悪役令嬢に転生した時の最適解、1.逃げる、イ.逃げる、C.逃げる。あれ、どうしてこうなった?
とにかく逃げたい
どうもはじめまして。そして御機嫌よう。プライド・メテンプリコーシスです。公爵令嬢です。五歳です。私はここ数日、謎の奇病にかかり、生死の境を彷徨っていました。
そして、その朦朧とした意識の中で思い出しました。所謂、前世の記憶という奴です。私は前世では普通の女子高生でした。死因は病死だったようです。プライドとしての記憶と意識、前世の自分の記憶と意識は混じり合い、私は新たな「プライド・メテンプリコーシス」になりました。
そして、残念なお知らせが一つあります。私…乙女ゲームの悪役令嬢に転生してました。
前世の私の記憶によると、どうも私は攻略対象者であるウィット・アフェアー王太子殿下の婚約者に選ばれるようです。しかし彼の寵愛は、男爵令嬢でヒロインのシャン・ド・フルールに向けられ、顧みられることのなかった私は嫉妬に狂い、主人公を虐めて身分剥奪の末国外追放処分…。
なので私、ウィット王太子殿下…今はウィット第一王子殿下との婚約から逃げようと思います。
…ですがその前に。私にはやるべきことがあります。
「ねえ、貴女」
「お嬢様!回復おめでとうございます!」
それは、今までのプライド・メテンプリコーシスの悪行の数々を顧みて、迷惑をかけた人達に謝ること。今までの私は、わがままで横暴。使用人達や両親と兄に迷惑をかけていたのです。私に話しかけられた使用人も、この通り私に必死に媚びを売るくらいには。
「もしよかったら、これを貰ってちょうだい」
「え…お嬢様、これはお嬢様のお気に入りの髪飾りではないですか!」
「ええ。高値で売れるわよ」
「そんな…どうして…」
「どうしてもなにも、今まで貴女達には苦労をかけたじゃない。私も、さすがに生死を彷徨って今までの自分を顧みたのよ。どうか受け取って?」
「お嬢様…!ありがとうございます、家宝にします!」
もう。家宝なんて大袈裟な。
そんなこんなで、使用人たちみんなに色々なものを下賜して、両親と兄には使用人たちに協力してもらって作ったクッキーを差し上げました。そしてもちろん、わがまま過ぎてごめんなさいと謝りました。みんな最初はびっくりしていたけれど、素直に謝罪を受け取ってくれました。
幸いにして、今まで私はまだ幼く、またそういう性格だったせいもあってお茶会などに出ることもなかったため、社交界にデビューする時もいかにも悪役令嬢みたいな扱いは受けないだろうと思います。
ついでなので、私のお小遣いの範囲で使用人たちや両親に色々とプレゼントしたり、孤児院や養老院に寄付をしてみました。自然と、みんなから愛されるようになりました。
そんなある日のこと。
「プライド。王妃陛下主催の、ウィット第一王子殿下の婚約者を決めるお茶会があるんだ。よかったら行ってみないかい?」
ついに来た!
「…お父様、なんとか断れませんか?」
「えっ…?」
「私はお兄様と結婚したいです」
幼子だからこそ許される戯言でなんとか切り抜けようと思います。
「…プライド!なんて可愛いんだ!」
兄は感極まった様子で私を抱きしめます。
「うーん…プライド、この国では兄とは結婚出来ないのだよ」
「ならお父様と結婚したいです」
「プライド…なんて可愛く育ってくれたんだ!」
今度は父から抱きしめられます。
「一時はどうなることかと思っていましたが、今のプライドなら大丈夫ね。ねえ、プライド。お父様とお母様の為に、お茶会に参加してくれないかしら?」
「でも…」
「参加するだけでもいいのよ。婚約者に選ばれなくても、お父様もお母様も、お兄様だって怒らないわ」
「…」
困った。どうしよう。
「…じゃあ、隅っこで大人しくしててもいいですか?」
「ええ、もちろん!」
ということで、とりあえず参加だけはすることにしました。
ー…
はい。お茶会です。私は本当に、隅っこで大人しくしています。他のご令嬢はみんな、ウィット第一王子殿下に猛烈にアピールしています。
ふと、他のご令嬢から離れてウィット第一王子殿下が私の方に来ます。なに?
「…御機嫌よう。僕はウィット・アフェアー。レディー、名前を教えていただけますか?」
「え?ええ…プライド・メテンプリコーシスです」
「そうですか。公爵令嬢なのですね。身分も申し分ない」
「はい?」
「…僕は、貴女に興味がある」
「え?」
「みんなこぞって、僕に媚を売りに来る中、貴女一人は違った。是非、僕の婚約者になっていただきたい」
えぇえええええええ!?
