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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第四章 黒尾の逆襲
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66話 秀一と優香と森田警部

秀一の自殺騒ぎの翌日

10時過ぎ新雨音総合病院にて


「あの…」


「貴女は…?」


「初めまして…秀一君と同じクラスの斎藤優香と申します。あの…秀一君は大丈夫ですか?」


レイの誘導により秀一を見舞いに来た優香は病室の前で不安そうに佇む静香と対面した。


「貴女に話す事は有りません!それに今は授業中の筈でしょう?帰って下さい!警察を呼びますよ!?」


学園側には息子は急病で検査入院する為に暫く休ませるとしか連絡していないし、真相は知らない筈。それに昨日の今日では単なるクラスメートが見舞いに来るなんて幾ら何でも行動が早すぎる。

そんな状況で来るとしたら虐めの当事者しか居ないと決めつけて優香に対して見事な塩対応で追い返そうとする。


「ちょっと待って下さい…私、どおしても秀一君に謝らなければならない事が有って…」


謝らなければならない事…?それは有るでしょうね…貴女方が秀一を寄ってたかって虐め抜いたのでしょうからね…口元から出かかった言葉を必死に堪えて息子に会わせる訳には行きませんと優香を無理矢理追い返そうとする静香の耳に1つの固有名詞が飛び込んで来る。


「レイさんって幽霊に明日の昼間に此処に行けと言われて来たんです。帰る訳には行きません」


レイの名前が出た途端、静香の手がピタリと止まる。


「息子は今、精密検査の最中ですので此処には居ません・・・場所を変えましょう・・・詳しい話しを聞かせてくれますね?」


どおやら、あの幽霊は裏で色々と動いていたらしい。静香の提案にコクリと頷いた優香は静香の後ろを黙って付いて行く。


「事の発端は私の不用意な1言に始まったんです…だから…だから…」


優香が連れて来られたのは308号室。

そこで全てを告白した優香は罪の意識に押し潰され、最後は泣き出してしまう。そんな優香を慰める様に


「そうね…でも、1番悪いのは田中貴司とその仲間よ?それに、貴女はこうして来てくれたじゃない…」 


優しく抱きしめるも、その瞳の奥には激しい怒りの炎がメラメラと燃え上がっていたのであった。

結局、秀一は数ヶ月の入院が必要と診断されそのまま入院するハメになったのだが、検査を終えて病室に戻って来た時、母親以外にもう一人居た事に驚いてしまう。


「何故斎藤さんが…悪いけど、話す事は何もないよ!回れ右して今直ぐ帰ってよ!」


秀一から見たら経緯はどおであれ優香もまた田中貴司の仲間であり、恥ずかしい姿を晒しながら虐められている姿を見て笑っていたと見えているだろう。

しかし、母親から急病で休むと学校側には伝えたと訊いているし、この時間は授業の真っ最中なので来れる筈が無い。況してや病室迄来れる筈がないのだ。

考えられるとしたら、夢枕に立ったレイと名乗る幽霊しか居ない。


「ヤダ!何と言われても帰らない!それに、レイと名乗る幽霊に此処に行けと言われたの…疑われているのは解っているけど…」


「・・・!!」


優香の話しを訊いてレイと名乗った幽霊の夢は夢では無かった。全ては現実であったのだと確信した秀一。

では、何故レイは自分を助けようとしたのか?

疑問は残るが、改めて自殺は辞めようと決意したのと同時にどおしたら奴らに復讐出来るかを考える様になる。


とは言え、実力行使とかは無理だろうな…社会的に…そう…例えば、公開処刑とか…?


1番考えられる方法は、マスコミに情報を流す事かな。

然し、学園側の虐めの火消しは迅速且つ強力だ。

先程、母親が学園に暫く秀一を休ませると連絡を入れたのだが、早くも教頭が見舞いに来たのだ。


見た目は生徒に寄り添う生徒に優しい教師達に見えない事も無いが、実はそうではない。教頭は探りを入れに来たのだ。

幸い母親が言葉巧みに追い返したが、早く手を打たないと校長が動くのは間違いないだろう。

何故そう言えるかと言うと、学園の生徒が虐めにより自殺をした場合、口止の意味を込めて大量の諭吉の軍団を生徒の家族に渡しているから。

今まで、何人もの生徒が犠牲になっているが、その都度多額の現金を渡している様子。

運良く犠牲にならなかった場合は転校を促すか、言うことを聞かなければ難癖つけて中退させているのだ。然も、学園の内情をバラさない様に監視を着けると言った念の入用で。


然し、今回の場合は今までと違う。


現状を知った学園側は明日にでも秀一と母親、更には優香の口を封じに出る可能性は高い。

それだけの行動力と資金力が奴等には有るのだ。


と・・・その時・・・


「邪魔するよ」


まるで行きつけの店に入るが如く入室して来たグレーのスーツを着た中年男の顔を見た途端、部屋の中に緊張が走る。森田警部が来たのだ。

雨音の街でもスッポンの森田の異名は知れ渡っており、特に犯罪者からは畏怖の対象となっているのだ。

元々警察は好きではない秀一と優香が森田警部の姿を見て緊張するのも無理はない。


「オイオイ…そんなに緊張しないでくれよ。レイって幽霊が絡んだ事件は俺の担当でね…で、俺もレイに被害者がこの部屋に居ると訊いて来たんだ。何が起きたのか話してくれるね?」


あの幽霊と警部さんが繋がってる?何で?と頭の中が疑問符だらけになりながらも事の経緯を話す事にした秀一が全てを話した後で優香が事の発端となった出来事を話す。


「警部さんは幽霊が見えるのですか?」


全てを話し終えた後、何気に訊いてみた秀一に「見えるよ」と即答する森田警部は彼とは長い付き合いでねと付け加えると静香が


「あの幽霊は何なの?」


と、問い質す。


「う〜ん…1言で言えば正義の幽霊…或いは好奇心旺盛のトンでも幽霊…とでも言っておくかな…」


こんな事をレイに聞かれたらヤメロと恥ずかしがるに違いないけど、俺からしたらそうだと言いようがない。


って…オイ!野郎…シッカリとアンテナ残してやがる…


フと妙な視線に気が付いた俺の視線が天井の隅に行くと小さなレイがアホ面晒して浮いている。あの野郎…ちゃっかりしてやがんなぁ…壁に耳あり障子に目ありと言うけど気を付けないとならんな…まぁ、本人が視ているかどおかは解らんがね。

兎に角、真智子ちゃんの話しの裏は取れたから良しとしないといけないかな?後は…校長の資金源と四谷との繋がりを探らないといけないな。

ご協力ありがとうござましたと言い残し、病院を後にした俺は署に戻る事にしたのであった。

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