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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第四章 黒尾の逆襲
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第53話 ワンダーランド6

「全てあの幽霊のせいだ…俺は悪くない…」


「店長?大丈夫ですか?」


全ての台が狂った様に出玉を吐き出し続ける光景を観てボーゼンとなり、譫言の様に呟く金蔵に女性アルバイト店員の古谷和歌子が怪訝な表情で声を掛ける。

ワンダーランドで働く社員は全員幽霊は見えないし信じていない人達なので、この反応は

仕方がないだろう。


「へ…閉店だ…今日は機械トラブルで21時をもって閉店する!」


「ちょ…本気ですか店長!?本来の閉店時間迄まだ2時間近くもあるんですよ!?そんな事をしたらお客が暴動を起こしますよ!?」


「う・・・煩い!閉店ったら閉店だ!閉店後は全機種全台のラムクリを行え!文句は言わさん!!」


「は・・・はい!解りました」


「ちょっと待て!」


「ハイ?」


「無理矢理閉店するんだ…その分の保証として1人2万円分の景品を上乗せして渡してやれ…兎に角急げ!!」


「ハイ!!」


「・・・クソ幽霊が!ここ何日分かの売上が・・・ワシの金が・・・この恨みはらさで置くべきか!」


実は金蔵は警察にマークされていながらも、徐々にではあるが、ボッタクリモードを発動させていた。

最初から店内全台の半分はレベル2で発動させようと思っていたが思いのほかマークがキツかった為にレベル1を全台の10分の1の割合でしか発動させられなかっただけの話であった。

それでも、出にくくなっている台を何とか攻略しようとムキになったお客がツッコんでくれたおかげでかなりの収益を手にしていたのだ。


その動きを知らないレイ達ではない。

まるでギャンブルと言う名の妖怪に魂まで喰らい尽くされても尚もギャンブルに没頭するゾンビと化したお客が増殖する姿を黙って見ている訳には行かなかった。

現に京香がその犠牲者たる最たる例であったのだ。


「この女3日連続だぞ…何でそんなに死にたがる…」


幾ら名所とは言え、多くても1ヶ月に3人程度が関の山で1度失敗すると2度とは来ない。

勿論、それはレイと真智子が2度と来れない様に仕向けている賜物なのだが、京香はそれでも翌日、翌々日と連続でやって来て自殺をしようとした。


「ちょっとこの子…ワンダーランドで負け続けている子じゃない…それに守護霊が居ないわ…」


「居ないって…マジか…てか、守護霊が消えるなんて事、あり得るか?普通…真智子、守護霊降ろし出来るか?」


「難しいけど、やってみるわ」


3度目の未遂の後、京香の現状を知った私は彼女に乗り移り、要石まで連れて行き守護霊降ろしを実施する。

私達がやっている事は志願者を撃退した後、守護霊をしばいて活性化させ、2度とこんな事をさせない様に言い聞かせるの。

そうする事で守護霊は宿主を全力で守護する様になる。

通常はそれで事足りるし、彼女にも昨日迄は守護霊が居たのだけど、何か弱々しい感じだったから心配はしていたのだけど、今日見ると居ない。

結果として、彼女の先祖霊で強い霊が降りて来たのでそのまま固定させる事に成功したのだけど、何で守護霊が居なかったのか謎のままだったの。

早速、彼女に何があったのかと何故負け続けてもワンダーランドに入り浸っているのか調べた結果、トンでもない事が判明する。


「野郎…取り込んでやがるな…」


そう、金蔵の背後に居る黒い影は常連客の守護霊を取り込んでたの。

とは言え、一気に食っている訳ではなくゆっくりとジワジワと真綿で首を絞める様にゆっくりと取り込んでいた。

守護霊が弱まる又は居なくなれば、その人の他の幽霊に対する抵抗力は無くなり、常に危険に晒されている事になる。あの影は守護霊を取り込むだけで客には手を出していない。然し、元々パチンコ屋に対して異常な程に執着心を燃やしている者ばかりなので、その後の誘導は簡単だ。

