第11話 元魔法使いと入団式
僕は会場に入るとそこには誰も赤い布を巻いている人はいない。
周囲に味方がいないのって結構寂しいんだね。そして女子少ない。合格したのは30人。その中で男子25人女子5人。
「おい、あそこ、一人だけ赤付けていやがる。」
「あはは、そんな派閥あったんだ」
周囲が僕にワザと聞こえる様に言ってくる。でも、何とも思わない。だって・・・・・。
突然殴ったり、剣で切り掛かられたり、靴を隠されたり、お昼ご飯奪われたり・・・・・。
あの頃に比べればまだマシだろう。身構えていたけれど、直接的には攻撃してこない。なんていい所なんだ!
感動に打ちひしがれていると、教官っぽい・・・・いや、ネルさんと厳つい人が来た。その人がこちらを見て驚いたような顔をして直ぐに真顔になる。そしてその顔をみてネギさんは”してやったり”という顔をした。もしかしたらネギさん・・・・いやニンジン先輩はもしかして、この厳つい人から隠蔽する為にワザと合格リストから外した?
僕は首を傾げているけれども、考えても答えは出ない事を悟って考えるのを止めた。
ニンジン先輩の視線を見た鋭い目の人はこちらをもう一度見て・・・・いや、睨むと全体を見渡す。
「俺が騎士団、騎士団長のゼウスだ。この歴史ある騎士団の団長の命令は絶対だ。いいな」
『イエッサー!』
全員腕を胸の前で交差して掛け声を掛ける。こういうのいいねー。僕も真似をしていると、騎士団長がこちらに向かってくる。ドキドキしていると、僕の前に立つ。厳つい顔、頬に傷、筋肉は大きく膨れ上がる程あり、僕の頭が騎士団長の胸当たりにしかないためかなりの長身であることが分かる。
その為見上げると、急に剣を握ると僕の首に向かってゆっくり振り抜く。避ける事も剣で防ぐ事も出来るが、敢えて首にピンポイントの防御魔法を付与する。明らかに寸止めするための力加減で振られる。
それでも首の皮一枚を切る位置で止まるであろう事が直ぐに分かったので、首を少し横にずらす。
「ふん。この程度の斬撃も避けれぬのか。ここにいる他の者は全員この程度避けられるぞ。この程度が避けられぬのであれば、辞めてしまえ!!」
最後は恫喝されたけれど、僕は”避けられない”なら辞めてしまえって事なら、僕は敢えて避けなかったので、居てもいいことになる。ちなみにエリスさんが、ネギパイセンに何か耳打ちして楽しそうにしている。いいなー。
「何を不満そうな顔をしている!」
騎士団長ににらまれたので、「申し訳ありません」と謝っておいた。
騎士団長が段に戻ると、こちらを一瞥して叫ぶ。
「おい、お前!俺は出ていけと命令したはずだが?」
「え?避けられないなら、出ていくのでは?」
思った事を言ったら、ブチっと音がする気がするほどの怒り顔になる。剣を抜いて切りかかってくる。それを言われた通りに身体能力上昇を使用して避ける。世界がゆっくりと感じられるように時間加速の魔法も使用して、危なげなく騎士団長の連撃を躱す。
それを驚愕の顔でこちらを見ると、直ぐに顔を赤くして切りかかる。勺炎を纏った剣激を複数飛ばし、切りかかって来る。けど、本気で攻撃してくる訳でも無いので、何とか避けきる。っていうかこれ何回避ければいいのーーーー!!?
**************************************
おかしい!おかしい!おかしすぎる!
俺の最速の剣技が全て避けられる!俺の剣技は攻撃力特化とは言え、身体能力上昇程度で避けられるはずがない!もう10分は切りかかっているのに、小僧は息切れせず、かすりもしない!
エリスに近づくお邪魔虫を排除しようとしたが、動こうとしないため、少し脅す程度で首に剣を当てた。本当は首に少し傷をつけてやるつもりだったがなぜか失敗した。避けたり防いだりしたら命令違反で排除する予定だったのだが、俺の剣を避けなかったため恫喝した。
それが、全く動じなかった。予想外だった。こんなちびでひ弱そうな餓鬼なんか簡単に逃げると思ったのだ。それが、反論してきた。だから身をわきまえさせる為に半殺しにするはずが、何故かエリスにクスクスと笑われている。
ムキになっていることは分かっている。でも、ここで笑われたままでは納得がいかない。最速の攻撃である、飛燕を放つ。予備動作を消して炎の推進力でもって放つ突き攻撃だった。
「ゼウス!それはだめ!副団長として責任を持ちます。アレク君!団長を一旦黙らせて」
「え?」
この若造に突きを躱された後、ガキが持っていた鉄の剣と訓練用の木の剣を手に取る。二刀流か?と思ったが、鉄の剣を地面に放り投げ、訓練用の木の剣で防御姿勢を取る。
エリスの剣技を継承していることは弟子となっている時点で分かっていた。だからカウンター技だとは知っている。だが、一度剣で受け止めないといけない。木の剣で受け止める事など出来るはずがない。
-------空気が振動し一つの鋭い音がする。
「は?」
騎士団長は急に何が起きたのか分からず気を失う。
***************************************
やっっちゃった。
やっちゃったよ・・・・。
エリスさんに黙らせてって言われたから、木の剣を、突きから袈裟切に変えて切りかかってきたので、カウンターを使用した。訓練用の剣に魔力を通し、硬度を上げ摩擦を下げた。それにより斬撃を滑らせて逸らし懐に入り込んで胴に衝撃を強化する魔法に切り替えて攻撃をした。
「は?」
したんだけれど、それで目を白くして泡を吹いて倒れてしまった。これってやばくない?
「よくやった」
エリスさんだけはグッジョブ!と親指を立てているけれど、他は全員ドン引き。さすがに空気を読めない僕でもこれはやばいと分かる。
「えっとこれどうしましょう?」
「とりあえず団長なしで入団式を進めよっか。
「え、エリス様。この状況で?」
「にんじんさん、お願い」
「はいよろこんで!」
悪女や!悪女がいる!ジト目でエリスさんを見ると、エリスさんは輝かしい笑顔でほほ笑むので僕も釣られて笑ってしまうのだった。(このあとめちゃくちゃニンジンパイセンに怒られました。)
美しい女性の特権