第15話 元魔法使いとナツ
お星さまになったナツは取り合えず回収しておいた。
その間に会えた喜びから二人は抱き合う。
僕は微笑ましい物を見ている。美しきかな。
「おい、アー坊。なんか俺に言うことは?」
「てへ、ごめんね?」
「てへじゃねーよ!俺が変態みたいになっちまったじゃねーか!」
まあ、変態だから仕方ないよね。
「今失礼な事考えただろ」
「事実しか思い浮かべてないよ?」
「変態じゃないからな!紳士だからな!」
「はいはい」
変態紳士ね。
それよりエリスさんはこちらに向かって話かける。
「妹をありがとう。でもまさか騎士団長が犯人だったなんて」
「確かにね。」
帰り道にエリスさんには事の顛末を教えた。だからこちらの番だ。
「二人に何があったの?」
当然の帰結だと思う。二人は顔を見合わせて頷く。
「実は私たちはエルフの国、ユグドラシル王国の姫だった。でも、戦争回避の為私達が王族に売られた。形としては嫁入り。でも、完全に性的玩具だった。それを一応助けてくれた形なのが、今の騎士団長。でも、彼も一緒だったみたい。ただ横取りしただけ。
リフが追いかけてくれたんだけれど、どこかで捕まって…。それで団長が探してくれるって言うから、それに甘えてたの。でも、彼は結構他の男が私に近寄ると、嫉妬してなのか攻撃的になる。
それが貴方に喧嘩を売ってきた理由。
そして危うく私はおもちゃになる所だった。リフィールも救ってくれたし、本当にありがとうアレク。」
「アレクさん。本当にありがとうございます!
「い、いえ。そんな…。」
僕は思わず照れてしまう。顔が熱い、エリスさんの笑顔が、眩しい!
僕は思わずドキドキしてしまう。それを誤魔化す為に話題を転換する。
「そ、それでどうするの?
エルフの国とソルティアが戦争を始めたら大変なんじゃ」
「ああ、それは一時凌ぎで良かったの。実はこの国のトップが死んじゃって、白紙に戻ったの。それで一旦国に帰る時にリフィールが捕まった事を知って今日に至るの。まあ、しばらくしたらこのまま国に戻るのもありかな?って思っているんだけれど。」
「そ、そうなんですね。」
僕は特に表情を変えなかった。むしろ少し微笑んで見せた。けれど、悲しそうな顔をエリスさんにさせてしまう。
「あのね。エルフと人間の寿命は違うの。だからあなたの修行は付き合う。だから安心して?」
「はい!これからもよろしくお願いいたします!師匠!」
僕は胸が少し熱くなる。ここまでは。
「じゃあ、師匠の言うことは全て聞く事。いいね?」
「はい師匠!」
「じゃ、たまーに夜起こすから」
「え?それで何をするんです?」
「その時に言う」
相変わらず淡泊な物言いに苦笑が出るが、僕は了承した。
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「ねえ、お姉さま。あの子すっごくお姉さまに懐いてますね」
「そうね。私も好き…かな?だからね?」
姉妹二人でベッドに入ると、リフィールとエリスは語り合う。エルフといっても女の子。おしゃべりが続く。それは数年もの間会えなかった二人の絆がそうさせているようだ。
「そういえば体は大丈夫?」
「え?大丈夫ですけど?」
「暫く動かなかったんでしょ?食事もそんなに無かったんじゃない?体弱ってるでしょ?」
心配するエリスにリフィールがきょとんとした目で見る。首を傾げてしまう。
「えっと。拘束を外していただいた時に少し。でも、直ぐに活力が沸いて動けるようになりました。えっと暫くずっと意識が朦朧としてたので、良くわからなくって。」
エリスが今度は首を傾げる。当たり前だ。だって普通、体を動かさなければ、次動かすのに関節が固まっていたり、筋肉が衰えていたりするはずだ。それなのに、以前よりはやせ細り、動きに切れはないものの、ほぼ普通に動いている。普通はあり得ない事だ。
不思議に思っていると、今度はリフィールがいたずら顔でにやりと笑う。
「それで?お姉さまはアレク君をどうするおつもりなのです?」
「え?」
「よければ、私に構わずあちらで寝ても宜しいのですよ?」
その言葉に顔が熱くなるようだった。しかし、直ぐに首を振ると、エリスはリフィールにデコピンをする。痛そうにオデコを摩るリフィールににっこりと笑ってみせる。
「そんなんじゃない。」
「ふーん。そんな赤い顔で言われてもねー。寧ろ私はお姉さまが行ってくれたほうが、一族としても、肉親としても、とっても安心なんですけれど」
「そそそ、そんなんは。えっと。違うから」
「なーにが違うのかしら?お・ね・え・さ・ま?」
そんな風に煽られて、結局部屋を追い出されるのだった。
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僕はふと人の気配がする。うっすらと瞼を開けるとそこには…
「………………………………………………………………」
「………………………………………………………………なにやってるの?」
「なんでアー坊は俺を放置したんですか?」
「あ、忘れてた。」
「扱いひどくない!?」