第60話 真相へ2
エッ…アッ…ヘッ?この人達何で同じ事を繰り返しているの?マジで怖いんですけど…
秀一もこの場所はどんな場所かくらいは知っていたみたいだけど、こんな事になっているなんて知らないでしょう。
「自殺した人ってね、自分が死んだって気付けなくて同じ事を繰り返すの…これが自殺した人の末路よ?悪夢でも何でもないリアルなね…てか、死んだら無だとか言っている人がどおやってその人達に復讐をするつもりだったのかしらねぇ…お姉さん知りたいわ」
未だ事実を受け入れられずに恐怖と混乱の極みにある秀一にマジメ半分からかい半分で尋ねてみた
「そうかコレは夢なんだ…僕は悪い夢を見ているだけなんだ…」
あぁ〜あ…遂に現実逃避しちゃったよこの子…でも、これは…この事に関しては守護霊の左之助さんの許可はとって有るからある程度の無茶をしても大丈夫なのだけど、心配そうに見詰められるとちょっと気が引けちゃうわ…けど、此処で止めたら同じ事を繰り返す事間違いなしなので、敢えて厳しく行く事にしたの。
「オイ!テメェ!いい加減にしろよ!コレが夢?こうなってからじゃぁ取り返しが効かないから現実を見せているんじゃねぇか!」
有無を言わさず秀一の胸倉を掴んで2発程張り手を食らわせてやった後、思いっきり凄んで見せる。
「い…イタタ…夢の筈なのに何で痛いの?」
いきなり張り手食らった秀一は、まるで女性の様になよなよとその場に崩れ落ちて何故痛みを感じているのか解らないと言った表情をしているよ。
そりゃあねぇ…本体に分身体をくっ付けておいて、同時に張り手を食らわせていたら痛みくらい感じるわよ。それに、手だけなら実体化させるのは訳ないし。
とは口が裂けても言えないから、痛みを感じるって事は現実なんだよ!理解出来ないならもう一度ひっぱたいてあげようか!?と言うと、怯えた様に縮こまりお願いだから打たないでと言う秀一。
あらら…かなり中身が女性化してるわ…この子…まぁ、ヤられて来た事がアレだから仕方がないのかも知れないけど、これが地ならカナリヤバいかも…だってこの顔この体型でそんな反応されたら人によっては生唾ゴックン状態になるわよコレ。
「痛くて当たり前よ?現実だから痛いのよ?解った?」
諭すように優しく言ったのだけど、ちゃんと伝わったかしらねぇ。
「だったらどおしたら良いの?学園に通っている限りは奴等の奴隷として生きなければならないし…孤立無援状態では何言っても誰も聞く耳持ってくれない…だから…」
「だから自殺するの?それこそ、皆の笑いのネタになるって気が付かない?自殺は最悪最低の方法だってのに何故気が付かない?」
「でも…」
「でももヘチマも無いっての!嫌なら逃げれば良いじゃない!?逃げるのは全然悪くないよ!?」
「でも、逃げるのは…」
「テメェは馬鹿か!?逃げずにいた結果がコレだろうよ!?押してだめなら引いてみろって言葉が有るだろうよ そして、逃げながら逆転の一手を考えるんだよ!それくらいの頭は持ってんだろ?」
「逃げながら…」
「そう、逃げながらどおやったらそいつ等に…学園に復讐出来るか…それを考えて行動するんだよ!それが出来るのは秀一!お前しか居ないんだよ!!」
「卑怯だと言われないかな?」
「はぁ?集団の力に物を言わせて非常識な虐めを受けているんだろうが!?卑怯だと言うのなら奴らの方が卑怯じゃねえのかよ!?使えるモノは使うんだよ!目には目を歯には歯を非常識には非常識だろうよ!?」
手は幾らでも有るけど、幽霊である私やレイが直接手を下す訳には行かないの。コレばかりは生きている人に頑張って貰わなければ意味がない。
てか、レイ!インターネットに潜り込んで何をやってんのよ!?
私達幽霊はその気になれば電波にも乗れるしインターネットにも潜り込む事が出来る。
けど、罷り間違えば永久に出て来れなくなる可能性が有るので、禁じ手にしているの。
エッ?書き込みの真犯人を逆に虐められる様にする?ちょっ…ちょっと真犯人解ったの?
・・・解った・・・そっちは任せるわ・・・
レイってば、本当に非常識なんだから…もう!!
