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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第1部人界篇 第一章 コヨミとの出会い
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第7話 別れと出会い1

本編より10年前のコヨミが中心のお話です。

コヨミにとってレイとの出会いは10年前に遡る。

まだ楠木コヨミと名乗る前、つまりは海野玲奈が天才少女漫画家 朝田桃子 として活躍していた頃だ。当時は祓い屋家業を継がせたい父親と漫画家になりたい玲奈の意見が真っ向から衝突し、反発するように自宅である寺を飛び出してここ、雨音で高校生活を楽しみつつ作家活動をしていた。


玲奈高校3年の夏


「所で駅のホームに居る幽霊って見たことある?」


「あぁ…あのブツブツさんでしょ?」


「ブツブツさんって…(笑)」


「話し掛けても返事はないし、何時もブツブツ独り言言ってるからブツブツさん!良く聞いたら本当にブとツしか言ってないから笑っちゃったわ」


夏と言う事で連載漫画に怪談ネタを使おうと父親 海野三条(うみのさんじょう)の弟子で祓い屋を営んでいる「増田和樹」を呼び出して怪談ネタになりそうな話を聞いていた時にフと話題に出た駅の隅っこに座り込んでいる幽霊の話しになった。


「然し、そのブツブツさんって何時からあの場所に居着いたんだろうな?」


「さぁ…解らないけど、黄泉が出る様になる少し前には居たとか駅が出来た頃には既に居たとか時期がバラバラで解んないのよね。」


あの幽霊が何時から居るのか何がしたいのか解らない。 

通常、この世に残っている霊は何かしらの未練や生者への恨みが強いからとか自分が死んだと気付けないとかそれぞれ有り、それらを解消し、時には強引にあの世に送るのがこの世界の祓い屋の仕事なのだ。

玲奈が黄泉と呼んだそれはおおよそ15年前に出現し初出現から5年後と今年に出現していてこの世を彷徨さまよう魂を大量に吸い上げて消える存在でその様子から黄泉への入り口 通称 黄泉と呼ばれる様になった(人によっては悪食と呼ぶ者もいる)。

何の前触れもなく現れ彷徨う魂を吸い上げるとあって最初は良き者かと思われていたが、徐々に悪意が強くなって来ていて早めに対処しないと何れは災いをもたらすのではないかと言われている。


「まぁ、あの幽霊に関しては後回しするとして、そろそろ結・・・」


「さっ!仕事仕事!!その箇所をベタ塗りお願い!」


「あ…あぁ…」


玲奈と和樹は婚約しているのではあるが、それは父親が勝手に決めた事で玲奈自身はあまり乗り気ではないが為に和樹が結婚の話を切りだそうとすると何かと理由を付けて煙に巻いている状況なのだ。


「締め切り間近なんだから少しは手伝ってよね」


「了解」(焦っても仕方がないよな…でも、俺は玲奈ちゃんと結婚して、共に祓い屋をやりたいんだよ)


ほんの少しだけ焦った雰囲気を醸し出しつつ作業を再開する玲奈は和樹を巻き込み、急ピッチで作品を仕上げながらベタ塗りをしている和樹を見て


(好い人なんだけどなぁ…ゴメン…あたしは漫画に人生を掛けると誓っているの。和樹とは結婚出来ない…)


と、心の中で手を合わせるのであった。


そんな事を考えながらも祓い屋と漫画家を両立させようかとも考え始めた秋も深まる10月下旬、事件は起きた。


「非常に言いにくいのだが…和樹が…」


金曜日夜、漫画の締め切りに追われていた玲奈の耳に届く三条から信じられない言葉にペンが止まる。


嘘!アイツが!?死んだ?何故?


三条は5名の弟子を抱えているが、その中でも和樹は一番の強者として、そして腕利きの祓い屋としてその名を知られている。


その和樹が祓いに失敗しただけではなく返り討ちにあったと云うのだ!


殺ったのは何処のドイツなの?


最早幽霊に返り討ちに会うと思っていなかった玲奈は通り魔にでも殺られたかと思ったのだが、そうではなく、建設会社の依頼で解体予定のビルに住み着いた霊を退治して欲しいと云った依頼で祓いに行ったのだが、そこで返り討ちに会ったらしい。

らしいと言うのは依頼人共々殺されており、真相は解らずじまいとの事。


深夜1時 山海寺本堂


「ありがとう箕島さん」


「お礼とか良いから早く会いに行ってあげて」


何とか締め切りに間に合わせ、原稿を担当の箕島に渡した時に事情を話して山海寺へと来た玲奈は真っ先に本堂へと向かう。


「嘘・・・ホントに?・・・冗談よね?此処に居る誰よりも強かったコイツが死ぬ訳がない!起きろ!この大食い貧乏野郎!」


本堂で待ち受けていたのは、ドッキリでも芝居でもない生命活動を停止した状態の和樹。

突然の出来事で思考がついて行けない玲奈は和樹の遺体にすがり付き泣き始めてしまう。


「ねぇ…北海道で見付けたと言っていた海鮮ラーメンの美味しい店や愛知県で見付けた名古屋コーチンが美味しく食べられる店とか、全国の食べ物が美味しい店に連れて行ってくれるんじゃなかったのかよ?おい!こんな所で寝てる場合じゃないだろ!戻ってこいよ!!」


現実を直視しても尚も信じようとしない玲奈が和樹の遺体を揺すりながら交わした数々の約束を呟いている。


Σ(゜Д゜)


「これは…」


どれ程泣いていたか解らないが、落ち着いた所で和樹の遺体の異変に気が付く。

注意深く探るとほんの僅かではあるが今まで感じたことの無い禍々しい気が立ち上っている。


「それが妖気と云うヤツだ!」


「お父さん…」


いつの間に来たのか玲奈の横に座り込んでいた三条は「やっと気が付いたか」と云った表情で禍々しい気の正体を解説しだす。


「そろそろ棺に入れてやらないとならないからな…玲奈も手伝え」


三条の説明によると、人が纏う霊気が陽とするのならば陰の気、つまり妖気を身に纏う人為らざる者達 妖怪 と呼ばれる者達がこの世には存在している。


三条が云うこの世とは


人間が住む人間界

人間が死ぬとその魂が向かう事になる霊界

神々が住む世界 神界

そして、妖怪が住む魔界

因みに天国は霊界の上層、悪魔が住む世界は地獄で霊界の最下層に在るが為に霊界と一括りとされている。


と云った4つの世界を一纏めにしてこの世と呼ぶらしい。

余談ではあるが、魔界は妖怪達が住む妖魔界と悪魔達が住む妖獄界と別れていたらしいが1300年前に勃発した大戦争に勝利した妖怪達が妖魔界・妖獄界を統一し、魔界と呼ぶ様になる。


神界は霊界の奥に存在しているらしく神が人間界に顕現することは殆ど無いが、妖怪は人間の魂を餌にしている者達がいるのでそれらが餌を求めて稀に人間界に顕現する事が有るとの事。


因みに、九十九神(つくもがみ)は長い年月を経た物が妖気を纏い妖怪化した後で人々の信仰心を受け神格化した存在であり、妖怪の部類に入るとの事。


「無様を晒しおってと説教してやりたいが、相手が妖怪とあっては文句も言えないわな…寧ろ、よく証拠を持ち帰ったと誉めてやれたい程だ」


和樹の遺体を棺に移した後でこの世の構成から妖怪についての説明をする三条の話を聞いた後で「お父さんなら勝てる?」と正直に訊いてみたのだが、返って来た返事は


「雑魚程度なら何とかなるが、強い妖怪には無理だ」


との事であった。


続きます。

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