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第8話 元魔法使いと悪魔

お読みいただきありがとうございます。

 まるで敵国の悪夢『ソルティア第3皇子 アレク・アーク・ソルティア』に似ている事に。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




 そんな訳ない。でも、今この間の戦いでは出て来なかった。そう言えばここ暫く出ていない。調べて見る必要があるかもしれない。



「本当に君は何者?普通はこんな試練。先ず自分の未熟さを知る為にわざと落とす為の試練なのに」



 本当に何者なんだろう?



****************************************



 僕は目が覚めると、目の前にエリスの顔があった。頭の後ろには弾力のある感触が。


「低反発?」


「それ、女性には失礼」


「はえ?僕は?あ、しつえいひまふいた(失礼しました)」




 膝枕されている事に気が付き、飛び起きるとエリスさんは作業し始める。どうやら料理をしてくれるらしい。直ぐに出来ると、二人分用意してくれた。やっぱり女性の手料理って心温まる気がするよね!




 僕は無言で差し出してくるエリスさんにお礼を言って食べる。ほかほかしてて、とても優しい味がする。基本エリスさんはあまり肉関係を食べない。その分野菜が主で、そっちの分野の料理が卓越している。僕もどちらかと言えばこちらの方が好きなので、偶には肉をがっつり食べたい時もあるけれど、普段はこちらがいい。



「ねえ、アレク。」


「はい、何でしょう?」



 深刻そうに話すエリスさん。すると意を決したように話し出す。



「今回の結構難しかったけれど、試練突破出来たよね?」


「はい」




 何か不味かったのかな?と思った。けれど、次の質問は突拍子も無かった。


「料理美味しい?」


「え、はい。とても美味しいです」



 何故急に話題変換するのだろう。そう思っていると、また質問してきた。



「あなたは『ソルティア第3皇子 アレク・アーク・ソルティア』?」


「はい・・・え?いや、違いますよ!?」




 二回とも前の質問で“はい”と答えていたので、ついそのまま“はい”と答えてしまった。なんだろう。どこでばれて(・・・)しまったのだろう。僕はここに居場所を感じていた。でも、それは僕の勘違いだったのだろうか。それともエリスさんは最初から気が付いて?





「んー。やっぱりただの勘だけだと違う・・・・か」


「勘・・・・ですか?」




 僕は冷や汗を流しながら聞く。バレて・・・いない?ギリギリ。





「魔力がとても大きい。それこそ宮廷魔導士になれるほど。剣術が下手。この国の常識が少ない。そして、以前見た顔にそっくり。あんまり前線に出た事が無い騎士は見た事もないし、先ず、ソルティアの騎士を突破して魔術師に迫るのはとても難しい。だから、少しだけ見た事があったから。」



 そう言えばソルティアの騎士が突破されて、ルナールの騎士がこちらに入って来た事があったけれど、とても恐ろしい存在だった。その時は覚えていないけれども僕は確か風魔法で吹き飛ばした覚えがある。




「その時は強力な風魔法で吹き飛ばされてしまって・・・・・。その時に見た事がある。ソルティアの悪魔。最強の魔術師。このルナールでは、あの皇子が強すぎる為に魔術師のほうが地位が高いとされている。魔術の攻撃の方が有効だって。騎士はただの脳筋だって。」




 やっぱり僕が風で吹き飛ばした人がエリスフィールさんその人だったようだ。既に実は会っていた事実を知って驚く。でも、僕はここに居る。あの地位を捨ててタダの見習い騎士としてここにいるのだ。しかし、なんでこんなに不安そうなのか。エリスさんはあまり表情を出さない人だ。だからここまで狼狽えているのは初めてだ。



「ねえ、アレクはもし魔術師に誘われたら魔術師になるの?」




 その理由が直ぐに分かった。どうやらエリスさんは僕が膨大な魔力の持ち主であるという事実を知らないで、エリスさんに憧れたという理由だけで騎士を目指していると思われているらしい。僕は騎士になりたいのだ。その為に国を捨てた。例え過去の仲間と戦う事になるとしてもだ。




