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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第四章 黒尾の逆襲
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第52話 ワンダーランド5〜芳賀俊哉登場

「事故ったか・・・珍しく引きが強いなあの女・・・」


ボッタクリ設定してある台が事故を起こした様な出方をしている様子は当然ながらモニター越しに金蔵も確認していた。

とは言え、最強設定ではないので、あの女が超極小確率を引き当てた可能性も考えられるしゴト対策はシッカリしているので何か仕込んだとは考えられない。


「まぁ…確率はゼロではないからな…面白くねえ…」


心の中で舌打ちが止まらない金蔵の中で負の感情が強くなる。

負の感情が強くなればなる程、色濃くなる黒い影。

その黒い影の色が濃くなればなる程、金蔵の精神にも影響し、歪んで行くのであった。


1週間後18時過ぎ


「やったぁー30連チャン目!今日も頂きだわ!これで借金生活から脱出出来る!!」


チッ!!また、あの女の一人勝ちかよ!!マジで店長と出来てんじゃねぇだろうな!!


あーっくっそ!またハズレかよ!!どおなってんだこの店は!マジで遠隔やってんのか!?


遠隔えんかくぅ〜!!


それから1週間もの間、京香はワンダーランドに通い詰め、7日連続勝ち、然も1日最低10万円勝ちと言う記録を打ち立てた。

勿論、金蔵も京香だけ勝たせる訳には行かないので、4日前から全台ボッタクリモードレベル3にレベル4を少し混ぜて対抗したのだが、全く効果無し。

全てのお客が負ける中で京香一人だけ勝ち続けるのはおかしいと当然の事ながら不満が爆発し、遠隔疑惑まで立ち上るハメになり、ネット上でワンダーランド叩きが始まってしまう。

そんなことになっていると知らないで勝ち続ける京香の強運に白旗を上げるしかないと思っていた所、モニター越しに見えしまう。


「い…今のは何…だ???」


そう、京香が台に座ると同時に京香の体から白いモヤみたいな物が出て台に吸い込まれたと思ったら少しして台が大当たりをしたのだ。


「ま…まさかとは思うがゆ…幽霊が悪戯をしているのか?????」


金蔵は本来見える人間ではないし幽霊の存在も信じてはいない。

実際、白いモヤを視たのは今回が初めての事だ。

これは単に黒いモヤの強さが高まった恩恵だと言える。


「ゆ…幽霊が出た!!」


何か仕掛けているのではないかと京香をマークしていた金蔵は幽霊如きが大当たりを誘発させる様な事が出来るのかと酷く混乱する。


そんな中…


7…8…9…マジで多いなこの店…


30分前に現れた中年太りが気になる見た目40代半ばのちょいワルおやじは何かを探す様に缶コーヒー片手に店内をウロウロしながら数を数えていた。


「・・・噂の元はアイツか・・・」


シッカし…なんつぅ幽霊だよ…


このちょいワルおやじの名前は芳賀俊哉はがとしや36歳

職業 漫画家(全く売れていない)

身長 160cm

体重  60kg

某有名漫画雑誌で連載した事があるのだが、全く人気が出ずに3ヶ月で終了し、その後は新作の漫画の構想を練りながらも有名漫画家のアシスタントとして活動中であり、パチンコには一切の興味を示さない。

因みに幽霊が見える人


そんな彼が何故ワンダーランドに来たかと言うと、少し前に夕食で訪れた居酒屋でこんな噂を訊いたからである。


「ワンダーランドには強い男の幽霊が居て他の幽霊を仕切っている」


と・・・


別にパチンコを打ちたい訳ではないし、その幽霊と仲良くなりたい訳でもない。

然し、他の幽霊を仕切る幽霊なんて訊いたことが無ければ見たこともないので、興味本位で訪れただけなのだ。


店内をウロウロしながら自販機の横やカウンターの奥等、幽霊の強さと数を確認していた俊哉は取るに足らない無害な幽霊だと認識した俊哉であったが、4円パチンココーナーの319分の1の台で一人だけ台を吹かせている女性の後ろで台から聞こえて来る音楽に合わせて踊りまくる幽霊を見た時、一瞬ではあるが、全身に氷る寸前の水をぶっかけられた様な冷たさが走ると同時にあの幽霊、無茶苦茶過ぎると思ったのであった。


と・・・その時・・・


(お兄さんも何処かに座って打った方が良いわよ)


頭の中にダイレクトに伝わる女性の声が聴こえて来た。

横にも後ろにも誰も居ないが、声は聴こえる。然し、打つ気は無い俊哉は何故だ?と問い質すが、迷わず打てば直ぐに解るわよと返って来るだけで取り付く島も無い。

何が起こるか解らないが、言われた通りにしないと後で後悔しそうな気持ちに襲われた俊哉は仕方なく空いている台に座りサンドに千円だけ入れて打とうとするが、打った事が無いのでどおしたら良いのか解らない。


(そこのハンドルを握って右に回すと玉が打ち出されるからヘソのチャッカーに入る様に強さを調整してちょうど良い所で固定するのよ)


オッ・・・入った・・・なる程・・・ヘソと言う場所に玉が入ると画面が動くのか・・・


意味が解らず打つこと20回転目


リーチ!!


