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悪役令嬢になるはずだった私が聖女と呼ばれるようになったわけ

悪役令嬢を救ったのはヒロインでした

それは一つの奇跡の出会い。


皆様、ご入学おめでとうございます。私はレミリア・レゴラメント。公爵令嬢ですわ。生徒会副会長も務めております。今日は公務で忙しい生徒会長、王太子殿下に代わり皆様にご挨拶させていただきます。以後お見知り置きを。…まあ、私が聖女のようだと平民の間で話題に?うふふ。嬉しいですわ。ありがとう。でも、私幼い頃は大分平民や下級貴族に偏見を持っておりましたのよ?あら、信じられない?では、私の話を聞いてくださいな。


あれは私が五歳の頃。私は父と母から、公爵令嬢として相応しい教育を受けておりました。しかし、父と母は平民や下級貴族を下に見ており、常日頃から私に付き合う相手は選ぶように、平民は家畜である、下級貴族は道具であると教え込まれてもおりました。まあ、残念ながら高位貴族の中ではままある価値観ですわね。そして、私はその教えを素直に受け入れ、忠実に従っておりました。


ある日私は父と兄に連れられて領地の下見に行きました。平民というものを知っておきなさい、彼らは愚かだ。それを導いてやるのが我らの務めだ。そう父は申しておりました。兄はそんな父を憧れの眼差しで見ておりました。私もそうでした。


ところが、私は平民の生活が物珍しく、つい兄の側から離れてしまったのです。そして、気がついた時には迷子になっておりました。私は泣いて泣いて、必死に父と兄を呼びましたが、父に不満を持っていた平民達は誰も助けてくれませんでした。私は益々、平民はろくでもない存在なのだと偏見を深めました。…が、その後すぐにそれは覆されました。


「おねぇたん、だいじょうぶ?」


平民の、私より幼い子供が声をかけてくれたのです。私の涙を、服の袖で拭ってくれました。


「へっ…平気よ!平民が私に触らないで!」


「でも、おねぇたん、ないてる…」


「っ…」


その言葉で情けなくなった私は、余計に泣いてしまいました。


「おねぇたん、あい」


するとその子は、私に飴玉をくれました。


「…。貴女のような平民には、なかなかありつけないご馳走でしょう。どうしたの」


「おとぅたまがくれた!おとぅたま、だんしゃくさまだからだいじょうぶ」


…ああ、男爵家の妾の子か。なるほど、ただの平民ではなく一応貴族の血を引いてるから優しさを知っているのね。


「…私は結構よ。貴女が食べなさい」


「あたち、もっともってぅよ」


「…なら、いただくわ」


正直下級貴族のお菓子なんて食べたくなかったけど、自分より幼い子供が一生懸命に私のためにと差し出すものだから、つい受け取ってしまったのです。


「おにぃたん達がいつもいってぅの。こまったときはおたがいさまって」


「…貴女のお兄様が?男爵家の人と合わせて貰えているの?」


「ちぁうよ、きんじょのおにぃたん。あたちとおなじへいみんだよ」


…私は驚きました。『卑しい平民』が、困った時はお互い様なんて意識を持っているなんて思わなかったのです。


「あ、おにぃたん!」


「ミリア!ここにいたのか…って、領主様の!…お嬢様、申し訳ございません。ミリアが世話をかけて…」


「…違うわ。私が世話をしてもらっていたの」


「え?」


「…迷子になってしまったの」


「!急いで領主様を探してきます!」


そうして私は「おにぃたん」と「ミリア」のおかげで、父と兄に合流出来ました。ところが…。


「私の娘を連れ出すとは!卑しい平民め!許さん!」


「私の妹に何をした!」


父と兄は鞭で「おにぃたん」と「ミリア」を叩きました。いくら私が何もされていない、助けられたのだと言っても信じて貰えませんでした。


私は必死に、もう疲れた、帰りたいとごねて二人を止めて帰りました。馬車に乗る前に、「おにぃたん」と「ミリア」に頭を下げましたが二人は困ったように笑って許してくれました。これを機に私は家族の教えを疑うようになったのです。


そうして私はお小遣いを貰える歳になると、必要な物を買う以外のお金は全て貧民救済のために使うようになりました。家族からはお前のお小遣いだから好きにしていいがあまり無駄遣いは感心しないと言われましたが、私は将来王妃となるために国民の心を掴むためと言って強行しました。そう、この頃には私は王太子殿下の婚約者になっておりました。


王太子殿下は広く民草にも気を配る優しいお方です。私が以前のような歪んだ思想を持っていたら、きっと嫌われていたでしょう。ですが、「おにぃたん」と「ミリア」のおかげで性格が矯正された私は王太子殿下に気に入られ、仲睦まじくなることが出来ました。


王太子殿下とも仲睦まじく、王太子妃教育もきちんとこなし、慈善活動も行なっていた私はいつしか、この見た目のおかげもあり聖女と呼ばれるようになりました。私にとっては、ミリアの方がよっぽど聖女ですけれどね。


そして、今日。皆様が学園に入学したこの日、私は彼女に再会することが出来ました。ねぇ、お久しぶり、ミリア。私の恩人。貴女と会えて嬉しいわ。


あらあら、泣かないで、大丈夫。私もこの数年で前世の知識を思い出したのよ。ここは乙女ゲームに酷似した世界なのでしょう?そして前世の知識がある貴女は私と再会することを恐れていた。私が性格最悪な悪役令嬢になると思っていたから。でも、貴女のおかげでその未来が変わったのよ。貴女が逆ハーレムルートを選んだり、婚約者のいる攻略対象を選んだりしない限り怒ったりしないわ。え?違う?私が幸せになってくれて嬉しい?私の貧民救済措置のおかげで本来亡くなるはずだった母が助かった?自分が私の邪魔になりそうで怖い?もう、貴女は本当に優しい子ね。大丈夫、王太子殿下は浮気なんてしないわよ。引き続き入学パーティーを楽しみましょう?大好きよ、ミリア。さあ、皆様、私達の輝かしい未来に、乾杯!

その後の話


あの入学パーティーから四年、私もミリアも無事に学園を卒業しました。ミリアは「おにぃたん」ことカインと結婚。平民として慎ましく穏やかな生活を送っています。私と王太子殿下も卒業後すぐに結婚。国民の全てから祝福された、幸せな結婚式でした。


私が王太子妃になって、私の生家である公爵家は私腹を肥やそうとしたようですが私と王太子殿下はそれを拒否。公爵家の価値観に苦言を呈し、半ば公爵家と縁を切るような形となりました。後ろ盾を失うようなものでしたが、むしろその潔さが民草から支持を得て盤石な地位を確立しました。


公爵家の方は領民達から苦情が出て調査が入り、法外な税を課していることが明らかに。お取り潰しや領地没収まではいかなかったものの、税率を適切なものに下げ、また侯爵家に格下げされることとなりました。


その後は反省して考えを改めたようですが既に領民達からはそっぽを向かれて、なかなか思うような領地経営とはいかなかったようです。私達は領民達が困らないようにという程度には手を貸しましたが、あとは両親と兄次第です。

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