「あ・・・兄キィイイイイイ!!!」
小太りの男が倒されて子分たちが戦慄した。
「な・・・なんて奴だ!!に・・・人間じゃねえ!!!」
「ば・・・化物だ!!逃げろおおおおお!!!」
2人の子分と小太りの男がスタコラと去っていく。
俺はさっと腕を一振りして1000万の札束を消した。
「あ、ありがとうございます!!!」
ここで小太りの男に追い詰められていた
女が目を輝かせてお礼を言ってきた。
「すごい!!なんて優しくて大金持ちの人なの!!
こんな優しくて大金持ちの人なんて見たことない!!
とにかく大金持ちで素敵!!好きになっちゃう!!ぽっ!!」
女がそう言いながら頬を赤らめる。
おや風邪でも引いているのだろうか?
「えっと・・・これってそんなスゴイことですか?」
俺の謙虚な姿勢に女がお色気ポーズを決めながら驚く。
「え!?き、気付いてないんですか!?自分の凄さに」
「そういうの俺ってよく分からないんだよね」
「ものすごい大金持ちですよ!!こんな大金持ちの人初めて!!
きっと大金持ちだから性格も良いのね!好きになっちゃう!!ぽっ!!」
女がまたも頬を赤らめる。
おや風邪でも引いているのだろうか?
「すごいわ!あんな悪そうな人をたった一撃で!!
素敵!!大金持ち!!好き!!ぽっ!!」
「優しさに惚れたわ!!優しさよ!!お金じゃないから!!
お金とか関係ないから!!心だから!!ぽっ!!」
「ふ、ふん!別に大したことないんだから!!!
そ、そんな大金持ちでも素敵じゃないんだから!!ぽっ!!」
いつの間にか路地には多種多様な女たちが群がり騒いでいた。
周りにいる女の頬が全員赤い。
おや風邪でも引いているのだろうか?
チート能力『成金』。
この力があればこの異世界で無双できる。
なんの努力もなくリスクもなく
ただ天使からもらっただけのこの能力で
俺は無双してハーレムを築いて下剋上して
スローライフを送ることができる。
「俺の異世界生活はここからはじまるんだああ!!」
俺は『成金』で金をそこら中にばら撒きながら
金にむらがる大勢の女たちを引き連れて
まだ見ぬ異世界を走り始めた。




