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貴族社会に疲れた悪役令嬢を癒します!

主人公は聞き上手

貴族って大変だなぁ。


はじめまして、ご機嫌よう。しがない男爵家の一人娘、マーガレット・バンクシーです。私、実は前世というものを覚えていまして。はい、日本という小さくて豊かな国の平民の『女子高生』でした。その頃の私は乙女ゲームというものが大好きで、特に「花恋」という乙女ゲームを何度も周回プレイしていたのですが…なんと、気付いたらそのゲームのヒロインに転生していました!いつの間に死んでいたやらわかりませんが、せっかくヒロインに転生したんだから楽しみたい!…と、思わなくもなかったのですが、田舎者の弱小男爵家の一人娘がそう簡単に高位貴族に近付けるはずもなく。攻略対象者達との出会いイベントすら満足にこなせませんでした。


それどころか、貴族社会の中で一番下っ端の男爵家の、それも貧乏で田舎者の私は正直言って人間扱いすらされません。使用人扱い(イコール道具)か、愛玩動物扱い(イコールペット)です。


ならば開き直ってしまえと、私は自ら進んで伯爵令嬢や子爵令嬢の皆様方の道具役やペット役を買って出ました。小さな身体でぴょこぴょこ動き回る私は、ヒロイン補正でそれはもう可愛く見えるらしく、やがて公爵令嬢であり乙女ゲームでは悪役令嬢扱いだったローズ・カークランド様からお声をかけていただけました。


「貴女がマーガレットさん?」


「は、はい!マーガレット・バンクシーです!はじめまして!」


「ふふ、はじめまして。私はローズ・カークランド。お噂通りの愛らしい方ね」


ころころと鈴を鳴らすように笑うローズ様。めっちゃ美人…わがままボディー…溢れ出る気品と教養…羨ましい…。


「私、貴女とお近づきになりたいの。よかったら、お茶会が終わったらうちに来ない?」


「よ、よろしいんですか!?是非!」


まさかのお近づき!例えペット扱いだとしても、貧乏男爵家で燻っているよりは贅沢な暮らしができるのでは!?


「うふふ。約束よ」


「はい!」


ー…


「いらっしゃい、マーガレットさん」


「よ、よかったらメグって呼んでください」


「あら、いいの?…メグ」


「は、はい!」


「私のことはロゼと」


「ロゼ様」


「もう。様は要らないのに」


「それは流石に駄目ですよぅ」


「うふふ、今は諦めておくわ。さあ、メグ。好きなだけ食べてちょうだい」


目の前には美味しそうなお茶菓子がたくさん。


「わあ…いただきます!」


もぐもぐ食べる私。それを楽しそうに見つめるロゼ様。しばらくそうしていたけれど…やがてロゼ様が口を開いた。


「…ねぇ、貴族社会って大変だと思わない?」


「え?」


急になんの話だろう。


「確かに、平民達は暮らしも大変でしょうし、私達は恵まれていると思うわ。でも、私達貴族にだって悩みはあるじゃない?」


「そうですね…階級社会ですし、基本的には平民と違って感情を表にも出来ないし」


「そう!それよ!」


「ロゼ様?」


ロゼ様はテーブルをばんと叩く。礼儀作法は何処へ。


「私は、なにも権力に慢心しているわけではないの。ただ、公爵令嬢として相応しい振る舞いをと心掛けているだけ。ポーカーフェイスだって、未来の王太子妃として相応しくあるようにと皇后陛下から叩き込まれたのよ。それに、ちゃんと慈善活動だってしてるわ。民の心に寄り添う努力だってしてるつもり。…なのに、なのに!」


急にさめざめと泣き出すロゼ様。誰だロゼ様をここまで追い詰めた奴!こんなの乙女ゲームにはなかったぞ!


「ロゼ様…私、ロゼ様のお気持ち痛いほどわかります。ロゼ様は今までずっと公爵令嬢として、王太子殿下の婚約者として相応しい振る舞いをされていました。私達にとってロゼ様は憧れの的なのです。そうなるためにどれほどの努力があったのかは正直想像もつきませんが…それを否定されて、矜持を傷付けられたら、私なら耐えられません。もっと泣いてもいいんですよ」


私はロゼ様を抱きしめる。ロゼ様は、今度こそ声を上げて泣き出した。


ー…


泣いたおかげですっきりしたらしいロゼ様は、私に急にごめんなさいと謝って、私は気にしないでくださいと言った。そして誰にそこまで傷付けられたのか探りを入れると、どうも婚約者である王太子から「お前は王太子妃に相応しくない」と詰られたらしい。王太子最低。乙女ゲームでは最推しだったのに。…いや、よくよく考えたら「花恋」の攻略対象者で唯一の婚約者持ちだったもんな、婚約者がいるのに他の女の子に手を出すって冷静に考えるとやばいよね。


「ロゼ様…王太子殿下はきっと、馬鹿なんだと思います」


「…え?」


「だって、こんなに愛情深くて優しい、いじらしい健気なロゼ様の魅力に気が付かないんですから」


「…」


「誰がなんと言おうが、ロゼ様は最高の女性です。王太子殿下に見る目がないだけです。どうか、そんなお馬鹿さんの言うことなんて気にしないでください」


「メグ…」


「私でよければ、愚痴くらいいくらでも聞きますから。ね?たまにこうして鬱憤を晴らしましょうよ」


「…そうね、ありがとう」


こうして私とロゼ様の秘密のお茶会が始まりました。


ー…


秘密のお茶会を始めてからはや四年。ロゼ様は私に愚痴を溢すことで、王太子殿下から受けた心の傷が徐々に回復して。また冷静にもなれたらしく、意外にも婚約は解消せずむしろ関係を徐々に持ち直していき、今では王太子殿下の方がロゼ様にぞっこんだ。なんでも、うるうると濡れた瞳で「殿下はもう、私へのお気持ちは捨ててしまわれたのですか?幼き日の約束を覚えてはいませんか…?」と迫って婚約を白紙に戻すかと聞いたらしい。「私は王太子妃教育の一環として涙を流すことは出来ません。でも、婚約を白紙に戻すのなら、泣いても構いませんよね…?」というと王太子殿下ははっとした表情になり、「私、…幼いあの日よりずっとずっと王太子殿下をお慕いしておりました。…さようなら、初恋の人」と駄目押しに涙を落とすとロゼ様の腕を掴んできて「今まで誤解していてすまなかった!やり直させてくれ!」と言ってきたそう。ロゼ様すごい。


そして一方の私はロゼ様とすっかり茶飲友達です。おかげ様で田舎のしがない貧乏男爵家の一人娘である私にも伯爵家次男で我が家を継いでくれる婚約者が出来ました。ロゼ様、有難や有難や。


「メグ、貴女のおかげで私、冷静になれたわ。こんなに簡単なことだったのに、何故今まで気付かなかったのかしら」


「人間追い詰められるとそういうものですよ」


「それもそうね。メグ、本当にありがとう。私、今とても幸せよ」


「それは良かったです。私も、ロゼ様のお陰で良い婚約者に恵まれて幸せです」


「うふふ。もっと幸せになってね」


「ロゼ様こそ」


今日も今日とて私とロゼ様はお茶を楽しみます。こんななんでもない毎日が幸せです。

たまにはヒロインが悪役令嬢を助けたっていいじゃないですか

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