どうも、悪役令嬢ですが潔く退きましょう。え?ええ、第三王子殿下に嫁ぎますが何か?
わざと悪役令嬢になったお話
悪役も大変ですわ。
はじめまして、ご機嫌よう。私、公爵令嬢のリーリエ・フェアトラークと申します。今、とても素敵なことが起こっていますの。
「すまない、リリー。君は既に知っているようだが、僕には他に愛する人が出来てしまった」
そう告げるのは婚約者の侯爵令息、コーミッシュ・ドゥム様。うふふ。ええ、わかっていましてよ。むしろいつ切り出されるか待っていましたわ。
「まあ…それは…私、何か至らない点がありましたか…?」
悲しそうな表情で聞く。ミシュ様は静かに首を振る。
「君にはなんの落ち度もなかった。ただ、僕が彼女を愛してしまっただけなんだ」
「彼女とは…」
「知っているだろう?…男爵令嬢のヘルディン・クラスィッシュ嬢だ。君が嫉妬し、嫌がらせをしていた令嬢だろう?」
「まあ…私、嫌がらせなんて…。ミシュ様のご寵愛を受けたルディー様に嫉妬してしまったのは認めます。ただ、私はミシュ様に近寄らないように警告し、私のお友達にもルディー様と親密にならないように振る舞うよう、お願いしていただけですわ」
「それが嫌がらせなんだよ、リリー。君にはなんの落ち度もなかった。でも今の君は、ルディーを虐めた悪者だ」
「…そんな」
「だが、一番悪いのは僕だ。君というものがありながら、ルディーに恋をしてしまった。僕がルディーに目移りしなければ、君も嫉妬などしなかっただろう?…今なら間に合う。婚約破棄してくれ。それでルディーへのいじめの件も不問としよう」
「ミシュ様…。ええ、そうですわね。考えてみれば当然ですわ。ルディー様はお美しく慈悲深い人格者であり、私の醜い嫉妬もそれで手打ちにしてくださるんですもの。私は何一つ勝てるところがありませんわ」
「そんなことは…ただ、僕が彼女に運命を感じてしまっただけだ。君も十分に素敵なレディーだよ」
「それでも、貴方様の心が離れてしまいましたもの…意味がありませんわ」
「リリー…」
さも悲しそうに毒突く。負け犬の遠吠えだとでも思って受け止めてくださいませね。
「さようなら、ミシュ様」
「ああ。…さようなら、リリー」
こうして私とミシュ様は決別しましたわ。
…ということで、私は自由ですわ!やりましたわ!
私、元々そんなにミシュ様のことを好きだった訳ではないんですわよね。まあ、いつかはこの方と結婚するんだろうと漠然と思っておりましたし、家族愛のような幼馴染同士の絆のようなものは感じていましたけれど。そこにきてこの裏切り。平民上がりの転入生、男爵令嬢でしかない見た目だけが取り柄のルディー様に速攻で落とされたミシュ様。でも、ミシュ様に男としての魅力を感じていなかった私には好都合。利用させていただきましたわ。家同士の利害関係もあり、ミシュ様の想いだけでは婚約破棄まではいけないと踏んだ私は二人の想いが更に深まるように、かつお父様が婚約破棄を受け入れざるをえないように、ルディー様にちょっとした嫌がらせをさせていただきました。
まったく、真実の愛に生きたいのが自分だけだとは思って欲しくないものですわ。
でも、“婚約者を取られて傷心中の私”がいきなり新たな婚約者を作るわけにはいかないですわ。候補は実はもう決めていますが、アプローチをかけるのはもうちょっとしてからですわね。その間に私を蹴落としてくれたルディー様にもお礼をしなくちゃいけませんわね!うふふ!
ー…
「リリー様…聞きましてよ、大丈夫ですの?」
「ええ、悲しいですが仕方がありません。ただ、今は涙を流すことをお許しくださいませ」
「リリー様…」
「あら、…あれは。ルディー様?」
「あら、本当…え?」
最近は学園で、私は噂の的ですの。ですから、普段この時間は誰も利用しない裏庭で友人達数人に慰めていただいておりますの。ですが、今からは貴女に噂の的になっていただきますわよ、ルディー様。
「どうしてルディー様がコーミッシュ様以外の殿方と一緒に歩いていますの?リリー様からコーミッシュ様を奪ったというのに、節操もなく他の殿方に近寄るなんて…!しかもこんな、人気のない場所でなにを…っ!」
「まあ…もしかして、噂は本当でしたの…?」
「噂?」
「え、ええ…なんでも、ルディー様はその…平民上がりだからか、殿方を手玉にとるのが得意で…特にお相手のいる方を奪うのが趣味だとか…」
「まあ!」
「そんな噂があったんですの!?」
「なんてはしたない!」
「それでは、コーミッシュ様もっ!?」
「リリー様…っ!お辛いでしょう、もうこの場は離れましょう!」
うふふ。ルディー様。貴女様の趣味嗜好はここ影の調査でわかっていましてよ。身から出た錆ですわ。せいぜい反省なさいませ。
ー…
あれから。結局ミシュ様…いえ、コーミッシュ様とルディー様は破局しました。原因はルディー様の浮気癖。なにやらルディー様の良からぬ噂を聞きつけたコーミッシュ様が調べたところ、真っ黒だったそうですわ。結局ルディー様はその問題ある生活態度を理由として、コーミッシュ様に振られただけではなく学園も退学させられ、家でも勘当され市井に戻されたようです。
コーミッシュ様は私との復縁を望まれましたが、私の両親がかんかんに怒って拒否されました。まあ、当然ですわね。
その代わりに、私、この国の第三王子、エーデル・ケーニヒ殿下と恋仲になりましたわ!うちの公爵家も王家との繋がりがより深まりますし、良いことばかりですわね!エル様は第三王子なので、適当に爵位と領地を貰って独立することが決まっていますし、公爵令嬢の私という後ろ盾がありますから将来は安泰ですわ!うふふ、幸せです!コーミッシュ様に振られてよかったですわ!
もちろんエル様とはとても仲睦まじく過ごさせていただいていますわ。
「私の可愛いリリー。もうあんな浮気男の婚約者だった過去など忘れなさい。これからも、泣きたい時には胸を貸してあげるから」
「エル様…私、私婚約破棄された時には本当に辛くて…でも、そんな私の心を癒してくださったエル様のことを、今では心から愛しておりますの。エル様と婚約出来たんですもの。もう彼の為に泣くことはありませんわ」
「可愛いことを言う。結婚まで我慢しなくちゃならない男の気持ちがわかっているのかい?」
そんなことを言いながら、私の髪にキスを落とすエル様。かっこいいですわ。
「愛してる。一生をかけて幸せにしますよ」
「もう幸せですわ」
「…本当に、可愛い方だ」
今度は頬にキスを。うふふ。本当に幸せですわ!ありがとうございます、コーミッシュ様、ルディー様!せいぜいあなた方もお幸せに!
過去作のリベンジ