こっちもこんな事をしている場合じゃないわね。私は大急ぎで秀一を元に戻して病院から離れる事にしたのであった。
……………
………
「あの子がそんな目にあっていたなんて…」
俺は左之助から訊いた話を静香に聞かせると、怒りと悲しみの表情を浮かべながらも絶対に訴えると決心したが、被害者の家族が訴えた所で学校側から多額の金額を提示されて示談に持って行かれて良しだろう。
美穂の件で見せつけられているので間違いないだろうし、今までそうやって被害者家族を抑え込んで来たのだろう。そんな事をするより良い方法が有ると自らの考えを静香に伝える。
「単なる幽霊が何でそこまでするんだい?」
レイの考えている事は理解出来るが、何故そこまでして生者を助けようとするのかが解らない静香はその事を素直に質問すると
「自殺した奴の末路は解っている筈だ。俺はあんな奴等を見たくないしこれ以上増やしたくないんだ。それに、計画が失敗していると犯人に知られている可能性が高いから今すぐに動いた方が良い。」
と、言い残して消える。
「まいどぉ〜」
病院の屋上から消えたレイが次にやって来たのはキメラ。真子に会うためだ。
「また厄介事なの?」
時刻は深夜1時。
店内にはお客が3人程居るのだが、店番を茜と名乗る男の娘と昭と名乗る男装者に任せていて、奥の部屋で一休みしている真子に会いに来たレイを一目見るなりゲンナリした表情を浮かべる真子にそう言わんでくれよと宥めた後で秀一の件を話して実行犯に心当りは無いかと尋ねるレイに
「あの学園でそんな事をするのは…恐らくアイツ等ね…」
少し思案した後に確定は出来ないけどと前置きした後に5人の名前を教えてくれた。
こう言う事はその世界に精通している真子に訊くのが1番だと踏んだレイの判断は外れてはいなかった。
「で?どおするの?」
知った所で何も出来る筈がないと宣う真子に「やってみなけりゃ解かんないだろ?」と言い残して消える。
「何なの?あの幽霊は…」
不意に現れては訊きたい事だけ訊いて直ぐに消える。コヨミから協力してあげてとお願いされているから手は出せないが、気持ちの良いものではない。
「巻き込まれなければそれで良いか…」
アイツはアイツ、アタシはアタシと割り切る事にした真子はグラスに残った琥珀色の液体を飲み干した後、横になり毛布を被る。
今までの話を総合すると、発端は学校裏サイトと言われているサイトだと解っているが、現状では誰が書いたか解らない。
然し、実行犯が解った以上、後は早い。
俺は実行犯の守護霊を呼び出して事の発端を訊き出す事にした。
実行犯の守護霊から訊き出した話によると、首謀者は田中貴史と言う名で秀一の隣のクラスの男。
貴史の取り巻きの藤掛雄一と言う男からやれと言われてやったとの事。
5人組のリーダー格である幹元康介の守護霊は左之助の部下だった男だったらしく、俺の顔を見た途端、平伏して動かなくなってしまう。ウ~ン…これでは話どころでないじゃねえかよ!
仕方がないので「苦しゅうない 面を挙げよ」と時代劇さながらの言い回しで顔を挙げさせ、話を聞こうと思ったのだが、左之助とは犬猿の仲だったらしく素直に話をしてくれそうにもない。
仕方がないので守護霊の役を降ろしてから地獄へ落とすぞコノヤロウ!と脅しを掛けたら漸く話しだした。
「ひぃっ…な…何卒ご勘弁を…り…理由までは解らないですよ…然し、三上秀一なる男には強い嫉妬を抱えていたのは確かでして…」
地獄行きと脅されて、更にゴミ箱の中を覗かせてやって漸く話す気になった守護霊の話はあまり参考にもならなかったけど、5人組がどおやって秀一を虐めていたか(マジで自殺する様に追い込んでいたらしい)を話してくれたが、久しぶりにドタマに来たぜ。
なので、5人組にはそれ相応のお仕置きをしてやるから覚悟しておけと脅した後で開放してやった。
さて…と…禁じ手だけどやるしかないわなぁ…
新雨音総合病院の秀一が入院している部屋に置いてある秀一のスマホの前で思案していたレイは意を決してスマホの中に飛び込もうとしたのだが、此処で慌てた真智子が俺を呼び止める。