「僕は騎士になります。なんと言われても魔術師ではなく、騎士になります。そしてエリスさんの弟子である事は変わりありません」




 僕は断言する。その返事を聞いたエリスさんは少しほっとした顔をする。どうやらある程度納得してくれたらしい。



「でも、どうして騎士に?」





 やはりエリスさんは言葉少なく直接疑問をぶつけるタイプだという事はこの3か月で学んでいる。それに対してしっかり答えなくては機嫌を損ねるのだ。そうすると、酷いと3日位訓練が止まる。



「僕はエリスさんに憧れたというのもあります。そして、故郷で色々ありまして。大した話ではありません。自分に無いものを持っている騎士様に憧れただけです。自分は運動神経も筋力も何もないですから」



 魔力で補強出来ると言っても、筋力を数倍に引き上げるのだから、素の筋力も重要になってくる。でも、僕は生まれつき身体が弱く、騎士には向いていないと思った。だから先ず魔術を学び、筋力で劣っている分を魔力で補おうと思ったのだ。

 しかし、結果その魔力で魔術師にされ、兵器として扱われ、そして・・・・・。












 国民を殺戮したとして糾弾されたのだ。







****************************************

 

 僕はその後も鍛錬をする。エリスさんが言うにはこの鍛錬は初心者を脱却する為に行う訓練方法らしい。魔力の調節、三点強化の領域を自由に操るセンス、魔力量の増強、体力の増強、足場の確保の訓練、肺の強化(滝のせいでとても呼吸がしずらい)をする目的らしい。


 普通は初日には出来ない物らしい。エリスさんも出来て3日は掛かると思っていたらしい。けれど、出来てしまった僕は、どうやら魔力が桁違いだとの事。そんなこと出来るのはやはり悪魔だけだとエリスさんは推測したようだ。しかし、僕は悪魔ではない。普通の人間だ。もちろん、ソルティアにいた頃は魔法をちょっと使えたけれど、それだって悪魔ではない。悪魔みたいな事もしたつもりもないのだ。





「えっと?その悪魔さんは何をしたのです?」




 エリスさんにもう何度目かになる滝登り修行?崖上がり修行?を熟した休憩中に聞くことにした。するとエリスさんは首を傾げる。



「知らないんだ。そこまで田舎なのかな?

 ソルティアの悪魔は魔法一つで山を軽く破壊したり、海にトンネルを作って奇襲してきたり、竜騎士が空から侵入しようとしたら天候を変えて撃ち落したり。正に悪魔の所業」




 ん?普通じゃない?



「へ、へーそうなんだー」



 僕が普通にやった事を羅列されて、悪魔の所業とか言われるとちょっと心が痛い。周りは普通に出来る事をやっただけなのに・・・・・。こっちの魔術師は出来ないのだろうか?




「そんなこと出来る訳ない。第一魔力が全然追いつかない。だから悪魔なんて呼ばれる。見れば分かる。でも三か月半前から姿が見えないらしい」




 じっとりとこちらを見て来るエリスさん。実は気が付いているのでは?とは思うものの、普通に接してくれている所を見ると、どうやらそうではないらしい。ただし、かなり疑っているのだろう。


 確かに僕がオークに襲われた時は国を出てから直ぐだった訳で、時系列的にその悪魔さんが消えた時期と一致しているという事だろう。もう少しタイムラグを設けるべきだったか・・・・・。でもお金を両替するのに手間取ると思っていたけれど、意外に早く換金出来たのは良かった。



 この国はお互いにスパイを送る関係で、戦争物資以外は商人の出入りが自由だ。だから商人はどちらのお金も持っている。手数料が掛かるけれども、その手数料の適正価格で大量に換金できたのは嬉しかった。まあ、知り合いなのだけれども・・・・・。



 更に大臣達は僕がまさか敵国に亡命しているとは思うまい。追ってがまだ来ないのがいい証拠だ。まあ僕程度が失踪した程度で王宮は慌てるはずもない。寧ろお兄様とお姉様は喜んでいるのでは?


今回で、何かずれていることがお分かりいただけたでしょうか。主人公は基準がずれております。

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