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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第1部人界篇 第一章 コヨミとの出会い
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第8話 別れと出会い2

此処で終わらせて次に行こうと思ったのですが、無理でした


「幽霊と違って妖怪は此方の攻撃に耐性を持っているのでな。退治するにはそれなりの装備が必要なのだよ」


幽霊と違って妖怪は攻撃に特化した者が多く最弱と呼ばれる者達であっても悪霊10数体分の力を有してる。


「てか、妖怪なんて架空の生き物じゃないの!?存在する訳がない!」


玲奈の知識では妖怪とは昔の人が子供を躾る為に作り出した架空の生き物と云った印象でしかなく、現実では存在していないとの認識でしかない。有り得ないワードに思わず声を荒げて抗議する玲奈を制する様に三条が答える。


「アホ抜かせ!現在(いま)ではその姿を滅多に姿を表す事は無いが妖怪は確かに存在する!じゃなければ和樹が殺られる訳がないだろ!私の1番弟子だったヤツだぞ!?」


悲しみと怒りで爆発しそうになる気持ちを抑え、和樹の遺体から発せられている禍々しい妖気がその証拠だと告げる三条を見て嘘偽りは無いと悟った玲奈はそれ以上言葉を発することはしなかった。


いや、出来なかったのだ。


「玲奈よ、悔しい思いは私も一緒だ!私は葬儀終了後直ぐに和樹を殺った妖怪の捜索に入る!(かたき)は必ず私のこの手で取る!」


そう言い残して消える。


「あたしは・・・」


三条の決意を訊いて激しく心が揺れる玲奈は。


2ヶ月後


49日の法要も無事に終えたは良いが漫画の締め切りに待ったは無い。

悲しみを乗り越えるべく今まで以上に仕事と学業に力を入れる玲奈ではあったが、決意にも似た感情がその心を支配しつつあった。


「お父さんには申し訳ないけど、和樹の敵はあたしが取る!漫画家は高校卒業時点で廃業する!」


強い決意のもと、祓い屋になる為の修行をする事を告げると何故か安堵する三条。


「で、妖怪の手掛かりは掴めたの?」


「それなんだがなぁ…現場には何の痕跡も無かったのだよ。ヤツが事件でも起こしてくれない限り何処に行ったか解らないな」


「そう…現状では八方塞がりって事ね。」


「そう言う事だ。それじゃぁ、修行は高校卒業後直ぐにと云う事だな?それで出版社の方には話は着いているのか?」


「えぇ…箕島さんが泣いて止めて来たけど、あたしが決めた事だから。それじゃぁ、忙しいから帰るね」


短いやり取りの後、帰宅の途に着く玲奈。

山海寺は雨音から街を3つ程北に越えて行った標高1000mの八海山と云う名の山の中腹に存在しており、そこで漫画家活動をしても何かと不便なので雨音駅から徒歩5分に在るマンションに住んでいる。

何故雨音に活動拠点を置いたかと云うと、家賃が安い事も有るのだが元々BL系漫画と幽霊物の漫画を得意としていて、幽霊物の漫画を書くには雨音に住んだ方がネタに困らないだろうと云ったのが理由である。


「あたし1人が降りるなんて珍しい事もあるんだ…エッ?何?何をしているのあの女…」


玲奈1人が駅のホームに降りると隅の方でしゃがみこみ、何かをやっている女性が見える。


「ブツブツさんを成仏させようとしているの?」


その場所はブツブツさんが居る場所。

恐らく駆け出しの祓い屋が手始めにブツブツさんを成仏させようとしているのだろう。


女性の法具によってブツブツさんの表情に苦痛の色が浮かぶが、激しく抵抗されているのか女性の方も何だか辛そうな表情を浮かべてる。


ブ………ツ……


「この!いい加減に成仏しやがれ!」


限界に達しそうになった女性は法具を手放して素早く印を結びありったけの力をブツブツさんに注ぎ込もうとする


「ちょっとそこの(ひと)!いい加減にしなさいよ!?じゃないとその幽霊を成仏させる前に貴女が死ぬよ!」


何故そんな気になったのか玲奈自身も解らなかったが、ホームに二人?しか居なかったのもあって大声で叫び女を止めるが時既に遅し。


「エッ!?何??何で止めるのよ!?」


最高に集中していた女は突然響き渡る声に驚きながらも玲奈を睨み付ける。


「だ・か・ら・足下を見なさいよ!あ・し・も・と!!」



「足下・・・?ヒィッ!!」


オォォォオォォォォォ


玲奈に言われて下を見た瞬間聞こえて来た地獄の底から響いて来る様な声と共に地面から生える大小無数の黒い手が一斉に女に絡み付き動きを封じる。


「た・・・助けて・・・」


その手が女の手足はおろか全身を掴んで自分達の世界へと引き摺り込もうと線路に開いた黒い穴に引っ張って行く。


「い・・・嫌・・・助けて・・・」


女の抵抗も虚しく黒い手は女の口を塞ぎ全身を覆い尽くし黒い繭と化し、そのまま黒い穴へと運ぶ。


助けなきゃ


そうは思っても恐怖の感情が先に立ってまるで金縛りにあった様に体が動かない。


助けなきゃ・・・でも・・・体が・・・ヒィッ!!


