森の精霊王のお嫁さんになった悪役令嬢
森の精霊王のお嫁さんになった悪役令嬢
私は、森の精霊王に嫁ぎましたの。
初めまして、ご機嫌よう。私、ミシェル・ノアイユと申します。公爵令嬢です。突然ですが、私、悪役令嬢なようなのです。
順を追って説明しますと、まず、私は所謂異世界転生というものをしたようなのです。前世で児童養護施設への寄付などの良い行いをしてきた結果、好きな世界に転生する権利を得られたのです。そしてこの世界で目が覚めました。大好きな乙女ゲームの世界。しかし、私はヒロインではなく悪役令嬢に転生していたのです。それも、前世の記憶を失って。
そして、今。学園生活…すなわち乙女ゲームの舞台がもう終盤に差し掛かってそのことを思い出したのです。
正直戸惑ってしまいました。私は前世の記憶が戻ってももう前世の自分ではなく、ミシェル・ノアイユですし、皆から愛されてすくすくと健やかに成長できたのです。家族にも婚約者にも何も不満はありませんでした。…でも、私、前世の記憶が戻ってしまったせいで知ってしまいましたの。あれだけ可愛がってくれた兄が、そして婚約者が、ヒロインさんに堕ちた後、ヒロインさんを虐めた私を蛇蝎の如く嫌っていること。それを知った両親は私を見捨てたこと。ですが、それは誤解なのです。冤罪なのです。虐めなんて私、していませんわ。でも、ゲームの強制力と…あとは、恐らく私と同じ転生者であるヒロインさんの暗躍により、虐めをでっち上げられました。ですが、私は無実を証明する方法がありません。もう家族や婚約者にも期待出来ません。この後私は、良くて身分剥奪の上国外追放。悪くて死刑。家族にも友人にも見捨てられ、ヒロインさんに全てを奪われる。もう、私には何もありませんわ。
だから、私考えましたの。
ー前々から求婚して来ていた、森の精霊王に嫁いでしまおうと!
正直、これでも私は、私の両親にも、私のお友達にも、私の婚約者にも、私は全身全霊で愛を捧げてきましたわ。でも、もう皆様の心は私から離れてしまった。もう、失う物は何もないのです。もう、私は森の精霊王に嫁いで、この貴族社会から逃げますわ。森の精霊王に嫁げば衣食住には困りませんし、森の精霊王も正直私の好みドストライクの溺愛系甘々ヤンデレですし、見た目も好みですわ。白銀の肩よりちょっと上まで伸ばした髪はとても綺麗で、切れ長の目と緑の瞳は蠱惑的。高い鼻も、歯並びの良く小さな口も、少し薄い唇も最高ですわ。正直私、婚約者よりも森の精霊王の方が好きですの。婚約者がいるから、という理由で断っていましたが、もう求婚を断る理由もありません。森の妖精達も私に懐いてくれていますし、ちょうどいいですわよね。
ということで早速、十五歳の誕生日。森の精霊王の元に行った私は、そのままお嫁入りしました。そこからはもう、ものすごい勢いで、森の精霊王…サミュエルは私を一周回って恐ろしいくらい愛してくれましたし、お気に入りの愛らしい家具やお気に入りの愛らしい服、お気に入りのしっかりとした頑丈な、それでいて愛らしいお城に囲まれて幸せに暮らしておりますの。
ー…
サミュや妖精達との生活に馴染んで早三年。新たなお友達もたくさん出来ましたわ。それも妖精のお友達だけではなく、動物のお友達や精霊ともお友達になれましたの!ただ、私の夫、サミュは面白くなさそうですわ。この夫、独占欲の塊ですの。でもそこがまた可愛いのですわ。私に夢中ですから、浮気の心配もありませんしね。ちょっとヤキモチ妬きな所はありますけれど、気安く優しくかっこいい、力持ちで、魔力も人間とは比べ物にならないほど、そして何より、私を大切にしてくれる素敵な精霊王。言うことなしですわ。
「ミミ、何か考え事?…僕以外のことなんて考えないで」
「うふふ。サミュったら!あのね、私、サミュのお嫁さんになれた幸せを噛み締めていましたの」
「おや。それは嬉しいな」
にっこりと、思わずうっとりとする笑顔を浮かべるサミュ。とってもかっこいいですわ!精霊王らしからぬ人当たりの良さですが、サミュがこんな風に人間に優しくするのは私にだけ!サミュは人柄も良く、かっこよくて、まさに理想の旦那様ですわ!
「俺もミミの夫になれて幸せだよ」
「ふふ、来月この子が生まれてくるのが楽しみね」
「うん、とっても。君のことは俺が幸せにするからね。もちろんお腹の子も」
「ふふ、嬉しいですわ。ありがとうございます。私、とても幸せですわ」
やっぱり森の精霊王と結婚して正解でしたわ。お腹の子も可愛く思いますし、今、とっても幸せですもの。
…そしてサミュによると、私が元いた国には精霊王の祝福を与えないことにしたそうです。当然王族の使者が理由を聞きに来ましたが、サミュは精霊王の嫁である私に無実の罪を着せ、それを断罪しようとしたこと、庇わなかったことを理由と伝え、とっとと王宮に送り返してしまいましたわ。当然そうなるとヒロインさんや私の兄、元婚約者は恋愛にかまけている暇はありません。お前達のせいで精霊王様の祝福がなくなった、と虐め…というかもはやリンチを受けているようですわ。もちろん両親も一緒に。…正直を言えば、ざまぁと思ってしまいましたわ。でもまあ、もう今更どうでもいいですわね。せいぜいお幸せに。
ついでに言うと、私達以外の攻略対象者の方々とその婚約者様方はちょっといざこざはありましたが、最終的に丸く収まってらぶらぶいちゃいちゃのご様子だそうですわ。
まあ、色々ありますけれど、私を陥れてまで逆ハーレムなんて最悪なものを築こうとされたヒロインさんはざまぁな結末になりましたし、攻略対象者の方々もその婚約者様方も幸せになれましたしハッピーエンドではないでしょうか?
私もサミュと一緒になれてとても幸せですわ。
浮気されたならもっと良い男を捕まえる。それも一つの選択肢ですわ。
お腹の子もきっと幸せになれる




