第3話 元魔法使いと魔力
今回は説明の要素が少し大きいです。
「身体強化。武器強化。防具強化。この三つを魔力で三点強化という」
エリスさんは眼鏡(伊達)にワイシャツを着て小さな黒板で説明する。何か背徳感がする気がするけどきっと気のせいだ。気のせいなのだ。黒タイツとか別に大丈夫なのだ。
「先ず身体強化。体の骨格を意識して、筋肉の出力を上げる。」
そう言いエリスは輪切りにされた丸太を持ってきて、右手で握り潰す。普通そんなのは無理だろう。因みにこれは講義では無くて、自分でおさらいしている事を勝手に僕が聴いてしまっただけ・・・という体でいくことにする。無理がある。
でも、折角教えてくれるというなら、やらない訳にはいかない。僕は体中の筋肉、骨を意識して魔力で補強するイメージを作る。すると体はさっきよりずっと軽くなる。
「すごい!」
どうやらエリス先生も褒めてくれたしこれは何とかなりそうだな。
「じゃあ、そのまま武器に込める。」
なんか座学と言いながら実践になっているけど突っ込まないぞ。
「出来てる。なら服も強化して」
服にも魔力を流すけど、変わった事があるのか分からない。と思った矢先。
エリスさんは急にナイフを僕のお腹に突き立てる。
「え?ひ!?」
しかし、ナイフはなんと服で弾かれる。そしてナイフの刃が折れて弾け飛ぶ。
「よし、行けるね」
「行けるね。じゃないですよ!もし不十分な強化だったらどうするんですか!?」
「え?あー。大丈夫」
「そっかー。」
きっと強化の状態を見て大丈夫だと判断したのだろう。
「その時はもうちょっと私が面倒を見ていた」
「全然大丈夫じゃなかった!」
本当にこの師匠で大丈夫か心配になって来たよ・・・・・・・。
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森で拾った少年。童顔だけれども、同い年位?
身体は弱そう。でも魔力はある。魔法使いの方が似合うだろうけど、私の剣技が美しいと言ってくれた。初めてだった。あの目は本当だろう。
アレク・・・。恐らく下の名前は偽名なのは分かっている。私も隠したからお相子。
アレクは白髪で青い優しい顔をしている。性格も優しそう。けれどもどこかで会った気がする。
アレクに身体強化を説明する。本当は体の筋肉の位置、骨の構造を教えるつもりだった。でもアレクはいきなり出来てしまった。弱いけれども綺麗な身体強化だった。今度は剣に魔力を纏わせると、綺麗に乗る。私達騎士が使うと少しずつ漏れ出して煙のようになるのに、それが全く無い。本当は魔法使いだと言われても納得してしまいそう。
アレクは服に魔力を通すと、本当に初めて?というレベルで綺麗に纏って見せる。実際にナイフを刺してみると、阻まれる。もうちょっと面倒を見てもいいかもと思ったけれど残念。でも、直ぐに吸収してくれるのは素直に嬉しい。
それからさらに剣技を一通り見せる。
「えっと、こう?」
「こう」
アレクは剣技の方は全く出来ていなかった。教えがいがある。それから正しい型を素振りさせる。すると身体強化を使うと全くヘロヘロの剣筋だけれども、これから順番に強くなればいい。剣技の才能は全く無さそうだけれども、家に入って来た虫を剣で叩き落とした時は驚いた。
これはもっと教えたい。弟子にしたいと本気で思った。
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僕はエリスさんの特訓で剣技を教わり、軽い模擬戦をすることになった。なったのだけれども・・・。
「たーー!」
「はい」
僕は本日20回目の空を見上げるように転がされている。手加減をされてはいるのだろうが、それでも全く3回以上打ち合うイメージが湧かない。飛んでも無くエリスさんが強い事を身をもって理解した。
僕はそれから王都での登用試験まで剣技を学ぶ。それから僕は日が暮れるまで訓練して、エリスさんに転がされる日々を送る事になった。
「明日は登用試験」
「はあ、はあ、強くなった気がしませんけど・・・・」
「まあ、合格は出来る」
「本当ですか!?」
「気がする」
「そこは断言してくださいよー!」
かなり厳しい訓練をして少しずつ筋肉が付いてくる。でも、全く強くなった気がしなかった。
次回もすぐに投稿させていただきます。お読みいただければ嬉しいです。