第6話 元魔法使いと特訓
ここから修行のターンです。無双はまだ先
「また知らない天井」
そういうと、僕は痛む体を起こす。気が付くとエリスさんがナイフでお腹をつんつんと突いていた。物騒だから止めて欲しい。
「聞いた。狼に襲われたんだって?」
「え?ええ・・・・・・・。」
そういえば、どうなったのだろうか?あの三人は?僕は?
「急に魔力弾が空に上がったから。それを頼りに行ったら、狼と一緒に倒れてた。」
「ありがとうございます。あ、そういえば、三人組がいた気がしますけれど・・・・・」
そういうと、エリスさんはコテンと首を傾げる。その反応から、まだ三人が森の中で放置されているのだと想像する。
「大丈夫。冗談。仲間が助けた」
ペロッと舌を出すエリスさん可愛すぎ。安心すると、急に体が怠くなってくる。まだ魔力枯渇したままあまり回復していないようだ。
「今日は狼汁だから美味しい」
「え?狼の魔物を料理に?」
「回復に良い」
それだけ言うと台所に行ってしまった。そちらから良い匂いがするのは間違いない・・・。エリスさんはとても料理が上手だ。今日も赤い色のスープが運ばれてとても美味しそうだ。
「沢山召し上がれ」
「ありがとうございます」
僕とエリスさんは一緒に食べる。何故か弟子入りするという理由で住ませてもらっているけれど、勿論寝る場所は違うし、ほぼプライベートなんて無い。それでも住むところも無い僕にはありがたかった。
「そう言えばいつの間にか住ませてもらってますけど・・・・・」
「今更。それにいつも気絶するから。これからも使っていい。ただし」
そこで一拍置いてから、自分の皿から僕に視線を送る。僕もその綺麗な瞳に吸い込まれる。ああとても綺麗だ。宝石だ。
「全力でいくね」
「はい!よろしくお願いいたします、師匠!」
「うん」
エリスさんはにっこりと笑う。例え死にそうになる位の訓練が待っていても、この笑顔一つで乗り越えられる気がしてきた。
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気がした自分がバカだった・・・・・・・。
高さ100mの高さ(エリスさん情報)の滝が轟轟と叩き付けている。森の中であり、厳しい自然の中、やっとたどり着いた超凶悪な滝に辿り着く。空気は澄み切り、とても気持ち良いこの中で、滝に打たれるのだ。精神修行には持ってこいだ!
「滝に打たれるのですね!?」
「うん。はい」
急に袋に岩を詰めだして、満タンになったその袋を受け取る。何をするのだろう?
「上で待ってる」
「へ?」
「じゃ、お昼までに」
そう言ってエリスさんは崖を簡単に登る。短いスカートからチラチラ見えそうになりながらも僕は目を逸らす。しかし、上で待ってるって・・・・絶対に滝で水を受けながら登れってことだよね?しかもこの崖・・・・・普通に登るとどこでも滝に打たれる状態だ。しかも渡された大岩が詰まった袋・・・・。自分の体積より大きいんですけど・・・・・・。
「ぐだぐだ言っていても始まらない!やろう!出来る!」
心が折れそうになるとき程口に出す事を心がける。意外とメンタルが回復するから、結果が好転する事が多いのを経験している。
先ず身体強化状態からこの袋を持ち上げようとする。しかし、岩が重すぎて袋が持ち上がらない。そこで防具強化で袋を強化する。しかし、それでも破れそうだった。
掴む場所を工夫するも駄目。岩を浮かせる事自体も駄目なようで、魔法に反応しないように細工してあるみたいだ。でもさっき確実にエリスさんは袋毎持ち上げていた。だから確実に方法があるはずだ!
僕は下にものが敷かれていないか、袋に細工がないか調べたけれどもいずれも無かった。防具強化を強めてもビリビリという破ける音がする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。そう上手くいくわけないよね・・・・・・。
じわじわ異常な事態が