「ほほ。公爵令嬢なら、身分も申し分ないし、良さそうじゃの」
「お、王妃陛下!?」
なんでこうなるの!?お母様は誇らしそうだし!味方してくれなさそうだし!
「よろしくね、僕のマイレディー」
嫌ですー!
「あ、あの、第一王子殿下!」
「出来ればウィットと呼んで」
「ウィット様!」
「なあに?」
「もし私に何か不満があったり、飽きたり、他のご令嬢を好きになったらすぐに言ってください!」
「え?」
「私は身を引くので!」
「ほほ、謙虚な子じゃのう。ウィット、これからはそんな心配をさせないように、大事にしてあげなさい」
「はい、母上」
そんなこんなでどうにか逃げ道?は作れました。多分。
ー…
あれから時は流れて早くも学園の卒業パーティー。
学園生活の中で、ウィット様は王太子となり、ヒロインであるシャン・ド・フルール男爵令嬢に出会われました。シャン様は果敢に王太子ルートを爆走していました。しかし何故か、ウィット様はシャン様に見向きもせず、不自然にならない程度に遠ざけ、躱し、代わりに私の所まで足しげく通うのでした。
私はといえば、どうにか悪役令嬢フラグが立たないように、ウィット様を理由をこじつけては避けていました。そしてシャン様が「虐められた!」とかほざかないようにシャン様にも近寄らず、寧ろウィット様同様に避け、シャン様が虐められている現場を見ては助け、シャン様の悪い噂は打ち消し、シャン様に恩を売りまくりました。
ここまで逃げ回ればさすがに大丈夫だろう…と、思ったのですが。
「プライド・メテンプリコーシス様!今から貴女を断罪します!」
公爵令息の、ピュール・アンベシル様が、横にいるシャン様を守るようにしながら私にいいます。ああ、結局こうなるのですか。
「プライド様!貴女はここにいるシャンを虐めましたね!」
「証拠は…」
「証拠はあるのか?」
ウィット様が私の隣に立ちます。そして私を守るように背中に隠します。
「シャンの証言が証拠です!」
「ほう。僕は四六時中プライドの側にいたし、プライドのネックレスについた魔力石でプライドの行動は把握している。プライドはそんなことをやっていないと証明できるよ。魔力石には映像を記録する力もあるからね」
ウィット様のその言葉に、シャン様は震えて青ざめました。その様子を見て、ピュール様は血相を変えます。
「そんな…シャン、なんでそんな嘘を!」
「だって…せっかく王太子ルートまっしぐらだったのにあの悪役令嬢が邪魔してきて…それで、公爵令息ルートに切り替えたけど、邪魔してきた悪役令嬢が許せなくて、断罪してざまぁしてやろうと思って…」
野次馬の皆さんも、ピュール様も、ウィット様も、シャン様の要領を得ない発言に首を傾げています。
「つまり、私が邪魔だから消したかったということですよね?」
私がわかりやすく噛み砕きます。
「そうよ!あんたがちゃんと悪役令嬢をやらないから!…ちょっとまって。 あんたまさか、転生者?」
テヘペロ!
「…っ!このくそ女!騙したわね!?」
いえ、騙すも何も何も言わなかっただけですけど?
「…よくわからないが、つまり、君は僕のマイレディーに邪魔だからといって危害を加えようとした挙句、そんな暴言を吐くんだね?」
「…っ!ウィット様ぁ!違うんですぅ」
「違わないだろう?衛兵!この二人を連れて行け!」
「そんなぁ!ウィット様ぁ!」
「…、こんなはずじゃ…」
そんなこんなで騒ぎが大きくなったので卒業パーティーは早々に解散することになりました。
「マイレディー。怖かったね。大丈夫かい?」
「はい、ウィット様…ありがとうございます」
ウィット様は優しく抱きしめてくれます。
「とりあえず。これで僕は君一筋だってわかってくれたかな?」
「はい、ウィット様」
「それじゃあ、僕の愛を受け取ってくれる?」
「もちろんです!」
ヒロインももういないから安心ですし、ウィット様結構好みですし。それになにより、これまで好きだ愛してると囁かれ続けてなんだか絆されていますし。
「嬉しいよ。僕のマイレディー、愛しているよ」
「ありがとうございます…あの、わ、私も大好きです!」
「プライド…」
「ウィット様…」
こうして私達は、晴れて結ばれたのでした。
逃げられなかったけれどそれなりに幸せ




