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第10話 元魔法使いと試験結果

先ず試験結果発表です。

 僕は王都に来ていた。勿論ルナールのだ。何故か?観光じゃないよ、試験結果を見に行くんだよ。王都の騎士宿舎の訓練場に張り出されていた。



「やっとアレクの変態が明らかに」


「え?どういう事です!?師匠?」





 エリスさんに急に変態呼ばわりされる為、僕は少し焦る。美女に変態扱いされるのはショックだし、この微笑みはドキッとするし、リアクションも変になってしまうし・・・・・。






「あれ、アレクは変態なの自覚していない?」





 綺麗な顔で、少し屈みつつ、長い髪を右手で梳きながらこちらを見る。凄く綺麗で、ドキドキしてしまう。そしてエリスさんの口から変態なんて言葉が出ると、少し背徳感が・・・・・・。





「ぼ、僕、エリスさんに何かしました?」



「ううん?私に何かしたんじゃなくって・・・・・」





 まさか!夜中にエリスさんの寝巻姿にデレデレしていたのが!!?どうしよう!このまま放りだされたら、二重の意味で死んじゃう!あわあわしていると、僕に向かって鋭い声が飛ぶ。







「おい!お前!」




 急に声を掛けられた。この間の試験官の人だ。確か・・・・・




「ネギさん!」


「ネルだ!!」


「ネギさんよりニンジンさん」


「へへへ、エリスさんに言われると何もいえねー」






 エリスさんに話掛けられてこの人がデレデレするのも分かる。だってそれくらい可愛いから。めちゃくちゃ可愛い。少しネギさんに嫉妬する。あ、因みにこっち見るときは鋭い眼差しで睨んで来る。顔半分睨んで顔半分デレデレって滅茶苦茶器用な人だね。これが騎士に必要な技能の一つかもしれない。メモメモっと。






「てめえに騎士団の資格はねぇよ。弱小者。試験前に剣が壊れる細工がしてあったのは調べが付いてんだ。卑怯者が入れるのは魔法使いだけだぜ。あ、言っておくが、魔法使いより騎士の方が劣っているなんて俺は思っていねぇ。餓鬼。そこは勘違いするなよ」



「ネギさん・・・・」




 僕は思わずネギさんに近づく。そして思わず手を握る。ソルティアでは騎士の方が地位は上だったため、僕は今ネギさんと同じ気持ちだった。後、僕の場合はエリスの剣が美しく、僕はどうしようも無く憧れた。所詮は焚火に集まる蛾の一匹に過ぎないとしても、心が揺れたのは間違い無かった。



 だから握手したが、振り払われてしまった。僕嫌われるような事したっけ?



 


 騎士団の本部前に掲示板があり、そこに名前が書いてあった。そしてそこには・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



 僕の名前は無かった。





「あ、ザクス。」


「おお、エリス様。どうかされました?」


「ペン」




 ザクスさんが持っていたペンを貰うとエリスさんは掲示板に僕の名前を書きだした。




「ちょちょちょっと!?エリスさん!?」


「アレク!合格おめでとう」


「そんなの良い訳・・・」


「坊主!合格おめでとう」


「え!?いいの!!?ちょっとガバガバ過ぎない!?」







 手書きで名前書いて良いなら何でもありじゃん・・・・・・。ほら、他の子が真似しだした・・・・・。あれ?紙に名前が書けれていないみたい。僕が首を傾げていると、エリスさんは口角が少し上がる。

 暫くの付き合いだけれども、分かる。してやったりといった顔だ。




「この掲示板は書いた人を識別出来る物だ。騎士団の者にしか書けない。そしてここに不正したとしても中にある合格者一覧に名前が無ければ意味が無いからの。ああ、お主の名前はあるぞ。あのニンジンが消し取ったからのう。お主の名前を」




 え?ネギサンマジですか!?まあ、ソルティアでも似たような苛めはしょっちゅうあったけれど。僕はコホンと一つ咳払いをして気を取り直す。



「ザクスさん。よろしくお願いいたします。」


「よろしくは出来んのう」


「ええええええええ!?」





 まさかこの人も僕を苛めて!?僕何か悪い事でもしたの!?





「ふふふ、はい、赤いリボン。これを付けて行ってらっしゃい」



 エリスさんに赤いリボンを腕に巻いて貰う。すると周りがギロリという擬音が鳴り響くかと思うほど分かりやすく視線が集中する。

 周りをよく見て見ると、他の皆もリボンを付けており、エリスさんと僕は赤。後は青と白が多く、時々黄色と緑のリボンを捲いている人が居る。




「これは、まさか・・・・・」



「騎士団の派閥じゃな。ほれ、エリス様に推薦してもらったのじゃろ?お主は唯一エリス様・・・騎士団副総長の派閥なのじゃ。」


「ふ、副総長!!?」





 ぼぼぼぼ、僕はとんでもない人から剣を教えていただいていたんだ・・・・。エリスさんが胸を張っている。可愛い・・・・・。




「じゃが、誰も友達も作りにくいのじゃが、その派閥で良かったのかのう?」




 ぼぼぼぼ、僕はとんでもない道を選んでしまったのかもしれない・・・・・。エリスさんが固まっている。可愛い・・・・・・。


 考えていなかったんだ・・・。でも、僕は・・・・。




「大丈夫です。後悔はしていません。」


「そ、そう・・・・。頑張ってね!!」




 エリスさんがかなり『頑張ってね!!』に気合を入れていたから少し気になったけれど、何とかしよう。折角騎士になれたのだから。





「じゃ、じゃあ、入団式会場に入ります。」




 僕は期待に胸を膨らませて会場へと入った。




*******************************


 アレクは逝ってしまった。地獄の門を潜ってしまった。私がいままで3人の弟子を持ち、三人とも鍛え、最強のパーティになった・・・・・・。


 そして、陰謀により壊滅した。今度は。今度こそは私は守るんだ!そう心に決める。




「良いのか?きっとまた総長殿が怒り狂うぞ?」


「多分アレク君なら大丈夫。それに私もずっと一緒にいるから」





 副総長となったけれど、結構自由にさせてもらっている。これは全ての仕事を総長であるあの男に全て取り上げられてしまったからだ。都合の悪い事を握りつぶすそんな男に敵わない。ただそれだけで煮え湯を飲まされる程の屈辱を味わう。あの男さえいなかったら・・・・。でもあの男がいなければアレク君とは会えなかった・・・。



 ぼんやりとそんな事を思って彼の逞しくなった背中を見送る。その茨の道を切り開いてくれるようなそんな背中を。

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