第40話 レイの怒り7
雨音署に行く途中、マンションの前を通りかかったのだが、気になったので現場を見に行くと、想像通りの状況になっていたよ。
何がどおなっていたかと言うと、落下の衝撃で磁場に囚われた美穂の魂は落下地点で佇み、屋上からは幽体が魂めがけて落下してくる。
まるで再現VTRを見せられているかの如く繰り返し…
こうなるかもって予想出来ていなかった訳じゃぁない。学園の教師が迎えに来た時点で何も心配ないと判断してしまった俺の考えが甘かっただけの事…なのだが…やっぱり見たくないわな…
こうなってしまえば俺にはどおすることも出来ないが、止める事が出来た筈なのに止めれなかったのはやはり気持ちが萎えるよ。
鬱な気持ちになりながらも雨音署に到着した俺達は何時ものように雨音署の前から箕浦刑事を呼び出したのだが
「よぉ、まだ成仏してなかったんかい!」
出会い頭に毒を吐く森田警部。
って…何で箕浦刑事でなくムサイオッサンが出て来るんだよ…てか、事ある毎にでしゃばってくるよなこのスッポンはよ…お呼びじゃねぇよ!このクソオヤジ!と言ってやったらクソを付けてオヤジ呼ばわりすんじゃねぇ!侮辱罪で逮捕すんぞこの野郎!だってよ。
マッタク…
いやいや…こんなノリツッコミみたいな事をやっている暇は無いんだっての!
恵美さんが先程の斎藤佑哉達のやり取りを録音した内容を聴かせた上で
「時間は無い…か…シッカし…何時も以上に時間がねぇじゃねぇかよ…」
ブツブツ言いながらもどおしたものかと思案している様子であったが、それも束の間で、直ぐに行動に移すべく署内に入って行く。
斎藤親子の方は森田警部に任せるとして、如何に黒尾の欠片を斎藤親子から引き剥がすかだけど、無理矢理やっても引き出す事は出来ない。
何故かと言うと、無理矢理であればあるほど宿主の中に残滓が残りやすいしリスクが高いから。
自然に出て来た所を捕まえるのが一番リスクが低いのだが、肝心の自宅には結界が張られていて入り込む事が出来ない。
シッカし、黒尾の奴はどおやってアイツらに入り込んだんだ?
何か方法がある筈。
「…アイツ…花岡玉斉がキーマン…なのか?」
然し、それでは花岡玉斉が黒尾を使役又は黒尾に操られている事になる。
前者なら兎も角、後者である場合は説明が付かない。
だって祓い屋だぞ?祓えずに取り憑かれ、挙げ句に操られるなんて…そんなバカな話しがあるわけがないし、詐欺紛いの事はやっているけどかなり力は有るし黒尾程度ではヤられない筈…
だとすると、何らかの取引があったか隙を突かれて取り憑かれたか…
だけど…
何か引っ掛かるんだよなぁ…
視た感じでは花岡玉斉の中に居る欠片が一番大きく次に真紀なんだよ。
まぁ、元々同じ大きさであっても餌の質で育ちが違う訳だしなぁ…
「珍しく悩んでいるみたいね」
雨降山の要石の上で胡座をかいて頬杖ついて考え込んでいた俺の背後から唐突に真智子が囁く様に呟く。
何時もの俺ならオワッ!とか何らかのリアクションをするのだけど、今はそこまで元気が無い。
何処へ行っていた?と訊ねてみたのだが、斎藤親子の家に行った後、浦川学園に行っていたとの事であったが、斎藤親子の家は結界が張られているが為に近寄れず。
浦川学園に至っては校庭には入れたものの、校舎にはレア級以上がひしめき合っていて危険を感じて入らなかったとの事。
レア級達は真智子の存在を感じて窓から睨む様に凝視していたとの事であったが、校舎から出られない様子で襲われる事は無かったのだが、一体一体は差ほど脅威にはならない程の強さでしかないらしい。
学園内の掃除もしないとならないかなとは思ったものの、今は真紀の海外逃亡を阻止し、黒尾の欠片を取り除くのが最優先事項だ。
「そう言えばチョロ松は何処へ行った?」
一緒にいた筈のチョロ松の姿が見当たらないのでその事を訊ねると呆れた顔で
「気付いて無かったの?」
との返事。
ン?気付いて無かったのかって?
・・・・・・まさかとは思うが・・・
既に理事長の中に居たとか?まさかなと思いつつ、真智子を問い質したらそのまさかだった。
てか、何で理事長の中にチョロ松が居るんだよ。
思わず突っ込みを入れる俺に予想は出来たから先回りして入り込ませたとの事。
「中に誰か入っていたらよほどの事がない限り入っている者を追い出す事は出来ないから」
との返事。
それは解るのだよ…それはな…で、俺が知りたいのは、何で斎藤親子が理事長を頼ろうとするのを知っていたかと言う事だよ。知っていたからこそ先回り出来たのだろうし。
「それはね…」
生前、何度か理事長からお祓いの依頼を受けた事があって、その時に身内が雨音署長だと聞いていたからであり、チョロ松の事件のほとぼりが覚めていないからだと言うが、本当か?結果オーライになってたから良かったものの、対応が遅ければ逃げられる事になっていた筈。
何か怪しいと思いつつも追及しても上手くはぐらかされるだけだろうからな。
「真紀を追い出そうとしたパパが悪いんだからね…」
等と俺達が議論していた頃…事態は思わぬ方向へと進んでいた。




