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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第5章 ワンダーランドの落日と妖綺譚
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第92話 妖綺譚 1

雨音が雨無村と呼ばれていた頃のお話し。

登場人物

薬師五平

現在で言う医者と薬剤師をやっている。

妻であった美代を早くに亡くし、美代との間に出来た子供と二人暮らし。

性格 お人好し


薬師勘太郎(千代)

五平と美代の子供。

人見知りするおかげか、あまり他人と話をしたがらない。

性格 以外に短気


五味弥太郎

五平曰く、盗人弥太郎

兎に角、働くのが嫌いで他人に集って生活しているせいか村人からは嫌われているが、の弥次郎を溺愛している。

性格 嘘つき


奥野大作

雨無村の村長。

奥野助右衛門の子孫。

性格 しっかり者だが、何処か抜けている所あり


風神 楓夏

容姿は絶世の美女ではあるのだが…

雲海とは夫婦の関係

性格 面白いモノが大好き


山神 雲海

見てくれはヒゲモジャの顔をした山伏スタイルのムサイオッサンではあるのだが…

楓夏とは夫婦の関係

性格 豪快 




序章


今から1300年前


魔王に反旗を翻し、多くの妖怪を従え戦いを挑んだ悪妖怪が居た。


その妖怪の名は氷の妖怪 氷柱つらら


単純な戦闘力なら魔王をも上回るものの保有する属性や能力差で敗北し、人間界へと逃走する。

その事を知った魔王は妖怪による人間界への被害を恐れ、風神 楓夏 そして大天狗 雲海 に氷柱討伐を依頼。

依頼を受けた楓夏と雲海はこれを了承し、氷柱討伐へと人間界へと出向いた。

それに気付いた氷柱は周辺の付喪神や妖怪を仲間に引き入れ楓夏と雲海を迎撃。


戦いは苛烈を極め、楓夏は雨降山に雲海は雨土山へと追い詰められ撃破されそうになったのだが、辛くも勝利を収めるも、お互いに深傷を負い帰還出来なくなってしまう。


この戦いは都に住まう帝の耳にも入り、現地を調査すべく3人の陰陽師と呼ばれる者達を派遣する。


現地に到着した陰陽師は雨土山にて大天狗 雲海と遭遇するも、深傷を負っている事に気付き治療しようとしたが出来ず、応急処置をしただけで雲海を封印し、更に周辺の土地に誰も近寄らせない為の結界を張り巡らせる。

然し、楓夏には遭遇する事なく都へと帰還する。



1250年前


「この地は…」


戦に敗れ敗走していた落ち武者の一群は何かに導かれる様に周囲が山に囲まれたこの地に辿り着く。


「曾てこの地で妖怪達が戦をしたと言われているいわく付きの地ですな…」


「フム…この地なら人間相手に戦をしなくて良さそうだ…」


「本気で言っているのですか若!」


「我は戦に飽きた

此処を我らの安住の地とする」


「ですがこの地は…」


「良い!我はこの地が気に入ったぞ!」


「然し若…相手は妖怪ですぞ…」


「良いと言ったぞ!?

妖怪だって悪さする輩ばかりではない筈だ

悪さをする妖怪だけを懲らしめれば良いだけの話よ!」


まったくこの方は…


簡単に考えている。


落ち武者の大将 奥野助右衛門は1度決めたら引くことを知らないタイプの人間で、大の戦嫌い。

それまでは、この地から南へ30里程離れた土地で数百名程の村人達と細々と暮らしていたが、領土拡大を狙った隣村と戦になってしまう。

戦が嫌いな助右衛門の村は、当然ながら戦の準備は一切しておらず、村人全員と話し合った結果、村を捨てて散り散りに逃げる事となった。

然し、ただ村を捨てるだけでは面白くないと思い、村の中に罠を仕掛けた後、奥野助右衛門を大将にして形だけ戦をする素振りを見せ、早々に敗走。

こうしてこの地に辿り着いた奥野助右衛門とその部下そして、後から合流して来た村人合わせて総勢50名はこの地で森を切り開き川から水を引き農地を作り村を作った。

最初は難儀したものの、住宅と呼べる建屋が出来る様になった頃、雨無山を越えて直ぐに在った村や近隣の村と交流し、徐々にではあるが村を発展させて行ったのであったが、村を発展させるのがあまりにも早かった為に妖怪の手助けが有ったのではないかと噂され、積極的に交流する村は無かったと言うが、彼等が本当に妖怪と交流していたかは文献が残っていない為、定かではない。


そして1200年前…


平安時代と呼ばれた時代…



ドンドンドン!


