第12話 元魔法使いと私生活
団長を倒したから順風満帆という訳では無かった。入団式で解散した後、団長に戦いを申し込まれたので戦ったたら普通に負けた。魔力の扱いは僕がこの騎士団の中で一番上手かもしれないけれど、その魔力に頼り切った戦闘には弱点があって、簡単な弱い魔法でその強化を壊せるらしい。
そして壊されたら僕はただのもやしに成り果てる。
団長を一応ビギナーズラックで倒したという事で団の中にいられる事になったけれども、僕はどうもカーストでいうと最下位のようだ。今もちょっと先輩のパシリさせられている。食材を買って来て料理をしているのだ。
「先輩。買ってきました。」
「おおー、おつかれちゃん」
僕が購買で食料を買うと、先輩達がそれを食べる。そして訓練に戻る。一応食事は新人の仕事だが、他の新人も僕に投げ切っている。
「うーんこれは師匠の影響か」
「ごめんね?なんでこんなひどい事するのかって私言いたいけど、言いたくない・・・」
「し、師匠!?いつの間に後ろに!?そしてえ?言いたくない?どういうことです?」
エリスさんの困った顔を見て首を傾げる。するとエリスさんは皆の方を指さす。すると、ガツガツと食べているみんなの姿が。
「うん。こんなにガッツいている初めて」
「初めて?でも普通に料理しただけですよ?」
僕はふつうに料理しただけなのに、何故か皆脇目も振らず食べている。そして直ぐにお替りを要求してくる。
「はーい!今行きます。」
僕はご飯と、カレーを付ける。大体皆3杯はお替りしたようだ。何故ここまでがっつり食べれるのかは知らないけれども、気持ちはよかった。
「皆さんすごい食欲!」
「あはは。家の晩御飯もよろしくねー」
「もちろんです!師匠!その代わり」
「はいはい。取り合えずいつものトレーニングメニューを熟して。その後がっつり鍛えてあげる」
エリスさんの笑顔に癒されつつも僕はまだまだ伸びしろがあることを意識して動く。それに対して回りから微妙そうな顔で見られるも、僕は特に疑問に思わなかった。
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俺は団長室で腕を組む。
騎士団本部の一番上にあり、執務室でもあるため本棚や客を迎えるためのソファーなどがある豪華な部屋だ。その空間には団長と秘書しかおらず、考え事には打ってつけだった。
「エリスフィールに男がついたと聞いたが、ただの料理係兼遊び相手のようだな。あの餓鬼もただ遊ばれているだけだろう。それにしてもあいつの茶色い料理旨かったなー」
団長は腕を机の上に置いてある水晶に触れる。すると水の波紋のように魔力が広がり、地下通路の牢屋のある一角を映し出す。そこには一人のエルフの少女の姿が映しだされる。その要旨はエリスフィールの髪とは反対に銀髪で、それ以外はエリスフィールにそっくりであった。
「おい、少しやつれたか?」
「はい。食事は与えているのですが、すべては食べていないので」
「そうか・・・・。早く媚薬を完成させろ。そしたら姉妹供に俺に服従するだろう。」
「はっ!かしこまりました」
秘書は頷くと直ぐに指示を出しに扉に向かう。団長は不適に笑う。すべてが手に入るまでもうすぐだと。
「ん?おい、何故顔の前に手を持ってくる?」
「不適な顔だからです」
「おい!」