体が動かない理由。

それは金縛りや恐怖のあまり体が動かないのではなく、黒い手が玲奈の足に絡み付いていて離れないからなのだ。


やだ…あたしまだ何もしてないのに…まだまだ沢山やりたい事が有るのにこんな所でこんな最後は嫌…助けて…ブツブツさん…


どんなに力を入れようが指一本動かせない。このままではあの女同様、玲奈も黒い手の餌食になってしまう。

藁にもすがる思いでブツブツさんに助けを求める。

そこに存在するだけの幽霊に助けを求めてどおするんだよ!と自分に突っ込みを入れたくなるが、既に相手の術中に嵌まり、自力で脱出が出来ない状況では仕方のない事だろう。


お願い!ブツブツさん!助けて!!


徐々に這い上がって来る黒い手に玲奈の恐怖はMAXになるが、それでもブツブツさんに助けを求める。


ブツブツブツブツブツブツ………………


ブ………


ヒャァ~ヒャッヒャッヒャッwww


助けを求める玲奈の想いに呼応するかの如く呟きが早くなったかと思ったら今度は狂った様に笑いだすブツブツさんであったが、笑い声とは裏腹に目からは一筋の涙が頬を伝っている。

所謂泣き笑いと云うやつだろう。


オォォォオォォォォォ


ブツブツさんの笑い声に呼応するかの如くあからさまに解る程の敵意を発し黒い手が次々と合体し、巨大な一つの手とな尚も笑い続けるブツブツさんを覆い尽くし握り潰そうとする。


ヒャァ~ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッwww


オォォォオォォォォォ!


「いやぁ~!ブツブツさぁ~ん!!」


巨大な黒い手がブツブツさんを完全に覆い尽くし不気味な声が大きくなる。

完全に取り込まれてしまったと思った玲奈は狂った様にブツブツさんの名を呼ぶ。


ピカッ!!



状況が状況だけに完全に取り込まれてしまったと思ったのだが、次の瞬間、黒い手の隙間から眩い光が漏れ出ると同時に黒い手が人形を象り苦しみ出す。


ヒ…ヒャァ~ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッwww


ブツブツさんの笑い声が大きくなればなる程強くなる光。

その光を浴びて断末魔の叫びを挙げながら影は崩れる様に消えて行く。


「良かった…って…あ、アレッ?」


ドサッ!


危機が去った事に安堵し、ブツブツさんの無事を確認した玲奈はそのまま意識を手放し、その場に倒れ込む。


「白い…壁…?此処は…?あたしはいったい…」


「やっと気が付いた…此処は病院。今先生を呼んでくるからちょっと待っててね」


玲奈が意識を取り戻した場所は病院のベッドの上であった。

目を覚ました玲奈に気付いた箕島が安堵の表情を浮かべて医師を呼びに行く。

後で箕島から聞いた話しでは、ホームで倒れている玲奈を発見した駅員が救急車を呼び病院まで運ばれたとの事らしいが、疲労も溜まっていたせいか2日程意識が戻らなかったらしい。

病院に運ばれた時、玲奈の漫画のファンである看護師が気付き出版社に連絡を入れた所、箕島が駆け付けたとの事。


「お父さんかお母さんは来なかった?」


医師の診察で異常なしとお墨付きを貰ったは良いが、連載もクライマックスを迎えるとあって念のためそのまま検査入院となってしまった玲奈は三条か命が来なかったかと箕島に訊いていると、昨日の午前中に三条が、午後に命がそれぞれ来て30分程滞在したが「事情は解った申し訳ないけど、この娘が目を覚ますまで着いていてやってくれないか」と言い残して帰ったとの事であった。


「シッカシ、ご両親共に薄情ですよね!私だって仕事があるのに!」


三条と命の対応に憤慨する箕島は最近のハードスケジュールに体が悲鳴を上げたのだろうとしか考えてなかった。

彼女は基本的に怖い話は大好きなのだが、幽霊の存在自体は信じてない人なのだ。

従って、何があったのかを話しても「ヘェ~そうなんだ?」としか返事をしないだろう。


( -_・)??何か忘れてる様な…


Σ(゜Д゜)


そうだ!あの女!あの女はどおなった!?


名前も素性も知らないがホームには玲奈以外にもう1人居た筈だ。あの女は一体どおなった?


ダメ元で箕島に自分の他に誰か救急車で運ばれた女は居なかったかと訊いてみたのだが、何の事か解らない箕島からの返事は当然の如く「運ばれたのは玲奈ちゃん1人だよ」との返事が帰って来る。



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