五平どんは居るか!?


夕暮れ時。何者かが夕飯の仕度をしていた五平の家の戸を激しく叩く。


「こっただ時間に何の用だ?」


「た…大変だ…六郎どんが…」


「六郎がどおかしただか?」


血相変えて五平を呼びに来たこの男の名は川田葉水かわだようすいと言う。

普段葉水は一ノ瀬六郎いちのせろくろうと組んで狩りをしている。

その相方である葉水が血相を変えて飛んできたとあって、五平の表情も緊張した面持ちに変わる。


「何が起こったのかオラではわからねぇ…と…兎に角…来てくんろ…」


「・・・解っただ・・・」


症状を訊ねた所で解らない兎に角来てくれとしか言わなない葉水の態度に五平の脳裡に嫌な予感が過る。

実の所、こうして五平を呼び出しては食い物をや貴重な薬草を横取りされたり台無しにされたなんて事は日常茶飯事的にされている五平は今回もその事を懸念したのではあるが、薬師くすしであるが故に行かない訳にはいかない。


「今、準備すっから待っててけろ…勘太郎!」


何時もの罠かも知れないし本当に危機的状況かも解らないから結局は行かざるおえない五平はの勘太郎と共に六郎のもとへ駆けつける。


「は・・・腹が・・・」


「大丈夫だか?」


駆け付けた五平と勘太郎の目の前にお腹を押さえて蹲る六郎。

良く見なくても脂汗をかき激痛にもがき苦しんでいる様子。


「今診るからな」


取り敢えず、六郎を仰向けに寝かせて腹に耳を当てて音を聴いてみると、何やら妙な音が混じっているのが解った。

オラの耳は所謂地獄耳ってヤツで、かなり小さい音でも聴き分けられる事が出来るだよ。


五平♪五平♪コヤツの中で虫が暴れているよ♪早く取り除かないとホットケ様になるよ♪


オラの周りを小坊主の姿をした三つ目小僧が踊るように駆け回る。


「六郎オメェ!何食った!?

勘太郎!虫下しを!」


この三つ目小僧はオラと勘太郎にしか見えねぇ子供の姿をした妖怪。名前が無いとか言ったから騒児そうじと名付けてみたら意外に喜んで受け入れた喧しくも頼りになる相棒だ。

兎に角、昼夜問わず喧しく騒ぐちょっと迷惑な奴と言う意味があるだども、それはナイショだぞ。

勿論、妖怪だよ?何故オラが妖怪と仲良くしているかってのは後で話すけんど、とある事がキッカケで護衛としてオラと行動を共にしている心強い相棒だ。

話によると、ここ3日ばかり獲物との遭遇が無かった為に雨土山の麓まで足を伸ばして獲物を探していたのだそうで、その時に発見した泉の水を飲んで暫くして痛みを感じる様になったとの事。

幾ら泉の水が綺麗だったとは言え、森に湧く泉には何が入っているか解らないから煮沸消毒してから飲むのは村人共通の常識なんだども、喉がカラカラ状態であった六郎はそれすらせずに飲んでしまったのだそう。

恐らく、泉の水に虫が入っていたのだろうと推測するだ。


「おっとう…」


勘太郎が薬の入った包と竹筒に入った水を差し出す。


「コレを飲むだ」


通常の虫ならこの虫下しで治るだども、虫の中には当然ながら妖怪も混じっている。

もし、後者の場合、人間であるオラには為す術もないのは自明の理であろう。


薬を飲ませて半刻が過ぎた…


「ありがとうございますだ…おかげで助かっただ…」


どおやら通常の虫だった様だな…変な虫や妖怪でなくて良かっただ…


安心したのは良いだが、気がつけば日はどっぷりと暮れ辺りは真っ暗になってしまった。

夜道は危険だと言う事でオラ達はその場で一夜を明かす事にした。


翌日


罠に掛かっていたとかでお礼の山鳥を一羽分けて貰ったオラ達はそのまま帰宅したのだが、やっぱりと言うか何と言うか…


昨日勘太郎が仕度していた夕飯が綺麗サッパリ無くなっていたんだ。

 こんな事をするのはこの村の中では1人しかいない。


弥太郎だ


アイツは畑仕事もせずに他人にたかって生活しているどうしもうもないヤツなんだが、の弥次郎が病弱とあって多少の事は目を瞑っている。

夕べもオラに集ろうとした所、オラ達が居なかったから、これ幸いと思ったに違いないだ。


然も、弥太郎はオラの家しか狙わねぇ。


何故かと言うと、オラと弥太郎は雨土山を越えた所に在る村から来た余所者だからだ。


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