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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第三章 コヨミさん不在
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第46話 雨音の心霊スポットの事情4

「まさかコイツがこんな所に居るとは思いもしなかったぜ」


愛刀をピュンピュンと振り回した後、鞘に収めて何事も無かった様に吐き捨てる様に言うブルー。その姿が様になっているからイチイチ感に触るしムカつきもするのだがそれを言っても何にもならないので黙っている。

先程の妖怪は妖入道あやかしにゅうどう塵蕾じんらいと言う名前の妖怪で戦国時代末期に生きていた高僧だったらしいが、低級妖怪の祓いに失敗しそのまま取り憑かれて妖怪化したのだと言う。

その後、完全に妖怪化するのにかなりの時間を要し七福神の寿老人に化けてこの神社を建立させて現在に至るとの事。

因みに低級妖怪の名は袁羅えんらと言うらしい。


「いやぁ〜ワリィワリィ…お前達の力を借りる気は無かったんだけどなぁ…」


「よっ!流石はヒーロー!登場タイミングバッチリじゃねぇの!」


いやぁ〜

ヒーローは遅れてやって来るってのがお約束だけど、こうもタイミングがバッチリだとヤラセを疑いたくなるよなホント…そう思ったからこそ皮肉タップリに褒めちぎってやると「悪かったよ」と謝罪するブルーに対して


「此処の結界は対妖怪用の強力な結界だったから解除に時間が掛かっちゃってね」


と涼しい顔で返答するイエロー。


対妖怪用の結界?そんな結界が存在するのか?と問い質すと真顔で此処の結界について説明しだす。

その話によると、文字通り妖怪のみを封じる結界で幽霊は素通り出来るとの事。


イエローの説明を訊き納得の俺を押し退ける様に真智子が出てきてブルーに対して


「結界の事はさて置き、そこの女幽霊まで処罰する気じゃないでしょうね?」


と問い質すと


「幽霊に関しては俺達の管轄外だから処罰は任せる」


と言ったは良いが、女幽霊が逃げない様にブルーの分身体が持つ刀の刃が女幽霊のしなやかな首筋にピタリと当てられている。


「じゃぁ、先ずはそのSPを回収して貰いましょうか」


先程までのやる気の無さから一転しバイブス上がりまくっている真智子の状態も納得行かないけど一度表に出るとちょっとやそっとでは引っ込んでくれないから始末におえない。なので、真智子のお気に召すまま行動させる事にし、アンテナの出力を30%まで上げて奴等を見張る事にする。


その頃、あのウーチューバーが乗る車では


「ウォッ!!スゲェもん撮れてんじゃねぇの」


血相を変えて逃げる様に戻って来た淳一に労いの言葉を掛けることもなく淳一が持っていた撮影用のカメラの内容を確かめる吉田直之と山本守。


危険度が高かろうが低かろうが出るときゃ出るし出ない時はでないので大して期待していなかったが、所々に人のうめき声や社の中で髪の毛が映っていたり所々画面がブレていたりと怪現象が盛り沢山の動画となっていたのでテンション上がるのは当然のことだろう。

実のところ、この怪現象を引き起こしていたのは俺でも女幽霊でもない。

まぁ、此処まで書くとお解かりかと思うけどコレをやった犯人は真智子だ。

本当は俺がやろうかとも思ったのだけど、俺よりも先に真智子が20%の分身体を飛ばして仕掛けていたのだ。実のところ写真や動画に写り込むのはあまり好きではない俺はこう云った場面では見に徹する事にしている。

そんな俺が何故やろうかと思ったかと言うと、あの女幽霊の邪魔をしたかったってのが正直なところだ。

結果的に真智子に阻止されてこの結果になっているのだ。


「何時もこれだけの撮れ高が有ったら苦労しないんだけどなぁ」


この2人が心霊動画を撮影するとこれ程には怪現象は録画された事はない。オーブが映り込んでいたり自分達以外の声が1度か2度入るくらいだ。なので、淳一が撮ってきたこの動画の内容に驚くのは仕方がない。


まぁ、それにはそれ相応の理由が有るのだが…当の本人は気が付いていない。


「なぁ、淳一よぉ、俺達と本格的に組んで心スポを巡って動画を撮らねぇ?」


動画の内容に気を良くした守が淳一を口説きに掛かる。然し、淳一の首が縦に振られる事はなかったのであった。


キュルルル…


ドン!


