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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第四章 黒尾の逆襲
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第82話 狭まる包囲網

「マスコミ…これだけで良いのか?」


独りになった病室で、秀一は自分に出来る反撃の事を考えていた。"レイちゃん"に言われた逃げながら反撃をする方法を考えていたのだ。

マスコミもその一つであるが、果たしてこれだけで足りるのか?と思えてならなかったからだ。


後は裁判に出るか…か?


秀一は個人的に復讐をすると言う事はあまり考えていない。何故なら、田中貴司御一行を訴えて裁判に持ち込んだとしても学園内を浄化させる事は出来ないと思ったからだ。


学園の内情を世論に訴えて学園内の浄化をした方が今後の為になるし今も被害に遭っている人達の救いになるのではないか。

そして、何よりもこれ以上人死にを出したくはない。


そう考えたからこそマスコミに情報提供をしたのだから。


そんな事を考えていた時…


「三上君!ちょっとコレ見て!」


帰った筈の優香が血相を変えて戻って来たと思ったらスマホの画面を秀一に見せる。


「なに?この動画は…??」


優香から見せられたのはウーチューブの動画であった。

その動画を運営しているウーチューバーは快刀乱麻と名乗り、全国のニュースや芸能界や問題を起こしたウーチューバーのニュースを独自の視線で分析して発信している報道系ウーチューバーの顔を持つ反面、サブチャンネルではお茶目な癒やし系動物動画や故障した家電製品を修理する動画やキレッキレのダンス動画をアップしたりと多種多様な動画をアップする人達で約7年程前から活動している。

現在の登録者数は20万人を超える男2人女1人の3人組の人気ウーチューバーであり、分析だけではなく、納得が行かなければ現地まで足を運んで独自に取材を敢行してトコトンやると言ったタイプの人達で知られている。

そのウーチューバーの最新動画に雨音で起きた事件が速報としてアップされていたのだ。


そうだ…動画と言う手が有ったんだ…


そう考えながら動画を観ていた秀一の表情が驚きの表情に変わる。


「校長逮捕に生徒の暴走だって?一体何があった…?」


然し、残念ながら動画は飽くまでも事件があったとしか報じられておらず、詳しい内容は後日アップするとなっていた為に心の中にモヤモヤが残ってしまう結果となってしまった。


レイちゃんでも森田警部でも誰でも良い…詳しい状況を知りたい…


動画を見終えた後、急いで自分のスマホで裏サイトで情報収集を試みようとしたのだが、肝心の裏サイトは閉じられてしまっていて見る事が出ない。


困惑する優香と秀一。


それもその筈で、今朝のニュース番組でも地元紙でもその事件の事の字も報じられていなかったのだから。


………

……


秀一が動画を視ていたほぼ同時刻、俊哉の仕事部屋に戻って来たレイ達もその動画を視ていた。


「誰が情報を流したんだ?てか、この情報を知っていると言う事は少なくとも雨音在住だって事だよな?」


レイ達の興味は情報ではなく、このウーチューバーは誰かと言う事とニュースや地元紙等の報道もまだ成されていないのにも関わらず何故このウーチューバーが情報を知ったかと言う事。

そんな中、真っ先に疑われたのは言うまでもなく真智子だ。

真智子なら20%の本体を残して単独で行動するのはお手のものなので疑われるのは仕方がないが、今回だけは何もしていないと言うか、快刀乱麻なるウーチューバーと面識も無ければ情報を流す理由が無い。


「って事は…」


真智子でなければもう一人、単独で行動しているゆう子を疑うのは当たり前なのだが、煙の様に現れてソレを全力で否定する。


レイ達が知らない別の勢力が動いているのだろうか…


解らない事で悩んでも仕方が無い。此処は気持ちを切り替えて5悪攻略の為の作戦会議を始めるのであった。


………

……




とある邸宅の一室にて…


「あの者に対しての牽制くらいは出来たでしょうかねぇ…」


「ウム…そなたの大切な場所を掃除するのにアヤツは邪魔者じゃからのう…コレで双方がどんな動きを見せるか見物じゃ…」


窓の無い部屋の中に設置されている豪華な応接セットのテーブルの上に置かれたパソコン画面を視て目を細める男性と漆黒の毛に覆われた雄の大型犬の頭を撫でながら何やら思案する10歳位の女の子。

一見祖父と孫にも見えない事は無いが、丁寧な口調の男性とは正反対に「アンタ何者だよ!」とツッコミを入れたくなる程の尊大な口調がそれを否定している。


「まぁ、署長からしたらいい迷惑でしょうけど、今までその立場を利用してさんざん悪どい事をして来たのだから仕方無しと言う所でしょうか…」


「コレで心を入れ替えれば何もしないが、もし…」


「えぇ…解っていますとも…」


「解っていれば良い…妾は未だ自由に動けぬ身であるが故にこれにて失礼するが、念の為にこの2人を護衛として置いて行こう。きっと役に立つ筈じゃ…頼むぞ」


短いやり取りをしたあと、女の子がパチンと指を鳴らすと何も無い空間から突如として現れた男女は何も訊かずに女の子に向かって「お任せください」と深々と一礼をする。


………

……


一方、雨音署では事件を起こした生徒と校長の取り調べが行われていたが、当然ながら森田警部に上からとして「生徒達は正当防衛で校長は証拠不十分で釈放せよ」と通達が来ていた。


「今度ばかりは聴けませんな!」


上とは当然ながら署長である。


浦川学園の生徒達が問題を起こす度に何かと理由を付けて事件を無かった事にしたがる署長が今回もまた動きを見せたのだ。

この動きを読んでいた森田は署長に対しても逮捕状を突き付けたのである。


「職権濫用及び贈収賄…その他諸々合わせて10の罪で逮捕状が出ています。観念して下さい。」


四谷が黒幕と知った森田が真っ先に疑ったのが署長との繋がり。

つまり、何らかの方法で四谷は署長を操り浦川学園の生徒達が起こした事件を全て揉み消している。

見返りは金であったり物であったりとその時その時で違っていたが、元々変態趣味を持つ署長が今回要求したのは浦川学園の生徒を飼育する権利。

滅多に回って来る事は無いが、それでも過去に性的イジメで快楽落ちした女子生徒2人が署長のペットとして贈与されていて、秀一の件が成功した暁には優香を譲り受ける予定であったのだ。


勿論、そんな事は口が裂けても言えない署長は「不当逮捕だ」と醜く抵抗を試みるものの、動かぬ証拠を突き付けられて観念する。


「後は任せたよ…」


自分のデスクが有る部屋の天井の片隅を見つめ、そう呟く森田は気持ちも新たに犯人の取り調べの指揮を執る。


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