数回転前から画面の動きが挙動不審だと思っていたら両サイドに7が止まり真ん中の数字だけがカクンカクンと動き出す。


なる程・・・此処で7が止まれば良いのか・・・止まらないジャンよ・・・ン?何だ?何が起きた?


7よ止まれ!と願っても当然止まる訳はなく数字は8まで進む。ハズレたかと思った俊哉であったが、パチンコのリーチは此処からが本番。

そう、真ん中の数字は8では止まらずに高速で動き出して画面が切り替わったのだ。

そして、切り替わった画面の先に展開された画像は本機最強リーチと呼ばれる画像を映し出している。

金蔵が設定したレベル4では最強リーチであろうが大当たり確率は極小確率なので、殆ど当たらないのだが、そうはならなかった。


押せ!!


派手な演出と眩しい程に光る台そして喧しい程の音がお客の射幸心を煽り、それらが収まると同時に表示されるプッシュボタンの画像と押せの文字。


ハイハイ、押せば良いんでしょ?押せば!


訳が解らないまま、表示の通りにプッシュボタンを押すと途端に大当たりを祝福する演出の後に777の赤い文字が表示される。


これが大当たりか?この後、どお打ったら良いんだ?


(おめでとう!次はハンドルを右に思い切り回して)


トコトン初心者の俊哉をレクチャーするかの様にまたも聴こえる女性の声はこの後、こう打ったら良いよと教えてくれている。


おお!玉が沢山出て来るぞ!で、このボタンを押して玉を抜くんだな?ン?終わったけど、まだ右打ちとやらはまだ止めてはいけないのだったな?


「うおっ!また当たった!!・・・他の奴等も出てんのか?何かスゲぇ光景だな」


大当たりを契機に狂った様に出玉を吐き出す台に驚きビビリながらも楽しんでいた俊哉はフト周囲を見渡すと打ちに来ていたお客全員が狂喜乱舞するかの様に大当たりを満喫していたのである。


「15回目の大当たり!けど、いい加減疲れて来たよ。そろそろ終わってくれんかな?シッカしこれの何処が面白いんだ?解かんねぇ」


元々パチンコには興味がない俊哉はこれだけの大当たりを引き起こしてもその楽しさは理解出来ない。それどころか、やればやるほど疲れるし他の台の音で耳に良くないと思った程だ。


その時


「お客様に申し上げます。只今機械の故障が発覚致しましたので、原因調査と修理の為、只今を持って閉店と致します。尚、遊戯は只今の大当たりを持って終了させて頂きます。ご理解、ご協力の方、お願い申し上げます」


「ハァ〜???フザケてんのか!?」


「機械の故障なんてウソウソ!コレ以上勝たせたくないからだろ!」


時刻は21時少し前。

閉店するにも中途半端な時間で然も店内はお祭り状態とあってお客側としては納得行かず、忽ちブーイングの嵐が巻き起こる。

中には店員に悪態を吐いたり、打ちながら監視カメラに中指を立てるお客も出た程だ。


(気持ちは解る…解るけど…俺達では何も出来ないんだよ…)


悪態を吐かれて平謝りしか出来ない店員 中根正明25歳は四谷が店長をしていた頃に働き始めたアルバイト店員で現在バイトリーダーの立場にある。

然し、中根正明はまだ良い方で、早々に切り上げて台を離れたお客から足を踏まれた店員も居た程だ。


「中根さん!俺、もう我慢出来ないッスよ!早く閉店すると言っただけで何でこんな目に遭わないといけないんですか!」


腹いせのつもりなのか、女性のハイヒールで足を踏まれ、あまりの痛さに顔を歪めて抗議する最近入ったアルバイト店員の 菅野明彦30歳は2日前からあまりの出なさと一人勝ちしている京香への嫉妬と勝てない怒りをモロに受けている。

この菅野明彦と言う男は他県のパチンコ屋で短期間のアルバイトをしながらその周辺のパワースポットを巡るのが趣味と言う変わった男だ。


「全てはあの大怪獣ゼニラのせいだ!」


本人は知らないが、実はアルバイトを含め社員全員に金蔵は大怪獣ゼニラと揶揄されている。

まぁ、金にはトコトン汚いと知れ渡っていたらそう呼ばれるのは無理はないかと思うが、本人に知れた所で気にする事は無いだろう。

それ程、金蔵は神経が図太いのだ。

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