そうとは知らないお客は生ける屍と変わらなくなり、財産をなげうってでもワンダーランドに通い詰める様に誘導し、最後には良くてホームレス悪くて死が待っている。

お客はN級が絶えず呼び込んでいるから途切れないし勝つも負けるもお客の自己責任なのだから、お客がどおなろうと店側としては痛くも痒くもない。


「あの影、危険だな…何だと思う?」


「ウーン…ヤバいのは解るけど、どっちとも取れるわね」


「俺は妖怪の類だと思うが、真智子はどおだ?」


「私は…黒尾の欠片かと思うわ…」


「黒尾とハゲダヌキの接点は無いぞ?」


「そうなのよね…けど、あの波動は間違いなく黒尾の物よ?」


「似ているってだけじゃないのか?」


「かも知れないけど…やっぱり私は黒尾だと思うわ」


「じゃあ、賭けようか?」


「賭ける?何を?」


「勿論、負けた方は勝った方の言う事を一日だけ何でも聞くってのはどおだ?」


「乗った!!」


「もし、黒尾でも妖怪でも無かったら引き分けで、何もしない事で良いな?」


「了解了解」


店の片隅から日に日に大きくなる金蔵の背後で蠢く黒い影。その影の正体を巡って真智子との間で不謹慎極まりない約束を交わした後、行動に移る。


「マジか…何で黒尾が…」


「私の勝ちだね。」


「クッソ〜!!」


「じゃあ、宜しくね♥」


金蔵は朝5時に出勤して台のセッティングをした後、開店1時間程で仮眠を取る為に3時間程店長室隣の部屋に籠もり、昼過ぎに業務へと戻る。

それから、監視カメラやホールコンピュータをチェックしたりするのだが、ボッタクリモードを発動させている台はホールコンピュータには反映されて居ない。

この日も監視カメラやホールコンピュータをチェックしていた時、京香を見付けて京香の動きをチェックしていた。


「ゴトをしていたら直ぐにとっ捕まえてやる…あれだけの美人だ、脅して飼うのも有りかな…グフフ…」


この時、金蔵は京香はゴトの常習犯としか考えていなかったのだが、それらしき動きはなく座って10分経たずに大当たりをさせた。

それからは何時もの通りの展開で10連チャン20連チャンと大当たりを重ねて行く。


「ゆ…幽霊だ…幽霊が台を操作して大当たりを引き起こしていたんだ!」


京香の背後の空気が揺らいでいる様に映るだけで監視カメラにはハッキリとは映っていないが、金蔵の目にはレイの姿がハッキリと映っていたのである。


「さぁ〜ってと…始めましょうかねぇ…生者を誘導し金を財産を毟り取るハゲダヌキ!お客の恨みを思い知れ!!」


幽霊が居るだけで混乱するのに、何を考えたのか、一番台から順番に物凄い勢いで台を触りだしたレイはアンテナを設置せずに真智子と共に何処かへ消える。


「キッタァーー!!」


「コレよコレ!コレを待っていたんだ!」


「頼むから単発で終わってくれるなよ!」


レイが触れた台は程なく大当たりをし、今までのお詫びと言わんばかりに玉やコインを吐き出し続け、店内は忽ちお祭り騒ぎになったのである。

この状態を目の当たりにしても、そう簡単に連チャンし続ける事は無いだろうと高を括っていた金蔵であったが、連チャンは一向に終わる気配は無く、お客はドル箱をを重ねて行く。


閉店迄は後2時間弱ある。

そのまま閉店迄営業していたのでは今まで稼いだ金どころかトンでもない赤字が出るのは間違いない。

それを食い止める方法は唯一。

こうしてワンダーランドはこの日の21時で閉店となったのである。


深夜2時


「ほうほうなる程なる程…」(何だこの店は…それとこの禿に取り憑いているヤツは何者だ?)


「先生…如何でしょうか?」


「10体程居ることには居るが、どうと言う事はない…こ奴らを祓えばお客は激減するでしょうな」(客寄せするだけの無害な霊だな…こう言った奴らは本来、祓わない方が良いのだが…)


「それは本当ですか?じゃあ、営業時間内に居た幽霊は何処にも居ないと?」


「居ませんな…そんな強い幽霊が居るなら直ぐに気付けますよ」(言われてないから祓わないけど、この禿に取り憑いているヤツはカナリヤバいな…知らん知らん!こんな店、潰れようが潰れまいが俺には関係ない!)


閉店後、この街で1番と名高い花岡玉斉と連絡を取りお祓いを依頼すると、直ぐに飛んできたので早速霊視をして貰ったのは良いが、店内に居る幽霊は動く事が出来ないN級寂しがり屋系が10体居るだけ。

それでも、幽霊が居るだけで気味が悪いからと拝み倒す金蔵に押し負けた玉斉はお祓いと念の為にと店に結界を張ったのであった。


「払わなければ結界を解きますよ?そうしたら直ぐに幽霊が来ますなぁwww」


一通り終わった後、玉斉から法外な金額を請求されひと悶着あったのだが、払わないと結界を解くと脅され渋々払う事になったのであった。


「あのヤロウ!思いっ切り足元見やがって!もういい!警察が何だ!絞り取るだけしぼりとってやる!!」


たった1日で今までセッセと溜め込んだ貯金の殆どまでも放出するハメになった金蔵の中で何かが崩壊して弾け飛ぶ。


「さぁ、この街の住人よ!この俺に全ての財産を貢げ!この街の住人の財産は全てこの俺、金蔵貯造のもんだ!!グハハハ」


誰も居ない明け方の店内で金蔵のゲスな笑い声が響き渡り、それと同時に背後の黒い影が金蔵の中に入り込む。

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