「そ…そろそろ帰ろうぜ…」


「あ…あぁ…長居は無用だな…」


用が済んだらはよ帰れってんだ!まったく何時まで居座ってんだよ!何時までも居座っていそうな3人に早く帰れと促す為にエンジンを掛け再びドアを蹴飛ばしてやるとビクッと驚き、血の気が引いた表情を浮かべた3人は逃げる様に帰って行ったのであった。

後は女幽霊をどおするのかだけど…果たして真智子はどお決着するつもりなのだろうな。


…………………

……………


「わたしはあの人の行く末を見守りたい…どおか…どおか…」


敵意は無いにしても長年育てて来た呪いの瘴気はそうそう消えるものではないし、その瘴気に当てられたら私も無事であるかどおか解らない。

なので、用心の為に女幽霊を隔離結界で隔離した状態で話をしているのだけど…案の定この世に留まりたいと言い出した。

普通なら問答無用で閻魔のジャッジに委ねるのだけど、塵蕾の手先として使役されていたのと同じ状態だったのよね。


「あなたねぇ…その瘴気を何とかしないと間違いなく引っ張ってしまうって解るでしょう?」


土下座して懇願する女幽霊の前で仁王立ちして説教する私はレイとコヨミの関係を思い出していた。

レイは兎も角コヨミがレイの事を愛してしまった程好きになっていたのは見ているだけでも解っていたのだけど、恋人関係に発展しなかったのはレイが幽霊だから。

原理はよく解らないけど、もし、2人が恋人関係に陥ってしまっていた場合、意図しなくもレイがコヨミの生気を吸い取ってしまいコヨミを殺してしまうからなの。

ある意味生者にとって幽霊って存在は取り扱い注意の危険物と言っても過言ではないと私は思う。

本当なら関わらない関わらせないのが1番だと思うのだけど、好奇心に勝てなくてつい…って感じで幽霊と関わってしまい大変な目に遭ってしまう事があるのよね。

この女幽霊を淳一の側に居させた場合、1年保たずに淳一の生気を吸い付くしてしまうだろう。


「じゃぁ、その瘴気、私が食べてあげようか?」


迷う私にそう言い出したのは他でもないイエローだ。


「だってその瘴気、涎がでそうな程美味しそうなんだもん」


ヘッ!?瘴気を食べる?って…はぁ!?妖怪の餌って人間の肉体や人間の魂とかじゃないの?

あまりの展開に驚きを隠せない私に


「妖怪だって色々いるわよ?」


と、説明しだすイエローの話によると、食人系の妖怪はごく僅かでその殆どが瘴気が餌だったりするみたい(厳密に言えば瘴気や人間を餌にしないタイプの妖怪もいるらしく、ブルーがそのタイプの妖怪とのこと)

更に人間の負の感情が乗っかった呪いの瘴気ともなれば人間で言うステーキや極上の寿司と同レベルになるとの事。塵蕾は人間の魂と瘴気を餌にしていたタイプの妖怪らしいわね。

って事は、魂喰も塵蕾と同じ部類に入るのかな?


「それでは…い〜ただっきまぁ〜す♡♡」


此処まで説明すると、許可もなくその容姿に似合わない大口を開けて女幽霊をひと飲みしてしまったイエローはウットリとした表情で暫く口をモゴモゴと動かした後でペッと吐き出す。


キレイ…


イエローに瘴気のみを食い尽くされ、用済みとなって吐き出され本来の姿に戻った女幽霊がスッと立ち上がったその姿に思わず見惚れてしまう。

峰不○子を彷彿する様な抜群のプロポーションの上に乗っかる卵型の顔にポテっとした唇にスッと通った鼻筋。更に何処か憂いに満ちた様な瞳を引き立てる様なロングヘア。

これが生前の姿なら世の男はほおっておかなかっただろうと思う。

けど、殺された理由はその外見ではなく、塵蕾に目を付けられていたかららしい。

この女幽霊の生前の名前は松崎薫まつざきかおると言う名で23歳。

有名な広告代理店で働くキャリアウーマンであったとの事。


これでお仕事は完了かな?じゃあ、私達は帰るね


後のことは任せるわと言い残して一瞬で消えるブルーとイエロー。


「ただいま…って…!!」


そこに戻って来たレイがマジかって表情で薫さんを見る。あの3人に気を取られていて此方の状況を確認出来ていなかったのね。

まぁ、これだけの美人さんだったのだから驚くのも無理ないか。


「どおあっても成仏はしたくないってんだな?」


「わたしはあの人を守る立場になりたい!だから…お願いします!!」


あまりの美人度に気圧された感は否めないけど、成仏させて輪廻の輪に返そうと説得を試みたレイであったけど、薫さんの意思は強く説得は無駄に終わってしまう。


「・・・勝手にしたら?一応、悪さしたら解るようにマーキングはさせて貰うし、悪さしたら強制的に成仏させるけど、それでも良いのならね」


見ているだけで触れる事も出来なければ存在を認識して貰えない。

本当に見守る立場になる…それって非常に辛い事なのだけど、本人がその立場で良いと言うのだから仕方がないねぇよな?それでも心変わりがある可能性も否めないから悪さしたら即、閻魔ジャッジが降る様にマーキングを施した後、開放してやる。


後はし〜らね!!


こうして七福神社は不気味さが漂うのみの単なる廃神社となったのだけど、対霊結界も張った方が良いのだろうな。

後でキメラのママにでも協力して貰うとしますか。



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