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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第四章 黒尾の逆襲
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第48話 ワンダーランド1

この街唯一のパチンコ屋ワンダーランドの店長が交代した。

交代と言うよりは引きずり降ろされたと言っても良い。

ワンダーランドは番町観光と言う名のグループ会社の末端でグループの黒字対策の店なので本来なら赤字経営が当たり前。

それ故に地域で1・2を争う優良店でなければならないのだが実際はそうではなかった。

レイが覚醒した時点の店長は羽田と言う名の46歳の男が店長をやっていて店の大半を不正改造台を設置してボッタクリ店としてお客の軍資金を根こそぎむしり取り、不正に稼いだ利益の一部は口止め料として店員に還元されていた。


それが四谷に代わった途端、健全営業宣言したと同時にそれまで設置していた不正改造台を撤去しだした。

勿論、それまで還元されていた利益は還元されなくなり今までより月々の給料が2割程下がった。

そんな経営をしだしたので、不満を爆発させた従業員から文句が出たが


「不正改造台設置店と摘発されて職を失うのが良いかお客が楽しんでお金を落として行ってくれるのが良いかどっちが良いかよく考えろ。それでも不満なら辞めろ」


と、脅されてぐうの音も出せなくなってしまう。

そう、今までが上手く行き過ぎただけなのだ。

この街のバイト事情は平均時給900円とそれ程高くはなく、その中でワンダーランドは1300円と破格の金額である。

店を辞めた所で次の仕事を探す労力を考えると従った方がまだ良いと判断したからに過ぎない。

勿論、健全化しただけではなく、パチンコ・パチスロ媒体とのコラボをしたりウーチューバーやキャンギャルやお笑い芸人を召喚してイベントを行ったりと様々な経営努力をした結果、集客率も以前と比べ物にならない程に上がって行き、店内は活気に満ち溢れて行き、それに釣られて時給も僅かだが上がったばかりではなく、業績が良かった時に限るが従業員全員に特別ボーナスとして利益の一部を還元されることもあったと言う。


フンッ!あんなヤツに飼い慣らされおってバカ共が!


そんな中、最年長の金蔵だけが四谷に対しての不満を日々募らせていったのである。


「所詮はギャンブルよ!胴元が勝てなくてどおすんだっての!!」


勝たせる時は勝たせて負けさせるときはガッツリと負けさせる。勝てる味を覚えているのなら幾ら負けても次は勝てると信じて打ちに来る。 

それが金蔵の信じるギャンブルの法則である。

そこには依存症になった人間や借金までして打ちに来る人間の気持ち等は一切考慮されていなく、況してやそいつ等がどおなろうと自分には一切の責任は無い。


そこまでして打ちに来る方が悪いのだ。


これが金蔵がギャンブルに対しての哲学である。


本当は俺が店長になる筈だったんだ…


当時は副店長として羽田の右腕をやっていた金蔵は羽田の考え方や経営手腕に心酔し、私服の肥やし方を絶賛していた。

然し、悪事は長く続かないとはよく言ったもので冬のボーナス期直前で突如として解雇なったのである。


理由は不倫の挙げ句に不倫相手を妊娠させてしまった事。


番町観光は社内恋愛は認めているが不倫等の不貞行為は認めておらず、問答無用で懲戒解雇と社内規定にも記されている。


羽田と云う男は金には汚いが愛妻家と知られている人物である。その羽田が不倫騒動を起こしたとあって社員一同に衝撃が走ったのは確かだが、店長の座を狙う四谷が仕掛けたハニートラップに掛かったのではと密かに囁かれていたのであった。


然しながら、証拠も何も無い憶測であるが為に何時しか噂の範疇で終わってしまったのだった。


そして現在


みず乃にて


「いやぁ〜此処の料理はホント美味しいですねぇ」


「まったくですな…」


座敷席のテーブルに並べられた美味しいお酒と和食コースの料理に舌鼓を打つ二人の男。


一人は金蔵貯蔵。もう一人の男の名は中西信介39歳パチンコ・パチスロの中古台を取り扱っている業者の営業だ。


この業者は古いパチンコ・パチスロ台を家庭やゲームセンター用に改造し、ネット販売している業者ではあるが、パチンコ屋のリクエストにより不正改造した台を降ろしている業者でもある。

そして、この業者の最もお得意様であったのがワンダーランドなのだ。


「ネット販売とかしているけどなかなか売上が上がらなくてですね…金蔵さんの力で何とかなりませんか?」


そうは言われても四谷が店長をやっている限り中西の願いを聞き入れる事は出来ない。


「申し訳ありませんが私が店長なら何とかなるのだけど…」


現状ではそうとしか応じられない金蔵は丁寧に断ろうとしたのだが、その対応は想定内の中西が取引を持ちかける。


「では、3ヶ月で金蔵さんを店長に押し上げて見せますよ。もし、上手く行ったら…」


悪魔の囁きとも言える取引を持ち掛けられ、四谷に対して日頃の不満が爆発してしまう。この中西と言う男は番町観光の上役や裏の世界の人間と繋がっている。その事を知っている金蔵はつい、その口車に乗ってしまう。


「皆まで言わなくて宜し!上手く行ったらこの街の金は全てワシのもんだな」


ハァーハッハッハッハ


・・・


フンッ!

カス共が調子に乗りおって…壁に耳あり障子に目ありって昔の人はよく言ったもんだな…旦那に…いや…姉さんが良いか…とりあえず報告しておくか…


みず乃には未だに成仏していない社長の幽霊が盗聴器宜しく存在している。

そうとは知らない2人は下卑た笑みを浮かべて高笑いするのであった。

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